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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第180話】「銀河の果てへ、戦姫とともに」

【第180話】「銀河の果てへ、戦姫とともに」



場所: タラリス辺境物流基地 → ASTRAEON VELORIA――司令デッキ、メインハンガー、グランドサロン、展望室 主要

視点: 星崎紬 → セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン → モード・ラン・ヴァレス → セラフィエル・ヴェロリア → レア・ヴァレン


### 視点:星崎紬


タラリス辺境物流基地の朝は、ASTRAEON VELORIAが初めてここに到着したときとは、まるで違う慌ただしさの中で始まった。


かつて輸送コンテナで埋め尽くされていた貨物エリアは、今ではすっかり空き始めている。数台の物流車両が検査レーンから離れていき、基地の職員たちは、出港許可を得た船が係留エリアを離れる前に、最後の事務処理を進めていた。


司令デッキの窓越しに、ドッキングエリアの外へと長く伸びるASTRAEON VELORIAの船体が見える。


全長八千六百メートルのその船は、たまたま自前の推進機関を備えている星間ホテルのようだった。外から見える場所に砲塔もミサイルランチャーもない。船体表面は、公開上の分類である《超高級長距離個人用宇宙船》にふさわしい、優雅な外観を保っていた。


その姿の裏側に、数千機ものモバイルフレームと各種支援艦隊を搭載できる移動要塞が隠されているとは、想像しにくいだろう。


「艦長、出港許可が下りました」


窓の外から視線を戻す。


ランがコンソールテーブルのそばに立ち、最終書類を表示した端末を手にしていた。


「基地側からか?」


「はい。C-145-MCの全受領書類が正式に承認されました。物流部門と保安検査部門のどちらからも、追加の異議はありません」


「よし。これで本当に終わりだな」


「少なくとも、今回の輸送契約については」


俺は彼女に目を向けた。


「まだ何か言いたいことがあるのか?」


「心配するようなことはありません。ただ、艦長がタラリスに関係する業務はすべて終わったと、突然考えたりしないよう確認しているだけです」


「そこまで考えてない」


「そうであることを願います」


ランは端末をテーブルに置いた。


メインスクリーンには契約の最終処理状況が表示されている。


C-145-MC――最終納品記録


| 項目 | 状況 |

| -------- | ------------ |

| 貨物輸送 | 完了 |

| 現物検査 | 受領済み |

| マニフェスト照合 | 完了 |

| コンテナ封印 | 確認済み |

| 正式受領書 | 発行済み |

| 契約総額 | 8,400,000 GC |

| 輸送義務 | 終了 |


「契約金額は当初の合意どおりか?」


「八百四十万GCです。一方的な変更はありません。追加費用や補償金についても、承認する書面上の決定がないため、計上していません」


「よし。救助活動と輸送契約の話を混同するなよ」


「私もそのように処理しています。船の個人的な商取引記録も、C-145-MCの帳簿から分離済みです。交易活動で得た品物については、仕入れ費用、売上、利益をそれぞれ独立して記録しています」


「つまり、物流の支払いとは混ざっていないわけだな」


「もちろんです。交易の利益が軍事輸送の報告書に突然記載されていたら、理由を尋ねられてしまいますから」


俺は頷いた。


少なくとも、この仕事については、後から追いかけなければならない事務上の問題を残さずに終えられたようだ。


「決済ネットワーク側の処理はどうなっている?」


「決済書類は正式な経路を通じて提出済みです。送金が実際に確認された段階で、運用資金の残高を更新します。現時点では、受領書が発行されたという理由だけで、支払いを使用可能な資金として計上するつもりはありません」


「監督は任せる」


「それが私の仕事です」


会話が途切れたのは、航行画面が切り替わったからだった。


メインスクリーンに航路が表示され、星間交通の検問ポイントがいくつか示される。


「ヴェスペラの航路設定は終わったか?」


「最終確認中です。選択した航路が商船の運航スケジュールと重ならないか、念入りに確認しています」


「終わったら呼んでくれ」


「その必要はないわ」


司令デッキの反対側から、ヴェスペラの声が聞こえた。


俺はそちらを振り返る。


長い髪と高いエルフ耳を持つ女性が、航行コンソールの前に立っていた。片手を操作インターフェースの上で動かしながら、画面に表示された複数の航路を目で追っている。


「もうここにいるもの」


「航路はどうだ?」


「承認済みの出港回廊を通って基地を離れられるわ。現地の交通管制区域を抜けた後は、次の独立コロニー回廊へ向かう予定よ。主要航路には商船が何隻かいるけれど、距離も運航スケジュールも安全範囲内ね」


