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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第153話】「アルケイオン銀河連邦」

【第153話】「アルケイオン銀河連邦」



ヴェルドラコン出航から28日目 — 艦内標準時 22:00~22:10 場所:タラリス外縁通過回廊 — 主要輸送航路の外側 視点:セラフィエル・ヴェロリア → ヴェスペラ・ノクス・オーレル → モード・ラン・ヴァレス → 攻撃艦の指揮官 → 星崎紬


視点:セラフィエル・ヴェロリア


「セラフィエル、あの三隻はまだ動いているのか?」


数分前に取得した記録と最新の観測データを比較していると、艦長席から紬の質問が聞こえてきた。


「はい。攻撃宙域から離脱する兆候は、まだ見られません。むしろ三隻の位置変更によって、ASTRAEA周辺を監視できる範囲が拡大しています」


私はメインスクリーンに戦術地図を表示した。


投影図の中央では、ASTRAEA OF THE SILVER LANTERNが依然として深刻な損傷を負っていた。全長1,240mのヴェルドラコン皇室所有船には、もはや包囲網から抜け出せるだけの機動能力が残されておらず、複数の武装艦が異なる方向から圧力をかけ続けている。


ASTRAEON VELORIA自身は、ヴェスペラが設定した安全航路をまだ外れていない。


私たちはC-145-MCの契約貨物をすべて積載したままであり、紬も戦闘宙域への接近を命じてはいなかった。


「連中の身元をもう一度調べてほしい」と彼が言った。「本当に軍の部隊なら、警告を送る前に誰を相手にしているのか知っておく必要がある」


「現在、四つのデータ群を照合しています。トランスポンダーの断片と兵装構成について、進展がありました」


戦術監視席に座っていたレアが、すぐに振り向いた。


「この前の私の予想、当たってたの? ほら、アルケイオン連邦のこと」


「その可能性を支持する根拠は、以前よりも強くなっています。ただ、まずは照合結果をお見せしたいと思います」


私は、ASTRAEAの後部に最も近い位置にいる攻撃艦の受動観測記録を開いた。


送信されている識別情報の一部は、完全には読み取れない。しかし、取得可能な断片には、Arkeion Galactic Federationの軍用登録形式と一致する構造が認められた。


もちろん、断片一つだけでは不十分だ。


そこで私は、彼らのネットワークに直接接続することなく観測できる船体形状、兵装システムの配置、通信パターンと照合した。


「一隻目は、アルケイオン軍用艦の船体プロファイルと強い一致を示しています。二隻目の兵装構成も同じプロファイルに整合しており、三つ目の通信断片には、連邦の戦術ネットワークと一致するデータ交換構造が使用されています」


紬が結果を確認した。


「それぞれ別の情報源から得たものか?」


「はい。船体データは物理的な観測、兵装構成はセンサーの測定結果、トランスポンダーと通信パターンは受動的に受信した信号です。ASTRAEAの緊急インターフェースから得た情報は、彼らの識別根拠には使用していません」


