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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第137話】「閉鎖された採掘区画」

【第137話】「閉鎖された採掘区画」



ヴェルドラコン出航後・18日目 場所:カルヴォス軌道産業港 → MCV-01 → 閉鎖採掘セクターK-17 視点:星崎紬


「紬、興味深いものを見つけました」


アストレオン・ヴェロリアのプライベートダイニングにランが入ってきたので、俺は端末から顔を上げた。


カルヴォスの朝は、オリセーヌとはまるで違う景色とともに始まった。


パノラマウィンドウの向こうでは、産業船が軌道輸送回廊に沿って行き交っている。大型貨物船が鉱石コンテナの積み込み作業を行い、その周囲では何隻もの小型タグボートが、物流モジュールを桟橋へ誘導するために忙しく動いていた。


青い海も、白い砂浜も、陽光を反射するリゾートの建物もない。


代わりに俺たちを迎えてくれるのは、慌ただしい交通管制の通信と、視界を埋め尽くす巨大な金属構造物だった。


「何を見つけたんだ?」


ランが端末をテーブルに置いた。


「ドラウヴェル鉱業協同組合からの作戦認可書類が、ようやくすべて揃いました。施設の地図、最後の輸送記録、対象物の識別一覧、それからK-17へ進入するための安全手順も届いています」


「契約のほうは?」


「最終版をセラフィエルと一緒に確認しました。基本報酬にも、物品の所有権に関する制限にも、隠れた変更はありません」


俺は端末を受け取った。


傭兵協会――契約C-136-MN


| 項目 | 条件 |

| ---- | ---------------------------- |

| 依頼主 | ドラウヴェル鉱業協同組合 |

| 任務 | 行方不明となったデータコンテナおよび調査機材の発見・確保 |

| 総報酬 | 780,000 GC |

| ボーナス | 全機器の識別および引渡し時の状態に基づく条件付き報酬 |

| 危険度 | 中~高 |

| 作戦区域 | 正式な認可書に記載された区域 |

| 制限事項 | 契約対象外の採掘物や物品の持ち出しは禁止 |

| 状態 | 最終承認待ち |


俺は支払条件と責任範囲をもう一度読み直した。


「もし目標物が、俺たちの発見前から壊れていた場合はどうなる?」


ランはすぐに該当条項を示した。


「発見時の状態を記録する必要があります。報告書と裏付けとなる証拠が所定の手順に従っていれば、私たちが引き受ける以前に発生した損傷について、自動的に責任を負うことはありません。ただし、こちらのチームの過失によって生じた損傷は、当然ながら考慮されます」