「もっと早いルートはあるか?」


「あるわ。でも、お勧めはしない」


「理由は?」


「最短ルートは大型貨物船が何隻か使用しているの。通り抜けられないわけではないけれど、少し時間を短縮するためだけに無理な操船をする理由はないでしょう?」


俺は彼女が選んだ航路を確認した。


「なら、今のルートで行こう」


「了解。セラフィエルが出港許可を確認したら、航行計画を確定するわ」


「船の状態は?」


ヴェスペラが答える前に、ハンガーの通信チャンネルからカリスタの声が聞こえてきた。


「うちの船のことなら、推進システムも出港前点検も、航行を妨げるような問題は見つかっていないわ」


俺は端末の方を向いた。


「メインハンガーも含めてか?」


「もちろん」


「ASTRAEAは?」


「修理作業はまだ続いているわ。二基の主機関は試験が終わっていないから、あの船は引き続き輸送固定状態よ。ASTRAEONが航行している間も安全でいられるよう、固定架台と拘束具の確認は済ませてある」


「俺たちの出港で作業に支障は出ないか?」


「ないわ。定期作業は整備ドローンが担当している。定期点検の予定も組んであるけれど、次の工程で部品の取り付けが終わったら、私自身で仕上がりを確認する必要があるわね」


俺は頷いた。


ASTRAEA OF THE SILVER LANTERNは、まだメインハンガーに留まっている。二基の主機関は使用できず、船単独では動けない状態だ。それでも、修理工程は本来の設計に適合した技術基準を用いて進められていた。


カリスタは、ASTRAEONの機密システムを使って、あの王国艦の構造を変更したりはしていない。


技術に関しては頑固なところがあるが、互換性を考慮せずに誰かがシステム全体を交換してしまうより、ずっといい。


「つまり、ASTRAEAの修理が終わるまで待つ必要はないんだな?」


「ええ。船はハンガー内に固定済みよ。私たちが出港しても、修理作業を続けられるわ」


「分かった。ありがとう」


「まだ感謝するのは早いわよ。あなたたちが出ていった後も、私には仕事が山ほど残っているんだから」


通信が切れた。


俺は再び航行画面に目を向ける。


契約とは別に、まだ完全には終わっていない案件が一つあった。


「ラン」


「はい?」


「ASTRAEAの乗員の帰還手配はどうなっている?」


ランの表情が少しだけ引き締まった。


「医療検査と輸送調整は進行中です。帰還を担当する側には、送り届ける必要のある乗員の名簿を渡してあります。全員が同じ経路を利用するわけではありませんので、目的地と輸送手段については引き続き調整しています」


「俺たちより先に出発するのか?」


「その予定です。彼らの情報がASTRAEONの航行マニフェストに含まれないようにも、すでに確認してあります」


「よし。彼らもずいぶん長い間、問題に巻き込まれていたからな。家族も連絡を待っているはずだ」


「同感です」


俺は外部モニターの方へ視線を向けた。


係留エリアの一角では、公式輸送船が出発の準備を進めていた。


おそらく、ASTRAEAの乗員の一部は、間もなくあの船に乗り込むことになる。


「全員の準備が終わったら、安全な輸送経路が確保された後に出港しよう」


ヴェスペラが顔を上げた。


「彼らの輸送船がこのエリアを離れるまで待つ?」


「恒星系の外まで見送る必要はない。移送と出発の手続きが問題なく進んでいることを確認できれば十分だ。急ぎすぎたせいで誰かが取り残されるのは避けたい」


「分かった。航行スケジュールを調整するわ」


ランが端末を開き直した。


「基地の管理部門にも確認を送っておきます」


俺は再びメインスクリーンを見つめた。


C-145-MCの契約は完了した。


貨物は受領された。


未完了の輸送義務も残っていない。


ASTRAEAからの救難信号を受信して以来、ようやく俺は、未完了の契約によってどれだけ時間を失ったかを計算せずに、次の旅について考えられるようになった。


「セラフィエル」


「はい、紬?」


「すべての準備が整ったら出港する」


「承知しました。出港手順がすべて満たされていることを確認いたします」


俺は頷いた。


「頼む」


次の旅は、もう基地に荷物を届けるためのものではない。


今度は、俺たち自身の判断で行き先を決める独立船として、再び航海を始めるのだ。


### 視点:セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン


その朝のASTRAEON VELORIAのメインハンガーは、いつもとは少し違った雰囲気に包まれていた。


ハンガーのあちこちから、整備ドローンの駆動音が聞こえてくる。小型ユニットたちはASTRAEA OF THE SILVER LANTERNの周囲を移動し、工具を運び、部品の固定架台を点検し、自動処理が可能な箇所の作業を進めていた。


私は作業区域の境界線の外に立っていた。


目の前には、かつて外交任務と軍事任務の旅の間、私が暮らしていた船がある。船体にはまだ損傷の痕跡が残っているものの、いくつかの部分が少しずつ整えられているのが分かった。


「セラフィナ殿下」


振り返る。


数歩後ろにミレルが立っていた。


医療検査を終えた彼女の制服は、すでにきちんと整えられている。ASTRAEAから救出されたばかりの頃のように、髪が乱れていることもなかった。


「ミレル。他の乗員たちの状態はどう?」


「大半の者は追加検査を終えています。まだ経過観察が必要な者もおりますが、新たな緊急事態の報告はありません。帰還手配についても、輸送を担当する側から受理されています」


