第五十章 買わなかった報酬
第五十章 買わなかった報酬
レアはアストレオンのリビングルームに座り、手にデジタルトロフィーを持っていた——銀色の小さなデータカードで、彼女の名前がホログラフィックで刻まれている。目の前の濃い木のテーブルには、ランが先ほど印刷した書類が何通か置かれている——昨日のトーナメントに参加していた企業からの契約書だ。
「全部見たか?」とランが向かいのソファに座り、お茶のカップを手に尋ねた。
「見た。」レアはデータカードを置いた。「どれも同じだ。高給、新しいモビルフレーム、訓練施設、保険、手当。サイン料を提示するところもある。」
「で?」
「で、興味はない。」
ランは静かに頷いた。驚いてはいない——最初からその答えを予想していた。しかし交渉人として、確認はしておかなければならない。
「一つ面白いものがある」とランは言った。「ヴェイラウン星系の企業が、彼らのアカデミーのインストラクターのポジションを提示している。固定給、規則正しい勤務時間、戦闘リスクなし。穏やかに暮らせる。」
レアは小さく笑った——短く、ほろ苦い笑いだ。
「穏やか? 十二歳から穏やかに暮らしたことなんてない。やり方も知らない。」
「学べる。」
「いや。」レアは立ち上がった。「申し出には感謝する。でも決めたんだ。」
ランはため息をついた。「そう言うと思った。確認したかっただけ。」
「いつも確認するな。」
「それが仕事だから。」
レアは窓へ歩いていった。外では、ナルコール・フロンティア・ステーションがまだゆっくりと回転している——灯りが闇の中で蛍のようにまたたいている。数隻の貨物船がドックの周りを移動し、時折モビルフレームが遠くを横切る——おそらく定期的なパトロールだろう。
「ラン」と彼女は振り返らずに言った。
「何?」
「離れようと思ったことはある?」
ランはカップを置いた。「ここから?」
「ああ。このクルーから。ツムギから。」
ランはしばらく沈黙した。その目はレアの背中を見つめている——まっすぐな、しかし硬くはない背中。彼女はレアを十分長く知っている。その質問が空虚なものではないことを理解するには。
「ある」とランはついに答えた。「何度か。自分が十分に貢献できていないと感じた時。自分がただの荷物だと感じた時。」
「で、なぜここに残った?」
ランは微かに微笑んだ。「ツムギが私を荷物だと思ったことがないから。彼はいつも私をパートナーとして扱ってくれた——部下でも、追随者でも、アシスタントでもなく。パートナーとして。」
レアは振り返った。「それで十分?」
「何のために?」
「残るために。」
ランは考えた。「いいえ。それが唯一の理由じゃない。でも始めるには十分な理由。」
レアは静かに頷いた。彼女は再び窓の外を見つめた。
「帰る場所がなかった」と彼女は静かに言った。「これまでは。この船の前は。ツムギの前は。」
ランは答えなかった。彼女はただ静かに座り、レアに話させた。
「いつも動いていた。契約から契約へ。ステーションからステーションへ。何かを感じるほど長く留まったことがない。自分がいなくなっても気にかけてくれる人がいるとは思えなかった。」
「そして今は?」
レアは微笑んだ——珍しい、しかし誠実な微笑みだ。「今は、居場所があると感じる。自分がいなくなったら探してくれる人たちがいる。家族が……いる。」
ランはカップを掲げた。「家族へようこそ、レア。遅刻したけど、受け入れるわ。」
レアは小さく笑った。「ありがとう、ラン。」
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ツムギが彼らを見つけたのはその少し後だった——レアはまだ窓の前に立ち、ランはまだ空のカップを手にソファに座っている。
「どうした?」とツムギは尋ねた。
「レアが昨日のトーナメントからの申し出を全部断ったところよ」とランが言った。
ツムギはレアを見た。「全部?」
「全部。」
「ヴェルクラーデンからも?」
レアは頷いた。「ヴェルクラーデンからも。」
ツムギは理由を尋ねなかった。彼はただソファへ歩いて座った。セラフィエルが数秒後に全員分のお茶を持って入ってきた。
「お茶を持ってきました。役に立つと思って。」
レアはカップを受け取った。「ありがとう、セラフィエル。」
「お礼には及びません。」
彼らは心地よい沈黙の中で数分間座った。外では、ナルコールがゆっくりと回転している——決して眠らないステーションで、何千人もの人々がその中で生き、働いている。
「レア」とツムギはついに言った。
「はい?」
