第四十二章 最初の投資
第四十二章 最初の投資
オルテイア鉱山コロニーの朝は、特有の音で始まった——まだ稼働している鉱山からの機械の轟音、修理中のドックからの金属のきしみ、そして時折遠くを通る貨物船の音。紬はアストレオンのコックピットの窓に立ち、二万人の住むその巨大な小惑星を見つめていた。
手には、昨夜ミラルから送られてきた書類の入ったタブレット——輸送契約、鉱物データ、利益予測。彼は既に三度読んだが、まだいくつか引っかかる点があった。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「ヴェイラウン・ロジスティクスからの契約の分析は終わったか?」
「はい。いくつか注意すべき点を見つけました。」
「見せてくれ。」
目の前の画面が変わり、契約書が表示され、いくつかの部分が赤くハイライトされた。紬は注意深く読んだ。
「第七条B項」と彼は静かに言った。「不可抗力による輸送失敗の場合、ヴェイラウン・ロジスティクスは損害賠償責任を負わない。」
「はい。それは輸送契約における標準条項です。しかし、いくつかの条件が明確に定義されていません——例えば『安全保障上の障害』や『極端な市場変動』などです。」
「つまり、彼らは曖昧な理由で責任を回避できるということか。」
「可能性はあります。しかしヴェイラウン・ロジスティクスは良い評判を持っています。ミラル自身も誠実に見えます。」
紬は頷いた。彼は既にミラルと話していた——そのスペースエルフの女性は誠実に見えたが、疲れていた。しかし紬は、誰かが誠実に見えるからといってリスクを無視することはできなかった。
「ラン、どう思う?」
ランが自分のタブレットを持ってコックピットに入ってきた。彼は昨夜その契約を読んでいた——紬は彼が三時間以上眠っていないことを確信していた。
「契約はフロンティアでは標準的です」と彼は言った。「いくつか明確にすべき条項はありますが、怪しいものはありません。より重要なのは鉱物権の分析です。」
「鉱物権?」
「ヴェイラウン・ロジスティクスは鉱山を所有していません。彼らは地元の鉱山から市場へ鉱物を輸送しているだけです。つまり、我々は鉱物の所有権について心配する必要はありません——輸送と販売だけです。」
紬は頷いた。
「そして輸送費は?」
ランはタブレットにデータを表示した。
「燃料費、ドッキング費、保険料、人件費。合計で貨物価値の約十二パーセントです。現在の鉱物価格では、ヴェイラウン・ロジスティクスの利益率は約十五パーセントです。」
「我々には?」
「協力すれば、その利益の一部を得られます。おそらく八から十パーセント。」
紬は考えた。
「大きくはないな。」
「一度の輸送では。しかし月に何度も輸送できれば、かなりの額になります。」
紬はそのデータを見つめた。
「どのくらいの鉱物を運べる?」
「アストレオンの貨物容量は非常に大きいです。一度の航海で鉱山の全生産量を輸送できます。しかしそれは注目を集めます。」
「全部を運ぶ必要はない。一部で十分だ——ヴェイラウン・ロジスティクスが生き残るのに十分で、我々に利益をもたらすのに十分な量を。」
ランは頷いた。
「賢明な判断です、船長。」
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彼らはヴェイラウン・ロジスティクスの事務所でミラルと会った。
そのスペースエルフの女性は以前より活気づいて見えた——おそらく新たな希望のためだろう。彼女はより温かい笑顔で彼らを迎えた。
「星崎船長。来てくださってありがとうございます。」
「協力の詳細を話し合いたい。」
ミラルは頷き、彼らを座らせた。
「追加の書類をいくつか用意しました。輸送契約、鉱山データ、利益予測です。」
紬はその書類を受け取り、注意深く読んだ。ランが隣に座り、同じことをした。
「いくつか明確にしたい点があります」と紬は言った。
「何でしょう?」
「第七条B項。不可抗力について。『安全保障上の障害』と『極端な市場変動』に何が含まれるか、より明確な定義が欲しい。」
ミラルは眉をひそめた。
「それは標準条項です。フロンティアの全ての輸送契約がそれを使っています。」
「わかっています。でももっと明確にしたい。海賊の襲撃があった場合、誰が責任を負う?」
ミラルはしばらく沈黙した。
「それは……状況によります。襲撃が安全でない地域で起きた場合、リスクは貨物の所有者が負担します。安全なはずの地域で起きた場合、リスクは輸送業者が負担します。」
「つまり、我々が選んだルートで襲撃された場合、それは我々のリスクだと?」
「はい。」
紬は頷いた。
「わかった。その条項を受け入れる。ただし一つ条件がある。」
「何でしょう?」
「ルートを選ぶのは我々だ。そしてそのルートが安全かどうかを判断するのも我々だ。」
ミラルは考えた。そして頷いた。
「同意します。」
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彼らは鉱物権についての議論を続けた。
「オルテイアの鉱山はいくつかの企業が所有しています」とミラルは言い、画面に鉱山の地図を表示した。「まだ稼働している大きな鉱山が三つあります。彼らはヴェイラウン・ロジスティクスに鉱物を売り、我々が市場へ輸送します。」
「その鉱山の所有者は誰ですか?」
「北鉱山は地元のコンソーシアムが所有しています。南鉱山はヴェイラウン星系の企業が所有しています。東鉱山はヴェイラウン家——私の家族が所有しています。」
