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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第177話】「皇室からの迎え」

【第177話】「皇室からの迎え」


場所: タラリス国境兵站補給拠点 — 通信室および停泊エリア 主要

視点: セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン → モード・ラン・ヴァレス → 星崎紬 → ヴェスペラ・ノクス・オーレル


### 視点 — セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン


故郷からの便りがようやく届いたとき、そこには何か特別なものがあった。


王宮からの通信を受け取ったことがなかったわけではない。幼い頃から、私の生活は報告、指示、通知、そして帝国の公式通信網を通じて送られてくる決定に満ちていた。


父からのメッセージでさえ、高位の役人たちが使用するものと同じ通信経路で受け取ることに慣れていたほどだ。


けれど、今回は違った。


目の前の通信端末には、つい先ほどヴェルドラコンの通信網による認証を完了したことを示す表示が出ていた。


私の身元が確認された。


私の現在地も判明した。


そして、長い時間を経て、帝国側はようやく私が無事であるという確かな情報を得たのだ。


「セラフィナ様。帝国通信網による身元確認が完了しました」


隣から、セラフィエルの落ち着いた声が聞こえた。


私は端末から視線を移す。


「迎えに関する指示は、もう届いているの?」


「最終的な指示はまだ届いていません。ただし、ヴェルドラコンの通信網は現地当局との調整経路を開設しています。現在、複数の帰還ルートが検討されているようです」


「複数の可能性?」


「はい。正式な航路、特別護衛を伴う航路、そして代替の迎え地点の利用が検討されているとの通知を受けています。いずれも、まだ最終承認には至っていません」


私はゆっくりと頷いた。


それは当然だろう。


たとえ私が皇女であっても、物流契約を遂行中の独立船にいるという状況は、一つ命令を送れば解決するようなものではない。


まして、ASTRAEAが損傷する原因となった事件についても、まだ詳しい調査が必要だった。


私は紬の方を見た。


星崎艦長は通信卓のそばに立っていた。焦っている様子はないものの、目の前に表示されている情報へ意識を集中させているのは明らかだった。


「紬」


「ん?」


「どうやら、父は私がここにいることを知ったみたい」


「それはよかった。家族が君の安否も分からないまま、探し続けなくて済むからな」


返ってきたのは、ごく簡単な言葉だった。


恩返しについて尋ねることもない。すぐに帰るよう求めることもない。ただ、本来なら喜ばしい知らせだと告げただけだった。


私は少し微笑んだ。


「もう一つ、伝えたいことがあるの」


「何だ?」


私は再び端末に目を向けた。


新たに届いた複数の公式通知の中に、ほかとは異なる分類のメッセージが一つ存在していた。


省庁からの連絡ではない。


王宮職員からの指示でもない。


送信者は、私の父自身だった。


「父から個人的なメッセージが届いたの」


紬が顔を上げる。


「個人的なメッセージ?」


「ええ。どうやら、私だけに宛てられたものではないみたい」


私は送信者情報に触れ、もう一度その分類を確認した。


PERSONAL IMPERIAL MESSAGE


Sender: Edric Valkreyn Veldrakon Recipient: Seraphina Valkreyn Veldrakon Additional Designation: Captain of ASTRAEON VELORIA Access Condition: Recipient Verification Required Transmission Integrity: Verified Message Status: Sealed


私は一瞬、言葉を失った。


父は、ASTRAEON VELORIAの艦長を追加の受信者として明確に指定していた。


「セラフィエル」


「はい、セラフィナ様」


「父から特別なメッセージが届いているの。私と、特にASTRAEON VELORIAの艦長に宛てられたものよ」


セラフィエルは端末に目を向けた。


「内容を開く前に、メッセージの真正性と完全性を確認しましょうか?」


「ええ。でも、その前に紬へ、このメッセージが本人に宛てられていることを伝えておきたいわ。先に知らせず、ほかの人に受け取る権利があるものを開くようなことはしたくないもの」


紬が頷く。


「俺に宛てられた部分があるなら問題ない。真正性を確認した後、一緒に確認すればいい」


「承知しました」


セラフィエルが端末へ近づく。


しかし、処理を始める直前、私は小さく手を上げた。


「もう一つ。関係者全員で聞きたいわ」


「クルー全員か?」


紬が尋ねる。


「ええ。少なくとも、船に関わる仕事や意思決定に参加している人たちには聞いてほしい。一部の人だけが重要な情報を知っている、という状態にはしたくないの」


紬はすぐには答えなかった。


少しの間、私を見つめてから頷く。


「分かった。みんなで聞こう」


私は少しだけ安心した。


長い旅を経た今、情報を隠さず共有するという、ただそれだけの決定が、思っていた以上に大切なことのように感じられた。


その後、通信室にはASTRAEONの関係クルーが集まった。


管理端末を持ったランがやって来て、航路監視をナビゲーションシステムへ引き継いだヴェスペラが続いた。カリスタも、技術検査用の装置を手にしたまま到着した。


レアもその場にいたが、すぐには席に座らなかった。


一方、セラフィエルは通信メインパネルの前に立ち続けていた。


私は一人ずつ、そこにいる人たちを見渡した。


少し前まで、私の本当の身分さえ知らなかった人たち。


今では同じ部屋に立ち、父からのメッセージに耳を傾けようとしている。


「準備が整いました、セラフィナ様」


セラフィエルが告げる。


「お願い」


「メッセージを開く前に、送信元、デジタル署名、伝送経路、およびデータの完全性を検証します。この処理によって、ASTRAEONの内部システムへ外部ネットワークからアクセスできるようになることはありません」


「ええ、お願いするわ」


画面に複数のインジケーターが表示された。


IMPERIAL MESSAGE AUTHENTICATION


| 検証項目 | 結果 |

| -------- | ----- |

| 送信者の身元 | 検証済み |

| デジタル署名 | 有効 |

| 伝送経路 | 正式 |

| データの完全性 | 破損なし |

| 改ざんの兆候 | 検出されず |

| メッセージの状態 | 認証済み |


セラフィエルは結果をもう一度確認した。


「メッセージはエドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン皇帝から送信されたものです。受信したデータに改ざんの兆候は確認されませんでした」


ランが腕を組む。


「つまり、表示されている送信者本人から送られたメッセージだと確認できたわけね」


「そのとおりです、ラン様」


「分かったわ。続けて」


私は紬を見た。


彼は小さく頷く。


セラフィエルは、メッセージを開いた。


メインディスプレイに一通の正式な文書が表示される。


PERSONAL IMPERIAL MESSAGE


From: Edric Valkreyn Veldrakon To: Seraphina Valkreyn Veldrakon Additional Recipient: Captain Hoshizaki Tsumugi — ASTRAEON VELORIA


セラフィナ、我が娘へ。


お前が現在どこにいるのか、確認が取れた。


まず伝えたいのは、お前が生きていて、無事な状態にあることを知り、安堵したということだ。


お前を乗せている船についても、ASTRAEON VELORIAが行った支援を含め、初期報告を受け取っている。


だが、このメッセージは感謝を伝えるためだけのものではない。


星崎紬艦長へ。


私、エドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコンは、我が娘を救い出し、航行中の保護を提供してくれた君の行動に対し、個人的な敬意を伝えたい。