「妥当だな」


「追加ボーナスについても、現時点で確実な収入として計上できる金額はありません。対象物を発見し、検査を終えてから、支払条件を満たしているか判断されます」


俺は小さく微笑んだ。


「その部分は絶対に見落とさないようにしてくれるんだな」


「もちろんです。780,000 GCという数字を見た途端、紬が妙なものを買うと決めてしまっては困りますから」


「妙なものって?」


「たとえば、色が気に入ったというだけで、新しい支援艦を購入するとか」


俺は彼女を見つめた。


「そんなことしないって」


ランは優雅に微笑んだ。


「それを聞いて安心しました」


……どういうわけか、まだ完全には信用されていない気がする。


「わかった。それで、許可は全部揃ってるんだな?」


「セクターへの進入許可、モビルフレームの使用許可、MCV-01の飛行経路、装備の使用制限、それから協同組合が指定した避難地点も含めて、すべて揃っています」


俺は承認用端末を手に取った。


「なら、契約を受けよう」


書類の識別情報を確認し、最終承認を行う。


しばらくすると、表示が切り替わった。


C-136-MN――受諾済み


ランが満足そうに頷いた。


「受諾手続きは正常に完了しました。依頼主にも正式な確認通知が届いています」


俺は飲み物を飲み干した。


「それじゃあ、みんなを作戦説明室に集めてくれ」


最初に到着したのはレアだった。


というより、俺が作戦説明室へ向かったときには、すでに扉の前で待っていた。


「紬! 契約、もう受けたの!?」


「ああ」


「じゃあ、今日K-17へ行くんだね!?」


「安全説明が終わってからな」


「了解!」


レアは拳を握り、勢いよく室内へ入っていった。


俺は小さく首を振りながら、その後を追った。


ほどなくして、クルー全員が集まる。


セラフィエルが大きな投影画面を起動し、カルヴォスの鉱業区域の地図を表示した。


色分けされた線が、輸送路、採掘施設、保管区域、そして現在は使用されていない複数の区画を示している。


そのうちの1つが、黄色い枠で囲まれていた。


閉鎖採掘セクターK-17


ヴェスペラが投影画面の近くに立った。


「正式な航法データは受領済みです。ただし、最新の施設地図と古い構造図の間に、いくつか相違があります。したがって、どちらか一方の情報だけに頼るべきではありません」


俺はセクター内部へ枝分かれしている経路を見つめた。


「どれくらい違うんだ?」


「一部の整備通路は閉鎖されています。また、副輸送路については定期的な更新が行われなくなっています。位置標識の一部は今も登録されていますが、実際の状態は現地で確認する必要があります」


カリスタが腕を組んだ。


「つまり、地図では何もないように見えるからって、モビルフレームを適当に突っ込ませるなってことだね。天井が崩れて、金属の山になってるかもしれないんだから」


「そのとおりです」とヴェスペラが答えた。


セラフィエルが一部を拡大する。


「K-17は、単一のトンネルではありません。複数の旧採掘区域、保管室、移送ステーション、そして相互につながった輸送路網によって構成されています」


俺は赤く表示された地点に目を向けた。


「そこが目標物の最終確認地点か?」


「最後に所在が確認された地点です」とセラフィエルが答える。「記録によれば、データコンテナと調査機材は旧輸送路へ入りましたが、受入地点には到着していません」


ランが物品一覧を開いた。


C-136-MN――回収対象一覧


| 対象物 | 優先度 | 目的 |

| ---------- | -------- | --------------- |

| 調査データコンテナ | 最優先 | 発見・識別・確保 |

| 登録済み調査機器 | 最優先 | 識別番号および状態の確認 |

| 関連する補助部品 | 正式な一覧に準拠 | 発見時に記録し、回収 |

| 一覧に含まれない物品 | 対象外 | 追加の認可なく持ち出さないこと |


「1つ、念のため申し上げておきます」とランが言った。「鉱石コンテナや産業機械、そのほか価値がありそうな物品を発見しても、持ち帰ってよいという意味ではありませんからね」


レアが振り向いた。


「なんでそれを言うとき、私を見るの?」


カリスタが先に答えた。


「前に、面白そうな機械の部品を持って帰りたいって言ってたからだろ?」


「調べるためだよ!」


「はいはい」


俺はテーブルを一度軽く叩いた。


「よし。今、一番重要なのは安全確保だ」


セラフィエルが、いくつかの経路を緑色で示した新しい地図を表示した。


「ドラウヴェル鉱業協同組合からは、主進入口が1か所、代替避難経路が2本認可されています。ただし、チームが奥へ進む前に、実際の通行可能状況を確認する必要があります」


ヴェスペラが地図を指した。


「主経路は旧輸送回廊に沿っています。第1代替経路は整備ステーションK-17Bへ、第2代替経路は稼働中の産業区域につながる整備用アクセス路を使用します」


「周辺に作業員の往来はあるのか?」


「閉鎖セクター内にはありません」とセラフィエルが答えた。「ただし、境界付近では現在も産業活動が行われています。採掘作業員や物流車両の業務を妨げないようにする必要があります」


