↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/168

第四十九章 フロンティア・モビルフレーム・マッチ

第四十九章 フロンティア・モビルフレーム・マッチ



レアは格納庫の扉の前に立ち、パイロット服を身にまとっていた——反射材のラインが入った黒と紫の戦術ジャケット、膝の部分が締まった長ズボン、そしてずっと前から履いているブーツ。ヴァルキリーは彼女の後ろに立ち、完全に準備が整っている。


ツムギが両手にコーヒーカップを持って近づいてきた。


「朝食をまだ食べてないだろ」と彼は言い、一杯を差し出した。


レアはそれを受け取った。「試合前に食べられないんだ。」


「悪い習慣だな。」


「勝つための悪い習慣だ。」


ツムギは自分のコーヒーを一口すする。「緊張してるのか?」


レアは彼を見た。「なぜそう聞く?」


「朝五時からここに立って、ヴァルキリーと話しているみたいに見つめてるからだ。」


レアは沈黙した。彼女は自分のモビルフレームに目を向けた——格納庫の照明の下で静かに立っている。白い装甲が、外のガス惑星からの青い光を反射している。


「緊張じゃない」と彼女はついに言った。「ただ……すべてが完璧であることを確かめてるだけだ。」


「昨夜からヴァルキリーを三回も点検してる。セラフィエルは何も問題ないと言っている。」


「わかってる。」


「なら?」


レアはため息をついた。「こんな大きな舞台で戦ったことがない。昔は、生きるために戦っていた。今は……」彼女は止まった。「今は、自分がどこまで行けるのか知りたいから戦ってる。」


ツムギは答えなかった。彼はただ彼女の隣に立ち、ヴァルキリーを見つめていた。


「なあ」とツムギはついに言った。「地球で読んだことがあるんだ。ある戦士が言った——『チャンピオンと他の者を分けるのは才能じゃない。すべてが混乱している時に冷静でいられるかどうかだ』と。」


レアは振り返った。「それ、自分で作ったのか?」


「違う。本に書いてあった。」


「どんな本?」


「覚えてない。高校の時に読んだ何かだ。」


レアは小さく笑った——めったに見せない笑いだ。「お前は変だな、船長。いつも的確な時に変な言葉を持ってる。」


「助けようとしてるだけだ。」


レアはコーヒーを一口すする。「もう十分助けてくれてる。思っている以上に。」


---


ランが廊下から現れ、タブレットを手に持っていた。目はまだ半分眠そうだが、きちんと身支度をしている——白いシャツ、黒い長ズボン、銀髪は後ろで結ばれている。


「船長、トーナメント参加者についてのデータを入手しました」と彼女は言い、タブレットを差し出した。


ツムギはそれを受け取った。「何人だ?」


「十二人のパイロット。うち六人が民間警備会社から。三人が独立傭兵クルーから。二人が採掘企業から。そして一人……」ランは止まった。


「一人、何だ?」


「ヴェルクラーデン・インダストリアルから来たパイロットです。」


レアが鋭く振り返った。「ヴェルクラーデン?」


「はい。名前はカエル・オリン。ベテランパイロットです。このセクターで既に三つのトーナメントを制しています。」


ツムギはレアを見た。「知り合いか?」


「いいえ。でも名前は聞いたことがある。」レアはコーヒーカップをツムギに返した。「彼はヴェルクラーデン製の機体を使うパイロットだ。金で買える中で最も先進的なモビルフレームの一つをな。」


「それが問題か?」


「いいえ。」レアは微笑んだ——鋭い微笑みだ。「むしろ面白い。」


---


彼らはナルコールのアリーナに到着した——試合会場に改造された大きな格納庫だ。周囲の観客席は観客で埋め尽くされている——パイロット、技術者、商人、そして企業の代表者たち。アリーナの中央では、いくつかのモビルフレームがそれぞれの位置に立っており、順番を待っている。


レアは他のパイロットたちと共に準備エリアに立っていた。ヴァルキリーは既にスタートラインに配置されている——インジケーターライトが静かに点滅しながら、静かに立っている。