君の船が独立した契約を遂行中であることは理解している。


だからこそ、これまでの支援を帝国への奉仕と見なすつもりはない。また、君たちとの関係を軍事的な義務へと変えるつもりもない。


一つ、直接話し合いたいことがある。


ASTRAEA OF THE SILVER LANTERN。


あの船は皇室の所有する船であり、先の事件で深刻な損傷を受けた。ASTRAEON VELORIAの格納庫に収容され、修理作業が始まったとの情報も受け取っている。


ASTRAEON VELORIAが引き受ける意思を持っているのであれば、ASTRAEAの修理完了までを君たちに任せたい。


私は、オーレリア・ヴェリエンヌの救出後、ヴェリエンヌ公爵家が星崎艦長に名誉勲章を授与し、ASTRAEON VELORIAを公爵家の友人と認めたことも把握している。


公爵家が君たちに寄せた信頼は、私にとっても重要な判断材料となった。


その関係を利用して決定を強制するつもりはない。


しかし、実際の行動を通じて一つの家から信頼を得た者であれば、皇室からも同様の責任を任せる候補として考慮できると、私は信じている。


費用については、ASTRAEON VELORIA自身で修理作業全体の見積もりを行ってほしい。


検査費用、資材、部品交換、人件費、そして実際に必要となるその他の技術作業について、それぞれ個別かつ透明性をもって記載してもらいたい。


最終的な見積もりが提出された後、皇室がその請求額の全額を個人的に支払う。


友好関係にあるという理由だけで、仕事の対価を減額する必要はない。


私は、ASTRAEAが責任を持って運用できる状態へ戻ることを望んでいる。そして、その作業を引き受ける者たちには、それに見合った支払いを受け取ってほしい。


セラフィナの迎えについては、迎えの地点と航路が双方の合意によって決まり次第、ASTRAEAの人員を迎えに向かわせる準備を進める。


安全性や、使用する船の状態が確かでないまま、彼らを向かわせるつもりはない。


星崎艦長。


君たちが望まない責任を引き受けるよう、要求するつもりはない。


だが、ASTRAEAの修理完了に協力してもらえるのであれば、私はそれを皇帝からの命令ではなく、信頼に基づいて築かれる協力関係として受け止めたい。


エドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン ヴェルドラコン銀河帝国皇帝


メッセージが読み上げられた後、すぐに口を開く者はいなかった。


私自身、まだ画面を見つめていた。


父は確かに感謝の言葉を伝えていた。けれど、私が最も心を動かされたのは、あの依頼の伝え方だった。


命令ではない。


皇帝という立場を利用して、強制することもない。


家族を助けてくれた人たちに、選択肢を与えていた。


「お父様が、本当にこんなメッセージを……」


ほとんど無意識に口から漏れていた。


紬はまだ文書を確認していた。


「つまり、皇室はASTRAEAの修理を俺たちに任せたいということか」


「ええ」


カリスタが少し手を上げる。


「それなら、決定について話し合う前に、一つ確認したいことがあるんだけど」


紬が彼女を見る。


「何だ?」


「今、あたしが進めているASTRAEAの修理は、引き続き輸送契約C-145-MCとは別の技術作業だよ。皇帝のメッセージによって、さっき終えた貨物検査の扱いが変わるわけじゃないし、二つの仕事を混同する理由もないからね」


ランが頷く。


「そのとおりね。船の修理費用は、独立した記録として管理する必要があるわ。貨物輸送契約の金額と合算してはいけない」


私はランを見る。


「つまり、ASTRAEONが父の依頼を引き受けた場合、費用は別々に計算するのね?」


「当然よ。たとえ支払元が皇室であっても、記録は明確でなければならないわ。作業費、使用した資材、交換した部品、運用費用は、それぞれに計算根拠が必要になるもの」


紬が頷く。


「俺も、後から誤解が生まれるのは避けたい。何を作業するのか、何を請求するのか、そして皇室側がどこまで責任を持つのか、明確にしておく必要がある」


カリスタが薄く笑った。


「それなら、あたしは作業を続けても構わないよ。むしろ、今は修理を完了させるための根拠が前よりはっきりしたからね」


私は彼女に視線を向けた。


「ASTRAEAは完全に修理できる状態なの?」


「これまでの検査結果から判断する限り、修理は可能だよ。ただし、損傷した部品をすべて調べ終えるまでは、最終的な見積もりは出さないつもり」


カリスタは手にしていた装置を動かした。


「機動システム、電力網、船体防護の損傷は、目視検査だけでは判断できないからね。それぞれのシステムに関係する部分を、すべて検査する必要があるよ」


「どれくらいかかりそう?」


「責任を持って提示できる完了時期は、まだ出せないね。誰かを安心させるためだけに、予定を約束するつもりはないから」


紬が頷いた。


「急ぐ必要はない。大事なのは、最後に正しく仕上がることだ」


「了解、艦長」


私は再び父のメッセージを見つめた。


ASTRAEAは、ただ救助された船として終わるのではないかもしれない。


あの船は再び航行できるようになるかもしれない。


そして、かつてその船の中で危険にさらされていた人たちも、自分たちの居場所へ戻れる可能性がある。


### 視点 — モード・ラン・ヴァレス


私は支払いについて書かれた箇所を読み直していた。


皇室に支払い能力があるかどうかを疑っているわけではない。


むしろ、送信者が皇帝本人であるからこそ、確認しておきたいのだ。


修理費用の全額を皇室が個人的に支払うという一文は、十分に明確な意思表示だった。


しかし、商業業務においては、明確な意思表示にも、それに対応する明確な書類が必要になる。


友好的な関係だけで手続きの代わりになると考えた結果、事務上の問題が生じるような事態は避けたかった。


「艦長、一つ説明しておきたいことがあります」


紬が私へ視線を移す。


「どうぞ、ラン」


私は端末を開き、二つの異なる書類を表示した。


「まず一つ目は、輸送契約C-145-MC。二つ目は、ASTRAEAの修理作業です。この二つは、会計上も必ず分けておく必要があります」


最初の画面には、貨物輸送契約の完了記録が表示された。


C-145-MC — FREIGHT CONTRACT


| 項目 | 状態 |

| --------- | ------------ |

| 契約総額 | 8,400,000 GC |

| 貨物検査 | 完了 |

| マニフェスト適合性 | 検証済み |

| 引き渡し | 処理済み |

| 正式受領 | 記録済み |

| 支払い状況 | 決済完了待ち |


「輸送契約は、正規の引き渡し手続きを通じて完了しています。契約総額の8,400,000 GCに変更はありません。ただし、貨物の受領と支払いの完了は、それぞれ別の段階です」


紬が表を見る。


「つまり、ASTRAEAの修理作業と結びつける必要はないわけだな」


「そのとおりです。そうする根拠もありません」


私は表示を切り替えた。


ASTRAEA OF THE SILVER LANTERN — REPAIR ACCOUNT


| 記録項目 | 状態 |

| ------- | ------ |

| 技術検査 | 進行中 |

| 損傷一覧 | 作成中 |

| 交換用資材 | 最終確定待ち |

| 修理作業 | 進行中 |

| 費用計算 | 未確定 |

| 皇室への請求書 | 未発行 |


「修理作業については、まだ最終的な金額が出ていません。カリスタがいくつかの部品を検査している最中ですから、技術的な根拠のない見積もりを記載するつもりはありません」


カリスタが立ったまま頷いた。


「それが正しい判断だよ」


私は続ける。


「検査が完了した後、実際に修理した部品と作業内容に基づいて、すべてを記録します。実施していない作業の費用を含めることはありませんし、本当に必要な作業の費用を減らすこともありません」


紬が私を見た。


「皇帝が約束した支払いについては、どうする?」


「正式な書類と支払いの仕組みが確認できた後で受け取ることができます。ただし、支払者、受取人、作業範囲、完了条件を記載した書面による承認は求めたいと思います。皇帝からの個人的なメッセージは、協議を始めるうえで十分な根拠になりますが、請求書には適切な取引書類が必要です」