「よし。さっきのデジタル上の罠が、こっちの結論にまで影響するのは避けたいからな」


「あの検査環境は現在も隔離されています。以前の接続に由来するプロセスが、ASTRAEONの中核システムへアクセスすることは許可していません」


私は次の概要を表示した。


敵対的接触反応の受動評価 — PASSIVE HOSTILE CONTACT ASSESSMENT


| 項目 | 結果 |

| ----------- | --------------------------- |

| 船体形状 | アルケイオン軍用艦のプロファイルと一致 |

| トランスポンダー断片 | 連邦軍の登録情報を示唆 |

| 兵装構成 | 組織的な戦闘艦の構成と整合 |

| 通信パターン | 艦艇間の戦術的連携を示唆 |

| 最も可能性の高い所属 | Arkeion Galactic Federation |

| 部隊および指揮官の身元 | 未検証 |

| 作戦の法的根拠 | 不明 |


「じゃあ、高い装備を持ってるだけの海賊船ってわけじゃなさそうだね」とレアが呟いた。


「現在のデータは、アルケイオン軍関係者の関与をより強く支持しています。ただし、どの部隊が運用しているのか、誰が今回の攻撃を命じたのかは、まだ分かっていません」


紬が頷いた。


「十分だ。アルケイオン軍の接触反応として、暫定識別を付けておいてくれ。まだ分かっていない動機は書き込まないように」


「承知しました」


私はメインスクリーン上のマーカーを更新した。


攻撃艦群の横には、Arkeion Galactic Federationの名称と、部隊単位での識別が未確定であることを示す状態表示が加わった。


続いて、私はヴェスペラへ顔を向けた。


「ヴェスペラ、通信の照合結果から、これらの艦は互いに戦術データを交換していることが示されています。移動パターンも、その結論を裏付けていますか?」


彼女が航法パネルへ近づいた。


「裏付けるどころか、それ以上です。紬にお見せしたいものがあります」


視点:ヴェスペラ・ノクス・オーレル


私は宇宙空間の投影表示を引き継ぎ、直近の観測時間内における全接触反応の位置を表示した。


陣形を理解するには、ある一時点での艦の配置を見るだけでは足りない。


より重要なのは、標的が位置を変えたときに彼らがどう動き、射撃角度をどう調整し、陣形の一員が機動した際に、どの艦がその役割を引き継いでいるかということだ。


「紬、22時になる直前に位置を変更した三隻をご覧ください」


彼が私のパネルの横に立った。


「さっき迎撃線を形成していた連中か?」


「はい。では、その動きをASTRAEAへの攻撃圧力を維持している集団と比較してください」


私は再生速度を落として記録を再生した。


一隻が、大きな損傷を受けているASTRAEAの側面との相対位置を維持している。その艦が方向を調整すると、別の艦が移動して、空いた隙間を埋めていた。


一方、以前から観測していた三隻は、主力集団との連携を断つことなく迎撃線を形成している。


「彼らは個別に標的を追跡しているわけではありません」と私は説明した。「陣形の中で役割が分担されています。ASTRAEAへの圧力を維持する要素、逃走の可能性を塞ぐ要素、そして外側からの接近経路を監視し始めている要素です」


レアが一つのマーカーを指さした。


「つまり、この艦は単に撃つ機会を待ってるわけじゃないんだ?」


「移動データを見る限り、違います。この艦は、ほかの構成艦が大きな隙間を生じさせずに針路変更できる位置を維持しています」


「お互いを守ってるんだね」


「そのとおりです」


紬は地図に現れた航跡を注意深く確認した。


「ASTRAEONはどうだ? 俺たちはもう連中の監視範囲に入っているのか?」


「観測される可能性のある宙域にはいますが、彼らが私たちを標的に設定したという証拠は、まだありません。ですから、次の判断を下すまでは、こちらの目的が明確に伝わるような機動を避けるべきだと考えます」


私は前回の検討で計算した経路を拡大した。


ASTRAEAに接近するための選択肢はいくつかあるものの、それぞれが異なる結果を伴う。


最短経路は、よりによって現在の迎撃線が監視している宙域を通過するものだった。


別の選択肢では、より長い経路調整が必要になる。その代わり、状況が変化した場合にも、機動の余地を広く確保できる利点があった。


「選択肢はいくつか維持しています、紬。ただし、この陣形を、単純に脇を通り抜けられるだけの艦の集まりとして扱うことはできません。彼らは一つの連携した部隊として動いています」


「ASTRAEAが救援なしで逃げ出せる可能性は、まだあるのか?」


私は地図の中央にある皇室艦船のモデルを見つめた。


「現在観測している姿勢制御用推進機関の状態では、その可能性は極めて低いでしょう。仮に一時的な隙間を見つけたとしても、ASTRAEAが安全な距離を確保する前に、迎撃艦がその経路を塞げる位置にいます」


レアが眉をひそめた。


「本当に、あの船を逃がすつもりがないんだね」


私は頷いた。


「作戦行動のパターンから受ける印象は、まさにそれです。ただし、彼らの最終目的はまだ分かりません。逃走経路を塞ぐことが、必ずしも船内の全員を殺害する意図を意味するわけではありません。誰かに降伏を強要したいのかもしれませんし、船が特定の宙域に到達するのを阻止したいのかもしれません」