俺は頷いた。


「稼働中の施設を危険にさらす行動は厳禁だ。俺たちは物を回収しに来たんであって、惑星の半分を解体しに来たわけじゃないからな」


「了解」


全員から返事が返ってきた。


作戦説明が終わると、出動準備が始まった。


ランは引き続き、ドラウヴェル鉱業協同組合および傭兵協会支部との事務調整を担当する。


ヴェスペラは、最新のセンサーデータに基づく区域の地図作成と、経路変更の計算を行う。


カリスタはMCV-01の技術的な準備と、回収装備を担当。


セラフィエルは、データの統合、構造物の検査、偵察ドローンの運用を監督する。


そしてレアは――


「紬! ヴァルキリー、準備できたよ!」


――当然のように、すでにモビルフレーム格納庫にいた。


中へ入ると、彼女は自分専用の機体の前に立っていた。


ヴァルキリーは整備プラットフォーム上にあり、まだ何本かの検査用ケーブルが接続されている。


レアはパイロットスーツを着用し、カリスタは機体側面のパネルで最終確認を行っていた。


「ヴァルキリーの状態はどうだ?」


俺が尋ねると、カリスタは顔を上げずに答えた。


「正常だよ。駆動系、制御系、センサーは点検済み。産業環境向けの設定も用意してある。ただし、トンネルの中で好き勝手にスラスターを吹かせると思うんじゃないよ」


レアがすぐに頷いた。


「わかってる。狭い場所では、もっと慎重に動かすよ」


「よし」


俺は2人の横を通り過ぎた。


だが、MCV-01の制御プラットフォームへ向かう代わりに、格納庫の側面に設置された専用アクセス端末の前で足を止めた。


後ろを歩いていたセラフィエルは、すぐに俺の意図を理解したらしい。


「紬?」


「ずいぶん久しぶりだよな」


「そうですね」


レアが振り向いた。


「ん?」


俺はアクセスパネルに触れた。


本人確認の要求が表示される。


モビルフレーム制限保管区画


アクセス権限保有者:艦長/セラフィエル


本人確認が完了すると、隔壁がゆっくりと開いた。


その向こうには、通常機の運用プラットフォームとは直接つながっていない、独立した保管区画があった。


照明が段階的に点灯していく。


そして、その専用プラットフォームの中央には、待機状態のモビルフレームが1機、立っていた。


俺の専用機だ。


俺はしばらく、その姿をただ見つめていた。


この試作機は、セラフィエルが俺専用に調整して製作したモビルフレームだ。


通常機とは異なり、制御システムには艦長専用の特殊なニューラル・インターフェースが採用されており、性能面でもはるかに高度な最適化が施されている。


動作応答は極めて速い。


慣れていないパイロットにとっては、速すぎるほどに。


以前、レアがシミュレーションでこの機体を試したときのことを、俺は今でも覚えている。


彼女自身、パイロットが自分の行おうとしている動作を完全に意識するよりも先に、機体が制御信号へ反応してしまうことがあると認めていた。


だからこそ、俺はこの機体を、誰でも気軽に使っていいモビルフレームとして扱ったことはない。


これまでは、わざわざ保管区画から出すほどの差し迫った必要もなかった。


それに正直なところ、傭兵の仕事を受けるたびに、自分専用の試作機の性能を見せびらかす理由もない。


だが、今回は少し違う。


少なくとも、1つだけ。


俺自身も、回収作戦に直接参加したかったのだ。


「紬……」


レアが近づいてきた。


プラットフォームを見るなり、その目が大きく見開かれる。


「これ、使うの!?」


「ああ」


彼女の尻尾が勢いよく揺れ始めた。


「本当に!?」


「どうして契約書を見たときより興奮してるんだ?」


「だって、その機体、もうずーっとここから出てなかったじゃん!」


カリスタも後ろからやってきた。


試作機をしばらく眺めた後、ため息をつく。


「とうとう保管区画から出すことにしたんですね」


俺は振り向いた。


「反対か?」


「反対というわけじゃありません。ただ、構造が不安定かもしれない採掘セクターへ、高性能な試作機を本当に持ち込むつもりなのか、確認したいだけです」


「適切な制限をかけて運用するつもりだよ」


カリスタがゆっくりと頷いた。


「でしたら、先に私が点検します。艦長の専用機だからといって、例外扱いはしませんよ」


俺は微笑んだ。


「もちろん」


セラフィエルが状態表示パネルを起動した。


艦長専用モビルフレーム――技術概要


| 項目 | 状態 |

| ---------- | ------------------ |

| 分類 | 艦長専用試作機 |

| 制御インターフェース | 艦長専用ニューラル・インターフェース |

| 最適化 | 最大性能重視 |

| パイロット適合性 | 制限あり |

| 自律戦闘支援 | 高度 |