三十代ほどの人間の男性が彼女に近づいてきた。胸にヴェルクラーデン・インダストリアルのロゴが入ったパイロット服を着ている——中央に銀の線が入った赤い三角形。髪は濃い茶色で短く切られている。目は青い——氷のように冷たい。


「レア・ヴァレン」と彼は言った。


レアは振り返った。「あんたがカエル・オリンか。」


「俺を知っているのか。」


「名前は知ってる。顔は知らない。」


カエルは微かに微笑んだ。「お前のことは聞いた。大きな船のクルーに加わった狐のパイロットだと。なかなかやるらしいな。」


「らしいな。」


「自分の目で確かめたい。」カエルは遠くに立つヴァルキリーを見つめた。「あの機体は……標準じゃないな。」


「そうだ。」


「改造か?」


「ああ。」


「誰がやった?」


レアは彼を見つめた。「あんたには関係ない。」


カエルは手を上げた。「落ち着け。ただ興味があるだけだ。フロンティアで、あれほどの機体を持つパイロットは多くない。」


「あんたはヴェルクラーデンの機体を持ってる。それも標準じゃない。」


「その通り。」カエルは微笑んだ。「お前の機体が俺の機体とどう戦うか見てみたい。決勝で会えるといいな。」


彼は歩き去った。


レアはその背中を見つめた。狐の耳がぴくぴくと動いている——警戒している証拠だ。


---


第一回戦が始まった。


レアは採掘企業のパイロットと戦った——大きくて鈍い重突撃型の機体を持つドワーフの男性だ。レアは素早く動き、射撃をかわし、相手が反応する前にシミュレーションターゲットを破壊した。


「勝者:レア・ヴァレン!」


観客席が沸いた。ツムギ、セラフィエル、ラン、そしてヴェスペラが最前列に座っている——ヴェスペラは多くを語らずに来たが、その目はヴァルキリーの動きを注意深く追っている。


第二回戦。


レアは民間警備会社のパイロットと戦った——正確な狙撃型の機体を持つ人間の女性だ。戦いはより長く続いた。レアはより複雑な機動を使い、相手に接近しなければならなかった——環境を利用し、建物を遮蔽物として使い、予期せぬ角度から攻撃した。


「勝者:レア・ヴァレン!」


第三回戦。


レアは独立傭兵クルーのパイロットと戦った——素早い偵察型の機体を持つビーストマンだ。戦いは激しかった。レアはすべての経験を使わなければならなかった——相手の動きを読み、攻撃を予測し、素早く対応した。


「勝者:レア・ヴァレン!」


観客席で、ツムギは微笑んだ。


「セラフィエル、どう思う?」


「レアはヴァルキリーを非常に効率的に使っています。彼女は技術に頼るだけでなく——経験と直感を使っています。」


「よし。」


---


決勝。


レアはスタートラインに立ち、相手を見つめた——カエル・オリンと、アリーナの照明の下で輝くヴェルクラーデン製の機体だ。その機体はヴァルキリーより大きい——全高約二十メートルで、厚い金属灰色の装甲と両腕に重火器を備えている。背中には、大きく複雑なスラストシステムがある。


「決勝で会ったな」とカエルが通信で言った。


「そうみたいだ。」


「失望させないでくれよ。」


「そっちこそ。」


シミュレーションが始まった。


カエルが先に攻撃した——右腕のプラズマキャノンを発砲する。レアは素早い機動でかわし、空中で旋回し、反撃した。彼女の射撃はカエルの機体の肩に命中した——しかし装甲を貫通しなかった。


「ヴェルクラーデンの装甲だ」とカエルは言った。「標準兵器じゃ貫通できない。」


「貫通する必要はない。」


レアはより速く動いた——ヴァルキリーの三百六十度回転するスラストシステムを使い、カエルの周囲を機動する。彼女は様々な角度から射撃し、機体の装甲の隙間を探した。カエルはより攻撃的な射撃で応じた——しかしレアはいつも予期せぬ場所にいた。


