第四十九章 フロンティア・モビルフレーム・マッチ
第四十九章 フロンティア・モビルフレーム・マッチ
レアは格納庫の扉の前に立ち、パイロット服を身にまとっていた——反射材のラインが入った黒と紫の戦術ジャケット、膝の部分が締まった長ズボン、そしてずっと前から履いているブーツ。ヴァルキリーは彼女の後ろに立ち、完全に準備が整っている。
ツムギが両手にコーヒーカップを持って近づいてきた。
「朝食をまだ食べてないだろ」と彼は言い、一杯を差し出した。
レアはそれを受け取った。「試合前に食べられないんだ。」
「悪い習慣だな。」
「勝つための悪い習慣だ。」
ツムギは自分のコーヒーを一口すする。「緊張してるのか?」
レアは彼を見た。「なぜそう聞く?」
「朝五時からここに立って、ヴァルキリーと話しているみたいに見つめてるからだ。」
レアは沈黙した。彼女は自分のモビルフレームに目を向けた——格納庫の照明の下で静かに立っている。白い装甲が、外のガス惑星からの青い光を反射している。
「緊張じゃない」と彼女はついに言った。「ただ……すべてが完璧であることを確かめてるだけだ。」
「昨夜からヴァルキリーを三回も点検してる。セラフィエルは何も問題ないと言っている。」
「わかってる。」
「なら?」
レアはため息をついた。「こんな大きな舞台で戦ったことがない。昔は、生きるために戦っていた。今は……」彼女は止まった。「今は、自分がどこまで行けるのか知りたいから戦ってる。」
ツムギは答えなかった。彼はただ彼女の隣に立ち、ヴァルキリーを見つめていた。
「なあ」とツムギはついに言った。「地球で読んだことがあるんだ。ある戦士が言った——『チャンピオンと他の者を分けるのは才能じゃない。すべてが混乱している時に冷静でいられるかどうかだ』と。」
レアは振り返った。「それ、自分で作ったのか?」
「違う。本に書いてあった。」
「どんな本?」
「覚えてない。高校の時に読んだ何かだ。」
レアは小さく笑った——めったに見せない笑いだ。「お前は変だな、船長。いつも的確な時に変な言葉を持ってる。」
「助けようとしてるだけだ。」
レアはコーヒーを一口すする。「もう十分助けてくれてる。思っている以上に。」
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ランが廊下から現れ、タブレットを手に持っていた。目はまだ半分眠そうだが、きちんと身支度をしている——白いシャツ、黒い長ズボン、銀髪は後ろで結ばれている。
「船長、トーナメント参加者についてのデータを入手しました」と彼女は言い、タブレットを差し出した。
ツムギはそれを受け取った。「何人だ?」
「十二人のパイロット。うち六人が民間警備会社から。三人が独立傭兵クルーから。二人が採掘企業から。そして一人……」ランは止まった。
「一人、何だ?」
「ヴェルクラーデン・インダストリアルから来たパイロットです。」
レアが鋭く振り返った。「ヴェルクラーデン?」
「はい。名前はカエル・オリン。ベテランパイロットです。このセクターで既に三つのトーナメントを制しています。」
ツムギはレアを見た。「知り合いか?」
「いいえ。でも名前は聞いたことがある。」レアはコーヒーカップをツムギに返した。「彼はヴェルクラーデン製の機体を使うパイロットだ。金で買える中で最も先進的なモビルフレームの一つをな。」
「それが問題か?」
「いいえ。」レアは微笑んだ——鋭い微笑みだ。「むしろ面白い。」
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彼らはナルコールのアリーナに到着した——試合会場に改造された大きな格納庫だ。周囲の観客席は観客で埋め尽くされている——パイロット、技術者、商人、そして企業の代表者たち。アリーナの中央では、いくつかのモビルフレームがそれぞれの位置に立っており、順番を待っている。
レアは他のパイロットたちと共に準備エリアに立っていた。ヴァルキリーは既にスタートラインに配置されている——インジケーターライトが静かに点滅しながら、静かに立っている。