「それはよかった」


ミレルが近づいてくる。


「最初の輸送船は、すでに係留エリアで出発準備を整えています。帰還許可を得た乗員たちは、指定された受け入れ地点まで運ばれる予定です」


私は再びASTRAEAに目を向けた。


「ようやく、みんな帰れるのね」


「はい」


「修理を見届けるために、まだ残りたいという者はいる?」


「船の進捗を尋ねてきた者は何人かおります。ただし、すべての作業が終わるまで待機する義務はありません。修理工程はカリスタ殿と整備ユニットが担当しています」


「よかった。私が次の旅を決めていないからといって、彼らに待ち続けてほしくはないもの」


ミレルは少しの間、黙っていた。


「殿下ご自身は、もう進む道をお決めになったのですか?」


私は彼女を見た。


「しばらくの間、ASTRAEON VELORIAと一緒に旅を続けるつもりよ」


「その決定については、すでに報告を受けております」


「驚かないの?」


「私は殿下のお側で長くお仕えしてまいりました。殿下がまだ決断されていないときと、本当に決められたときの違いは分かります」


私はかすかに微笑んだ。


「あなたは、いつもそんな小さなことに気づくのね」


「それも私の務めです」


「ミレル」


「はい、殿下」


私は修理中の船へと顔を向けた。


「あなたに相談したいことがあるの」


ミレルは黙って待った。


「次の旅でもあなたに同行してもらえるよう、皇族に申請したいと思っているの。ASTRAEONの乗員の仕事を引き受けてもらうのではなく、私の個人的な用件を支える専属補佐としてね」


ミレルの表情に大きな変化はなかったが、瞳がわずかに見開かれたのが分かった。


「それは、ASTRAEAの乗員たちが帰還した後も、私に殿下のお側に残るよう求められている、ということでしょうか?」


「家族が認めてくれて、あなた自身も望むなら、そうしたいと思っているわ。きちんと話し合わずに、あなたのことを勝手に決めるつもりはないもの」


「……」


「まだ家族から返事はもらっていないし、申請が認められるかどうかも分からない。だから、まずはあなた自身の考えを聞きたかったの」


ミレルは一度、静かに頭を下げた。


「殿下のお側にお仕えし続けることに、異存はございません。ただ、現在の責任を果たし、皇族から正式な決定が下されるのを待つ必要がございます」


「私も、あなたに今の仕事を放り出してほしいわけではないわ」


「ご配慮いただき、ありがとうございます」


私は静かに息を吐いた。


これまでミレルは、私が皇族の任務を遂行する際、いつも傍にいてくれた。私の予定も、習慣も、他の者が見落としがちな細かなことも把握している。


けれど、誰かの忠誠心を理由に、その人自身の意思を無視したくはなかった。


「ひとまず、あなたはASTRAEAの帰還要員と一緒に戻ってちょうだい。父上と母上、それから祖父と祖母にも連絡して、正式な許可をお願いするわ」


「承知いたしました、殿下」


「家族が認めてくれたら、改めて相談しましょう。もし認められなかったとしても、あなたに今の任務を破らせるつもりはないわ」


ミレルは小さく微笑んだ。


「かしこまりました。どのような決定になりましても、正確に報告いたします」


私は頷いた。


ミレルには先に帰還してもらうと告げることに、少しだけ心苦しさがあった。


けれど、今はそれが最善の選択だ。


ASTRAEAの人々には、それぞれの家族と生活がある。私が旅を続けると決めたからといって、彼らが異国の船に残り続ける必要はない。


「皇族の居館にいる他の者たちは、いかがなさいますか?」とミレルが尋ねた。


「みんなヴェルドラコンにいるわ。誰に同行を頼むかは、まだ決めていないの。今のところ、お願いしたいのはあなただけよ」


「ご家族の決定をお待ちいたします」


「ありがとう」


ミレルは個人端末に目を向けた。


「輸送担当者から、帰還する乗員は速やかに検査地点へ集合するよう連絡がありました。私も合流しなければなりません」


「行ってらっしゃい」


彼女は、私がよく知っている所作で敬礼した。


「殿下の旅が順調でありますように」


「あなたもね。帰り道は気をつけて」


「はい。お気遣いありがとうございます」


ミレルは踵を返し、ハンガーの出口へと歩いていった。


私は彼女の姿が連絡通路の扉の向こうに消えるまで、ずっと見送っていた。


しばらくの間、私はいつも傍にいてくれた専属補佐なしで旅を続けなければならない。


それも、私自身が下した決断の一部なのかもしれない。


私は、いつまでも宮廷の手配に頼り続けたくはなかった。


けれど、自由とは、これまで自分を支えてくれた人々との関係をすべて断ち切ることだとも思っていない。


しばらくすると、個人端末に通知が届いた。


家族への連絡申請は、認証済みの公式通信チャンネルを通じて送信できるようになっている。


私はメッセージ画面を開いた。


宛先: ヴェルドラコン皇族 申請内容: ASTRAEON VELORIAとの一時的な旅において、ミレル・ソヴァンを専属補佐として任命することへの承認。


送信する前に、内容をもう一度読み返した。


家族にミレルの権限を無条件に引き渡すよう求めているわけではない。安全性、家族の承認、そしてミレル自身の意思を考慮したうえで、彼女の任命について改めて話し合う機会を求めているだけだ。