| 従来の状態 | 待機 |

| 現在の準備状況 | 再起動点検中 |


セラフィエルが俺を見た。


「紬。ご意向を確認させてください。この機体を起動し、K-17での現地作戦において、レアに同行するおつもりですか?」


「そうだ」


「積極的な戦闘反応を制限し、動作の安定性を優先する作戦設定で、よろしいですね?」


「ああ。コンテナを1つ回収するために、この機体の全性能を使う必要はないからな」


セラフィエルの微笑みが柔らかくなった。


「承知しました。適切な設定を準備します」


レアが拳を握った。


「やっと一緒にモビルフレームで出られるね!」


俺は彼女を見た。


「採掘トンネルの中で競争するつもりはないからな」


「まだ何も言ってないよ!」


カリスタがにやりと笑った。


「顔に書いてあるよ」


再起動点検は、かなり念入りに行われた。


カリスタが機械系統と制御接続の状態を確認し、その間にセラフィエルが、最大性能モードを起動しない状態で診断試験を実施する。


俺はコックピットへ入り、ニューラル・インターフェースが今も俺の制御パターンを正しく認識するか確認した。


シートに腰を下ろすと、計器表示が1つずつ点灯していく。


パイロット認証――確認完了


艦長専用インターフェース――接続完了


動作制限装置――産業環境用作戦設定


戦闘支援――制限中


俺は指を動かした。


インターフェースは、ほぼ瞬時に反応した。


とても懐かしい感覚だ。


「……本当に久しぶりだな」


通信からセラフィエルの声が聞こえた。


『インターフェースの反応はいかがですか、紬?』


「正常だ。体感できる遅延はない」


『すべての動作信号を、システムが最大出力の機動指示として解釈しないよう、制限を適用してあります』


「助かるよ。うっかり採掘場の壁に新しい穴を開けるのは御免だからな」


『私も、それは望んでいません』


別の通信回線から、カリスタの声が入った。


『初期点検は完了。使っていなかったとはいえ、本当にいい状態で保管されてたね。セラフィエル、ずっとちゃんと手入れしてたんだ』


『もちろんです。紬のものですから』


俺は小さく微笑んだ。


そこへレアが通信に入ってきた。


『紬! どう!?』


「前と変わらないよ」


『反応は!?』


「速い」


『どれくらい速いの!?』


「お前が二度と無断で乗ろうと思わないでほしいくらいにはな」


『シミュレーションで一度試しただけだよ!』


「その後、自分でも危険な機体だって言ってただろ?」


『……それはそうだけど』


俺は笑った。


しばらくして、MCV-01の出動準備が整った。


今回の作戦では、アストレオン・ヴェロリアを直接鉱業区域へ進入させるのではなく、MCV-01を現地の作戦拠点として使用することにした。


比較的限定された貨物回収任務に対して、主力艦は大きすぎる。


それに、通常の仕事を1つ片づけるためだけに、アストレオン・ヴェロリアの全能力を鉱業施設の運営者へ見せる理由もない。


モビルフレームの現場行動はレアが指揮する。


俺は専用試作機を使用し、彼女に同行する。


セラフィエルも実体のある身体で作戦に参加し、主力艦のシステムとの接続を維持しながら、監視とデータ支援を行う。


ヴェスペラは航法と地図作成を担当。


カリスタは技術的な準備状況、回収装備、MCV-01の状態を監督する。


ランはアストレオン・ヴェロリアに残り、契約関連の調整と事務連絡を維持する。


出発前、彼女が俺に近づいてきた。


「紬」


「ん?」


「現場へ同行することを止めるつもりはありません。ただ、紬ご自身が現地へ出るからといって、契約上の制限が変わるわけではないことは、お忘れなく」


「わかってるよ」


「現場が危険だと判断された場合は、チームの撤収を検討してください。久しぶりに専用モビルフレームを使いたいからといって、無理をなさらないように」


俺は微笑んだ。


「本当に俺の考えてることが読めるんだな」


「自分の艦長のことは、それなりによく理解していますから」


そう言って、彼女は俺のパイロットスーツの襟元を整えた。


「それから、もう1つ」


「何だ?」


「皆さん、無事に帰ってきてくださいね」


俺はしばらく彼女を見つめた。


「もちろんだ」


ランは微笑んだ。


「では、いってらっしゃいませ」


MCV-01は、発行された許可に従ってドッキング施設を離れた。


俺の専用モビルフレームのコックピットからも、支援艦のシステムが中継する航行情報を確認できる。


眼下には、カルヴォスの広大な産業区域が広がっていた。


巨大な輸送路が保管拠点と鉱石処理施設を結んでいる。産業車両が決められた経路に沿って移動し、荷役プラットフォームでは作業用モビルフレームが重量コンテナを扱っていた。


