第三十一章 —— 国が守らない門
第三十一章 —— 国が守らない門
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ASTRAEONがFTL航行を続ける中、紬は目を開けた。
いつ眠ってしまったのか正確には覚えていなかった——おそらく旅の二時間目あたり、青い光の線の景色が退屈になり始めた頃だろう。今、前方の画面を見ると、旅の地図は彼らがフロンティア・ゲートへの航路の半分を過ぎたことを示している。
隣では、リアが同じ姿勢のまま眠り続けている——頭が少し横に傾き、キツネの耳が時折ぴくぴくと動いて、夢の中で何かを聞いているようだ。紬は彼女を起こさなかった。
「セラフィエル、あとどのくらいだ?」
「約二時間です、紬。フロンティア・ゲートにはそれより前に到着します。」
「何か準備することはあるか?」
「全システムの点検は済んでいます。問題はありません。ただし、到着前にフロンティアの規制に関するデータをご覧いただくことをお勧めします。」
紬は頷いた。彼は脇の画面を軽く叩き、航法データが行政書類に切り替わる——規制、管轄範囲、そして大規模政府の支配が及ばない地域に関する記録だ。
彼は注意深くそれを読んだ。
文明圏とフロンティアの違いは明らかだった。文明圏には明確なルールがある——FTLの航路は管理され、武器は制限され、船は有効な登録と保険を備えていなければならず、現地当局は迅速に法を執行できる。フロンティアでもルールは存在する——しかしその執行は、近くに誰がいるかに依存する。
「船長。」
紬が振り返る。リアが目を覚ましていた。その目はまだ少し眠そうだが、もう焦点は定まっている。
「起きたのか。」
「画面の音が変わったからな。」彼女は体を伸ばし、紬には関節のパキパキという音が聞こえた。「もうすぐか?」
「二時間くらいだ。」
リアは頷き、フロンティアに関する書類を表示する画面を見つめた。
「何を読んでいるんだ?」
「フロンティアの規制だ。思ったよりルールが多い。」
リアは小さく微笑んだ。
「フロンティアは無法地帯だって言うけど、実際はルールが違うだけだ。ケストレルでも俺たちなりのルールがあった——書かれてはいないが、みんな知っている。」
「例えば?」
「他人のステーションで盗むな。理由なく撃つな。借りを作ったら返せ。約束したら守れ。」リアは肩をすくめた。「単純なルールだ。でも書かれた法律より効果的なこともある。」
紬は頷いた。その背後にある論理は理解できた。権力が遠い場所では、信頼は金よりも価値のある通貨になる。
「紬、前方に変化を検知しました。」
紬は画面を見つめた。遠くで、FTLの光の線が変化し始めている——もはや均一ではなく、川が多くの小さな流れに分かれるように枝分かれし始めている。
「間もなくFTLから出て、フロンティア・ゲートを通過します。」
「手続きの準備をしろ。ゲートがどう機能するか見てみたい。」
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約三十分後、ASTRAEONがFTLから出た。
減速は以前とは異なっていた——急な減速ではなく、港に入るために速度を落とす船のような、意図的な緩やかな減速だ。窓の外では、景色が光の線から静止した星々へと変わり、そしてさらに別のものへと変わった。
紬はそれを見つめた。
彼らの前方には、巨大な構造物が広がっていた——普通のステーションでもドックでもなく、一種の門だ。二つの巨大な金属のアーチが宇宙空間に浮かぶプラットフォームからそびえ立ち、その間の隙間はASTRAEONほどの船が通過できるほど広い。アーチに沿って、灯りが規則的なパターンで点滅している。
「これがフロンティア・ゲートです、紬。」
「これが境界線か。」
「はい。この門の向こうでは、銀河中心部の通信網の完全なカバレッジは利用できなくなります。通信自体は可能ですが、遅延が大きくなり、範囲も限られます。」
紬は画面を見た。そこにはまだFTLの航路が表示されているが、ラベルが変わり始めている——星系の名前がまばらになり、いくつかの領域は単に「未確認」または「調査待ち」とだけ記されている。
リアが彼の隣に立ち、目を輝かせてその門を見つめた。
「フロンティア・ゲートを外側から見るのは初めてだ。いつもフロンティアの中に着いた時にはもう中にいたからな。」
「外からゲートを通ったことはないのか?」
「ない。俺はフロンティアで生まれた。お前に会うまで外に出たことはなかった。」リアは微笑んだ。「だからこれも俺にとっては初めての経験だ。」
紬は思わず微笑みそうになった。誰かと初めての瞬間を共有するというのは、どこか心地よいものだ。
「船長、5分後にゲート通過経路に入ります。既に船の識別情報をゲートシステムに送信しました。」
「検査はあるのか?」
「リラディスほど厳しくはありません。フロンティア・ゲートは通常、基本登録と目的地の申告のみを確認します。彼らが気にするのは、書類よりも船が問題を起こすかどうかです。」
「よし。過剰な役所仕事は好きじゃない。」
リアはくすくすと笑った。
「船長はフロンティアを気に入るよ。ここでは役所仕事はもっとシンプルだ。」
