第四十四章 サルン・ヴェイル交易路
第四十四章 サルン・ヴェイル交易路
ツムギはコックピットの窓の前に立ち、サルン・ヴェイル交易路を表示するモニターを見つめていた。
そのルートはオルテイア鉱山コロニーからヴェイラウン星系まで伸びている——毎週何十隻もの貨物船が行き交う航路だ。地図の上では、星々の間のいくつかの点を結ぶ細い線のように見える。しかしツムギは、その線の背後に、燃料補給ステーション、貨物プラットフォーム、そして航路沿いに散在する検問所からなる複雑なネットワークがあることを知っていた。
「かなり賑やかなルートだな」と彼は言った。
「はい、ツムギ。サルン・ヴェイルはこのセクターの主要交易路の一つです。多くの企業や独立商人が、ヴェイラウン星系と周辺のコロニー間で物資を輸送するために利用しています。」
「安全保障上の問題はあるか?」
「特定の区域で海賊活動に関する報告がいくつかあります。しかしこのルートは、商人コンソーシアムが雇った民間パトロールによって警備されています。」
ツムギは頷いた。彼はそのコンソーシアムについて読んだことがある——いくつかの大企業が交易路上の自社の利益を守るために結成した組織だ。彼らは独自のパトロール船を持ち、安全にルートを使用したい船に許可を与えている。
「許可は必要か?」
「必須ではありません。しかし彼らのパトロールによる保護を受けたい場合は、ルート利用者として登録する必要があります。」
「費用は?」
「月額約五千GCです。」
ツムギは考えた。
「登録しよう。追加の保護があって悪いことはない。」
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彼らはサルン・ヴェイル沿いの最初のステーションに到着した——二つの小惑星の間に浮かぶ貨物プラットフォームだ。そのステーションは「ヴェイルズ・レスト」と呼ばれている——貨物船が燃料補給、修理、そして休息のために立ち寄る場所である。
ツムギとランは登録手続きのためにアストレオンを降りた。
そのステーションはツムギが想像していたよりも大きかった。メインプラットフォームにいくつかのドックが接続され、その周囲には数隻の貨物船が停泊している。いくつかは暗い船体に彼の知らない企業ロゴを持つ大型船だ。他は明るい色の小型船——おそらく独立商人のものだろう。
登録事務所で、短い髪に厚い眼鏡をかけた人間の女性が彼らを迎えた。
「ヴェイルズ・レストへようこそ。何かお手伝いできますか?」
「サルン・ヴェイルルートの利用者として船を登録したいのですが」とツムギは言った。
女性はタブレットに入力した。
「船の名前は?」
「アストレオン・ヴェロリア。」
女性は眉を上げた。
「アストレオン・ヴェロリア? ドック7に停泊しているあの大きな船ですか?」
「はい。」
女性はしばらく彼を見つめた。
「わかりました。船を登録します。登録料は月額五千GCで、パトロールの保護とステーション施設へのアクセスが含まれます。」
ツムギはクレジットカードで支払った。女性はアクセスカードを手渡した。
「これがあなたのカードです。ステーション施設へのアクセスとパトロールとの通信に使用してください。」
「ありがとう。」
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登録を済ませた後、ツムギとランはステーションの周囲を歩いた。
ヴェイルズ・レストは賑やかな場所だ。いくつかのレストラン、船の装備を売る店、そしてステーションの角には小さなバーまである。様々な種族の人々が行き交っている——人間、スペースエルフ、ビーストマン、ドワーフ——皆それぞれの用事で忙しい。
ランは輝く目で周囲を見つめた。
「ここは情報を得るのに良い場所だ」と彼女は言った。
「どんな情報だ?」
「市場価格。有利なルート。ビジネスの機会。こういう場所では、誰もが交易について話している。」
ツムギは頷いた。
「始めたいのか?」
「船を降りた時から始めてる。」
ランはステーションの角にある喫茶店へ歩いていった。中では数人の商人が座って話している。ランは彼らに近づき、会話を始めた——何年も彼らを知っているかのように、自然に。
ツムギは遠くから観察した。
「セラフィエル、彼らの会話が聞こえるか?」