俺は興味深く、その光景を眺めた。


「ここは産業用の機体が多いな」


レアが通信で答えた。


『そうだね! でも、戦闘用モビルフレームとは構成が違うよ。大型のリフトアームとか、追加の安定化装置を使ってる機体もある』


カリスタも会話に加わった。


『そもそも用途が違うからね。戦闘用モビルフレームに重いコンテナを延々と運ばせたりしたら、整備費で私の頭が痛くなるよ』


「そんなことしないよ!」


『まだあんたの名前は出してないよ、レア』


「でも絶対、私のこと考えてたでしょ!」


俺は小さく笑った。


そこへヴェスペラから航法情報の更新が届く。


『K-17の産業区域境界へ接近しています。主経路は鉱業管制側で確認済みです』


セラフィエルが地図を表示した。


『最終的な作戦許可を受領しました。追加の調整を行わない限り、東側の稼働中の採掘区域へ進入することは認められていません』


「了解」


俺は避難経路のマーカーを確認した。


「退路の状態は?」


ヴェスペラが答えた。


『代替経路は2本登録されています。ただし、内部の実際の状態については、セクターへ接近してから確認する必要があります』


俺は頷いた。


「よし。その確認が終わるまでは、誰も奥へ進まないように」


K-17は、かなり陰鬱な景色で俺たちを迎えた。


古い採掘施設が岩壁と金属の骨組みの間に立ち並び、その一部はすでに放棄されている。


いくつかの輸送塔は、もう動いていなかった。


かつて資材の運搬に使われていた産業用レールは、今では埃と細かな破片に覆われている。


まだ機能している標識灯が、進入路を薄暗く照らしていた。


MCV-01は、認可された配置区域で停止した。


監視画面には、セクター番号が色褪せ始めた巨大なゲートが映っている。


K-17


その近くには、立入制限と構造物の不安定化の危険性を知らせる警告板も設置されていた。


レアがゲートを見つめた。


『ここ、本当に長いこと使われてなかったんだね』


「だからって、すべての設備が停止していると決めつけるなよ」と俺は言った。「安全システムの一部は、まだ稼働しているかもしれない」


『了解』


セラフィエルが初期スキャンの結果を送ってきた。


「最新の地図と比較して、位置が変化している構造物を複数検出しました。進入路を開く前に、検査用ドローンを送り込みます」


俺は頷いた。


「頼む」


MCV-01の検査用格納区画から、小型ドローンが数機発進した。


それぞれがゆっくりとゲートへ接近し、進入可能な整備通路を調べ始める。


共有画面にカメラ映像が表示された。


1機は通路の上部へ入り、別の機体はその下にある輸送路を調べている。


セラフィエルは、更新される情報を1つずつ監視していた。


「主ゲートの構造は維持されています。ただし、右側の支持材の一部に変形が見られます」


カリスタが映像を拡大した。


「新しい損傷じゃないね。表面を見てごらん。かなり厚く埃が積もってる」


「そのとおりです」とセラフィエルが答えた。「追加の荷重をかけてはならない区域として登録します」


ヴェスペラが地図の更新を始めた。


いくつかの経路の色が、灰色から緑色や黄色へと変化していく。


「主通路はまだ通行可能です。ただし、分岐路の1つが古い地図と一致しません」


俺は画面を見た。


「どうしてだ?」


「通路の一部が崩落物で塞がれています。次の移送室へ到達するには、代替の整備通路を使用する必要があります」


セラフィエルがすぐに別のドローンを送った。


「まずは安定性を確認します」


俺たちは待った。


誰も作業を急がせようとはしない。


数分後、検査結果が届いた。


K-17――初期進入評価


| 区域 | 検査結果 | 判断 |

| ------ | ---------- | --------- |

| 主ゲート | 開放可能 | 制限付き進入を許可 |

| 第1輸送通路 | 構造は比較的安定 | 監視下で使用可能 |

| 右側分岐路 | 古い崩落物により閉塞 | 回避 |

| 代替整備通路 | 通行可能 | 暫定的な予備経路 |

| 内部移送室 | データ不足 | 追加スキャンが必要 |


俺は結果を確認した。


「避難経路はどうなってる?」


ヴェスペラが答えた。


「主ゲートを通る帰還経路は確保できています。代替整備通路についても、安全な接続地点まで確認済みです。さらに奥の部分については、ドローンの調査結果に基づいて随時更新します」


