第四十章 —— ヴェスペラのフロンティア地図
第四十章 —— ヴェスペラのフロンティア地図
ヴェスペラは自分のタブレットを紬に手渡した。
彼らはナビゲーション・ラウンジに座っていた——アストレオン内でほとんど使われることのない部屋で、中央に大きな円卓があり、部屋を囲むようにホログラフィックスクリーンが配置されている。薄暗い照明が静かな雰囲気を醸し出し、部屋の側面の窓からは、ヴァスケリルの小惑星群が静寂の中に浮かんでいるのが見える。
「これが私の全データよ」とヴェスペラは言った。「三年間の旅。見つけた全ての惑星、全ての小惑星、全ての異常。全部ここにある。」
紬はそのタブレットを受け取った。テーブルの上のスクリーンが点灯し、標準的な航法地図よりもはるかに詳細な三次元星図を表示した。そこには数百の点が見える——いくつかはラベル付き、いくつかはラベルなし。それらの点を結ぶ線もある——既にマッピングされたルートで、いくつかは安全、いくつかは危険と記されている。
「セラフィエル、これを我々の航法データと統合しろ。」
「了解しました、紬。」
画面が変わった。ヴェスペラの地図がアストレオンの航法地図と融合し、フロンティアのより完全な全体像を生み出した——公開されているものよりもはるかに完全なものだ。
紬は感嘆の表情でそれを見つめた。
「これは……非常に詳細だ。」
「このデータを集めるのに三年かけた」とヴェスペラは言った。「興味深いものを見つけるたびに記録した。安全なルート、避けた危険、訪れた全てのコロニー。」
「なぜこんなことを?」
ヴェスペラはしばらく沈黙した。
「誰かがやらなければならないから。このフロンティアは広い。一人でマッピングするには広すぎる。でも発見したことを記録する探検家が一人増えるたびに、他の誰かにとって少しだけ安全になる。」
紬は頷いた。その理屈は理解できた。
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セラフィエルがヴェスペラのデータの詳細を表示し始めた。
「いくつかのデータカテゴリを発見しました、紬。採掘区域、安全なルート、放棄されたステーション、コロニー、そして交易の機会です。」
「全部表示しろ。」
画面が変わった。色のついた点が地図上に現れる——緑は安全なルート、黄色は採掘区域、青はコロニー、灰色は放棄されたステーション、オレンジは交易の機会だ。
「多いな」と紬は言った。
「三年よ」とヴェスペラが返した。「まだ終わっていない。」
紬はいくつかの点を確認した。様々な小惑星に採掘区域がある——いくつかは既に活動中、いくつかはまだ手つかずだ。危険な領域を避ける安全なルートもある——海賊、重力異常、あるいは放射線。放棄されたステーションの中には、再利用できるものもあるかもしれない。
「セラフィエル、我々にとって興味深いものはあるか?」
「いくつかあります、紬。しかし、もっと重要なものを見ていただきたいのです。」
「表示しろ。」
画面が変わり、地図のある領域が拡大された。いくつかの惑星と小惑星を持つ恒星系。その中央に、青い点とラベルがある:「オルテイア採掘コロニー」。
紬はそのラベルを読んだ。
「オルテイア?」
「採掘コロニーよ」とヴェスペラが言った。「一年前に行った。かなり大きなコロニーで——人口は約二万人。ほとんどが鉱物採掘で働いている。」
「状態は?」
ヴェスペラは眉をひそめた。
「私が行った時、彼らは問題を抱えていた。鉱物価格が下がり、大企業が投資を引き始めていた。多くの労働者が職を失っていた。」
紬は画面のデータを観察した。オルテイアの名前の下に追加の記録がある——デジタル化されたヴェスペラの手書きのメモだ。
「商業的不安定性:深刻。」
「商業的不安定性:深刻」と紬は読んだ。
「ええ。それが私が記録したこと。今どうなっているかはわからないけど、あまり変わっていないと思う。」
紬は考えた。二万人の人口を持つ採掘コロニーが経済的困難に直面している。それは機会だ——しかしリスクでもある。
「セラフィエル、オルテイアに関する最新のデータはあるか?」
「多くはありません、紬。そのコロニーはフロンティアのニュースにほとんど登場しません。しかし必要であれば追加情報を探せます。」
「やれ。そこで何が起きているのか知りたい。」
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ヴェスペラは紬を見つめた。
「オルテイアに興味があるの?」
「かもしれない。そこに機会があるか知りたい。」
「機会?」
「もしコロニーが困難を抱えているなら、彼らを助ける方法があるかもしれない——そして同時に利益を得ることも。」
ヴェスペラは眉をひそめた。
「それは搾取のように聞こえる。」