「もっともだな」


私は一つのパネルを閉じた。


「もう一つあります」


「何だ?」


「セラフィナ様の迎えについてです。ASTRAEAの人員が迎えに来ることによって、ASTRAEONが帝国の護衛船に変更されたと誤解されないようにしなければなりません」


セラフィナが私たちの会話に耳を傾けていた。


「私がこの船にいるからといって、あなたたちにそのような義務を引き受けてほしくないわ」


「その点は理解しております、セラフィナ様」


私は何も記入されていない書類を表示した。


「皇室が迎えの人員を派遣する場合、次の情報を書面で受け取りたいと考えています。人員の身元、使用する船舶の識別情報、迎えの地点、提案される航路、責任を負う権限機関、そして護衛の有無です」


紬が頷く。


「俺たちが新しい護衛契約に同意したと、誰かに思われないようにしないとな」


「そのとおりです。私たちは、現在進行中の帰還に協力しているだけです。新たな契約が必要なら、別途協議し、個別に合意しなければなりません」


セラフィナが小さく微笑んだ。


「あなたたちは、本当に何事も真剣に扱うのね」


私はその笑顔に応じた。


「きちんと記録されていないことは、仕事そのものよりも大きな問題になることがよくありますから」


レアが小さく笑った。


「ランって、簡単な話まで高度な財務監査みたいに聞こえさせるよね」


「それは褒め言葉として受け取っておくわ」


「もちろん、褒めてるよ」


部屋の空気が少し和らいだ。


それでも、まだ一つ確認しておきたいことが残っていた。


私はセラフィエルへ顔を向ける。


「セラフィエル、迎えに来る予定のASTRAEAの人員について、何か情報はありますか?」


セラフィエルが頷いた。


「お伝えできる医療情報はいくつかあります。ただし、航行の安全と治療の継続に関係する範囲に限定して説明します」


「お願い」


「その件については、艦長も交えて話し合うことをお勧めします。人員の医療情報は、引き続き個人情報として扱う必要がありますので」


紬が頷いた。


「分かった。その後で話そう」


私は取引書類を保存した。


少なくとも、事務管理の面では責任の境界が見え始めていた。


貨物契約は完了。


ASTRAEAの修理は、まだ進行中の新たな仕事。


セラフィナの迎えは、まだ護衛契約ではない。


そして、皇帝のメッセージによって、それらの境界が変わることもない。


私にとって、それは何をすべきか分からないまま大きな依頼を引き受けるより、はるかに良い出発点だった。


### 視点 — 星崎紬


俺はエドリック皇帝からのメッセージをもう一度読み返していた。


一つ、かなり興味を引かれた部分がある。


修理費用の話でもない。


セラフィナの迎えについてでもない。


オーレリアの家族について触れていた箇所だ。


「セラフィエル」


「はい、紬」


「皇帝はヴェリエンヌ家から授与された名誉勲章について触れていたな。帝国側は本当にその件を報告として受け取っていたのか?」


「はい。オーレリア・ヴェリエンヌの事件が解決した後、救助、ヴェリエンヌ公爵家への帰還、そして名誉勲章の授与に関する情報は、帝国側がアクセス可能な行政ネットワークに記録されています」


「つまり、セラフィナの父親は、公爵家が俺たちを信頼していることを知っているわけか」


「おそらくそうでしょう。ただし、メッセージには、その信頼は判断材料であり、協力関係を強制する根拠ではないと明記されています」


俺は頷いた。


それは十分に明確だった。


公爵家はASTRAEONを家族の友人と認めている。そして今度は、皇室も俺たちに仕事を任せたいと考えている。


だが、良好な関係を理由に、あらゆる依頼を無条件で引き受けるつもりはない。


「セラフィナ」


「何かしら、紬?」


「ASTRAEAの修理を手伝うこと自体に抵抗はないよ。カリスタが安全に作業を進められて、関係者全員がそれぞれの責任を理解しているなら、この仕事は続けられる」


セラフィナが俺を見つめた。


「ありがとう。お父様も、それを聞けばきっと安心するわ」


「ただ、一つ確認しておきたい」


「何?」


「君自身はどうしたい? ASTRAEAの人員が到着したら、すぐに迎えに来てもらいたいのか。それとも、ほかに考えておきたいことがあるのか?」


セラフィナはすぐには答えなかった。


少し俯いてから、再び顔を上げる。


「彼らに会いたいと思っているわ。あれだけのことがあったのだから、伝えなければならないこともたくさんあるもの。ただ、今の彼らがどんな状態なのか、まだ分からないの」


「詳しい報告は受け取っていないのか?」


「まだよ。ほとんどの人員が救助され、初期治療を受けたということしか知らないわ。一人ひとりの状態までは把握していないの」


俺はセラフィエルへ目を向けた。


「ASTRAEAの負傷した人員は、今どんな状態なんだ?」


セラフィエルが医療パネルを表示する。


「ASTRAEAの全乗員は、救助後に医療検査を受けています。検査項目には神経学的状態、代謝、細胞反応、組織の安定性、主要な生理学的指標が含まれています」


「まだ危険な状態の人はいるのか?」


「私が利用できる最新の検査データに基づく限り、直ちに緊急処置を必要とする急性不安定状態を示した人員はいません。ただし、検査結果からは、オーレリア・ヴェリエンヌと類似した生物学的適応の傾向も確認されています」


俺はパネルを見つめた。


「オーレリアと似ている?」


「はい。生物学的な安定性は良好な水準にあります。しかし、一部の指標には、長期間にわたる異常な状態を経た後も、身体が引き続き適応過程にあることを示す変化が見られます」


セラフィナの表情がさらに真剣になる。


「つまり、彼らの身体もオーレリアのときのように変化しているの?」


「現在の医療観察の範囲では、共通する傾向が確認されています。ただし、全員が同一の過程を経験しているとは断定できません。各人の初期状態、健康履歴、生物学的反応は異なりますので」


俺は画面に表示された数値を確認した。


いくつかの指標は安定している。


急性の損傷を示す兆候もない。


だが、細胞修復活動と代謝適応には、依然として変化が見られた。


「それは危険なのか?」


セラフィエルはゆっくりと首を横に振る。


「現時点では、直接的な危険を示す指標は見つかっていません。ただし、通常の回復がすでに完了した状態と見なすことはできません。長期的な経過観察が必要です」


俺は以前のオーレリアの検査を思い出した。


セレーネは以前、あの少女の身体は低温睡眠からの回復結果を維持しているだけではないと説明していた。新たに置かれた生物学的環境に、身体そのものがまだ適応を続けていたのだ。


当時、慌てる必要はなかった。


それでも、数か月にわたる追加検査は必要だった。


ASTRAEAの人員にも同じような傾向があるのなら、彼らにも同様の配慮が必要になる。


「セラフィエル、セレーネは彼らの状態を知っているのか?」


「専門的な経路を通じて、共有を許可された医療概要は送信済みです。ただし、セレーネはASTRAEAの全人員を直接診察してはいません」


「セレーネは今どこにいる?」


「最後に確認できた通信によれば、セレーネはまだ帝国領域内にいます。おそらくヴェリエンヌ家の周辺にいると思われますが、最新の所在地については、まだ確認を受け取っていません」


俺は頷いた。


「なら、どうするのがいいと思う?」


セラフィエルは急がずに答えた。


「継続的な経過観察を必要とするASTRAEAの人員については、セレーネ・アルカディアによる直接診察を受けることを推奨します。彼女はオーレリアの生物学的傾向を把握しており、類似した変化に対する医学的評価を直接行った経験もあります」