「よし」


セラフィエルが付け加えた。


「必要になった場合、稼働中の産業区域につながる整備用アクセス路を緊急避難地点として使用できるよう、協同組合側にも確認を求めてあります」


「承認は?」


「はい。許可はすでに記録されています」


俺は頷いた。


「それなら、進入を開始しよう」


レアがヴァルキリーを起動した。


俺も自分の専用モビルフレームを起動する。


コックピット内のニューラル・インターフェースに、周辺環境と運用制限が表示された。


産業環境用作戦設定――有効


推進出力――制限中


自律戦闘支援――制限中


構造物の安全確保――最優先


俺は機体をゆっくりと動かし、プラットフォームから離れた。


すぐに、その応答性が身体に伝わってくる。


セラフィエルが制限をかけているにもかかわらず、動作は驚くほど滑らかだった。


この機体を操縦する楽しさを、危うく忘れるところだったな。


『紬!』


通信からレアの声が聞こえた。


「何だ?」


『紬の機体が、やっとまた動いてる!』


「見ればわかるだろ?」


『この仕事が終わったら、絶対一緒に訓練してみたい!』


「それはまた後で考えよう」


『それって断ってないよね!?』


「今は仕事に集中しろ、レア」


『了解!』


ヴァルキリーが先行し、主ゲートへ向かった。


俺は指定された距離を保って、その後に続く。


MCV-01は配置区域に留まり、指揮と支援の拠点として機能する。


セラフィエルがドローン網を監視し、ヴェスペラは更新された経路情報を、俺たち2機のコックピットへ直接送っていた。


最初の通路へ足を踏み入れた途端、周囲の雰囲気が一変した。


外からの光が、少しずつ消えていく。


モビルフレームの作業灯が、金属製の壁、古い輸送レール、通路に沿って延びる支持構造物を照らし出した。


古い換気設備から流れ込む空気が構造物の隙間を通り抜けるたび、細かな埃が舞っている。


俺はセンサー画面を確認した。


「地図で見たより狭いな」


ヴェスペラが答えた。


『はい。通路の寸法は初期設計に基づいていますが、いくつかの保護パネルがずれています。実際のスキャン結果に合わせて、安全に通行できる範囲を更新します』


先頭のレアは慎重に進んでいた。


『通れるよ。でも、帰りに大きなコンテナを運ぶなら、もう一度この経路を確認したほうがいいかも』


「いい判断だ」


俺は壁面の標識に目を向けた。


まだ読み取れる経路番号もある。


だが、傷や埃に覆われてしまったものも多い。


そこへMCV-01からカリスタの声が届いた。


『紬、右側の支持材に近づきすぎないで。ドローンのデータだと、接合部がもう変形してる』


「了解」


俺は進路を少し左へずらした。


専用機はあまりにも素早く動作に追従したため、調整した感覚すらほとんどなかった。


「……やっぱり、反応がすごいな」


セラフィエルがすぐに返事をした。


『聞こえていますよ、紬』


「お前の仕事を褒めただけだよ」


『ありがとうございます。ただし、それを理由に採掘場の中で性能限界を試そうとはしないでくださいね』


俺は小さく笑った。


「わかったよ」


通信越しにレアも笑った。


『これで紬も、何度も注意される側の気持ちがわかったでしょ!』


「そんなに嬉しそうに言わなくてもいいだろ」


いくつかの通路を抜け、俺たちは最初の移送室へ到達した。


そこは、産業用輸送車両を収容できるほどの広さがあった。


片側には、すでに使用されていないコンテナ移送プラットフォームが設置されている。


大きな扉が、さらに先の輸送路網へとつながっていた。


レアが停止した。


『紬、床に擦れたような跡がいくつかあるよ』


俺はセンサーを向けた。


「輸送機材の跡か?」


『かもしれない。でも、もう少し詳しく調べたい』


セラフィエルが小型ドローンを床面へ向かわせた。


いくつかの画像が拡大される。


床の表面材には、長く伸びた痕跡が残されていた。


カリスタがそれを確認する。


『一部は産業車両の走行痕と一致してるね。でも、ほかにも調べたほうがいい模様がある』


俺はヴァルキリーのほうを向いた。


「レア、まだ何も触るなよ。位置と形状を記録してくれ」


『了解』


レアは機体の検査用センサーを下ろした。


そして、動きを止める。


『……ん?』


「どうした?」


『紬、ここを見て』