戦いは五分間続いた——モビルフレームのシミュレーションとしては長い時間だ。両パイロットが並外れた能力を示した。カエルは機体の力と装甲で。レアはヴァルキリーの速度と機敏さで。


そしてレアは隙間を見つけた。


カエルの機体の後部——蝶番で接続された二つの装甲パネルの間に——十分に保護されていない領域があった。レアはプラズマキャノンをそこに向けて発砲した。


その射撃は蝶番に命中し、カエルの機体のスラストシステムを麻痺させた。


機体が膝をついた。


「勝者:レア・ヴァレン!」


観客席が歓声で爆発した。


レアは息を切らしながらコックピットを出た。彼女はヴァルキリーから降り、足がアリーナの床に触れた時、これまで感じたことのないものを感じた——純粋な満足感。勝ったからではない。自分自身の限界を超えたからだ。


カエルが近づいてきた。その顔には怒りはなく——ただ敬意だけがあった。


「良い戦いだった」と彼は言った。


「そっちも。」


「君の機体は……標準じゃない。あんな機動のモビルフレームは見たことがない。」


「標準機じゃない。」


カエルは微かに微笑んだ。「あの機体を改造した奴は、何をしているかわかっている。」


レアは答えなかった。ただ頷くだけだ。


---


トーナメントの後、ツムギと他の者たちはアストレオンに集まった。


レアはソファに座り、まだパイロット服のままだ。手には小さなトロフィー——物理的なトロフィーではなく、勝利の証明書と賞金が入ったデータカードだ。


「勝ったな」とツムギは言った。


「勝った。」


「気分はどうだ?」


レアは考えた。「変だ。」


「どう変だ?」


「生きるために必要じゃない何かで勝ったことがなかった。普段は、戦わなければならないから戦う。今回は、戦いたいから戦った。」彼女は手の中のトロフィーを見つめた。「そしてそれは違う感じがした。」


「どう違う?」


「もっと……満足できる。」


ツムギは微笑んだ。「それはいいことだ。」


レアは振り返った。「船長。」


「何だ?」


「ありがとう。ヴァルキリーを。この機会を。そして……すべてを。」


ツムギは頷いた。「もうたくさん礼を言ったな。」


「本当に感謝しているから。」


ランがタブレットを手に部屋に入ってきた。「船長、トーナメントのデータを入手しました。いくつかの企業がレアに興味を持っています。契約を申し出ています。」


レアは首を振った。「興味ない。」


「わかってる。でも知っておくべきだと思って。」ランはレアを見た。「ヴェルクラーデン・インダストリアルも契約を申し出ています。あなたのパフォーマンスに感銘を受けたと言っています。」


レアはランを見た。「ヴェルクラーデン?」


「はい。長期契約を申し出ています。高給。新しいモビルフレーム。必要なものすべてを。」


レアは微かに微笑んだ。「断れ。」


「本当にいいの?」


「もう機体はある。そしてクルーもいる。」


ランは頷いた。「わかった。断っておく。」


---


夜、ツムギはアストレオンのコックピットの窓の前に立った。


「セラフィエル。」


「はい、ツムギ?」


「ヴェルクラーデン・インダストリアルが俺たちに注目し始めた。」


「はい。彼らはトーナメントに代表者を送りました。そしてレアに契約を申し出ました。」


「これが何かの始まりだと思うか?」


「可能性があります。ヴェルクラーデンは大企業です。新しい競合が現れるのを反応なしに放っておくことはありません。」


ツムギは星々を見つめた。


「準備しなければ。」


「すべて準備します、ツムギ。」


---


【次回予告 第五十章 —— 「買わなかった報酬」】


トーナメントでの勝利後、レアは様々な方面から申し出を受ける——金、名声、そして契約。しかし彼女はツムギと共にいることを選ぶ。愛ではなく、この船がどこまで行けるか見たいからだ。ツムギはメッセージを受け取る:ヴェルクラーデン・インダストリアルが会談を求めている。


【第五十章へ続く…】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。