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ASTRAEONがゆっくりとゲートに向かって進む。
接近するにつれて、紬はその構造物の詳細をよりはっきりと見ることができた。金属は古びて見える——壊れているわけではないが、何年にもわたって放射線や宇宙の粒子に晒されてきた。いくつかの部分には新しい補修跡があり、このゲートが古いながらもまだ維持管理されていることを示している。
スピーカーから声が聞こえる——平坦で、プロフェッショナルな口調だ。
「ASTRAEON VELORIA、識別情報を受信しました。目的地は?」
セラフィエルが応答する。
「ケラス=ヴェイン・フロンティア星系。第一目的地:メイラスク・ドック・セトルメント。」
「目的地を記録しました。貨物の申告は?」
「商業貨物はありません。船の備品と乗組員の補給品です。」
「武器の申告は?」
「標準的な自衛システムです。」
紬はそのやりとりを注意深く観察した。リラディスでは武器に関する質問はより詳細で、長い書類が必要だった。ここでは、武器の有無だけを尋ね、それ以上の詳細は要求しなかった。
「受領しました。ゲートを通過してください。フロンティアへようこそ、ASTRAEON VELORIA。」
ASTRAEONが二つの巨大なアーチの間の隙間を滑り抜ける。
紬は微かな振動を感じた——船が目に見えない境界線を通過するような感覚だ。画面では、データが変化する。通信網はより弱い信号を示し、地図は前方の領域に関する新しい情報で更新される。
「紬、この地点から銀河中心部の通信網は完全なカバレッジを提供しなくなります。」
紬は画面を見つめた。前方には、非常に広大な領域が広がっている——散在する恒星系、いくつかは名前が付き、いくつかは名前がない。明確な主要航路はなく、より緩やかなルートのネットワークだけが存在する。
リアは感嘆の表情でその地図を見つめた。
「ここがフロンティアか。本物のフロンティアだ。」
ランが後方からコックピットに入り、貿易データを表示したタブレットを持っている。
「船長、フロンティアの商品価格を調べてみました。いくつか面白い機会があります——特に鉱物と原材料です。ただし価格変動には注意が必要です。」
紬は頷いた。
「後で話そう。今はまず航法に集中する。」
「紬、ケラス=ヴェインへの航路を計算しました。現在地からFTLで約4時間です。」
「よし。標準速度を維持しろ。まずは周囲を見てみたい。」
彼は画面の地図を見つめた。無数の光点——惑星、ステーション、植民地、そして未踏査の領域。その中で、一つの点が「メイラスク・ドック・セトルメント」というラベルで点滅している——彼らの最初の目的地だ。
「セラフィエル、メイラスクについて何か記録はあるか?」
「はい。比較的小規模なフロンティア交易ステーションです——人口約15,000人。基本的なドッキング施設、商品市場、修理工場があります。このステーションを統制する中央当局はなく——地元の商人評議会によって運営されています。」
「ケストレルに似ているが、もっと小規模な感じだな。」
「はい。メイラスクはケストレルのよりシンプルな版です。」
リアが歯を見せて笑った。
「そういう場所は好きだ。ルールが少なくて、チャンスが多い。」
ランが眉を上げた。
「リスクも多いですよ。」
「リスクは楽しみの一部だ。」
紬は静かに首を振ったが、口元には小さな笑みが浮かんでいた。彼は新しい乗組員のダイナミクスに慣れ始めていた——常に動きたがるリア、常に計算するラン、そして常に全てが正しく機能することを確認するセラフィエル。
「セラフィエル、メイラスクへ向かえ。フロンティアが本当はどんな場所か、見てみよう。」
「了解しました、紬。メイラスク・ドック・セトルメントへ——到着予定時刻:4時間後。」
ASTRAEONが動き始め、フロンティア・ゲートを背後に置き去りにする。窓の外では、星々が再び光の線へと変わり始める——すでに馴染み深い景色だが、今回は違う感覚を伴っている。
前方には、フロンティアが広がっている。
紬は落ち着いた表情で地図を見つめた。
広大な領域。未知の領域。可能性に満ちた領域。
「リア。」
「何だ、船長?」
「俺たちはもうフロンティアに入った。」
リアは微笑んだ——誠実で温かい微笑みだ。
「わかってる。そしてここにいることが嬉しい。」
紬は答えなかったが、その笑みは少し広がった。
画面では、目的地のポイントが近づいている。メイラスク・ドック・セトルメント——真のフロンティアへの彼らの最初の門。
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【次回予告 第三十二章 —— 「ケラス=ヴェイン」】
ASTRAEONがケラス=ヴェイン・フロンティア星系に到着する。そこには巨大な都市も巨大構造物もない——ただ星と惑星と採掘ステーションと貨物プラットフォームと居住船だけがある。紬はフロンティアが「無法地帯」ではなく、「発展途上の領域」であることを見始める。ある入植地から商業ドッキングの要請が届く。
【第三十二章へ続く…】