紬が私を見た。


「分からないうちは、俺たちの行動を決めるような憶測はしない、ということだな」


「はい」


私は不要になったシミュレーションを閉じ、メインスクリーンには現在の実際の配置図だけを残した。


このあと紬がどのような決断を下すにせよ、ASTRAEON VELORIAを、艦と乗員、そして全貨物の安全が運任せになるような位置へ進入させないこと。


それが私の役割だった。


視点:モード・ラン・ヴァレス


「紬、次の行動を決める前に、契約状況について伝えておかなければならないことがあります」


私は管理端末を持って艦長席へ近づいた。


彼が振り向く。


「タラリスから何か変更があったのか?」


「まだありません。C-145-MCの契約は現在も有効で、依頼主からの新たな指示も届いていません。ただ、攻撃者がアルケイオン軍の関係者である可能性が高まったことで、この事案は通常の輸送中の緊急事態とは異なるものになっています」


私は、最初の救難信号を受信した時点から作成していた記録を表示した。


私たちは、タラリス戦略兵站局からタラリス国境兵站補給拠点への特別輸送業務を請け負っている独立艦だ。


貨物はすべて、引き続き私たちの責任下にある。


契約の総額は8,400,000 GCのままであり、仕事が完了したと見なせる支払段階にも、まだ達していない。


その私たちの輸送経路の近くで、ヴェルドラコン皇室の船が、初期証拠から別の国家の軍事部隊である可能性が示されている集団に攻撃されている。


「私たちが航路を変更したり、この事案に直接関与したりする場合、その理由と時刻を明確に記録する必要があります」と私は言った。「さらに、その行動が輸送予定に影響するのであれば、タラリスへの通知も準備しなければなりません」


紬が頷いた。


「契約を取り消すつもりはないよ」


「分かっています。ただ、救難信号を観測することと、他国の軍事部隊との武力接触に関与することは別です」


レアが振り向いた。


「つまり、紬が戦争に参加したって見なされるかもしれないってこと?」


「必ずしもそうとは限りません。だからこそ、行動の取り方と記録の残し方に注意が必要なのです。救助行為を、皇室から新たな軍事任務を引き受けたものと誤解されるわけにはいきません」


紬は艦長席に背を預けた。


「もし公開チャンネルで攻撃者に警告を送ったら、それだけで新しい仕事を引き受けたことになるのか?」


「いいえ。内容が明確で、私たちがヴェルドラコンを代表していると主張しなければ、その通信は緊急事態の評価と対応のための初期行動として記録できます。ただし、送信したすべてのメッセージを、時刻と元の記録とともに保存しておきたいと思います」


「よし。その手続きを準備してくれ」


私は事案記録を更新した。


C-145-MC — 事案管理記録(INCIDENT CONTROL RECORD)


| 項目 | 状態 |

| --------------- | ----------------------------- |

| 輸送契約 | 引き続き有効 |

| 目的地 | タラリス国境兵站補給拠点 |

| 契約総額 | 8,400,000 GC |

| 貨物の状態 | ASTRAEON VELORIAの監視下 |

| 緊急事態の発信元 | ASTRAEA OF THE SILVER LANTERN |

| 攻撃者 | アルケイオン軍関係者の可能性。部隊の身元は未確定 |

| 航路変更 | 未実施 |

| ASTRAEONによる武力行使 | なし |

| タラリスへの通知 | 必要に応じて実施できるよう準備 |


「もう一つあります、紬」


「何だ?」


「もしASTRAEAの船内に皇族がいたとしても、その人物に私たちの仕事を変更する権限が自動的に与えられるわけではありません」


彼は薄く笑った。


「ラン、俺はまだあの船に誰が乗ってるのかさえ知らないんだぞ。誰が俺に命令できるかを話すには、ちょっと早すぎないか?」


「話し合うのが遅くならないよう、今のうちに確認しておきたいだけです」


「本当に、いつも何手も先まで考えてるよな」


「それが私の仕事ですから」


私は、現在の話し合いにはもう必要のない財務報告書を閉じた。


すると、セラフィエルから私の端末に小さな更新が届いた。アルケイオン軍の連携に関する推測をさらに裏付ける通信パターンを発見したものの、彼らの作戦の根拠については、まだ情報を得られていないというものだった。


私はそれも、ほかの証拠と一緒に保存した。


もし本当に行動を起こさなければならなくなったとき、私は紬のすべての判断について、あとから見つかった情報ではなく、その判断を下した時点で私たちが知っていた状況に基づいて説明できるようにしておきたかった。