「どうしてセレーネなんだ? Euphoriaでも検査できるだろう?」


「Euphoriaでも、利用可能なデータに基づく経過観察、分析、医療上の推奨を行うことはできます。しかし、患者の状態を総合的に評価するためには、医師による直接診察も必要です」


セラフィエルがパネルを拡大する。


「さらに、セレーネは、これまでオーレリアの症例に対してASTRAEONの医療技術へ専門的なアクセスを認可された、唯一の外部医師です。彼女は、以前合意したアクセス制限、手順、倫理原則を理解しています」


俺は画面を見つめた。


「つまり、俺たちだけでは検査できないから、という理由ではないんだな」


「そのとおりです。Euphoriaは引き続き内部検査と遠隔監視を行えます。ただ、セレーネを関与させることで、治療の継続性を確保すると同時に、類似症例を理解している医療専門家による独立した評価も得られます」


俺は頷いた。


納得できる話だった。


医療上の問題をすべて船の技術だけで解決できると考えたくはない。


技術は非常に詳細なデータを提示できる。だが、医療上の判断には、専門家による見解も必要になる。


「それなら、セレーネに連絡する必要があるな」


「以前使用した専門的な通信経路を通じて、診察の相談を送ることができます。ただし、各患者の同意なしに、全員の医療記録を開示することはしません」


「いいな。どの情報を共有するのか、本人たちにもきちんと知らせてくれ」


「承知しました」


それまで話を聞いていたセラフィナが、ようやく口を開いた。


「紬、彼らはこちらへ来られると思う?」


「船と人員の状態が許すなら、もちろんだ。ただ、君を迎えに来たいからといって、無理をして移動してもらうわけにはいかない」


「分かっているわ」


「セレーネが先に検査を受けるよう勧めるなら、その助言に従った方がいい。迎えの予定より、彼らの健康の方が大切だからな」


セラフィナは少し俯いた。


「私も、みんなが元気な状態で会いたいわ」


俺は、全員がきっと大丈夫だと安易な約束をすることはしなかった。


ただ、頷いた。


「必要な検査を受けられるようにしよう」


俺は、帝国通信網から届いた情報を表示するパネルへ目を向けた。


ヴェルドラコン側では、いくつかの選択肢が検討され始めていた。


しかし、まだどれも最終決定ではない。


「セラフィエル、受信した迎えの選択肢を表示してくれ」


「承知しました」


一つの表が表示される。


VELDRAKON IMPERIAL REPATRIATION — PRELIMINARY OPTIONS


| 選択肢 | 内容 | 状態 |

| --- | --------------------- | -------------- |

| A | 帝国の正式航路を利用した迎え | 評価中 |

| B | 特別護衛を伴う迎え | 承認待ち |

| C | その後の航行に備えた代替の安全地点での迎え | 調整中 |

| D | ASTRAEAの人員による直接の迎え | 船舶および人員の状態確認待ち |


俺はすべてに目を通した。


「予定はもう決まっているのか?」


「いいえ。すべての選択肢は暫定案です。到着時刻も迎えの座標も、まだ正式に承認されていません」


「安全だと確認された航路はあるか?」


「まだ最終的な保証はありません。いくつかの航路が提案されていますが、安全性の検証が必要です」


ランが横から付け加えた。


「だからこそ、すべての選択肢を文書で説明してもらう必要があるわ。口頭連絡だけで航路が変更されるようなことがあってはいけないもの」


「賛成だ」


俺はセラフィナを見る。


「今すぐ決める必要はない。すべての情報が揃うまで待ってもいい」


セラフィナがかすかに微笑んだ。


「ありがとう、紬」


俺は頷く。


「ここに残るよう強制するつもりはない。でも、君がいることで俺たちの仕事が少し複雑になったからといって、すぐに出ていけと言うつもりもない。決めるのは君自身だ」


セラフィナは黙り込んだ。


しばらくの間、ただ俺を見つめていた。


やがて、ゆっくりと頷く。


「少し考えてみるわ」


「分かった」


俺は再び端末へ意識を戻した。


片づけなければならないことは、まだかなり残っている。


契約C-145-MCは引き渡し段階を終えた。


ASTRAEAの修理は、より明確な協力関係のもとで進められることになった。


あの船の人員には、継続的な医療検査が必要だ。


そしてセラフィナは、家族のもとへどのように帰るのかを決めなければならない。


一つずつだ。


一晩ですべてを解決する必要はない。


### 視点 — ヴェスペラ・ノクス・オーレル


私は帝国通信網から送られてきた、すべての航路案に目を通していた。


航法士の立場から見れば、どの案もすぐに最善の選択肢だと判断できるものではない。


正式航路には、確かに事務上の利点がある。


船舶の識別情報や護衛権限を、帝国通信網を通じて検証できる。中継施設との調整も比較的容易だ。


しかし、正式航路が必ずしも最短とは限らない。


そして何より、正式航路だからといって、必ずしも最も安全だとは限らない。


「艦長、提示された三つの航路について、初期評価が完了しました」


紬が振り返る。


「結果はどうだ?」


私は航行マップを表示した。


「第一の航路は、中継施設の支援が最も充実しています。ただし、いくつかの検問地点では追加の安全手順が導入されています。そこで遅延が発生すれば、移動時間が延びる可能性があります」


私は第二の航路を拡大したMaaf, benar. Semua bahasa Inggris yang berfungsi sebagai judul, label terminal, keterangan dokumen, dan istilah umum seharusnya ikut diterjemahkan ke bahasa Jepang. Pada versi ini, istilah tersebut akan saya terjemahkan; nama resmi kapal, nama orang, kode kontrak, dan singkatan mata uang tetap dipertahankan sebagai identitas canon.


### 【第177話】「皇室からの迎え」


### 皇室からの迎え


第6巻 — 第5章「目的地とセラフィナの選択」


29日目 — 夜・艦内標準時 場所: タラリス国境兵站補給拠点 — 通信室および停泊エリア 主要視点: セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン → モード・ラン・ヴァレス → 星崎紬 → ヴェスペラ・ノクス・オーレル