「搾取じゃない。彼らと協力したいんだ。もし彼らが立ち直るのを手伝えれば、彼らはそれを覚えている。そしてフロンティアでは、そういう関係が貴重だ。」
ヴェスペラはしばらく彼を見つめた。
「あなたは本当に長期的に考えているのね。」
「時間を無駄にするのは好きじゃない。」
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レアとランがナビゲーション・ラウンジに入ってきた。
「船長、新しいデータを見ていると聞いた」とレアが言った。
「ああ。ヴェスペラが探査データを提供してくれた。」
レアが近づき、画面の地図を見つめた。
「これ……とても完全だ。」
「三年分の仕事よ」とヴェスペラが言った。
ランも近づき、その目はすぐに交易データに向かった。
「交易の機会?」と彼は尋ねた。
「ああ」と紬が答えた。「いくつかある。でも一つ気になる場所がある——オルテイア採掘コロニーだ。」
ランは画面のデータを読んだ。
「商業的不安定性:深刻。リスクが高そうだ。」
「あるいは機会か。」
ランは微笑んだ。
「その考え方、好きですよ、船長。」
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紬は次の計画を話し合うために全員を食堂に集めることにした。
アストレオンの食卓——普段は紬、セラフィエル、レア、ランの四人だけ——に、今はもう一脚の椅子が加わっている。ヴェスペラがそこに座り、セラフィエルが用意した料理をまだ少し感嘆した表情で見つめている。
「こんな食事には決して飽きないわ」と彼女は静かに言った。
「毎日ここで食べられるよ」とレアが言った。
「わかってる。でも私には自分の船がある。」
レアは肩をすくめた。
「好きにすれば。」
紬が話を始めた。
「まずヴァスケリルでの契約を完了する。その後、オルテイアに行きたい。」
「なぜオルテイア?」とランが尋ねた。
「ヴェスペラがコロニーが困難を抱えていると言ったから。そして我々が助けられるか見てみたい。」
「何の利益が?」
「もしコロニーが立ち直れば、彼らは輸送、保護、交易を必要とする。我々はその一部になれる。」
ランは頷いた。
「長期的な視点だ。」
「ああ。」
レアが紬を見つめた。
「俺も行く。」
「私も」とランが言った。
紬はヴェスペラに振り返った。
「君は?」
ヴェスペラはしばらく沈黙した。
「あなたたちをそこまで送る。その後、私は自分の旅を続ける。」
「重力異常にか?」
「ええ。」
紬は頷いた。
「わかった。後で考えよう。」
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夕食後、紬はコックピットの窓の前に立った。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「オルテイアについての情報は得られたか?」
「少しだけです、紬。そのコロニーは確かに困難を抱えています。鉱物生産が減少し、いくつかの大企業が投資を引き上げました。しかし、まだ持ちこたえているグループもあります——独立した採掘者、小規模な商人、そしていくつかの地元企業です。」
「機会はあるか?」
「あります。もしオルテイアから適切な市場へ鉱物を輸送できれば、利益を得られます。しかしリスクも現実です——コロニーは不安定です。」
紬は頷いた。
「後で考えよう。今はヴァスケリルでの契約に集中する。」
「了解しました、紬。」
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夜、紬はベッドに横たわった。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「明日、ヴァスケリルでの契約を完了する。」
「はい。採掘ステーションからメイラスクへの貨物護衛です。」
「その後、オルテイアに行く。」
「船長はもう決断されましたか?」
「完全には。でも自分の目で見てみたい。」
「賢明な判断です、紬。」
紬は目を閉じた。
窓の外では、ヴァスケリルの小惑星群がまだ静寂の中に浮かんでいる——外にはまだ彼が探検していない場所がどれほどあるかを思い出させる。
そしてオルテイアもその一つだった。
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【次回予告 第四十一章 —— 「オルテイア鉱山コロニー」】
紬とその乗組員はヴァスケリルでの契約を完了し、オルテイア鉱山コロニーへ向けて出発する。そこで彼らは苦闘するコロニーを発見する——大企業は去り、地元住民は生き残ろうとしている。紬は助ける機会——そして利益を得る機会を見始める。
【第四十一章へ続く…】