すべての記載に誤りがないことを確認し、送信ボタンを押した。


状態:メッセージ送信済み――正式な回答待ち。


私は端末を閉じた。


「今は、これで十分ね」


背後から足音が聞こえた。


「セラフィナ殿下?」


振り返ると、ハンガーの出入口付近に紬が立っていた。


「もう終わったのか?」


「ええ。ミレルはASTRAEAの帰還要員と一緒に戻るわ。次の旅でも彼女に同行してもらえるよう、家族に申請を送ったところよ」


紬は頷いた。


「家族が認めて、ミレル本人も望むなら、旅の手配について話し合えばいい」


「反対しないの?」


「個人的な補佐を頼むこと自体に反対する理由はない。ただ、誰かをそのまま受け入れるわけにはいかない。立場や責任、それに以前の任務を離れても問題ないのかを確認する必要がある」


「分かっているわ」


「それに、申請が認められた場合は、追加の人員に必要なものをランが手配することになる」


私は微笑んだ。


「彼女がどんな反応をするか、もう想像できるわ」


「そのうち本人から直接聞くことになると思う」


「いつもあんな感じなの?」


「残念ながらな」


私たちは小さく笑った。


やがて紬はハンガーの出入口へ目を向けた。


「戻ろう。船はもうすぐ出港する」


「ええ」


私は紬と一緒にハンガーを後にした。


背後ではASTRAEAが引き続き輸送固定状態に置かれ、その修理作業が続いていた。


今回、私があの船を離れるのは、完全に復旧したからではない。


私が選んだ旅が、帰還のための旅ではないからだ。


### 視点:モード・ラン・ヴァレス


全員が次の出発を待ち望んでいるときほど、事務処理の締めくくりは長く感じられる。


仕事そのものが難しいからではない。全員の意識が次の旅へ向いていると、小さな確認事項がいくつも見落とされやすくなるからだ。


私はASTRAEONの一時滞在者リストを確認している最中に、通信部門からの通知を受け取った。


セラフィナから皇族への申請が送信されたらしい。


私はその概要に目を通した。


「やはり、ミレルの件を申請されたのですね」


「もう知っていたのか?」


背後から紬の声が聞こえた。


私は顔を上げた。


「セラフィナ殿下から、申請を送信したと伺ったばかりです。今は、旅程の登録内容に変更が生じる可能性があるため、関連通知を受け取っただけです」


「まだマニフェストは変更するなよ」


「もちろんです。皇族からの承認も、ご本人の任命に関する最終決定も、まだ出ていませんので」


私は一時滞在者の状況一覧を表示した。


| 名前 | 立場 | 状態 |

| --------------------- | ----------------------------------- | ---- |

| 星崎紬 | 艦長/船主 | 中核乗員 |

| モード・ラン・ヴァレス | 管理/交易 | 中核乗員 |

| ヴェスペラ・ノクス・オーレル | 航行/探査 | 中核乗員 |

| レア・ヴァレン | モバイルフレーム・パイロット/保安 | 中核乗員 |

| カリスタ・フェロ | 技術士官 | 中核乗員 |

| セラフィエル・ヴェロリア | Sovereign-Class AI/Synthetic Person | 中核乗員 |

| セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン | 一時的な旅の同行者 | 承認済み |


私は別の一覧へ画面を切り替えた。


「ミレル・ソヴァンは、まだASTRAEONの滞在者リストには登録していません。ASTRAEAの乗員であり、セラフィナ殿下の専属補佐として記録しています。任命については、皇族の決定と本人の意思を待っている状態です」


紬は一覧に目を通した。


「いい判断だ。セラフィナが申請したからって、自動的に乗員になると思われても困る」


「そのような処理はいたしません。仮に申請が承認されたとしても、船の中核メンバー六名とは明確に区別する必要があります」


「他の個人的な従者を連れてくる場合も同じか?」


「同じ手順です。家族の承認、本人の意思、安全確認、そして旅の間に必要となる設備や生活環境の調整が必要です」


「任せる」


私は一覧を閉じた。


「実のところ、私が少し気にしていることがあります」


「何だ?」


「私たちは、つい先ほど大規模な輸送契約を終えたばかりです。そのうえ今度は、皇女を一時的な旅の同行者として乗せることになります。この船の評判を、これ以上地味なものに保つのは難しくなってきましたね」


「そもそも、俺たちは長い間、平凡な旅を続けられたことがない」


「それは、努力をやめる理由にはなりません」


私は彼を見た。


紬は、まるで悪びれる様子もなく肩をすくめた。


「準備は全部できたか?」


「ほぼ完了しています。あとは最終版の契約書類を船内アーカイブに保存し、一時滞在者のリストに誤りがないか確認するだけです」


「ASTRAEAは、修理中の船として登録されたままか?」


「はい。あの船はメインハンガー内で輸送用架台に固定されています。所有権の状態にも変更はありません。修理費用も引き続きC-145-MCの契約とは分離して管理しています」


