第十二章 —— 出会い、空間エルフの商人
第十二章 —— 出会い、空間エルフの商人
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紬はその日二度目となるリラディス・セントラル・リングの商業地区を歩いていた。
ランとの昼食の後、彼はASTRAEONに戻る前に少し散歩することにした。ステーションの空気は冷涼で、天井の灯りはまだ昼間を模した柔らかな白色光を放っている。
特に目的はなかった。ただぶらぶらしたかっただけだ。
セラフィエルがいつも通り、静かで優雅にその脇を歩く。数人の通行人が彼らを見つめる——正確にはセラフィエルを見つめる——が、紬はその視線にももう慣れ始めていた。
「セラフィエル、ここでまだ見ていない面白い場所はあるか?」
「様々な星系の骨董品を扱う店がいくつかあります。また、銀河中の惑星の作品を展示する美術館もあります。」
「美術館? ステーションにそんなものがあるとは知らなかった。」
「リラディス・セントラル・リングは商業の中心地です。食べ物や道具以外にも多くのものがあります。」
紬は考えた。
「美術館は後で見たい。でも今は、もう少し歩いていたい。」
「もちろんです、紬。」
二人は店の前を通り過ぎていく——洋服店、宝飾店、家庭用品店、そして角には、薄暗い灯りと埃っぽいショーウィンドウで骨董品を売る店がある。
紬はその骨董品店の前で立ち止まった。
ショーウィンドウには様々な品々が並んでいる——見たことのない惑星の彫像、きらめく宝石をあしらった装飾品、そして奥には、革装丁の古い本が一冊。
紬はその本を見つめた。
「セラフィエル、あれは何だ?」
「辺境の星系からの古書です。内容はわかりませんが、外観からすると数百年は経っているようです。」
「興味深い。いつか買ってみよう。」
二人は歩き続けた。
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紬は見慣れたものを見つけた。
遠く、広場の向こう側に、淡いブロンドの髪が見えた——モード・ラン・ヴァレスだ。スペースエルフの女性は別の商人と話しており、その表情は真剣そのものだ。
紬はそっと背を向けようとした。邪魔をしたくなかったのだ。
しかしランが彼を見つけた。
エメラルドグリーンの瞳が紬の目と合い、彼女は微笑んだ——温かく、少し驚いたような微笑みだ。
「星崎船長! まさか私を追ってきたんじゃないでしょうね?」
紬は近づいた。
「いや。ただ散歩してただけだ。偶然だよ。」
ランは小さく笑った——軽やかで心地よい笑い声だ。
「また偶然ですか? あなたは私にとって幸運の象徴かもしれないと思い始めていますよ。」
「なぜ?」
「さっき有利な取引をまとめたばかりなんです。あの商人、私が常連客を何人か紹介したから、安く売ってくれるって。」
紬は頷いた。
「それはよかった。」
ランは輝く目で彼を見つめた。
「そうだ、船長。私はまだあなたに恩があります。借りを作ったままにするのは好きじゃないんです。面白い場所に連れて行ってもいいですか?」
「どんな場所だ?」
「この地区に良い茶店を知っているんです。遠い惑星から取り寄せたお茶で——とても珍しくて美味しい。ご馳走しますよ。」
紬はセラフィエルに顔を向けた。
セラフィエルが小さく頷いた。
「……わかった。お言葉に甘えよう。」
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三人は商業地区の一角にある小さな茶店に座っていた。
その店は小さく静かで、濃い木目のテーブルと温かな灯りが心地よい雰囲気を醸し出している。壁には、様々な種類の茶葉がガラス容器に入れて並べられている——緑色のもの、赤いもの、青いもの。
ランが三人分のお茶を注文した——花の香りがほのかに漂う緑茶だ。
「この場所が好きなんです」とランは言った。「静かで。混んでいない。考えるのに良い場所です。」
紬は一口すする。
味は軽やかで、爽やかな花の香りがする。
「美味い。」
「でしょう? リラディスに来たときはいつもここに寄るんです。」
しばらくの間、三人は黙ってお茶を楽しんだ。
そしてランが言った:
「星崎船長、一つお聞きしたいことがあります。」
「どうぞ。」
「あなたは傭兵だと言いました。でも契約書にも詳しい。どこで学んだんですか?」
紬は考えた。
「正式な訓練を受けたわけじゃない。ただ……細かいところに気をつけるようにしているだけだ。地球で電気店で働いていた時、仕入れ先の契約書や賃貸契約書を読まなければならなかった。そこから学んだんだ。」
ランは頷いた。
「面白い。地球だって? 私はまだ地球に行ったことがない。孤立した惑星だと聞いています。」
「ああ。地球にはFTL技術がない。俺がここに来るまで、銀河の存在を知らなかったんだ。」
ランは好奇心を持って彼を見つめた。
「つまり、あなたは本当にこの銀河に来たばかりなのですか?」
「ああ。ここに来てまだ一週間くらいだ。」
ランは静かに口笛を吹いた。
「そして一週間で、傭兵になって、契約を達成して、スペースエルフの商人の商取引の紛争を解決した。あなたは驚くべき人ですね、船長。」
紬は小さく微笑んだ。
「運が良かっただけだ。」
「運は成功の一部です。でもそれだけじゃない。」ランはお茶をすする。「あなたには良い直感がある。それは学べるものじゃない——生まれつきのものです。」
紬は答えなかった。ただお茶をすするだけだった。
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会話は他の話題へと移った。
ランは自分の旅について語った——訪れた惑星について、出会った人々について、辺境の市場で見つけた珍しい品々について。
「ある惑星に行ったことがあるんです。表面が暑すぎるので、住民は地下に住んでいます。岩を彫って作られた美しい都市で、洞窟の天井には星のように灯りが輝いているんです。」
「美しい場所のようだ。」
「美しい場所です。でも危険でもあります。深い場所には訪問者を好まない生物がいるんです。」