視点:攻撃艦の指揮官


攻撃宙域を監視する一隻の軍艦。その指揮中枢では、一人の士官が戦術投影図の前に立っていた。


彼の制服には、Arkeion Galactic Federationの軍務所属を示す識別章が付いている。


「標的の位置を報告しろ」


「目標艦は依然として封じ込め宙域内にあります、司令官。機動能力は継続して低下中。以前に探知された護衛艦の反応も、すでに有効な防御陣形を形成できない状態です」


士官は、画面上に表示された皇室艦船のマーカーを確認した。


この作戦は、特定の目標を対象として計画されたものだった。


彼らは商業貨物を略奪するためでも、無作為に身代金を集めるためでも、国境宙域を偶然通過した船を片っ端から襲撃するためでもなく、ここへ派遣されている。


あの皇室艦船を、作戦目的が達成される前に安全な宙域へ到達させるわけにはいかなかった。


とはいえ、現場での作戦遂行は何の支障もなく進んでいるわけではない。


「逃走経路の状況は?」


「迎撃部隊は新たな位置に展開を完了。目標がまだ利用可能と推定される航路は、すべて陣形の監視下にあります」


「連携を維持しろ。射撃の機会を見つけたからといって、一隻だけ勝手に動くことは許さん」


「了解しました」


投影図の外縁に、別のマーカーが出現した。


センサー担当者が顔を上げる。


「司令官、通過回廊付近に大型の接触反応があります。現時点では、こちらへの直接的な接近機動は示していません」


士官は送られてきたデータに目を向けた。


「ヴェルドラコンの軍艦か?」


「まだ確認できません。初期プロファイルは、以前に目標へ随伴していた護衛部隊とは一致していません」


「船が一隻通りかかった程度で、陣形全体をそちらへ振り向けるな。移動方向を監視し、作戦宙域へ接近し始めた場合は報告しろ」


「了解!」


司令官は再び皇室艦船を見つめた。


あの船が安全圏へ到達するのを阻止できなかった場合、未識別の船を攻撃する機会を逃すことなどとは比較にならないほど、大きな結果を招くことを彼は知っていた。


しかし、作戦命令の詳細を指揮室にいる全員へ明かす理由もなかった。


今、彼らがすべきことは、配置を維持し、目標を逃がさないようにすることだけだ。


視点:星崎紬


セラフィエルが識別報告書をまとめ終えると、俺は判断に使える情報をすべて表示するよう頼んだ。


時刻は22時10分に近づいていた。


救難信号を受信して以来、ASTRAEON VELORIAは通過回廊を離れておらず、ASTRAEAとのデジタル接続を再開してもいなければ、一発の砲撃さえ行っていない。


だが、艦の外の状況は、俺たちがすべての確認作業を終えるまで待ってはくれなかった。


ASTRAEAは今も深刻な損傷を負っている。


護衛艦隊は、すでにその船を守る能力を失っていた。


一方、攻撃者たちは皇室艦船にほとんど逃走の機会を与えない陣形を維持し続けている。


俺は最後の概要を読んだ。


「つまり、今ある証拠から判断すると、連中はアルケイオン銀河連邦の軍事部隊である可能性が極めて高い。ただし、部隊名も、作戦を指揮している人物も、行動の根拠も分からないわけだな」


「そのとおりです」とセラフィエルが答えた。「船体形状、トランスポンダー、兵装、通信パターンの照合は、いずれも同じ結論を示しています。しかし、指揮系統や作戦の全体的な動機については、まだ証拠がありません」