紬は眉を上げた。
「君の家族が鉱山を?」
「祖父がオルテイアがまだ発展していた頃に買いました。今は私のいとこが管理しています。それがヴェイラウン・ロジスティクスがまだ生き残っている唯一の理由です——我々には自前の鉱物源があります。」
紬は頷いた。
「つまり、我々がヴェイラウン・ロジスティクスを助ければ、君の家族の鉱山も助けることになる。」
「ええ。でもそれが私が助けを求めた理由ではありません。輸送がなければ、このコロニー全体が死ぬからです。」
紬はしばらく彼女を見つめた。
「わかった。」
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ミラルとの打ち合わせの後、紬とランはアストレオンに戻った。
彼らはリビングルームに座り、データをテーブルに広げた。
「これが利益予測です」とランは言い、画面にグラフを表示した。「週に一度の輸送で、アストレオンの貨物の三十パーセントの容量を使えば、一度の輸送で約二万五千GCの利益が得られます。」
「月に?」
「一度の輸送で。月に四度輸送すれば、十万GCです。」
紬は考えた。
「それはかなりの額だ。」
「そしてそれは鉱物の販売利益を含んでいません。市場でもっと良い価格を得られれば、利益率はもっと高くなります。」
「総予測は?」
ランはタブレットを軽く叩いた。
「鉱物価格が安定し、障害がなければ、三ヶ月の利益予測は約三十一パーセントです。」
紬は眉を上げた。
「三十一パーセント?」
「はい。輸送と販売からの利益を含めてです。」
紬はしばらくそのデータを見つめた。
「リスクは?」
「常にリスクはあります。価格変動、海賊の襲撃、船の損傷。しかしアストレオンがあれば、リスクは最小限に抑えられます。」
紬は頷いた。
「わかった。やろう。」
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準備は翌日から始まった。
紬とセラフィエルは貨物を整えた——ヴェイラウン鉱山からの鉱物を隣の星系へ輸送する。レアは念のためモビルフレームを点検した。ランは目的地の買い手に連絡し、最良の価格を確保した。
ヴェスペラは遠くから全てを観察していた。彼女は干渉しなかった——ただ観察し、記録し、時折コメントをした。
「手伝わないのか?」と紬はヴェスペラが格納庫の近くに立っているのを見て尋ねた。
「私はクルーの一員ではありません」とヴェスペラは答えた。「ただの乗客です。」
「望むなら手伝える。」
ヴェスペラは彼を見つめた。
「私は観察する方が好きです。あなたがどう働くか見たい。」
紬は強制しなかった。彼は仕事に戻った。
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最初の輸送は順調に進んだ。
アストレオンはヴェイラウンの鉱物貨物の三十パーセントをヴェイラウン星系へ輸送した——約八時間の旅だ。障害はなかった。海賊もいない。ただ静かな宇宙と輝く星々だけ。
彼らがオルテイアに戻った時、ミラルは満面の笑みで彼らを迎えた。
「貨物は予想より良い価格で売れました」と彼女は言った。「通常より十五パーセント高い利益を得ました。」
「よかった」と紬は言った。
「つまりヴェイラウン・ロジスティクスは少なくとも今月は持ちこたえられます。もしかしたらもっと。」
紬は頷いた。
「来週もまたやろう。」
ミラルは目を潤ませて彼を見つめた。
「ありがとう、船長。これがどれほど意味があるか、あなたにはわかりません。」
紬は微かに微笑んだ。
「仕事をしただけです。」
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最初の輸送の後、紬とランは結果を計算した。
「最初の輸送の純利益は二万八千GCです」とランは言った。「予測より高いです。」
「よかった。問題は?」
「ありません。貨物は問題なく受け取られました。支払いも振り込まれました。」
紬は頷いた。
「これを定期的に行う。週に一度の輸送だ。」
「同意します。」
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夜、紬はコックピットの窓の前に立った。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「最初の投資は成功した。」
「はい。三ヶ月で三十一パーセントの利益予測はまだ達成可能です。」
「心配すべきことはあるか?」
「いくつかあります、紬。鉱物価格の変動、航路上の海賊活動、他の企業との競争の可能性。しかし現時点では、全て安定しているようです。」
紬は頷いた。
「監視を続ける。」
「賢明な判断です、紬。」
紬は星々を見つめた。
遠くで、オルテイア鉱山コロニーが小さな灯りを点滅させている。彼らが到着して以来初めて、紬は自分が何かを変えたと感じた。
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【次回予告 第四十三章 —— 「ランの交渉術」】
最初の投資の成功後、ランは貿易業務でより大きな役割を担い始める。彼は供給業者と交渉し、契約を比較し、新しいルートの輸送権を確保する。紬はランが単に偶然知り合った商人ではないことに気づき始める——彼は貴重なパートナーなのだ。
【第四十三章へ続く…】