「残れとは言わない。それは私の権利じゃない。いつでも、どこへでも行く自由がある。」
「わかってる。」
「でも一つ知っておいてほしい。」ツムギは彼女を見た。「ここにいたいと思う限り、君にはいつでも居場所がある。何が起きても。どれだけ離れていても。いつでも戻ってこられる。」
レアはしばらく彼を見つめた。その目——鋭い紫の瞳——は読み取れない何かを示している。
「わかってる」と彼女はついに言った。「だからここにいるんだ。」
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メッセージが来たのは、彼らが夕食をとっている時だった。
セラフィエル——テーブルのそばに立っていた——合成身体は食事を必要としないが、いつも夕食の間はそこにいる——が、突然姿勢を正した。
「ツムギ。」
ツムギはスプーンを置いた。セラフィエルの声の調子が変わった——より緊張し、より警戒している。
「何だ?」
「公式メッセージを受信しました。ヴェルクラーデン・インダストリアルからです。」
テーブルの全員が食べるのをやめた。
ランがフォークを置いた。「内容は?」
「星崎紬船長との会談を求めています。彼らの代表が明日の朝、ナルコールに到着します。」
ツムギは眉をひそめた。「なぜ?」
「説明はありません。ただ『有益なビジネスの機会』だと言っているだけです。」
レアがにやりと笑った。「ビジネスの機会。」
「信じないのか?」
「トーナメントでパイロットを負かした直後に、大企業が急に会いたがるなんて信じない。」
ツムギは頷いた。彼も信じていなかった。しかし彼は、このような会談を無視できないことも知っていた——特にヴェルクラーデンほどの企業となれば。
「セラフィエル、返信しろ。明日会うと伝えろ。」
「了解しました、ツムギ。」
ランが彼を見た。「本当にいいの?」
「わからない。でも彼らが何を望んでいるか知りたい。」
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夜、ツムギはコックピットの窓の前に立った。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「ヴェルクラーデン・インダストリアルについて何を知っている?」
「ヴェルクラーデン・インダストリアルはフロンティアで活動する最大級の企業の一つです。本社はコラヴェル星系——ここからFTLで約三日の距離です。採掘、輸送、交易、そして民間警備の分野で事業を展開しています。」
「我々が見つけた市場操作と彼らの関係は?」
「まだ確信はできません。しかしヴェルクラーデンの子会社を指すいくつかの取引があります。そして彼らのパイロット——カエル・オリン——はフロンティアで最高のパイロットの一人です。昨日のトーナメントへの彼らの参加は偶然ではなかったかもしれません。」
ツムギは頷いた。
「彼らは自分たちのパイロットを負かした相手を見たかったんだ。」
「可能性があります。」
「そして今、彼らは会いたがっている。」
「はい。」
ツムギは星々を見つめた。
「明日彼らに会う。でも慎重にだ。」
「あらゆる可能性を準備します、ツムギ。」
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翌朝、ツムギはナルコール・フロンティア・ステーションの会議室に座っていた——ヴェルクラーデン・インダストリアルが会談のために借りた部屋だ。部屋は簡素で、長いテーブルと快適な椅子がある。壁にはヴェルクラーデンのロゴ——銀の線が入った赤い三角形——を表示するスクリーンがある。
テーブルの向かいに、五十代ほどの人間の男性が静かに座っていた。濃い灰色のビジネススーツを着て、整った髪と鋭い目をしている。その隣で、短い金髪に厚い眼鏡をかけたスペースエルフの女性がタブレットに入力している。
「星崎船長」と男性が言った。「来てくださってありがとうございます。私はデイヴェン・クロル、ヴェルクラーデン・インダストリアルのフロンティア・セクター地域責任者です。」
ツムギは座った。後ろにはセラフィエルが物理的な姿で立っている——白と青の提督制服、静かなサファイアの瞳。
「何のご用でしょうか?」とツムギは尋ねた。
デイヴェンは微笑んだ。「協力を提案したいのです。」
「どのような協力ですか?」
「ヴェルクラーデン・インダストリアルはフロンティアでの事業を拡大しています。輸送と警備を支援してくれるパートナーが必要です。あなたの船——アストレオン・ヴェロリア——は、私が見た中で最も印象的な資産の一つです。」