「よし」


私は在庫リストを開いた。


「それから、帰還許可を得たASTRAEAの乗員は、手配済みの輸送手段で帰還するよう記録してあります。船の修理が終わるまで、彼らを引き留める必要はありません」


「その方がいい」


「ミレルについては、決定を受け取るまで何も変更しません。次の旅でセラフィナ殿下に同行することが認められた場合は、滞在者情報を更新し、適切な宿泊設備を準備します」


「彼女は乗員になる必要はないんだよな?」


「当然です。同行者の専属補佐だからといって、船の運用要員になるわけではありません。ASTRAEONのシステム、指揮権、乗員に対する権限は一切持たせません」


「それでいい」


私は最後の書類を送信した。


「完了です」


紬が私を見た。


「ほっとした顔をしているな」


「実際に終わりましたから。追加の署名をもらうために、誰かを追いかける必要もなくなりました」


「出港したら、少し休んでもいいぞ」


私は微笑んだ。


「書類の取りこぼしがないと確認できてから、検討します」


「君は時々、展望室から星を見るより、帳簿の数字が一致しているのを見る方が好きなんじゃないかと思うよ」


「運用資金の残高が間違っていても、星は通知を送ってくれませんから」


「……それは、なかなかもっともな答えだな」


「当然です」


私は端末を保存した。


大きな仕事が一つ終わった。


C-145-MCのために保持しておかなければならない貨物は、もう残っていない。未発行の受領書もない。そして、次の目的地まで持ち越すべき義務もない。


今のところ、ASTRAEON VELORIAは再び、艦長自身の選択によって旅をする船へと戻ることができる。


「艦長、最終アーカイブを保存するため、管理室へ向かいます」


「分かった。司令デッキで合流しよう」


「承知しました」


私は部屋を後にした。


扉が閉まる直前、紬がもう一度航路を確認している姿が目に入った。


彼は確かに落ち着いて見える。


だが、船の安全に関する判断を、内容も理解せずに他人へ任せるような人ではないことを、私は知っている。


### 視点:セラフィエル・ヴェロリア


艦内システムは、出港準備シーケンスへと移行を開始しました。


ASTRAEON VELORIAの戦闘構成に変更はありません。


外装は引き続き豪華客船としてのモードを維持し、隠蔽されたすべての兵装システムは閉鎖状態にあります。艦内防衛ネットワークも通常監視状態です。


メインハンガーでは、整備ドローンのネットワークが各自の作業を継続しています。


一部はASTRAEAの機関部品を点検しています。


別のユニットは輸送用架台の安定性を維持し、ASTRAEONが係留エリアを離れた後も、あの王国艦が安全な状態を保てるよう監視しています。


ASTRAEON VELORIAは四百を超えるデッキと自動化ネットワークを備えており、多くの定型作業を生体人員の追加なしで処理できます。


しかし、それによって中核乗員の構成が変わるわけではありません。


五名の生体人員――星崎紬、モード・ラン・ヴァレス、ヴェスペラ・ノクス・オーレル、レア・ヴァレン、カリスタ・フェロ――は、引き続き主要乗員として登録されています。


そして私は、Synthetic Personの身体を持つSovereign-Class AI、セラフィエル・ヴェロリアです。


中核メンバーは六名。


それ以上でも、それ以下でもありません。


整備ドローン、モバイルフレーム、艦内自動化システムはASTRAEONのインフラストラクチャーの一部であり、生体人員の代わりに乗員数へ加算されるものではありません。


私は紬とともに司令デッキに立っていました。


「セラフィエル、全体の状況は?」


「出港前点検は完了しています。推進機関、航行、通信、エネルギー管理、およびASTRAEON AEGISの六層防衛システムは、すべて正常な運用状態です」


「メインハンガーは?」


「ASTRAEA OF THE SILVER LANTERNは、引き続き輸送用架台に固定されています。位置のずれは検出されていません。修理システムもカリスタの設定に従って稼働中です」


「あちらの技術を、こちらの中枢システムに接続しないように」


「ご指示どおり、隔離状態を維持しています。ASTRAEAの修理作業には、すべて同艦の設計に適合する技術基準を使用しています」


「よし」


私は外部通信状況を表示しました。


「基地からの航行許可も受信済みです。ヴェスペラに通知されたスケジュールどおり、出港回廊が利用可能となっています」


「こちらの前を通過する船はあるか?」


「隣接航路に数隻の貨物船が存在します。ヴェスペラが移動時刻を調整しているため、ASTRAEONがそれらの航路に進入することはありません」


「航路の調整は彼女に任せよう」


「承知しました」


私は保存されているメッセージ一覧を確認しました。


アルケイオン銀河連邦の作戦に関するデータパッケージは、引き続き分離された証拠保管領域に保存されています。原本データは変更されずに保持され、初期調査の結果は別個の分析ファイルに保存されています。


