第三十二章 —— ケラス=ヴェイン
第三十二章 —— ケラス=ヴェイン
アストレオンは滑らかな減速を伴いながらFTLを解除した——光の線が静止した星々へと変わり、そしてまったく新しい景色が広がる。
紬は注意深くモニターを見つめた。
彼らの前方には、かつて見たことのない恒星系が広がっていた——淡い黄色の恒星と、その周囲を周回するいくつかの惑星。宇宙空間に浮かぶ巨大な都市はない。巨大な環状構造や軌道エレベーターのようなメガストラクチャーもない。ただ、惑星の間にちらつく小さな光点がいくつかあるだけだ。
「セラフィエル、あれは何だ?」
「採掘ステーション、貨物プラットフォーム、そして数隻の居住船です。」
「居住船?」
「フロンティアの採掘者や労働者が一時的な住居として使用する大型船です。中には数十年にわたって存続し、小さなコミュニティへと発展したものもあります。」
紬は表示を拡大した。それらの船が見える——形状は統一されておらず、改造された貨物船のように見えるものもあれば、移動された小さなステーションのように見えるものもある。その間には、点滅する灯りがあり、そこに生命が存在することを示している。
レアが彼の隣に立ち、読み取れない表情でその景色を見つめた。
「これがフロンティアだ」と彼女は静かに言った。
「これがケラス=ヴェインだ」と紬は返した。「君の知っている他の場所と何が違う?」
レアは考えた。
「ケストレルには、もう決まったルールがある。構造がある。権威がある。ここは……」彼女はモニターを指した。「ここは、まだ発展途中だ。人々はまだ生き残る方法を模索していて、時間と共に自分たちのルールを作っている。」
ランが貿易データのタブレットを携えてコックピットに入ってきた。
「船長、現地の市場データを確認しました。ここの鉱物価格はかなり低いです——おそらく周辺の採掘ステーションからの供給のためでしょう。しかし、平均よりも高値の希少な商品がいくつかあります。」
「例えば?」
「希少金属です——FTLエンジンの部品に使われる種類のものです。ここでは生産していないので、星系外からの輸入は非常に価値があります。」
紬は頷いた。
「その情報は保存しておこう。ドッキングしてから検討する。」
「紬、入植地の一つから通信信号を受信しました。」
紬はモニターを見た。通信要求が表示されている——「メイラスク・ドック・セツルメント」とラベルされた小さな点からだ。
「接続しろ。」
スピーカーから声が聞こえる——友好的だがプロフェッショナルな口調だ。
「正体不明の船、こちらメイラスク・ドック・セツルメントです。貴船の到着を確認しました。ドッキングのご予定はありますか?」
紬が応答する。
「こちらアストレオン・ヴェロリア。はい、ドッキングする予定です。燃料と補給物資が必要です。」
「了解しました。大型船用のドッキング施設はありますが、当ステーションはお客様がお使いになっているものほど大きくはありません。貴船は外部ドック——大型船用に改造された貨物エリア——へご案内します。」
「ありがとうございます。指示に従います。」
「マークした航路に従ってください。メイラスクへようこそ、船長。」
紬は通信を切り、モニターを見つめた。航路が地図上に表示される——惑星の間に浮かぶ小さな構造物へと続いている。
「セラフィエル、その航路に従え。」
「了解しました、紬。」
レアは好奇心を持ってその構造物を見つめた。
「あれがメイラスクか。思ったより小さいな。」
「でも人が住んでいる。」
「そして生き残っている。」
ランが微笑んだ。
「それがフロンティアの面白いところです、船長。ここにいる人々は、持っているもので生き残ることを学んでいます。」
紬は答えなかった。彼はただ、その構造物が近づいてくるのを、表面で点滅する小さな灯りを見つめながら観察し続けた。
遠くでは、ステーションの周囲を小型船が行き交っている——おそらく採掘船か貨物運搬船だろう。何隻かは古びて見え、あちこちに補修跡があるが、それでも稼働し続けている。
「セラフィエル、メイラスクについて何か情報はあるか?」
「このステーションは地元の商人評議会によって運営されています。中央政府はありません。内部の規則はありますが、その執行は相互合意に依存しています。人口は約一万五千人で、ほとんどが採掘労働者、技術者、商人です。」
「つまり、これは宇宙の小さな町のようなものか。」
「はい。しかし自立しなければならない小さな町です。問題が起きても、外部からの援助を当てにすることはできません。」
紬は頷いた。彼は理解し始めていた。フロンティアは無法地帯ではない——より高次の権威が助けに来ることを当てにできないため、人々が互いに頼らざるを得ない場所なのだ。
レアが彼を見つめた。
「船長、何か考えているな。」
「この場所を理解しようとしているだけだ。」
「すぐにわかるよ。フロンティアは単純だ——生き残るか、去るかだ。自分自身以外に面倒を見てくれる者はいない。」
紬は小さく微笑んだ。
「俺にぴったりの場所みたいだな。」
レアは笑った。
「そう言うと思った。」
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アストレオンが低速でメイラスク・ドック・セツルメントに接近した。
構造物の輪郭が徐々にはっきりとしてくる——繋ぎ合わされたモジュールとコンテナの集合体で、一部は他よりも新しく見える。表面に沿って小さな灯りが点滅し、いくつかの部分には緊急修理と思われる補修跡がある。
再びスピーカーから声が聞こえる。
「アストレオン・ヴェロリア、ドッキング経路に進入しました。外部ドックへの誘導に従ってください。タグドローンを支援に送ります。」
紬は数個の小さな点がアストレオンに近づいてくるのを見た——大型船のドッキングを支援する準備ができたタグドローンだ。
「セラフィエル、タグドローンの支援を頼む。」
「了解しました。自動ドッキングシステムを起動します。」
アストレオンはゆっくりと移動し、タグドローンの指示に従った。言われていた外部ドックは、大きな開放型プラットフォームだった——アストレオンほどの船を収容できる十分な広さがあるが、屋根や保護壁はない。
「ドッキング完了。気圧接続は安定しています。」
紬はパイロットシートから立ち上がった。
「よし。本当のフロンティアがどんな場所か見に行こう。」
レアとランが後に続いた。
エアロックの前で、紬は一瞬立ち止まった。この扉の向こうには、リラディスやケストレルとは異なる世界が広がっている——まだ何かになりつつある世界だ。
「セラフィエル、一緒に来るか?」
「もちろんです、紬。船長に同行します。」
エアロックの扉が開いた。
ステーションから流れ出る空気は違っていた——より重く、金属とエンジンオイルの混ざった香りがする。紬は深く息を吸い込んだ。
「これがフロンティアか」と彼は静かに言った。
レアが彼の隣に立ち、微笑んだ。
「冒険の始まりだな、船長。」
紬は微笑んだ。
「ここで何が見つかるか、見てみよう。」
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【次回予告 第三十三章 —— 「メイラスク・ドック・セツルメント」】
紬とその乗組員はメイラスク・ドック・セツルメントに入る——質素だが活気のあるフロンティア交易ステーションだ。彼らはドッキング、税関手続き、燃料補給、市場登録を行う。ランはビジネスチャンスを探し始め、レアは地元の傭兵事務所を訪れる。最初の投資案件が浮上する:燃料補給施設だ。
【第三十三章へ続く…】