### 視点 — セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン


故郷からの便りがようやく届いたとき、そこには何か特別なものがあった。


王宮からの通信を受け取ったことがなかったわけではない。幼い頃から、私の生活は報告、指示、通知、そして帝国の公式通信網を通じて送られてくる決定に満ちていた。


父からのメッセージでさえ、高位の役人たちが使用するものと同じ通信経路で受け取ることに慣れていたほどだ。


けれど、今回は違った。


目の前の通信端末には、つい先ほどヴェルドラコンの通信網による認証を完了したことを示す表示が出ていた。


私の身元が確認された。


私の現在地も判明した。


そして、長い時間を経て、帝国側はようやく私が無事であるという確かな情報を得たのだ。


「セラフィナ様。帝国通信網による身元確認が完了しました」


隣から、セラフィエルの落ち着いた声が聞こえた。


私は端末から視線を移す。


「迎えに関する指示は、もう届いているの?」


「最終的な指示はまだ届いていません。ただし、ヴェルドラコンの通信網は現地当局との調整経路を開設しています。現在、複数の帰還ルートが検討されているようです」


「複数の可能性?」


「はい。帝国側では、正式な航路、特別護衛を伴う航路、そして代替の迎え地点の利用が検討されているとの通知を受けています。いずれも、まだ最終承認には至っていません」


私はゆっくりと頷いた。


それは当然だろう。


たとえ私が皇女であっても、物流契約を遂行中の独立船にいるという状況は、一つ命令を送れば解決するようなものではない。


まして、ASTRAEAが損傷する原因となった事件についても、まだ詳しい調査が必要だった。


私は紬の方を見た。


星崎艦長は通信卓のそばに立っていた。焦っている様子はないものの、目の前に表示されている情報へ意識を集中させているのは明らかだった。


「紬」


「ん?」


「どうやら、父は私がここにいることを知ったみたい」


「それはよかった。家族が君の安否も分からないまま、探し続けなくて済むからな」


返ってきたのは、ごく簡単な言葉だった。


恩返しについて尋ねることもない。すぐに帰るよう求めることもない。ただ、本来なら喜ばしい知らせだと告げただけだった。


私は少し微笑んだ。


「もう一つ、伝えたいことがあるの」


「何だ?」


私は再び端末に目を向けた。


新たに届いた複数の公式通知の中に、ほかとは異なる分類のメッセージが一つ存在していた。


省庁からの連絡ではない。


王宮職員からの指示でもない。


送信者は、私の父自身だった。


「父から個人的なメッセージが届いたの」


紬が顔を上げる。


「個人的なメッセージ?」


「ええ。どうやら、私だけに宛てられたものではないみたい」


私は送信者情報に触れ、もう一度その分類を確認した。


皇室個人メッセージ


送信者: エドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン 受信者: セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン 追加指定: ASTRAEON VELORIA 艦長 閲覧条件: 受信者の本人確認が必要 通信データの完全性: 検証済み メッセージの状態: 封印中


私は一瞬、言葉を失った。


父は、ASTRAEON VELORIAの艦長を追加の受信者として明確に指定していた。


「セラフィエル」


「はい、セラフィナ様」


「父から特別なメッセージが届いているの。私と、特にASTRAEON VELORIAの艦長に宛てられたものよ」


セラフィエルは端末に目を向けた。


「内容を開く前に、メッセージの真正性と完全性を確認しましょうか?」


「ええ。でも、その前に紬へ、このメッセージが本人に宛てられていることを伝えておきたいわ。先に知らせず、ほかの人に受け取る権利があるものを開くようなことはしたくないもの」


紬が頷く。


「俺に宛てられた部分があるなら問題ない。真正性を確認した後、一緒に確認すればいい」


「承知しました」


セラフィエルが端末へ近づく。


しかし、処理を始める直前、私は小さく手を上げた。


「もう一つ。関係者全員で聞きたいわ」


「クルー全員か?」


紬が尋ねる。


「ええ。少なくとも、船に関わる仕事や意思決定に参加している人たちには聞いてほしい。一部の人だけが重要な情報を知っている、という状態にはしたくないの」


紬はすぐには答えなかった。


少しの間、私を見つめてから頷く。


「分かった。みんなで聞こう」


私は少しだけ安心した。


長い旅を経た今、情報を隠さず共有するという、ただそれだけの決定が、思っていた以上に大切なことのように感じられた。


その後、通信室にはASTRAEONの関係クルーが集まった。


管理端末を持ったランがやって来て、航路監視を航法システムへ引き継いだヴェスペラが続いた。カリスタも、技術検査用の装置を手にしたまま到着した。


レアもその場にいたが、すぐには席に座らなかった。


一方、セラフィエルは通信メインパネルの前に立ち続けていた。


私は一人ずつ、そこにいる人たちを見渡した。


少し前まで、私の本当の身分さえ知らなかった人たち。


今では同じ部屋に立ち、父からのメッセージに耳を傾けようとしている。


「準備が整いました、セラフィナ様」


セラフィエルが告げる。


「お願い」


「メッセージを開く前に、送信元、デジタル署名、伝送経路、およびデータの完全性を検証します。この処理によって、ASTRAEONの内部システムへ外部ネットワークからアクセスできるようになることはありません」


「ええ、お願いするわ」


画面に複数のインジケーターが表示された。


皇室メッセージ認証


| 検証項目 | 結果 |

| -------- | ----- |

| 送信者の身元 | 検証済み |

| デジタル署名 | 有効 |

| 伝送経路 | 正式 |

| データの完全性 | 破損なし |

| 改ざんの兆候 | 検出されず |

| メッセージの状態 | 認証済み |


セラフィエルは結果をもう一度確認した。


「メッセージはエドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン皇帝から送信されたものです。受信したデータに改ざんの兆候は確認されませんでした」


ランが腕を組む。


「つまり、表示されている送信者本人から送られたメッセージだと確認できたわけね」


「そのとおりです、ラン様」


「分かったわ。続けて」


私は紬を見た。


彼は小さく頷く。


セラフィエルは、メッセージを開いた。


メインディスプレイに一通の正式な文書が表示される。


皇室個人メッセージ


送信者: エドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン 受信者: セラフィナ・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン 追加受信者: ASTRAEON VELORIA 艦長・星崎紬


セラフィナ、我が娘へ。


お前が現在どこにいるのか、確認が取れた。


まず伝えたいのは、お前が生きていて、無事な状態にあることを知り、安堵したということだ。


お前を乗せている船についても、ASTRAEON VELORIAが行った支援を含め、初期報告を受け取っている。


だが、このメッセージは感謝を伝えるためだけのものではない。


星崎紬艦長へ。


私、エドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコンは、我が娘を救い出し、航行中の保護を提供してくれた君の行動に対し、個人的な敬意を伝えたい。


君の船が独立した契約を遂行中であることは理解している。


だからこそ、これまでの支援を帝国への奉仕と見なすつもりはない。また、君たちとの関係を軍事的な義務へと変えるつもりもない。


一つ、直接話し合いたいことがある。


ASTRAEA OF THE SILVER LANTERN(銀のランタンのASTRAEA)。


あの船は皇室の所有する船であり、先の事件で深刻な損傷を受けた。ASTRAEON VELORIAの格納庫に収容され、修理作業が始まったとの情報も受け取っている。


ASTRAEON VELORIAが引き受ける意思を持っているのであれば、ASTRAEAの修理完了までを君たちに任せたい。


私は、オーレリア・ヴェリエンヌの救出後、ヴェリエンヌ公爵家が星崎艦長に名誉勲章を授与し、ASTRAEON VELORIAを公爵家の友人と認めたことも把握している。


公爵家が君たちに寄せた信頼は、私にとっても重要な判断材料となった。


その関係を利用して決定を強制するつもりはない。


しかし、実際の行動を通じて一つの家から信頼を得た者であれば、皇室からも同様の責任を任せる候補として考慮できると、私は信じている。


費用については、ASTRAEON VELORIA自身で修理作業全体の見積もりを行ってほしい。


検査費用、資材、部品交換、人件費、そして実際に必要となるその他の技術作業について、それぞれ個別かつ透明性をもって記載してもらいたい。


最終的な見積もりが提出された後、皇室がその請求額の全額を個人的に支払う。


友好関係にあるという理由だけで、仕事の対価を減額する必要はない。


私は、あの船が責任を持って運用できる状態へ戻ることを望んでいる。そして、その作業を引き受ける者たちには、それに見合った支払いを受け取ってほしい。


セラフィナの迎えについては、迎えの地点と航路が双方の合意によって決まり次第、ASTRAEAの人員を迎えに向かわせる準備を進める。


安全性や、使用する船の状態が確かでないまま、彼らを向かわせるつもりはない。


星崎艦長。


君たちが望まない責任を引き受けるよう、要求するつもりはない。


だが、ASTRAEAの修理完了に協力してもらえるのであれば、私はそれを皇帝からの命令ではなく、信頼に基づいて築かれる協力関係として受け止めたい。


エドリック・ヴァルクレイン・ヴェルドラコン ヴェルドラコン銀河帝国皇帝


メッセージが読み上げられた後、すぐに口を開く者はいなかった。


私自身、まだ画面を見つめていた。


父は確かに感謝の言葉を伝えていた。けれど、私が最も心を動かされたのは、あの依頼の伝え方だった。


命令ではない。


皇帝という立場を利用して、強制することもない。


家族を助けてくれた人たちに、選択肢を与えていた。


「お父様が、本当にこんなメッセージを……」


ほとんど無意識に口から漏れていた。


紬はまだ文書を確認していた。


「つまり、皇室はASTRAEAの修理を俺たちに任せたいということか」


「ええ」


カリスタが少し手を上げる。


「それなら、決定について話し合う前に、一つ確認したいことがあるんだけど」


紬が彼女を見る。


「何だ?」


「今、あたしが進めているASTRAEAの修理は、引き続き輸送契約C-145-MCとは別の技術作業だよ。皇帝のメッセージによって、さっき終えた貨物検査の扱いが変わるわけじゃないし、二つの仕事を混同する理由もないからね」