「聞こえます、ツムギ。しかし船長には盗み聞きしないことをお勧めします。ランは仕事をしています。」
ツムギは微かに微笑んだ。
「盗み聞きじゃない。どうやってやっているのか知りたいだけだ。」
「ランは経験豊富な交渉人です。彼女は人に話させる方法を知っています。」
「ああ。もう見たよ。」
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約三十分後、ランは満面の笑みで戻ってきた。
「面白い情報をいくつか得た」と彼女は言った。
「どんな?」
「まず、ヴェイラウン市場の鉱物価格が上昇している。特にチタンとプラチナ。今は貨物を送るのに良い時期だ。」
「二つ目は?」
「二つ目、食料を輸送する機会がある。ルート沿いのいくつかのコロニーで供給不足が起きている。食料価格が高騰している。」
ツムギは眉をひそめた。
「食料不足? 主要交易路で?」
「ええ。普段食料を輸送している貨物船の一隻が故障した。だから供給が減っている。」
「いつ起きた?」
「数週間前。その船はまだ修理されていない。」
ツムギは考えた。主要交易路での食料不足は異常な問題だ——特に原因が故障した一隻の船だけならなおさらだ。
「他に何かあるか?」
ランは声を潜めた。
「ある。商人の一人が言っていた、ヴェイラウン市場の価格が『整いすぎている』と。通常の変動がない。」
「整いすぎている?」
「ええ。価格が非常に規則的なパターンで上下している。誰かが操作しているように。」
ツムギは彼女を見つめた。
「市場操作だと思うか?」
「わからない。でも調べたい。」
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彼らは集めた情報を持ってアストレオンに戻った。
リビングルームで、ツムギ、ラン、セラフィエルが座って発見を話し合った。
「セラフィエル、ヴェイラウン市場の価格データを分析できるか?」
「できます、ツムギ。ただし過去のデータへのアクセスが必要です。」
「フロンティア情報ネットワークへのアクセスがある。それで足りるか?」
「おそらく。試してみます。」
リビングルームの画面が点灯し、過去数ヶ月の鉱物価格グラフを表示した。ツムギは注意深くそれを見つめた。
「これを見ろ」と彼は言い、グラフのパターンを指した。「価格が非常に規則的な間隔で上下している。三日上がって、二日下がって、また三日上がる。」
ランが近づいた。
「それは自然なパターンじゃない。正常な市場は不規則な変動をする。」
「つまりこれが操作か。」
「可能性が高いです、ツムギ。誰か、あるいは何人かが自分たちの利益のために意図的に価格を操作しています。」
「どうやって?」
「いくつかの方法があります。大量に買って価格を上げ、売って下げる。あるいは供給を止めて希少性を生み出す。」
ツムギは考えた。
「ランが聞いた食料不足——それも操作の一部かもしれない?」
「可能性があります。誰かが食料供給を止めれば、価格が上がる。そして大きな利益で売れる。」
ランは頷いた。
「理にかなっている。でも誰が?」
「確かめるにはさらなる分析が必要です。しかしこの規模の市場操作ができるいくつかの大企業があります。」
「誰だ?」
「一つはヴェルクラーデン・インダストリアルです。彼らは広大な交易ネットワークとフロンティアでの重要な影響力を持っています。」
ツムギは眉をひそめた。彼はその名前を以前にも聞いたことがある——セラフィエルから、オルテイアについて初めて話し合った時に。
「またヴェルクラーデン・インダストリアルか。」
「はい。彼らはフロンティアで活動する最大級の企業の一つです。様々なセクターに利害関係を持っています——採掘、輸送、交易。」
「そして彼らが市場操作を?」
「これは推測に過ぎません、ツムギ。まだ十分な証拠がありません。」
ツムギは頷いた。
「証拠を探そう。」
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夜、ツムギはコックピットの窓の前に立った。
外では、ヴェイルズ・レストが小さな灯りを点滅させている。数隻の貨物船がまだドックに停泊し、時折船が到着したり出発したりしている。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「価格操作について何か見つけたか?」