「つまり、私の船を雇いたいと?」
「それ以上です。長期的なパートナーシップを提案したい。当社は独占契約、当社の交易ネットワークへのアクセス、そして他社からの保護を提供します。その見返りに、あなたは当社のために働きます——貨物の輸送、配送の保護、そしてフロンティアでの当社の事業支援を。」
ツムギは考えた。その申し出は有益に聞こえる——しかし何かがおかしい。
「独占?」と彼は尋ねた。
「はい。他社のために働くことはありません。」
「ヴェイラウン・ロジスティクスも含めて?」
デイヴェンは微かに微笑んだ。「ヴェイラウン・ロジスティクスも含めて。」
ツムギは反応を示さなかった。しかし彼は既に答えを知っていた。
「申し訳ありません、クロルさん。独占契約には興味がありません。」
デイヴェンは眉を上げた。「理由を伺っても?」
「私は多くの相手と仕事をしています。一つの企業に縛られたくない。それが私のスタイルではありません。」
デイヴェンはしばらく彼を見つめた。笑みは保っているが、その目はより冷たくなった。
「わかりました。しかしご承知おきください、船長——ヴェルクラーデン・インダストリアルはフロンティアで大きな影響力を持っています。当社と仕事をする企業は……より成功する傾向があります。そうでない企業は……困難に直面する傾向があります。」
ツムギは静かに彼を見つめた。「それは脅しですか?」
デイヴェンは小さく笑った。「もちろん違います。ただの事実です。」
ツムギは立ち上がった。「ならば、ここでの話は終わったようですね。」
デイヴェンも立った。「再考されることを願います、船長。この申し出はまだ有効です。」
「覚えておきます。」
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会議室の外では、レアとランが待っていた。
「どうだった?」とレアが尋ねた。
「独占契約を提案された。断った。」
ランは頷いた。「よかった。」
「でも脅された。」
レアはにやりと笑った。「挑戦は好きだ。」
ツムギは彼女を見た。「これは挑戦じゃない。大企業とその巨大な資源だ。慎重でなければならない。」
「わかってる。」レアは腕を広げた。「でも挑戦は好きだ。」
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彼らはアストレオンに戻った。
リビングルームで、ツムギは全員と座った——レア、ラン、セラフィエル。ヴェスペラもそこにいて、隅に座って日誌を手にしている。
「ヴェルクラーデン・インダストリアルは問題になる」とツムギは言った。
「確かか?」とランが尋ねた。
「彼らは拒否されるのが好きじゃない。そして影響力がある。」
「ならどうする?」
「いつも通り働き続ける。でももっと警戒する。彼らの市場操作の証拠を集める。そして彼らを快く思わない他の企業とネットワークを築く。」
ランは頷いた。「良い計画よ。」
レアはにやりと笑った。「大企業に問題を起こす部分が好きだ。」
ツムギは微かに微笑んだ。「いつもその部分が好きだな。」
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夜、ツムギはコックピットの窓の前に立った。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「我々は正しいことをしているのか?」
「ヴェルクラーデンの申し出を断ったことですか?」
「ああ。」
「私は正しい決断だと信じています、ツムギ。ヴェルクラーデンのために働くことは、船長が望む自由を失うことを意味します。そしてあの企業は評判が良くありません。」
ツムギは頷いた。
「彼らと対峙することになる。」
「はい。でも我々は一人ではありません。」
ツムギは星々を見つめた。
「わかってる。」
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【次回予告 第五十一章 —— 「格納庫のドワーフ女性」】
カリスタ・フェロが現れる——アストレオンについてニュースで知ったスペースドワーフだ。彼女は偶然船を見て恋に落ちるような人物ではない。彼女は職業的な好奇心を持つ:なぜ民間船が構造的にありえない技術を持っているのか? 彼女はエンジニアリング、製造、モビルフレーム、そして産業能力を理由にツムギに近づく。
【第五十一章へ続く…】




