第五十三章 エンジニアの質問
第五十三章 エンジニアの質問
ナルコールを出発して三日後、アストレオンはまだオルテイアへ向かう途中だった。
旅自体はそれほど長くはない——ナルコールからオルテイアへの直行ルートはFTLで約十二時間だ。しかしツムギはより長いルートを選び、貨物船がほとんど通らないいくつかの小さな星系を回ることにした。危険があるからではなく、不必要な注目を避けたかったからだ。
「オルテイアには二日後に到着する」とツムギは朝食時に言った。「このルートは時間がかかるが、少なくとも主要航路を通らない。」
ランは頷いた。「良い判断です。ヴェルクラーデンは主要航路に目を光らせています。」
レアは落ち着いてパンを噛んだ。「つまり隠れているのか?」
「隠れているんじゃない。不必要な注目を避けているだけだ。」
「そういうことにしておく。」
カリスタはテーブルの端に座り、その会話には加わらなかった。彼女の目は手元のタブレットに向けられている——セラフィエルから借りたタブレットで、アストレオンのシステムに関する技術データが入っている。彼女は昨夜からそのデータを読んでいて、まだ読み終えていなかった。
ツムギは彼女に気づいた。
「カリスタ。」
カリスタは顔を上げた。「はい?」
「昨夜からそれを読んでいる。眠っていないのか?」
「寝た。二時間。」
「二時間以上必要だ。」
「答えが睡眠より必要だ。」
ツムギはしばらく彼女を見つめた。カリスタがこうなることは予想していた——好奇心が基本的な欲求を上回るだろうと。しかし直接見ると、少し赤い目と、いつもより乱れた赤い髪を見て、ツムギは少し心配になった。
「何を探している?」
「素材。」カリスタはタブレットを置いた。「セラフィエルが提供したデータは全部読んだ。でも何かが欠けている。」
「どんな?」
「ヴァルキリーの装甲合金の組成。仕様は見える——強度、弾性、熱伝導率。でも化学組成が見えない。データから削除されている。」
ツムギはテーブルのそばに立つセラフィエルに振り返った。
「その情報は意図的に削除しました、ツムギ。合金の組成はアストレオンの秘密です。」
「わかっている」とツムギは言った。彼は再びカリスタを見た。「その組成は手に入らない。」
「求めていない」とカリスタは言った。「ただ、それが欠けていると言っているだけ。なぜか知りたい。」
「秘密だからだ。」
「私を信用していない。」
「知り合ってまだ四日だ。」
カリスタは微かに微笑んだ。「公平だ。」
彼女は再びタブレットを見たが、読み続けなかった。ただ静かに座り、変わらない画面を見つめていた。
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朝食後、ツムギはエンジニアリング・デッキへ歩いた。セラフィエルと共にいくつかのシステムを確認したかった——問題があるからではなく、すべてが正常に動いていることを確認するのが好きだからだ。
カリスタがついてきた。
「来る必要はない」とツムギは言った。
「見たい。」
「昨日も見た。」
「もう一度見たい。」
ツムギは止めなかった。彼らは一緒にエンジニアリング・デッキへ歩いていき、リアクターからの青い光が彼らを迎えた。
カリスタはすぐにメインコントロールパネルへ向かった。彼女はいくつかの画面を開き、データを確認し、眉をひそめた。
「何かおかしい」と彼女は言った。
ツムギが近づいた。「何だ?」
「金属精錬システム。出力に小さな変動がある。」彼女は画面のグラフを指した。「重要ではないが、正常ではない。」
「私はその変動を検知していました」とセラフィエルが言った。「原因を特定中です。」
「手伝おうか?」
「自分で対処できます。」
「できるのはわかっている。でも手伝いを申し出ている。」
セラフィエルは一瞬沈黙した。
「わかりました。私が持っているデータを見せます。」
カリスタは微笑んだ。「よし。」
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彼らは数時間一緒に働いた。カリスタは精錬コンポーネントを検査し、セラフィエルはデータと分析を提供した。ツムギは遠くから観察していた——干渉せず、ただ見ていた。
約二時間後、カリスタは変動の原因を見つけた——摩耗し始めた小さなバルブだ。彼女はスペアパーツの倉庫で見つけた新しいバルブと交換した。
「自分で解決できるんだな」とツムギは言った。
「できる。でもセラフィエルと働く方が速い。」
「彼女と働くのが好きか?」
カリスタは肩をすくめた。「効率的だから。多くを語らない。文句を言わない。ほとんどの人についてそう言える以上のことだ。」
ツムギは微かに微笑んだ。
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午後、カリスタは再びタブレットを持ってリビングルームに座った。今回は技術データを読んでいなかった。別のものを読んでいた——アストレオンのアーカイブで見つけた文書だ。
ツムギが入ってきて、彼女を見た。
「何を読んでいる?」
「銀河の歴史。」カリスタはタブレットを上げた。「アーカイブで見つけた。恒星間文明の歴史。人類と他の種族がどう発展し、どう文明を築き、どう交流したか。」
「面白いか?」
「面白い。」カリスタはタブレットを置いた。「こんなものを読む時間はなかった。いつも働くのに忙しかった。」
「今は時間がある?」
「旅の途中だ。正常に機能しているシステムをチェックする以外にできることがない。」彼女はツムギを見た。「だから読んでいる。」
