第五十一章 格納庫のドワーフ女性
第五十一章 格納庫のドワーフ女性
デイヴェン・クロルとの会談から二日後、ツムギはナルコール・フロンティア・ステーションがもう長居するのに安全な場所ではないと感じ始めていた。
直接的な脅威があったわけではない——ヴェルクラーデンの船が突然ドックに現れたり、通信チャンネルから脅迫メッセージが届いたり、同社に登録された船の不審な動きがあるわけでもない。しかしツムギは、ヴェルクラーデンが沈黙しているからといって諦めたわけではないことを知っていた。彼らは待っている。観察している。計算している。
そしてツムギは観察の対象になるのが好きではなかった。
「すぐに出発しなければ」と彼はある朝、アストレオンのギャレーで朝食をとりながら言った。
ランは頷いた。「同意します。ここに長くいればいるほど、彼らが我々について集められるデータが増えます。」
「船のデータ?」とレアが口にパンを含みながら尋ねた。
「すべてのデータよ。」ランはカップを置いた。「我々のルート、スケジュール、誰が船に出入りしているか、誰と話しているか。ヴェルクラーデンにはそれを監視する資源がある。」
レアは落ち着いて噛んだ。「じゃあ出発する。どこへ?」
ツムギは考えた。
「オルテイアで待っている契約がいくつかある。戻って配送を完了させて、それから次の動きを決められる。」
「オルテイア?」レアは眉をひそめた。「同じ場所に戻るのか?」
「今のところは。我々には知っている場所が必要だ。関係と同盟がある場所が。」
ランは頷いた。「理にかなっています。ミラルも我々が戻るのを喜ぶでしょう。」
「よし。」ツムギは立ち上がった。「二時間後に出発する。」
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しかし準備を終える前に、誰かがアストレオンの格納庫にやってきた。
ツムギがセラフィエルと貨物の在庫を確認していると、格納庫の扉が開き、一人の女性が入ってきた。彼女は背が低い——レアよりずっと低く、平均的な人間よりも低い——何年もの肉体労働を示すがっしりとした体躯をしている。髪は燃えるような赤で、簡単なゴムで後ろに結ばれている。目は濃い茶色で、鋭く、素早く動く——何も見逃さない視線で格納庫の細部を観察している。
彼女は作業服を着ている——胸と腰にいくつかのポケットがついた汚れた灰色のつなぎ、使い込まれた重いブーツ、ベルトにぶら下がった革の手袋。肩には重そうな工具袋がある。
ツムギは在庫確認をやめた。
「何かお手伝いしましょうか?」
女性は格納庫の中央で立ち止まった。目はまだ動いている——整備プラットフォームに立つヴァルキリーから、保管ラックのモビルフレームの列へ、開いた壁パネルへ、天井から突き出たパイプへ。
「これがそうか」と彼女は言った。声は低く掠れている——機械の音の上で話すことに慣れた人の声だ。「アストレオン・ヴェロリア。」
ツムギは眉をひそめた。「君は誰だ?」
女性は振り返った。「カリスタ・フェロ。スペースドワーフ。エンジニア。」
「何か用か?」
カリスタは微笑んだ——完全に友好的とは言えない微笑みだ。むしろ、挑戦しているような。
「この船のエンジンを見たい。」
ツムギはしばらく彼女を見つめた。「断る。」
「まだ頼み終わってない。」
「もう答えた。」
カリスタは笑った——短く、大きな笑いだ。「難しい人だな? いいね。難しい人は好きだ。」
彼女は一歩近づいた。ツムギは後退しなかった。
「お前の船のことは知ってる」とカリスタは言った。「ニュースで見た。全長八千六百メートルの豪華ヨットで、海賊艦隊を壊滅できる武装を持つ。モビルフレームは二千四百機。ありえない技術。」
「もう十分知ってるようだ。」
「私はエンジニアだ。人生を機械の研究に費やしてきた。そしてありえないもの——存在するはずのないもの——を見ると、なぜなのか知りたくなる。」
「それをお前に教えると思うか?」
カリスタは肩をすくめた。「断るとは思う。でもお前は興味を持つとも思う。」
「何に?」
「私がお前の船のために何ができるか。」
ツムギは答えなかった。
カリスタはヴァルキリーに近づいた——今はレアのものになったモビルフレームだ。彼女はその前に立ち、紫のアクセントが入った白い船体を見つめた。
「良い改造だ」と彼女は言った。「三百六十度回転するスラストシステム。エネルギー反射層を持つ複合装甲。独立冷却のプラズマキャノン。」彼女はツムギに振り返った。「誰がやった?」
「セラフィエル。」
カリスタはセラフィエルを見た——ツムギの隣に提督の制服を着て静かに立っている。
「お前のAIか?」
「合成人間だ。」
カリスタは眉を上げた。「合成人間? 珍しい。」彼女は評価する目でセラフィエルを見つめた。「お前がこのモビルフレームを改造したのか?」
「はい。」
「どうやってエンジニアリングを学んだ?」
「私は様々な星系の技術データベースにアクセスできます。それを学び、発展させました。」
カリスタは静かに頷いた。「面白い。」
彼女はツムギの方へ歩いて戻った。
「お前と働きたい」と彼女は言った。
ツムギは眉をひそめた。「働く?」
「私はエンジニアだ。船の保守を手伝える。モビルフレームを改造できる。システムを強化できる。様々な業界で働いてきた——採掘、製造、造船所。自分が何をしているかわかっている。」