紬は眉をひそめた。
「どんな生物だ?」
「岩の皮膚を持つ巨大な蛇のような生物です。トンネルの間を移動しています。地元民は慣れていますが、訪問者にとっては——」ランは微笑んだ。「——緊張する経験になるでしょうね。」
紬は頷いた。
「冒険のようだ。」
「全ての旅は冒険です、船長。それが人生を面白くするんです。」
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紬は茶店に長居しすぎたと感じ始めた。
窓の外を見ると——ステーションの灯りが柔らかな青に変わり始めており、午後が終わりに近づいていることを示している。
「ラン、船に戻らなければ。」
ランは頷いた。
「もちろん。私もいくつか用事を済ませなければ。」彼女は微笑んだ。「でも、あなたが行く前に、一つ渡したいものがあります。」
「何だ?」
ランはポケットから小さなデータカードを取り出した——金色の、きらめくホログラムが付いたものだ。
「これは独立商人ネットワークへのアクセスカードです。これがあれば、様々な星系の商品価格を確認でき、買い手と売り手を見つけ、交易路の情報を得ることができます。」
紬はそのカードを見つめた。
「これはとても貴重なものだ。」
「ええ。でも感謝の印としてあなたに差し上げます。そして……」ランは微笑んだ——少し悪戯っぽい微笑みだ。「……投資としても。いつか一緒に仕事ができることを願っています。」
紬はそのカードを受け取った。
「ありがとう、ラン。」
「こちらこそ、船長。またお会いしましょう。」
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紬とセラフィエルはASTRAEONへと歩いて戻った。
彼の手には、ランからのデータカード——将来役立つかもしれない新しい繋がりだ。
「セラフィエル、ランについてどう思う?」
「彼女は聡明で、広いネットワークを持つ人物です。船長にとって貴重な資産になり得ます。」
「信用できると思うか?」
「確かなことは言えません。しかしこれまでの交流から見ると、彼女は誠実に見えます。商人の間でも良い評判を持っています。」
紬は頷いた。
「用心はする。でもこの関係は役立つと思う。」
「同意します、紬。」
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紬はASTRAEONに戻った。
船長専用居住区で、彼はソファに座り、ランからのデータカードを手に取った。
それをテーブルのリーダーに挿入する。
ホログラフィックディスプレイが現れる——何千ものエントリを持つ独立商人ネットワークが表示される。
商品価格。交易路。需要と供給。様々な星系の連絡先。
紬は驚いて画面を見つめた。
「これは……とても充実している。」
「このネットワークはこの地域で最大級のものです。このアクセスがあれば、船長が望めば貿易ビジネスを始めることもできます。」
紬は考えた。
「今はやらない。でもいつかは。」
「賢明な判断です、紬。」
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紬は窓際に座り、ゆっくりと回転するリラディス・プライムを見つめた。
彼は今日のことを考えていた——最初の契約のこと、報酬のこと、ランとの出会いのこと。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「この銀河のことが少しずつわかってきた気がする。」
「何がおわかりになりましたか?」
「この銀河は戦闘や危険だけじゃないってことだ。人間関係もある。商売もある。日常生活もある。」
セラフィエルは微笑んだ。
「それは重要な理解です、紬。この銀河は生きている場所です。戦争だけが全てではありません。」
紬は頷いた。
「明日は次の契約を探そう。でも今日は……」彼は微笑んだ。「今日のことに満足している。」
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紬は一人で夕食をとった——いや、正確には向かいに座るセラフィエルと共にだ。
食事は質素だ——ご飯、魚、そして市場で買った野菜。
「セラフィエル、一つ聞きたいことがある。」
「どうぞ。」
「どうして地球の料理を完璧に作れるんだ? 君にレシピを教えたことは一度もない。」
セラフィエルは微笑んだ。
「私はASTRAEONのアーカイブにある地球の料理データベースにアクセスできます。地球の様々な文化のレシピが何千もあります。それを学び、練習しました。」
「料理の練習をしたのか?」
「はい。船内に厨房設備があります。空き時間にレシピを試しています。」
紬は首を振り、半分笑った。
「君は本当に驚くべきAIだ。」
「ありがとうございます、紬。」
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紬はベッドに横たわり、買ったばかりの本を読んだ——馴染み深い日本の小説だ。
窓の外では、リラディス・プライムがゆっくりと回転している。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「明日、次の契約を探そう。」
「船長は特定の契約をご希望ですか?」
「まだ。何が利用可能か見てみる。重要なのは、動き続けることだ。」
「船長は本当に動き続けるのがお好きなのですね。」
「一箇所でじっとしすぎた。今はできるだけ多くのものを見たいんだ。」
セラフィエルは微笑んだ。
「ならば、できるだけ多くを見ましょう、紬。」
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【次回予告 第十三章 —— 「空間エルフの商談」】
翌日、ランが紬に魅力的なビジネスオファーを提示する——武装護衛を必要とする貿易契約だ。紬は、ランとの関係が単なる偶然の出会い以上のものになり得ることに気づき始める。
【第十三章へ続く…】