ツムギは向かいのソファに座った。
「何か面白いものを見つけた?」
「たくさん。」カリスタは彼を見た。「例えば、人類とスペースエルフが約千年前に大戦争をしたことを知っている?」
「知らない。」
「それは連邦ができる前のこと。人類とエルフの戦争が百年近く続いた。数百万人が死んだ。惑星が破壊された。」
「なぜ戦った?」
「他の戦争と同じ理由。資源。領土。誇り。」カリスタは肩をすくめた。「人類もエルフも頑固だった。」
ツムギは頷いた。
「そして何が戦争を終わらせたか知っている?」
「何だ?」
「貿易。」カリスタは微かに微笑んだ。「百年戦った後、両陣営は互いが必要だと気づいた。人類には技術があり、エルフには資源があった。彼らは取引を始め、ゆっくりと敵意は薄れていった。」
「つまり貿易が戦争を終わらせた?」
「貿易は多くのことを解決する。それが歴史が教えること。」カリスタはタブレットを置いた。「だから私はエンジニアになった、兵士ではなく。壊すより建てる方が好きだ。」
ツムギはしばらく彼女を見つめた。
「良い哲学だ。」
「実用的な哲学だ。」
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夜、彼らは再び一緒に食事をとった——長いテーブルにはツムギ、セラフィエル、レア、ラン、カリスタ、そしてヴェスペラが座っている。
カリスタは今夜はもっと話した。彼女は鉱山惑星での子供時代について、同じくエンジニアだった父親について、文字を読む前に機械を修理することを学んだ方法について語った。
「父は言った、『機械を理解できれば、世界を理解できる』と。」カリスタはフォークを食事に突き刺した。「大人になるまでその意味が本当にはわからなかった。」
「そして今は?」とレアが尋ねた。
「今はわかる。機械は作った人の鏡だ。丁寧に作られた機械を見れば、作り手が気にかけていたことがわかる。急いで作られた機械を見れば、作り手が利益しか気にしていなかったことがわかる。」
「そしてアストレオンは?」
カリスタは周囲を見渡した。
「アストレオンは非常に丁寧に作られている。すべての部品、すべての接続、すべてのシステム——すべてが完璧だ。作り手は気にかけていた。とても気にかけていた。」
ツムギは静かに聞いていた。
「誰がアストレオンを作ったと思う?」
カリスタは彼を見た。「わからない。でも知りたい。」
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夕食後、カリスタはコックピットの窓のところでツムギに会った。
「船長。」
ツムギは振り返った。「何だ?」
「聞きたいことがある。」
「どうぞ。」
「アストレオンがどこから来たかわからないと言った。それは本当?」
「ああ。」
「それについて嘘をついたことはない?」
「嘘をつく理由がない。」
カリスタはしばらく彼を見つめた。
「わかった。信じる。」
「ありがとう。」
「でも一つ知りたいことがある。」
「何だ?」
「この船がどこから来たかわからないなら、どうやって操作する方法を知っている?」
ツムギは沈黙した。
「セラフィエルだ」と彼はついに答えた。「セラフィエルが助けてくれる。」
「セラフィエルはAIだ。船を操作できる。でもあなたは船長だ。あなたが決断する。どうやって正しい決断を知る?」
ツムギは考えた。
「いつもわかるわけじゃない。学んでいる。間違いを犯す。その間違いから学ぶ。」
「そして……ふさわしくないと感じたことはない?」
ツムギは彼女を見た。
「毎日。」
カリスタは沈黙した。
「でも続けている。」
「選択肢がない。この船は私のものだ。大切にしなければならない。上手く使わなければならない。」
カリスタは静かに頷いた。
「正直な答えだ。」
「いつも正直であろうとしている。」
カリスタは微かに微笑んだ。「わかってる。」
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夜が更けていった。
ツムギはコックピットの窓の前に立ち、外を流れる星々を見つめていた。後ろでは、カリスタがまだソファに座っている——読まず、働かず、ただ静かに座っている。
「船長。」
「何だ?」
「あなたと働きたい。」
ツムギは振り返った。
「もう働いている。」
「コンサルタントとしてじゃない。クルーとして。」
ツムギはしばらく彼女を見つめた。
「本気か?」
「この船が好きだ。仕事が好きだ。人々が好きだ。」カリスタは肩をすくめた。「他に行きたい場所がない。」
ツムギは考えた。
「好奇心だけで人を採用しない。」
「もう好奇心じゃない。十分見た。ここで働きたいから働きたいんだ。好奇心からじゃない。」
ツムギは長く彼女を見つめた。
「明日」と彼はついに言った。「これについて明日話そう。実際の状況でどう働くか見たい。」
カリスタは頷いた。
「能力を証明する。」
「そう願っている。」
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【次回予告 第五十四章 —— 「自分の能力を証明しろ」】
ツムギはカリスタに実際の問題を与える——アストレオンの助けなしで修理しなければならないナルコールの産業システムの故障だ。カリスタはエンジニアとしての能力を証明しなければならない。成功すれば、ツムギは彼女にテクニカル・コンサルタントとしての地位を提供する。
【第五十四章へ続く…】