命令を出した人物の身元を確定できる証拠は、まだ存在していません。


私は、入手可能な情報を超える結論を提示することはありません。


「艦長」


「何だ?」


「アルケイオンに関するデータパッケージは引き続き保存されており、出港後も再調査が可能です。現時点で、初期分析の結論を変更するような新たな進展はありません」


「船の運用に支障が出るほど分析を優先するな。俺たちは彼らを追いかけているわけじゃない」


「承知しました。航行や出港手順に影響を与えない範囲で、データの監視を継続します」


紬は頷いた。


司令デッキの別の場所では、ヴェスペラが選択した航路を確定させていました。


「航行ルートの準備が整ったわ、艦長」


「ありがとう、ヴェスペラ」


「許可された経路に従って基地の管制区域を離脱するわ。ローカル回廊の境界に到達した後、FTL航行への移行を確認する予定よ」


「分かった」


私はドッキングシステムからの確認を受信しました。


外部固定装置が順番に接続を解除し始めます。


サービスドローンは船体から離れ、指定された格納場所へ戻っていきます。いくつかの接続装置は港湾エリアへと引き戻され、船体支持システムも解除シーケンスを完了しました。


「ドッキング接続はすべて解除されました」


紬がメインスクリーンを見た。


「出港を開始しよう」


「承知しました、艦長」


私は航行システムへ指令を送信しました。


ASTRAEON VELORIAが動き始めます。


大きな衝撃はありません。


船全体を揺らすような急激な変化もありませんでした。運動制御システムは、事前に算出された許容範囲内で加速を維持しています。


外部映像では、巨大な船体がゆっくりと係留位置を離れていきました。


画面の中で、タラリス辺境物流基地の構造物が徐々に遠ざかっていきます。


「操船速度は許容範囲内です。出港経路に障害はありません」


「続けてくれ」


「承知しました」


私はメインハンガーの映像へ、表示の一部を切り替えました。


ASTRAEAは安全な位置に留まっています。


輸送用架台にかかる負荷にも変化はありません。整備ドローンは作業を継続しており、ハンガー監視システムは、カリスタによる直接点検が必要な状態が発生した場合に報告するよう設定されています。


「ASTRAEONはドッキング境界を通過しました」


ヴェスペラが確認しました。


「現在、基地の出港経路に入っているわ。航路を横切る船はない」


紬は航行スクリーンを見つめた。


「交通管制区域を抜けたら、当初の計画どおりに進めてくれ」


「了解」


数分後、航行ステータスが切り替わりました。


LOCAL TRAFFIC CONTROL――CLEAR


INDEPENDENT COLONY ROUTE――ACTIVE


「艦長、基地の交通管制区域を離脱しました」


「ヴェスペラの計算に従って移行を実行してくれ」


「承知しました」


FTLシステムが移行準備を開始しました。


瞬間的なテレポートではありません。恒星間移動を実行する前に、座標、航路、空間状態、そして事前に算出された出口地点を確認する必要があります。


ヴェスペラが選択した航路が、引き続き最優先の基準となります。


しばらくして、FTLシステムは必要な状態に到達しました。


「航路、安定」


「開始してくれ」


「FTL移行を開始します」


窓の外に見える星々の光が、長い光の筋へと変わりました。


ASTRAEON VELORIAは、タラリス辺境物流基地周辺の宙域を離れ、次の航行ルートへと進入しました。


C-145-MCの契約は完了しています。


基地へ引き渡すべき貨物は、もうありません。


しかし、アルケイオンの作戦に関する証拠は依然として船内システムに保管されており、命令を出した人物の身元もまだ判明していません。


私は出港に関する全報告を保存しました。


その後、再び紬に視線を向けます。


「艦長。出港手順はすべて完了しました」


「よくやった、セラフィエル」


「ありがとうございます」


船は再び星間空間へと進んでいきます。


そして今のところ、ほかに急いで追いかけるべきものはありません。


### 視点:レア・ヴァレン


私はモバイルフレーム格納庫の状態を確認している最中に、端末へ出港通知が届いた。


ASTRAEONはタラリス辺境物流基地を離れたらしい。


ドッキング解除の際に問題は発生していない。ヴェスペラも、選択した航路がFTL移行に適していることを確認済みだった。


私は点検報告を閉じた。


「ようやく出発ね」


肩を伸ばす。


少し前まで、私はハンガーエリアにいて、出港手順を妨げる整備作業が残っていないか確認していた。


ドローンユニットはすでにそれぞれの位置へ戻っている。ハンガーシステムは正常で、モバイルフレームも格納位置に留まっていた。


出撃準備をする理由はない。


私たちは戦闘に向かっているわけではないのだから。


私はハンガーを出て、グランドサロンへ向かった。


そこでは紬が座り、個人端末に表示された航行情報を眺めていた。


「艦長」


「ん?」


「大仕事を終えたばかりの人みたいな顔をしているわね」


「実際、短くない契約だったからな」


「でも、これで終わったんでしょう?」


「ああ」


私は彼の向かい側の席に腰を下ろした。


「それじゃ、ようやく次の旅が始まったわけね」


「そういうことだな」


私は彼の顔を眺めた。


「一つ聞いてみたいことがあるの」


「何だ?」


「傭兵の旅に戦姫を乗せるって、どんな気分?」


紬が顔を上げた。


「どういう意味だ?」


「だって、今の私たちには皇女が一人、同行しているでしょう。最初は貨物を運んで、その次に王国艦を救助した。ところが今度は、助けた本人が私たちと一緒に旅をすることになったわけよ」