三十代ほどの人間の男性が彼女に近づいてきた。胸にヴェルクラーデン・インダストリアルのロゴが入ったパイロット服を着ている——中央に銀の線が入った赤い三角形。髪は濃い茶色で短く切られている。目は青い——氷のように冷たい。
「レア・ヴァレン」と彼は言った。
レアは振り返った。「あんたがカエル・オリンか。」
「俺を知っているのか。」
「名前は知ってる。顔は知らない。」
カエルは微かに微笑んだ。「お前のことは聞いた。大きな船のクルーに加わった狐のパイロットだと。なかなかやるらしいな。」
「らしいな。」
「自分の目で確かめたい。」カエルは遠くに立つヴァルキリーを見つめた。「あの機体は……標準じゃないな。」
「そうだ。」
「改造か?」
「ああ。」
「誰がやった?」
レアは彼を見つめた。「あんたには関係ない。」
カエルは手を上げた。「落ち着け。ただ興味があるだけだ。フロンティアで、あれほどの機体を持つパイロットは多くない。」
「あんたはヴェルクラーデンの機体を持ってる。それも標準じゃない。」
「その通り。」カエルは微笑んだ。「お前の機体が俺の機体とどう戦うか見てみたい。決勝で会えるといいな。」
彼は歩き去った。
レアはその背中を見つめた。狐の耳がぴくぴくと動いている——警戒している証拠だ。
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第一回戦が始まった。
レアは採掘企業のパイロットと戦った——大きくて鈍い重突撃型の機体を持つドワーフの男性だ。レアは素早く動き、射撃をかわし、相手が反応する前にシミュレーションターゲットを破壊した。
「勝者:レア・ヴァレン!」
観客席が沸いた。ツムギ、セラフィエル、ラン、そしてヴェスペラが最前列に座っている——ヴェスペラは多くを語らずに来たが、その目はヴァルキリーの動きを注意深く追っている。
第二回戦。
レアは民間警備会社のパイロットと戦った——正確な狙撃型の機体を持つ人間の女性だ。戦いはより長く続いた。レアはより複雑な機動を使い、相手に接近しなければならなかった——環境を利用し、建物を遮蔽物として使い、予期せぬ角度から攻撃した。
「勝者:レア・ヴァレン!」
第三回戦。
レアは独立傭兵クルーのパイロットと戦った——素早い偵察型の機体を持つビーストマンだ。戦いは激しかった。レアはすべての経験を使わなければならなかった——相手の動きを読み、攻撃を予測し、素早く対応した。
「勝者:レア・ヴァレン!」
観客席で、ツムギは微笑んだ。
「セラフィエル、どう思う?」
「レアはヴァルキリーを非常に効率的に使っています。彼女は技術に頼るだけでなく——経験と直感を使っています。」
「よし。」
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決勝。
レアはスタートラインに立ち、相手を見つめた——カエル・オリンと、アリーナの照明の下で輝くヴェルクラーデン製の機体だ。その機体はヴァルキリーより大きい——全高約二十メートルで、厚い金属灰色の装甲と両腕に重火器を備えている。背中には、大きく複雑なスラストシステムがある。
「決勝で会ったな」とカエルが通信で言った。
「そうみたいだ。」
「失望させないでくれよ。」
「そっちこそ。」
シミュレーションが始まった。
カエルが先に攻撃した——右腕のプラズマキャノンを発砲する。レアは素早い機動でかわし、空中で旋回し、反撃した。彼女の射撃はカエルの機体の肩に命中した——しかし装甲を貫通しなかった。
「ヴェルクラーデンの装甲だ」とカエルは言った。「標準兵器じゃ貫通できない。」
「貫通する必要はない。」
レアはより速く動いた——ヴァルキリーの三百六十度回転するスラストシステムを使い、カエルの周囲を機動する。彼女は様々な角度から射撃し、機体の装甲の隙間を探した。カエルはより攻撃的な射撃で応じた——しかしレアはいつも予期せぬ場所にいた。
戦いは五分間続いた——モビルフレームのシミュレーションとしては長い時間だ。両パイロットが並外れた能力を示した。カエルは機体の力と装甲で。レアはヴァルキリーの速度と機敏さで。
