第十三章 —— 空間エルフの商談
第十三章 —— 空間エルフの商談
---
紬が夕食を終えたちょうどその時、テーブルのタブレットが震えた——メッセージの着信だ。
彼はそれを開いた。
画面にラン・ヴァレスからのメッセージが表示される:
「星崎船長、夜分に失礼します。あなたに興味を持っていただけるかもしれないビジネスのお話があります。今夜、ブルー・メリディアンのプライベートラウンジでお会いできませんか? お待ちしています。 — ラン」
紬はそのメッセージを二度読んだ。
「セラフィエル、ランがビジネスの話で誘ってきている。」
「船長は行かれますか?」
「気になる。面白いビジネスの話だと言っている。」
「船長は注意を払うべきですが、良い機会になる可能性もあります。」
紬は頷いた。
「行ってみよう。君も一緒に来るか?」
「もちろんです、紬。船長に同行します。」
---
紬とセラフィエルはブルー・メリディアンのプライベートラウンジに到着した。
この場所はメインレストランとは異なる——より小さく、より高級で、カーテンで仕切られたプライベートルームがある。薄暗い灯りが温かく親密な雰囲気を醸し出している。
ウェイターが彼らを一つの個室へ案内した。
中では、ランが既にテーブルに座っている——淡いブロンドの髪が灯りの下で輝き、エメラルドグリーンの瞳が温かい微笑みを浮かべて彼らを見つめている。
「星崎船長。来てくださってありがとうございます。」
紬は向かいに座った。セラフィエルはその隣に腰を下ろす。
「君の話が気になってね。」
ランは微笑んだ——少し神秘的な微笑みだ。
「率直に話します。私は武装護衛を必要とする貿易契約を持っています。あなたはこの仕事に最適な人だと思います。」
「どんな契約だ?」
「リラディスから隣の星系——ケイレンズ・リーチと呼ばれる星系——まで貴重な貨物を運びます。そこでは希少な商品が非常に求められています。」
「何の商品だ?」
ランは声を潜めた。
「食料です。」
紬は眉をひそめた。
「食料? それが貴重な商品なのか?」
「ケイレンズ・リーチでは、そうです。その星系はちょうど食料危機に直面しています。収穫が失敗し、外部からの供給が途絶えています。そこでの食料価格は通常の三倍です。」
紬は彼女を見つめた。
「つまり、食料を運んで高値で売ろうというわけか。」
「その通りです。私は既にヴィレリアで供給元を確保しています——この地域で最高の農地です。必要なのは、ケイレンズ・リーチへの航路で海賊や略奪者から貨物を守ってくれる人です。」
紬は考えた。
「その航路は危険なのか?」
「その区域で海賊活動の報告がいくつかあります。でもASTRAEONほどの船なら、安全に通過できると確信しています。」
紬はセラフィエルに顔を向けた。
セラフィエルが小さく頷いた——良い機会であるという合図だ。
「報酬はいくらだ?」
ランは微笑んだ——答えを用意していたことを示すような微笑みだ。
「往復で100,000ギャラクシークレジット。それに販売利益の10%です。」
紬はむせそうになった。
「100,000? 前回の契約のほぼ二倍だ。」
「リスクもそれだけ大きいからです。でもあなたの船なら、うまくいくと確信しています。」
紬はしばらく黙って考え込んだ。
100,000ギャラクシークレジット。それに利益の10%。これは非常に魅力的なオファーだ。
「出発はいつだ?」
ランは満面の笑みを浮かべた。
「明日の朝です。もしご了承いただけるなら、書類と貨物の準備を整えます。」
「了承した。」
ランは手を差し伸べた。
「では、取引成立ですね、星崎船長。」
紬はその手を握った。
「取引成立だ。」
---
打ち合わせの後、ランは紬とセラフィエルを同じレストランでの夕食に誘った。
三人はより大きなテーブルに座り、窓の向こうには宇宙空間が広がっている——薄い環を従えたリラディス・プライムがゆっくりと回転している。
「認めなければなりません」とランは言った。「あなたがこんなに早く承諾してくれるとは思いませんでした。」
「良い機会だと思ったんだ」と紬は答えた。「それに君を信頼している。」
ランは微笑んだ——誠実な微笑みだ。
「ありがとうございます。私もあなたを信頼しています、船長。だからこそあなたに連絡したのです。」
「この旅は以前にもやったことがあるのか?」
「数回です。でも毎回違う護衛とでした。今回は、もっと……信頼できる人を試してみたかったのです。」
紬は眉を上げた。
「俺が信頼できると思うのか?」
「あなたが最初の契約をどう処理したかを見ていました。マーカスがあなたのことを報告してくれた——あなたは素晴らしいと。」ランはワインを一口すする。「そしてあなたはあの契約紛争で私を助けてくれた。誠実で賢い人です。それは珍しい組み合わせです。」