「彼女は荷物じゃないぞ」


「分かっているわ。だから、どんな気分なのか聞いているの」


紬は小さく息を吐いた。


「特別な感慨はないな」


「本当に?」


「一時的な旅の同行者だ。お互いに境界も合意している。大げさに考える必要はない」


私は大きく笑った。


「あなたらしいわね。皇女が船に乗っていても、普通の乗客を受け入れたときみたいな返事なんだから」


「じゃあ、どうすればいいんだ? 彼女が部屋に入るたびに赤い絨毯でも敷けばいいのか?」


「それ、いい考えね」


「やめてくれ」


私は笑った。


「残念。あなたが本当にやったら、ランがどんな顔をするか見てみたかったのに」


「ランを怒らせたいなら、俺を巻き込まないでくれ」


「分かった。別の方法を考えるわ」


紬は首を横に振った。


私はグランドサロンの出入口へ目を向けた。


「そういえば、ミレルはどうなったの?」


「ASTRAEAの帰還要員と一緒に戻った。セラフィナは、次の旅でもミレルに同行してもらえるよう家族に申請を送ったらしい」


「まだ決まっていないのね?」


「まだだ」


「家族が許可すれば、彼女も同行できる?」


「旅の手配については、まだ話し合う必要がある。ランが立場や必要なものを調整することになる。ただ、セラフィナの補佐だからという理由だけで断るつもりはない」


私は頷いた。


「それはよかった。セラフィナも、昔から知っている人が近くにいた方が安心するでしょうし」


「俺もそう思う。ただ、今すぐすべてを決めることはできない」


「もちろん」


私は椅子の背もたれに身体を預けた。


「もし彼女が来ることになったら、一緒に食事をする相手がもう一人増えるわね」


「それくらい、大した問題じゃないだろ」


「ランにとっては、やっぱり大問題かもしれないわよ」


「君は本当にランを困らせたいんだな?」


「少しだけね」


私たちは笑った。


しばらくすると、セラフィナがグランドサロンへ入ってくるのが見えた。


彼女はすぐに私たちのところへ来ることはなく、大きな窓の向こうに広がる星間空間を眺めていた。


「誰かを探しているのかしら?」と私は尋ねた。


「そうは見えないな」


セラフィナは少し立ち止まり、それから私たちの方を向いた。


「紬、レア」


「どうしたの?」と私が尋ねた。


「二人とも、今は忙しくないかしら?」


「私はちょうどハンガーの点検を終えたところよ。どうしたの?」


「展望室に行きたいの。係留エリアを完全に離れた後のASTRAEONの航行を、あそこから見たことがないから」


紬が立ち上がった。


「構わないぞ」


「一人で行けるわ」


「行くなとは言っていない」


「それなら、先に行っているわね」


私はすぐに立ち上がった。


「待って。私も行くわ」


紬が私を見る。


「さっき仕事が終わったと言っていなかったか?」


「だからこそよ」


「君には理由が尽きないな」


「ありがとう」


「褒めてないぞ」


セラフィナが小さく笑った。


私たち三人は展望室へ向かって歩き始めた。


ASTRAEONの展望室は、グランドサロンよりもずっと静かな場所だった。


部屋の片側には広大なパノラマウィンドウが広がっている。その向こうには、果てしない星間空間が広がっていた。遠くの星々の光は、暗い空間の表面に散らばった小さな点のように見える。


セラフィナは窓の近くに立っていた。


しばらくの間、彼女は何も話さなかった。


私はその隣に立ち、紬は窓から少し離れた席に腰を下ろした。


「とても綺麗ね」


やがてセラフィナが口を開いた。


「見たことがなかったの?」と私は尋ねた。


「見たことはあるわ。でも、いつも公務を遂行している船からだった。報告書や予定、あるいは注意しなければならないことが、常にあったもの」


「ただ星を見るためだけに、ここに立つ時間はなかったの?」


「ほとんどなかったわ」


私は彼女に顔を向けた。


「なら、今はできるわね」


「ええ」


彼女は手を上げ、指先を窓の表面にそっと触れさせた。


「私はいつも、何を守るべきかを考えていた。船、乗員、領域、そして自分の責任の下にいる人々。そうしたものを、望んでいない重荷だと思ったことはないわ。それが私の責任だったから」


「でも、今は?」


「今は、これまで報告書の中で点としてしか見たことのなかったものも、自分の目で見てみたいの。まだ訪れたことのないコロニー、公式日程に一度も組み込まれなかったステーション、帝国と外交関係を持たない惑星。命令されたから見るのではなく、自分の意思で見たいものがあるのよ」