そしてレアは隙間を見つけた。
カエルの機体の後部——蝶番で接続された二つの装甲パネルの間に——十分に保護されていない領域があった。レアはプラズマキャノンをそこに向けて発砲した。
その射撃は蝶番に命中し、カエルの機体のスラストシステムを麻痺させた。
機体が膝をついた。
「勝者:レア・ヴァレン!」
観客席が歓声で爆発した。
レアは息を切らしながらコックピットを出た。彼女はヴァルキリーから降り、足がアリーナの床に触れた時、これまで感じたことのないものを感じた——純粋な満足感。勝ったからではない。自分自身の限界を超えたからだ。
カエルが近づいてきた。その顔には怒りはなく——ただ敬意だけがあった。
「良い戦いだった」と彼は言った。
「そっちも。」
「君の機体は……標準じゃない。あんな機動のモビルフレームは見たことがない。」
「標準機じゃない。」
カエルは微かに微笑んだ。「あの機体を改造した奴は、何をしているかわかっている。」
レアは答えなかった。ただ頷くだけだ。
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トーナメントの後、ツムギと他の者たちはアストレオンに集まった。
レアはソファに座り、まだパイロット服のままだ。手には小さなトロフィー——物理的なトロフィーではなく、勝利の証明書と賞金が入ったデータカードだ。
「勝ったな」とツムギは言った。
「勝った。」
「気分はどうだ?」
レアは考えた。「変だ。」
「どう変だ?」
「生きるために必要じゃない何かで勝ったことがなかった。普段は、戦わなければならないから戦う。今回は、戦いたいから戦った。」彼女は手の中のトロフィーを見つめた。「そしてそれは違う感じがした。」
「どう違う?」
「もっと……満足できる。」
ツムギは微笑んだ。「それはいいことだ。」
レアは振り返った。「船長。」
「何だ?」
「ありがとう。ヴァルキリーを。この機会を。そして……すべてを。」
ツムギは頷いた。「もうたくさん礼を言ったな。」
「本当に感謝しているから。」
ランがタブレットを手に部屋に入ってきた。「船長、トーナメントのデータを入手しました。いくつかの企業がレアに興味を持っています。契約を申し出ています。」
レアは首を振った。「興味ない。」
「わかってる。でも知っておくべきだと思って。」ランはレアを見た。「ヴェルクラーデン・インダストリアルも契約を申し出ています。あなたのパフォーマンスに感銘を受けたと言っています。」
レアはランを見た。「ヴェルクラーデン?」
「はい。長期契約を申し出ています。高給。新しいモビルフレーム。必要なものすべてを。」
レアは微かに微笑んだ。「断れ。」
「本当にいいの?」
「もう機体はある。そしてクルーもいる。」
ランは頷いた。「わかった。断っておく。」
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夜、ツムギはアストレオンのコックピットの窓の前に立った。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「ヴェルクラーデン・インダストリアルが俺たちに注目し始めた。」
「はい。彼らはトーナメントに代表者を送りました。そしてレアに契約を申し出ました。」
「これが何かの始まりだと思うか?」
「可能性があります。ヴェルクラーデンは大企業です。新しい競合が現れるのを反応なしに放っておくことはありません。」
ツムギは星々を見つめた。
「準備しなければ。」
「すべて準備します、ツムギ。」
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【次回予告 第五十章 —— 「買わなかった報酬」】
トーナメントでの勝利後、レアは様々な方面から申し出を受ける——金、名声、そして契約。しかし彼女はツムギと共にいることを選ぶ。愛ではなく、この船がどこまで行けるか見たいからだ。ツムギはメッセージを受け取る:ヴェルクラーデン・インダストリアルが会談を求めている。
【第五十章へ続く…】