ランが頷く。


「そのとおりね。船の修理費用は、独立した記録として管理する必要があるわ。貨物輸送契約の金額と合算してはいけない」


私はランを見る。


「つまり、ASTRAEONが父の依頼を引き受けた場合、費用は別々に計算するのね?」


「当然よ。たとえ支払元が皇室であっても、記録は明確でなければならないわ。作業費、使用した資材、交換した部品、運用費用は、それぞれに計算根拠が必要になるもの」


紬が頷く。


「俺も、後から誤解が生まれるのは避けたい。何を作業するのか、何を請求するのか、そして皇室側がどこまで責任を持つのか、明確にしておく必要がある」


カリスタが薄く笑った。


「それなら、あたしは作業を続けても構わないよ。むしろ、今は修理を完了させるための根拠が前よりはっきりしたからね」


私は彼女に視線を向けた。


「ASTRAEAは完全に修理できる状態なの?」


「これまでの検査結果から判断する限り、修理は可能だよ。ただし、損傷した部品をすべて調べ終えるまでは、最終的な見積もりは出さないつもり」


カリスタは手にしていた装置を動かした。


「機動システム、電力網、船体防護の損傷は、目視検査だけでは判断できないからね。それぞれのシステムに関係する部分を、すべて検査する必要があるよ」


「どれくらいかかりそう?」


「責任を持って提示できる完了時期は、まだ出せないね。誰かを安心させるためだけに、予定を約束するつもりはないから」


紬が頷いた。


「急ぐ必要はない。大事なのは、最後に正しく仕上がることだ」


「了解、艦長」


私は再び父のメッセージを見つめた。


ASTRAEAは、ただ救助された船として終わるのではないかもしれない。


あの船は再び航行できるようになるかもしれない。


そして、かつてその船の中で危険にさらされていた人たちも、自分たちの居場所へ戻れる可能性がある。


### 視点 — モード・ラン・ヴァレス


私は支払いについて書かれた箇所を読み直していた。


皇室に支払い能力があるかどうかを疑っているわけではない。


むしろ、送信者が皇帝本人であるからこそ、確認しておきたいのだ。


修理費用の全額を皇室が個人的に支払うという一文は、十分に明確な意思表示だった。


しかし、商業業務においては、明確な意思表示にも、それに対応する明確な書類が必要になる。


友好的な関係だけで手続きの代わりになると考えた結果、事務上の問題が生じるような事態は避けたかった。


「艦長、一つ説明しておきたいことがあります」


紬が私へ視線を移す。


「どうぞ、ラン」


私は端末を開き、二つの異なる書類を表示した。


「まず一つ目は、輸送契約C-145-MC。二つ目は、ASTRAEAの修理作業です。この二つは、会計上も必ず分けておく必要があります」


最初の画面には、貨物輸送契約の完了記録が表示された。


C-145-MC — 貨物輸送契約


| 項目 | 状態 |

| --------- | ------------ |

| 契約総額 | 8,400,000 GC |

| 貨物検査 | 完了 |

| マニフェスト適合性 | 検証済み |

| 引き渡し | 処理済み |

| 正式受領 | 記録済み |

| 支払い状況 | 決済完了待ち |


「輸送契約は、正規の引き渡し手続きを通じて完了しています。契約総額の8,400,000 GCに変更はありません。ただし、貨物の受領と支払いの完了は、それぞれ別の段階です」


紬が表を見る。


「つまり、ASTRAEAの修理作業と結びつける必要はないわけだな」


「そのとおりです。そうする根拠もありません」


私は表示を切り替えた。


ASTRAEA OF THE SILVER LANTERN — 修理費用台帳


| 記録項目 | 状態 |

| ------- | ------ |

| 技術検査 | 進行中 |

| 損傷一覧 | 作成中 |

| 交換用資材 | 最終確定待ち |

| 修理作業 | 進行中 |

| 費用計算 | 未確定 |

| 皇室への請求書 | 未発行 |


「修理作業については、まだ最終的な金額が出ていません。カリスタがいくつかの部品を検査している最中ですから、技術的な根拠のない見積もりを記載するつもりはありません」


カリスタが立ったまま頷いた。


「それが正しい判断だよ」


私は続ける。


「検査が完了した後、実際に修理した部品と作業内容に基づいて、すべてを記録します。実施していない作業の費用を含めることはありませんし、本当に必要な作業の費用を減らすこともありません」


紬が私を見た。


「皇帝が約束した支払いについては、どうする?」


「正式な書類と支払いの仕組みが確認できた後で受け取ることができます。ただし、支払者、受取人、作業範囲、完了条件を記載した書面による承認は求めたいと思います。皇帝からの個人的なメッセージは、協議を始めるうえで十分な根拠になりますが、請求書には適切な取引書類が必要です」


「もっともだな」


私は一つのパネルを閉じた。


「もう一つあります」


「何だ?」


「セラフィナ様の迎えについてです。ASTRAEAの人員が迎えに来ることによって、ASTRAEONが帝国の護衛船に変更されたと誤解されないようにしなければなりません」


セラフィナが私たちの会話に耳を傾けていた。


「私がこの船にいるからといって、あなたたちにそのような義務を引き受けてほしくないわ」


「その点は理解しております、セラフィナ様」


私は何も記入されていない書類を表示した。


「皇室が迎えの人員を派遣する場合、次の情報を書面で受け取りたいと考えています。人員の身元、使用する船舶の識別情報、迎えの地点、提案される航路、責任を負う権限機関、そして護衛の有無です」