紬は小さく微笑んだ。
「正しいことをしただけだ。」
「それがあなたを信頼できる人にしているのです、船長。」
---
夕食は楽しい会話とともに進んだ。
ランはケイレンズ・リーチについてさらに詳しく語った——鉱業と農業で知られる辺境地域の星系だ。
「ケイレンズ・リーチは実は豊かな星系です。貴重な鉱物の鉱山と肥沃な土地があります。でも辺鄙な場所にあるため、外部からの供給がしばしば不足します。」
「つまり食料はそこで非常に価値の高い商品なんだ。」
「そうです。そして現在の食料危機で、価格は高騰するでしょう。大きな利益を得られます。」
紬は頷いた。
「そしてリスクは?」
「海賊です、先ほど言った通り。ケイレンズ・リーチへの航路で活動するいくつかのグループがいます。彼らは貴重品を運ぶ貨物船を狙います。」
「危険なのか?」
「彼らは海賊です。もちろん危険です。でもASTRAEONほどの船なら、彼らを通過できると確信しています。」
紬はセラフィエルを見た。
セラフィエルが頷いた——ランの判断に同意するという合図だ。
「わかった」と紬は言った。「このコンボイを最善を尽くして守る。」
ランは微笑んだ。
「それで十分です、船長。」
---
夕食が終わった。
ランが立ち上がり、手を差し伸べた。
「今夜、契約の詳細をあなたの船に送ります。明日の朝6時、C-07バースで会いましょう。」
紬はその手を握った。
「行くよ。」
ランは微笑んだ——温かく、少し神秘的な微笑みだ。
「また明日、星崎船長。」
「また明日、ラン。」
---
紬とセラフィエルはASTRAEONへと歩いて戻った。
リラディス・セントラル・リングの夜は既に訪れていた——ステーションの灯りは柔らかな青に変わり、賑わいは静まり始めている。
「セラフィエル、この契約についてどう思う?」
「良い機会です、紬。報酬は高く、リスクは管理可能で、ランとの関係は長期的なパートナーシップに発展する可能性があります。」
「ランは信用できると思うか?」
「これまでの交流から見ると、彼女は誠実に見えます。商人の間でも良い評判を持っています。しかしそれでも、船長は注意を怠らずに。」
「いつも注意している。」
「わかっています、紬。だからこそ私は船長を信頼しています。」
---
紬はASTRAEONに戻った。
船長専用居住区で、彼はランから既に送られてきた契約の詳細を開いた。
契約番号112 — ケイレンズ・リーチへの貨物輸送
依頼主:モード・ラン・ヴァレス(独立商人)
ルート:リラディス・セントラル・リング → フロンティアルート → ケイレンズ・リーチ星系
貨物:食料品3,000トン(米、小麦、野菜、果物)
船舶:貨物船1隻(ラン所有)+ 護衛船1隻(ASTRAEON VELORIA)
期間:5日間
報酬:100,000ギャラクシークレジット + 販売利益の10%
ポイント:50
リスク:高(ケイレンズ・リーチ区域での海賊活動の報告あり)
紬は注意深く契約書を読んだ。
すべて明確だ。隠された条項はない。法的な抜け穴もない。
「セラフィエル、これは良い契約か?」
「はい、紬。これは有利で、合理的なリスクの契約です。ランは利益の分け前も公正に提示しています。」
「よし。これで行こう。」
---
紬はベッドに横たわり、天井を見つめた。
窓の外では、リラディス・プライムがゆっくりと回転を続けている。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「ランに出会って、こんなに大きな契約をすぐに得られるとは思わなかった。」
「時には機会は予期せぬ場所から訪れます、紬。大切なのは、船長がそれを受け止める準備ができていることです。」
「準備ができていて良かった。」
「私もそう思います、紬。」
紬は微笑んだ。
「明日、新しい旅が始まる。」
「はい、紬。ケイレンズ・リーチへの旅です。」
---
紬は灯りを消した。
暗闇の中で、セラフィエルの柔らかな声が聞こえる:
「おやすみなさい、紬。」
「おやすみ、セラフィエル。」
彼は目を閉じた。
明日、彼は新たな冒険を始める。
明日、彼はランの貨物を遠くの星系へ護衛する。
そして初めて、彼は自分が本当にこの銀河の一部になったと感じていた。
---
【次回予告 第十四章 —— 「星間市場」】
ケイレンズ・リーチへ出発する前に、紬とランは星間市場を訪れ、補給品や役立ちそうな物品を購入する。市場で、紬は銀河経済と、星系間で商品価格がどのように変動するかについてより深く理解し始める。
【第十四章へ続く…】