私は微笑んだ。


「面白そうね」


「どこから始めればいいのかは、まだ分からないけれど」


「それでも構わないわ。私たちだって、航路を受けたときに何を見つけるのか、いつも分かっているわけじゃないもの」


紬が席から私たちを見た。


「ただし、どの場所も友好的に迎えてくれるとは限らないぞ」


「分かっているわ」


「それに、すべてのコロニーにこの船みたいな設備があるわけじゃない。食事が質素な場所もあれば、通信網が遅い場所もある。宿泊施設だって、君が宮殿で慣れ親しんだ水準に届かないかもしれない」


セラフィナが振り返った。


「もう聞いているわ」


「ならいい」


私はくすりと笑った。


「紬、いつもそんなことばかり言うんだから。まずは景色を楽しませてあげなさいよ」


「期待と違う場所に着いて、誰かが驚くのを見たくないだけだ」


セラフィナは再び星々を眺めた。


「構わないわ。私は、そういう場所を見てみたいのだから」


私は彼女の横顔を見つめた。


かつて攻撃の只中に立ち、乗員を救うための決断を下さなければならなかった戦姫。


今は独立船の展望室に立ち、すぐに命令を出す必要もなく星々を見つめている。


彼女の表情には、何か違うものがあった。


責任を忘れたというわけではない。


ただ、あの襲撃以来初めて、自分自身の目で見たいものについて考えているように見えた。


「それなら、今度は訪れるのに良さそうな場所を探しましょう」


セラフィナは微笑んだ。


「とても楽しみだわ」


私は腕を組んだ。


「でも、どこにでも高級レストランがあると思わないでね」


「気にしないわ」


「よかった。食事のことなら、私だってまだ食べたことのないものを試してみたいもの」


「それなら、私たちの目的は同じね」


紬が立ち上がり、こちらへ近づいてきた。


「二人が食事処のリストを作り終えたなら、そろそろヴェスペラに余計なプレッシャーをかけずに航路を任せてやってもいいんじゃないか?」


「リストなんて作っていないわ」


「今、自分で言っただろ」


「最初の計画よ」


「その最初の計画が、いつも買い物リストになるんだ」


私は笑った。


セラフィナも小さく笑っていた。


しばらくすると、部屋のシステムを通じてセラフィエルからの通知が聞こえてきた。


「星崎紬艦長、指定されたFTL航路への進入を確認しました。艦内の全システムは正常な状態です」


「分かった、セラフィエル。ありがとう」


「どういたしまして、艦長」


紬は窓の方を見た。


「これで本当にタラリスを離れたな」


私は彼の隣に立った。


外には長く伸びる光の筋が広がっていた。展望室から見える星々は、もはや静止しているようには見えない。船の航行に合わせて、光が流れていく。


セラフィナはその光景を、黙って見つめていた。


私は彼女に顔を向けた。


「戦姫様」


「何かしら?」


「本当の旅へようこそ」


セラフィナは微笑んだ。


「ありがとう、レア」


「そんなにかしこまらなくていいわよ。私たちと旅をするなら、紬のつまらない冗談にも慣れてもらわなくちゃ」


「もう慣れ始めていると思うわ」


「おい」


紬がこちらを見た。


「聞こえているぞ」


「わざと聞こえるように言ったのよ」


セラフィナは笑いをこらえていた。


私は満足げに微笑んだ。


これほど広大な船の中で、私たちはただ旅を楽しんでいる数人にすぎない。


歓迎式典はない。


軍事命令もない。


誰かが皇族の称号を持っているからといって、常に背筋を伸ばして立っている義務もない。


ただ、一隻の船が再び航行を始め、それぞれの目的を持つ人々を乗せているだけだ。


ASTRAEON VELORIAは、独立コロニーへ向かう航路を進み続けている。


C-145-MCの契約は完了した。


ASTRAEA OF THE SILVER LANTERNは、再び運用可能な状態になるまで、引き続きハンガー内で修理を待っている。


帰還許可を得たASTRAEAの乗員たちは、ようやく家族のもとへ戻ることができる。


セラフィナは、自らの意思で旅を続けることを選んだ。


一方、アルケイオンの作戦に関する証拠は、安全に保管され続けている。現在得られている情報だけでは命令を出した人物を特定するには不十分であり、推測を結論へ変える理由もまだ存在しない。


次の旅路は、私たちの目の前に広く続いていた。


そして今度は、一人の戦姫が銀河を、ただ守らなければならない領域としてではなく、自分自身の目で知りたい場所として見つめていくことになる。


### 【第6巻・完】


【第7巻へ続く】


### 『皇女と行く、自由傭兵の銀河旅行』


ASTRAEON VELORIAは、独立傭兵船としての日常を再び歩み始める。


セラフィナは、今や一時的な旅の同行者となった。彼女は船内生活の規則を学び、乗員たちの日常に適応し、そして自ら選んだ自由にも責任が伴うことを理解していかなければならない。


一方、ミレル・ソヴァンに関する皇族への申請は、いまだ正式な回答を待っている。


次の独立コロニーへ向かう旅は、すでに始まった。


今度の彼らの目的は、帝国の問題を解決することではない。


ただ、銀河を旅してみたいのだ。


【第6巻・完】


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