「利用可能なデータを分析しました。いくつかの疑わしいパターンがあります——特に鉱物と食料の取引において。しかし誰がやっているのかはまだ特定できません。」
「ヴェルクラーデン・インダストリアルは関与しているか?」
「ヴェルクラーデンの子会社を指すいくつかの取引があります。しかし彼らの直接的な関与を証明することはまだできません。」
ツムギは考えた。
「さらに調査する。でも今は、自分たちの輸送に集中する。」
「賢明な判断です、ツムギ。」
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翌日、彼らはサルン・ヴェイルルートでの最初の商業運行を始めた。
アストレオンはオルテイアからヴェイラウン市場へ鉱物貨物を輸送した——約六時間の旅だ。貨物はチタン、プラチナ、そしていくつかの希少金属で構成されている。
道中、ツムギは航法を監視し、ルートパトロールと通信した。障害はない。海賊もいない。ただ静かな宇宙だけ。
彼らがヴェイラウン市場に到着すると、ランはすぐに働き始めた——買い手に連絡し、価格を交渉し、配送を手配する。
ツムギは遠くから観察した。
「セラフィエル、どうしてランはあんなに速く働けるんだ?」
「ランは非常に熟練した交渉人です。広い連絡網と深い市場知識を持っています。」
「いつもこうなのか?」
「私が観察した限りでは、はい。ランは仕事に非常に集中しています。」
ツムギは頷いた。
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取引が完了した後、彼らはアストレオンに戻った。
ランは満面の笑みでツムギを見つめた。
「予想より良い利益を得た。鉱物価格が先週より七パーセント上がった。」
「よかった。」
「そして追加情報も得た。」
「何だ?」
「価格操作を疑っている他の商人もいる。彼らは大手企業が市場を支配しようとしていると言っている。」
「ヴェルクラーデンか?」
「かもしれない。彼らはまだ確信していない。でも一緒に調査したいと言っている。」
ツムギは考えた。
「後で見よう。今は自分たちの輸送に集中する。」
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夜、ツムギはレアとランと共にリビングルームに座った。
「船長」とレアが言った。「市場操作について聞いた。」
「どこで?」
「ヴェイルズ・レストのパイロットたちから。彼らも疑っている。」
「証拠はあるのか?」
「まだ。でも価格が上がった時に突然大きな利益を得た企業がいくつかあると言っている。」
ツムギは頷いた。
「これを調査する。でも注意しなければならない。もしヴェルクラーデン・インダストリアルが本当に関与しているなら、彼らは我々の調査を快く思わないかもしれない。」
レアは微笑んだ。
「挑戦は好きだ。」
ランは首を振った。
「いつも挑戦が好きね。」
「私はモビルフレームパイロットだ。それが仕事だ。」
ツムギは彼らの会話を静かに聞いていた。彼は画面の地図を見つめた——彼らが通る交易路、彼らがサービスを提供する鉱山、そして彼らが直面する企業。
このフロンティアには単なる交易以上の何かがある。市場を支配しようとする力がある——そしてツムギはそれが誰なのか知りたかった。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「明日、ヴェルクラーデン・インダストリアルについてさらに調査する。」
「了解しました、ツムギ。利用可能な全てのデータを収集します。」
ツムギは星々を見つめた。
遠くに、動く力がある。彼らの存在を快く思わないかもしれない力が。
しかしツムギは怖くなかった。
彼は実際に何が起きているのかを突き止める——そして自分なりの方法でやるつもりだ。
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【次回予告 第四十五章 —— 「整いすぎた数字」】
ツムギはフロンティア市場のあまりに整いすぎた価格パターンを調査する。供給業者は異なるのに、価格はほぼ同一——企業間の協調の兆候だ。ある企業の名前が浮かび上がる:ヴェルクラーデン・インダストリアル。
【第四十五章へ続く…】