俺はヴェスペラへ顔を向けた。


「こちらの位置は?」


「観測を続けるには、まだ安全な位置です。攻撃宙域には進入していません。必要になった場合に備えて、複数の接近経路と退避航路も保存済みです」


「レアは?」


「ヴァルキリーは準備できてるよ。カリスタも格納庫と支援装備の状態を確認してくれた。発進許可はまだ求めてないからね」


「よし。ランは?」


「進展はすべて記録済みです。今後の行動が輸送予定を変更する場合には、実際に発生した出来事に基づいて、タラリスへの通知書類をすぐに準備できます」


俺は頷いた。


全員が、それぞれの役割を果たしてくれた。


今度は艦長が、次の一手を決める番だ。


俺はメインスクリーンに映るASTRAEAを見つめた。


このまま戦闘の真ん中へ飛び込めば、まだ全容の分からない問題に軍用貨物のすべてを巻き込む危険がある。


かといって、あらゆる情報が完璧に揃うまで待っていたら、その頃には救助できる人間が一人も残っていないかもしれない。


少なくとも、いきなり攻撃を仕掛けずにできることは、まだある。


「セラフィエル、安全な公開チャンネルを使って警告メッセージを準備してくれ」


彼女がすぐにこちらを向いた。


「内容はいかがいたしましょうか?」


「俺たちを、正式な輸送業務を遂行中の独立艦ASTRAEON VELORIAとして識別する。ASTRAEA OF THE SILVER LANTERNから救難信号を受信し、救援の可能性を検討していることを伝えてくれ。それから、攻撃を行っている側に対して、損傷した船への砲撃停止と、行動の根拠について説明を求めるんだ」


ランが付け加えた。


「その通信が緊急時の安全確保を目的としたものであり、軍事的な支持表明ではないことも明示したほうがよいでしょう」


「それも入れてくれ。皇帝から命令を受けて来たと勘違いされるのは御免だからな」


「承知しました、紬」とセラフィエルが答えた。「公開チャンネルを使用した一方向送信を行います。相手の戦闘システムへの直接接続は行いません」


俺は画面に表示されたメッセージの草案を確認し、ランと一緒に一文ずつ内容を確かめた。


自分たちにない権限を主張する文言が含まれていないと確認してから、俺は承認した。


「送信してくれ」


セラフィエルが通信を開始した。


『ASTRAEA OF THE SILVER LANTERN周辺で活動中の全武装艦へ。こちらはASTRAEON VELORIA。正式な輸送契約を遂行中の独立艦です。当艦は同船からの救難信号を受信し、現在も攻撃が継続している状況を確認しています』


俺は送信インジケーターを見守った。


『人員の安全状況および救助の可能性を評価するため、深刻な損傷を受けている同船への砲撃停止を要請します。安全な公開チャンネルを通じて、貴艦隊の作戦上の識別情報と行動の根拠を提示してください。本通信は緊急時の安全確保を目的とする通知であり、いかなる勢力を代表する軍事的関与の表明でもありません』


送信が終了した。


「メッセージを送信しました」とセラフィエルが報告する。「送信記録と時刻は保存済みです」


俺は頷いた。


「さて、連中の反応を見ようか」


音声による返答は、まだない。


ヴェスペラは引き続き敵の陣形を監視し、レアはASTRAEAに最も近い位置の艦が進行方向を変えないか、注意を集中させていた。


数秒後、セラフィエルが俺のほうを向いた。


「紬、迎撃艦の一隻に、放射パターンの変化が認められました」


「どんな変化だ?」


「こちらのメッセージには、まだ返答していません。しかし、センサーの測定結果では、照準システムの活動が増大しています」


ヴェスペラが地図を拡大した。


「その艦は、船体の向きも調整し始めています」


俺はその艦のマーカーを見つめた。


「ASTRAEAに向けてか?」


セラフィエルは最新のデータを確認してから答えた。


「いいえ。照準解が、ASTRAEON VELORIAの位置へ向かって移動しています」


レアがすぐに背筋を伸ばした。


ランも作業を止め、メインスクリーンを見つめる。


俺は座る姿勢を変えなかったが、片手を艦長用の制御パネルへ移動させた。


俺たちはすでに名乗り、砲撃の停止を求め、どちらもシステムへのアクセス権を渡す必要のない通信手段を提示した。


攻撃者からの返答はない。


その代わり、連中の一隻が、こちらへ照準システムを向け始めていた。


「セラフィエル、その測定結果はすべて証拠として保存してくれ。ヴェスペラ、実際にターゲットロックが行われたかどうか分かるまでは、針路を変えるな」


「承知しました」


俺は再びメインスクリーンを見つめた。


「もし連中が俺たちの警告に武器で答えるつもりなら、少なくとも、その結果に対応できるよう乗員全員と貨物の準備を整えておかないとな」


【次話予告・第154話】


「貨物を守るための戦術」


貨物を守るための戦術――紬はASTRAEAの位置、攻撃艦の陣形、そしてC-145-MCの全貨物の安全を検討する。カリスタは輸送区画の物理的な準備状況を点検し、ランは緊急行動の記録根拠を整理する。一方、レアは命令を受けるまでヴァルキリーを発進させず、出撃準備を整えていく。


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