紬が頷く。


「俺たちが新しい護衛契約に同意したと、誰かに思われないようにしないとな」


「そのとおりです。私たちは、現在進行中の帰還に協力しているだけです。新たな契約が必要なら、別途協議し、個別に合意しなければなりません」


セラフィナが小さく微笑んだ。


「あなたたちは、本当に何事も真剣に扱うのね」


私はその笑顔に応じた。


「きちんと記録されていないことは、仕事そのものよりも大きな問題になることがよくありますから」


レアが小さく笑った。


「ランって、簡単な話まで高度な財務監査みたいに聞こえさせるよね」


「それは褒め言葉として受け取っておくわ」


「もちろん、褒めてるよ」


部屋の空気が少し和らいだ。


それでも、まだ一つ確認しておきたいことが残っていた。


私はセラフィエルへ顔を向ける。


「セラフィエル、迎えに来る予定のASTRAEAの人員について、何か情報はありますか?」


セラフィエルが頷いた。


「お伝えできる医療情報はいくつかあります。ただし、航行の安全と治療の継続に関係する範囲に限定して説明します」


「お願い」


「その件については、艦長も交えて話し合うことをお勧めします。人員の医療情報は、引き続き個人情報として扱う必要がありますので」


紬が頷いた。


「分かった。その後で話そう」


私は取引書類を保存した。


少なくとも、事務管理の面では責任の境界が見え始めていた。


貨物契約は完了。


ASTRAEAの修理は、まだ進行中の新たな仕事。


セラフィナの迎えは、まだ護衛契約ではない。


そして、皇帝のメッセージによって、それらの境界が変わることもない。


私にとって、それは何をすべきか分からないまま大きな依頼を引き受けるより、はるかに良い出発点だった。


### 視点 — 星崎紬


俺はエドリック皇帝からのメッセージをもう一度読み返していた。


一つ、かなり興味を引かれた部分がある。


修理費用の話でもない。


セラフィナの迎えについてでもない。


オーレリアの家族について触れていた箇所だ。


「セラフィエル」


「はい、紬」


「皇帝はヴェリエンヌ家から授与された名誉勲章について触れていたな。帝国側は本当にその件を報告として受け取っていたのか?」


「はい。オーレリア・ヴェリエンヌの事件が解決した後、救助、ヴェリエンヌ公爵家への帰還、そして名誉勲章の授与に関する情報は、帝国側がアクセス可能な行政ネットワークに記録されています」


「つまり、セラフィナの父親は、公爵家が俺たちを信頼していることを知っているわけか」


「おそらくそうでしょう。ただし、メッセージには、その信頼は判断材料であり、協力関係を強制する根拠ではないと明記されています」


俺は頷いた。


それは十分に明確だった。


公爵家はASTRAEONを家族の友人と認めている。そして今度は、皇室も俺たちに仕事を任せたいと考えている。


だが、良好な関係を理由に、あらゆる依頼を無条件で引き受けるつもりはない。


「セラフィナ」


「何かしら、紬?」


「ASTRAEAの修理を手伝うこと自体に抵抗はないよ。カリスタが安全に作業を進められて、関係者全員がそれぞれの責任を理解しているなら、この仕事は続けられる」


セラフィナが俺を見つめた。


「ありがとう。お父様も、それを聞けばきっと安心するわ」


「ただ、一つ確認しておきたい」


「何?」


「君自身はどうしたい? ASTRAEAの人員が到着したら、すぐに迎えに来てもらいたいのか。それとも、ほかに考えておきたいことがあるのか?」


セラフィナはすぐには答えなかった。


少し俯いてから、再び顔を上げる。


「彼らに会いたいと思っているわ。あれだけのことがあったのだから、伝えなければならないこともたくさんあるもの。ただ、今の彼らがどんな状態なのか、まだ分からないの」


「詳しい報告は受け取っていないのか?」


「まだよ。ほとんどの人員が救助され、初期治療を受けたということしか知らないわ。一人ひとりの状態までは把握していないの」


俺はセラフィエルへ目を向けた。


「ASTRAEAの負傷した人員は、今どんな状態なんだ?」


セラフィエルが医療パネルを表示する。


「ASTRAEAの全乗員は、救助後に医療検査を受けています。検査項目には神経学的状態、代謝、細胞反応、組織の安定性、主要な生理学的指標が含まれています」


「まだ危険な状態の人はいるのか?」


「私が利用できる最新の検査データに基づく限り、直ちに緊急処置を必要とする急性不安定状態を示した人員はいません。ただし、検査結果からは、オーレリア・ヴェリエンヌと類似した生物学的適応の傾向も確認されています」


俺はパネルを見つめた。


「オーレリアと似ている?」


「はい。生物学的な安定性は良好な水準にあります。しかし、一部の指標には、長期間にわたる異常な状態を経た後も、身体が引き続き適応過程にあることを示す変化が見られます」


セラフィナの表情がさらに真剣になる。


「つまり、彼らの身体もオーレリアのときのように変化しているの?」


「現在の医療観察の範囲では、共通する傾向が確認されています。ただし、全員が同一の過程を経験しているとは断定できません。各人の初期状態、健康履歴、生物学的反応は異なりますので」


俺は画面に表示された数値を確認した。


いくつかの指標は安定している。


急性の損傷を示す兆候もない。


だが、細胞修復活動と代謝適応には、依然として変化が見られた。


「それは危険なのか?」


セラフィエルはゆっくりと首を横に振る。


「現時点では、直接的な危険を示す指標は見つかっていません。ただし、通常の回復がすでに完了した状態と見なすことはできません。長期的な経過観察が必要です」


俺は以前のオーレリアの検査を思い出した。


セレーネは以前、あの少女の身体は極低温睡眠からの回復結果を維持しているだけではないと説明していた。新たに置かれた生物学的環境に、身体そのものがまだ適応を続けていたのだ。


当時、慌てる必要はなかった。


それでも、数か月にわたる追加検査は必要だった。


ASTRAEAの人員にも同じような傾向があるのなら、彼らにも同様の配慮が必要になる。


「セラフィエル、セレーネは彼らの状態を知っているのか?」


「専門的な経路を通じて、共有を許可された医療概要は送信済みです。ただし、セレーネはASTRAEAの全人員を直接診察してはいません」


「セレーネは今どこにいる?」


「最後に確認できた通信によれば、セレーネはまだ帝国領域内にいます。おそらくヴェリエンヌ家の周辺にいると思われますが、最新の所在地については、まだ確認を受け取っていません」


俺は頷いた。


「なら、どうするのがいいと思う?」


セラフィエルは急がずに答えた。


「継続的な経過観察を必要とするASTRAEAの人員については、セレーネ・アルカディアによる直接診察を受けることを推奨します。彼女はオーレリアの生物学的傾向を把握しており、類似した変化に対する医学的評価を直接行った経験もあります」


「どうしてセレーネなんだ? Euphoriaでも検査できるだろう?」


「Euphoriaでも、利用可能なデータに基づく経過観察、分析、医療上の推奨を行うことはできます。しかし、患者の状態を総合的に評価するためには、医師による直接診察も必要です」


セラフィエルがパネルを拡大する。


「さらに、セレーネは、これまでオーレリアの症例に対してASTRAEONの医療技術へ専門的なアクセスを認可された、唯一の外部医師です。彼女は、以前合意したアクセス制限、手順、倫理原則を理解しています」


俺は画面を見つめた。


「つまり、俺たちだけでは検査できないから、という理由ではないんだな」


「そのとおりです。Euphoriaは引き続き内部検査と遠隔監視を行えます。ただ、セレーネを関与させることで、治療の継続性を確保すると同時に、類似症例を理解している医療専門家による独立した評価も得られます」