「セラフィエルがいる。」
「セラフィエルはAIだ。既存のシステムを管理できる。しかし機械を感じることはできない。あるはずのない音を聞くことはできない。焦げた金属の匂いを嗅ぐことはできない。」カリスタは胸を叩いた。「私はできる。」
ツムギは考えた。
「なぜ俺と働きたい?」
「お前の船は謎だから。そして私は謎が好きだ。」
「それだけか?」
カリスタは微笑んだ。「そして自分の機械を気にかけない大企業のために働くのに疲れたから。彼らは利益しか気にしない。私は……違う誰かと働きたい。」
ツムギはしばらく彼女を見つめた。
「好奇心だけで人を採用しない。」
「採用しろとは言ってない。チャンスをくれと言ってる。能力を証明させてくれ。」
「どうやって?」
カリスタは工具袋を持ち上げた。「問題をくれ。何でもいい。解決できたら、考えてくれるだろう。」
ツムギはセラフィエルに振り返った。
「モビルフレームの油圧システムに小さな問題がいくつか未解決で残っています。テストとして与えられます。」
ツムギは頷いた。
「わかった。セラフィエルが問題を出す。解決できたら、また話そう。」
カリスタはにやりと笑った。「後悔しないさ。」
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二時間後、カリスタ・フェロはモビルフレーム格納庫の中に立っていた——開かれたパネルと散らばった部品に囲まれて。彼女は既につなぎの上を脱ぎ、油染みだらけの灰色のTシャツを見せている。手袋は既に装着され、手には油圧システムの一つを開けるためのレンチがある。
ツムギは遠くから観察していた——何が起きているか見に来たレアとランと共に。
「かなり熟練している」とレアは言った。
ツムギは頷いた。「今のところは。」
ランは評価する目でカリスタを見つめた。「ドワーフは確かに機械に関しては専門家ね。種族の特性よ。」
「ドワーフについてよく知ってるな?」
「私は商人よ。多くの種族と働いてきたから。」
カリスタは速く効率的に働いた。多くは話さない——時折独り言をつぶやいたり、何かが合わないと文句を言ったりするだけだ。しかしその動きの一つ一つが目的を持ち、判断の一つ一つが理にかなっている。
約一時間後、彼女は立ち上がり、額を拭った。
「終わった。」
セラフィエルがそのシステムを検査した。
「油圧システムは正常に機能しています。効率は以前より七パーセント向上しました。」
カリスタはにやりと笑った。「七パーセント? 時間と適切な部品があればもっと上げられる。」
ツムギが近づいた。「よくやった。」
「わかってる。」
「チャンスを与える。ただし条件がある。」
「何だ?」
「技術コンサルタントとして働く。正式なクルーではない。セラフィエルの保守と改造を手伝う。しかし船の全システムへのアクセスはない。」
カリスタは眉を上げた。「信用してないのか?」
「まだ知り合ったばかりだ。」
カリスタは笑った。「公平だ。受け入れる。」
彼女は手を差し伸べた。ツムギはそれを握った。
「アストレオンへようこそ、カリスタ・フェロ。」
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夜、彼らはギャレーで一緒に食事をとった——ツムギ、セラフィエル、レア、ラン、カリスタ、そして一日中日誌を書いていた部屋から現れたヴェスペラ。
カリスタはレアとランの間に座った。彼女は食欲旺盛に食べた——一日中働いた人のように。
「美味い」と彼女は言った。「誰が料理した?」
「セラフィエルだ」とツムギは答えた。
カリスタはセラフィエルを見た。「料理もできるのか?」
「私は多くのことができます。」
カリスタは首を振った。「お前は本当にありえない。」
レアは笑った。「初めて会った時から言ってる。」
ヴェスペラはテーブルの端に座り、好奇心を持ってカリスタを見つめた。
「あなたはエンジニア?」と彼女は尋ねた。
カリスタは振り返った。「ああ。あなたは?」
「探検家。」
「じゃああの地図を作ったのはあなた?」
ヴェスペラは眉を上げた。「私の地図を知ってるの?」
「ナビゲーション・ラウンジで見た。とても良いデータだった。」
ヴェスペラは微かに微笑んだ。「ありがとう。」
ツムギは彼らの会話を静かに聞いていた。アストレオンの食卓は今、より賑やかに感じられる——より生き生きと。いつも熱心なレア、いつも計算するラン、いつも知りたがるカリスタ、そしていつも観察するヴェスペラ。そしてセラフィエル——いつもそこにいて、いつも穏やかで、いつも準備ができている。
これが彼の家族だ。
「船長」とカリスタが沈黙を破った。
「何だ?」
「いつ出発する?」
「明日の朝。オルテイアに戻る。」
カリスタは頷いた。「いいね。この船が動くところを見たい。」
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【次回予告 第五十二章 —— 「カリスタ・フェロとアストレオン」】
カリスタ・フェロはアストレオンのエンジニアリングシステムを調査するための限定的なアクセスを与えられる。彼女はフロンティアのデータベースには存在しない素材、リアクター構造、製造システムに驚く。しかし彼女はアストレオンの全ての秘密を知ることは許されない。
【第五十二章へ続く…】