俺は頷いた。


納得できる話だった。


医療上の問題をすべて船の技術だけで解決できると考えたくはない。


技術は非常に詳細なデータを提示できる。だが、医療上の判断には、専門家による見解も必要になる。


「それなら、セレーネに連絡する必要があるな」


「以前使用した専門的な通信経路を通じて、診察の相談を送ることができます。ただし、各患者の同意なしに、全員の医療記録を開示することはしません」


「いいな。どの情報を共有するのか、本人たちにもきちんと知らせてくれ」


「承知しました」


それまで話を聞いていたセラフィナが、ようやく口を開いた。


「紬、彼らはこちらへ来られると思う?」


「船と人員の状態が許すなら、もちろんだ。ただ、君を迎えに来たいからといって、無理をして移動してもらうわけにはいかない」


「分かっているわ」


「健康状態は迎えの予定より大切だ。セレーネが先に検査を受けるよう勧めるなら、その助言に従った方がいい」


セラフィナは少し俯いた。


「私も、みんなが元気な状態で会いたいわ」


俺は、全員がきっと大丈夫だと安易な約束をすることはしなかった。


ただ、頷いた。


「必要な検査を受けられるようにしよう」


俺は、帝国通信網から届いた情報を表示するパネルへ目を向けた。


ヴェルドラコン側では、いくつかの選択肢が検討され始めていた。


しかし、まだどれも最終決定ではない。


「セラフィエル、受信した迎えの選択肢を表示してくれ」


「承知しました」


一つの表が表示される。


ヴェルドラコン帝国・帰還計画 — 暫定案


| 選択肢 | 内容 | 状態 |

| --- | --------------------- | -------------- |

| A | 帝国の正式航路を利用した迎え | 評価中 |

| B | 特別護衛を伴う迎え | 承認待ち |

| C | その後の航行に備えた代替の安全地点での迎え | 調整中 |

| D | ASTRAEAの人員による直接の迎え | 船舶および人員の状態確認待ち |


俺はすべてに目を通した。


「予定はもう決まっているのか?」


「いいえ。すべての選択肢は暫定案です。到着時刻も迎えの座標も、まだ正式に承認されていません」


「安全だと確認された航路はあるか?」


「まだ最終的な保証はありません。いくつかの航路が提案されていますが、安全性の検証が必要です」


ランが横から付け加えた。


「だからこそ、すべての選択肢を文書で説明してもらう必要があるわ。口頭連絡だけで航路が変更されるようなことがあってはいけないもの」


「賛成だ」


俺はセラフィナを見る。


「今すぐ決める必要はない。すべての情報が揃うまで待ってもいい」


セラフィナがかすかに微笑んだ。


「ありがとう、紬」


俺は頷く。


「ここに残るよう強制するつもりはない。でも、君がいることで俺たちの仕事が少し複雑になったからといって、すぐに出ていけと言うつもりもない。決めるのは君自身だ」


セラフィナは黙り込んだ。


しばらくの間、ただ俺を見つめていた。


やがて、ゆっくりと頷く。


「少し考えてみるわ」


「分かった」


俺は再び端末へ意識を戻した。


片づけなければならないことは、まだかなり残っている。


契約C-145-MCは引き渡し段階を終えた。


ASTRAEAの修理は、より明確な協力関係のもとで進められることになった。


あの船の人員には、継続的な医療検査が必要だ。


そしてセラフィナは、家族のもとへどのように帰るのかを決めなければならない。


一つずつだ。


一晩ですべてを解決する必要はない。


### 視点 — ヴェスペラ・ノクス・オーレル


私は帝国通信網から送られてきた、すべての航路案に目を通していた。


航法士の立場から見れば、どの案もすぐに最善の選択肢だと判断できるものではない。


正式航路には、確かに事務上の利点がある。


船舶の識別情報や護衛権限を、帝国通信網を通じて検証できる。中継施設との調整も比較的容易だ。


しかし、正式航路が必ずしも最短とは限らない。


そして何より、正式航路だからといって、必ずしも最も安全だとは限らない。


「艦長、提示された三つの航路について、初期評価が完了しました」


紬が振り返る。


「結果はどうだ?」


私は航行マップを表示した。


「第一の航路は、中継施設の支援が最も充実しています。ただし、いくつかの検問地点では追加の安全手順が導入されています。そこで遅延が発生すれば、移動時間が延びる可能性があります」


私は第二の航路を拡大した。


「第二の航路は、中継地点の数が比較的少なくなっています。しかし、一部区間における交通状況の情報が十分ではなく、確信を持って危険度を評価するには材料が足りません」


続いて第三の航路を開く。


「代替航路は、より高い柔軟性を持っています。ただし、到着地点で護衛を担当する権限機関について、帝国側からまだ確認が取れていません」


紬は三つの航路を見比べた。


「つまり、どれも本当に安全だとは言い切れないわけか」


「現時点では。各航路が直接的な危険を伴うという証拠は見つかっていません。しかし、いずれか一つを無条件に安全だと判断できるほどのデータも揃っていません」


ランが口を挟む。


「だからこそ、正式な航路という理由だけで承認してはいけないのね」


私は頷いた。


「そのとおりです。迎えに来る船舶の識別情報、同行する人員、出発地点、到着地点、そして使用する航路についての情報が必要です。それらを受け取った後、交通状況と潜在的な脅威について再評価できます」


セラフィナが地図に目を向けた。


「ASTRAEAの人たちが私を迎えに来る場合、帝国が提案した航路と同じものを使えるのかしら?」


「可能性はあります。ただし、船舶の身元と実際の状況を検証する前に、特定の航路を推奨することはできません」


「分かったわ」


私は一度、地図を閉じた。


「一つ、注意すべき点があります」


紬がこちらを見る。


「何だ?」


「ASTRAEAの人員による直接の迎えは、カリスタが同船の技術検査を完了し、セラフィエルが乗員の健康状態から航行可能だと判断するまでは、実施すべきではありません」


部屋に残っていたカリスタが頷いた。


「賛成だよ。主機の修理が始まったからといって、ASTRAEAがすぐに航行できるわけじゃない。移動に必要なすべてのシステムが正常に動くことを確認する必要があるからね」


セラフィエルも付け加える。


「乗員の医療状態についても、適切な評価を受ける必要があります」


私はセラフィナを見た。


「つまり、迎えの地点を急いで決める必要はありません」


セラフィナが頷く。


「迎えに来るためだけに、彼らにまた危険を冒してほしくないわ」


紬は少しの間、彼女を見つめていた。


「それなら、すべての準備が整うまで待とう」


反対する者はいなかった。


私は再び航路情報を開いた。


画面上では、三つの航路が引き続き追加評価を待っていた。


最終決定はない。


迎えの予定もない。


そして、すでに手続きが完了したと見なす理由もなかった。


しかし、少なくとも今では、皇室がセラフィナの所在を把握し、艦長宛ての直接的なメッセージを送り、ASTRAEAの修理に関する協力の土台を提示したことが分かっている。


私はもう一度、地図を見つめた。


この旅は、まだ終着点に達していない。


ただ、事件が起きて以来初めて、次に進むべき方向が見え始めていた。


夜はさらに更けていった。


タラリス国境兵站補給拠点では、通信室の外でも施設の活動が続いていた。到着する船も出発する船も、それぞれの検査手順に従って動いている。監視システムは、停泊エリア周辺の交通情報を絶えず更新していた。


ASTRAEON VELORIAは、引き続き独立船としての立場を維持している。


新たな護衛契約は受けていない。


帰還航路も承認されていない。


そして、技術検査が完了する前にASTRAEAの修理費用が確定することもない。


それでも、エドリック皇帝から届いた一通の個人的なメッセージによって、これまで話し合われたことのなかった協力関係の可能性が開かれた。


セラフィナには、まだ選択肢が残されている。


正式な護衛を待つこともできる。


外交上の経路を利用することもできる。


あるいは、ASTRAEAの人員が迎えに来られる状態になるまで待つこともできる。


今のところ、その選択を決めるのは彼女自身だけだった。


その一方、ASTRAEON VELORIAの主格納庫では、承認された技術の範囲を守りながらASTRAEAの修理作業が続けられていた。


そして医療研究所では、類似した回復傾向を理解している医師と連携して経過を確認するため、ASTRAEAの人員に関する検査データが整理され始めていた。


一つの航行は終わった。


次の旅は、まだ決まっていない。


けれど今度は、セラフィナがすべてを一人で考えなければならないわけではなかった。


【第177話 — 完】


【次回 — 第178話】


「帰還か、旅か」


セラフィナは、家族から提示された選択肢について考え始める。


しかし、長い間、王宮から離れて過ごしてきた彼女は、帰還という決断が、用意された迎えの航路に従うだけの単純なものではないと気づき始めていた。


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