俺のコックピット画面に画像が表示された。


移送プラットフォームの近くに、輸送車両の車輪とは異なる形状の圧痕がいくつか残されていた。


レアがそのうちの1つを拡大する。


『これ、モビルフレームの足跡みたい』


俺は画像を見つめた。


「確かなのか?」


『まだ完全には。でも、普通の崩落でできた跡にしては、形が整いすぎてるよ』


カリスタがすぐに、産業用機体のデータと画像を照合した。


『レアの言うとおりだ。機械式の脚部が接地した痕跡と一致するね。機種を特定するには、寸法と圧痕の深さを測定する必要があるけど』


セラフィエルが分析結果を表示した。


「プラットフォームの周辺にも、同様の接触痕を複数検出しました。一部は古い埃の層の上に残されています」


俺は眉をひそめた。


「つまり、ここが長いこと使われなくなった後にも、何らかの活動があった可能性があるってことか?」


「その可能性があります。ただし、正式な整備作業による活動と、記録されていない移動を区別する必要があります」


俺は頷いた。


「わかった。データは全部保存してくれ」


レアは、まだその痕跡を見つめていた。


『紬……もし本当にモビルフレームの足跡なら、誰かがこの部屋を通って、何かを運んだのかもしれないね』


「可能性の1つだな。だからって、目標のコンテナを盗んだと決めつけるなよ」


『わかってる』


だが、その声は先ほどまでよりも真剣だった。


ヴェスペラが地図の更新を終えると、俺たちは再び前進した。


次の区画では、セクターの状態がさらに悪くなっていた。


非常灯の一部はまだ点灯しているものの、照明パネルの多くは機能を停止している。


主輸送路は、古い保管室へ向かって枝分かれしていた。


俺たちが進む前に、セラフィエルが各アクセス路へドローンを送り、状態を確認していく。


そのうちの1機が、一部を塞がれたように見える通路の前で停止した。


「何か問題か?」


『通路上部に、構造物の位置の変化を確認しました』


画像が拡大される。


大きな支持梁が、本来の位置からずれていた。


接合部の周囲には、いくつかの破片がぶら下がっている。


カリスタがすぐに声を上げた。


『そこは通るんじゃないよ』


レアが振り向いた。


『でも、地図だと保管室までの最短経路だよ?』


『その梁があんたたちの通過中に落ちてきたら、最短経路どころか、一番いたくない場所になるだろうね』


俺は頷いた。


「別の道を使おう」


ヴェスペラがすぐに代替経路を表示した。


『左側に整備通路があります。距離は長くなりますが、ドローンのスキャン結果では、主要構造物の状態がこちらのほうが良好です』


「そっちを使おう」


レアは、一部が塞がれた通路を見つめた。


『あと少しで着きそうだったのに……』


「レア」


『わかってる。安全第一、でしょ』


「そういうことだ」


俺たちは整備通路へ向けて進路を変えた。


セラフィエルは、崩落の危険がある区域の近くに監視ドローンを1機残し、帰還経路を脅かすような構造変化が起きないか確認することにした。


俺はその対応を見ながら尋ねた。


「もしあそこが本当に崩れたら、主通路にも影響するか?」


「初期分析では、影響はその分岐路周辺に限られる可能性が高いと考えられます。ただし、皆さんがセクターを出るまでは、構造物の変位を継続して監視します」


「ありがとう」


代替の整備通路を進んだ先には、副保管室があった。


そこにはコンテナ用の棚がいくつも並び、停止した資材運搬装置や、古い産業用端末も残されていた。


俺は入口の近くで停止した。


「ヴェスペラ、この部屋の地図は?」


『現在更新中です。出口は2か所ありますが、そのうち1つは未検証の区域へつながっています』


「なら、確認が終わるまでは主出入口を使おう」


『承知しました』


レアが保管棚の1つへゆっくりと近づいた。


『紬、古い登録番号を見つけたよ』


俺も近づく。


構造物の表面には、埃に半ば覆われた施設コードが残されていた。


セラフィエルが協同組合の書類と照合する。


「この棚は、以前は調査機材の保管に使用されていました。ただし、目標のコンテナがこの部屋で正式に受領されたという記録はありません」


「つまり、まだ最終的な行き先は見つかってないわけだな」


「はい」


そのとき、レアが2つ目の出口付近の床に目を留めた。


『ちょっと待って』


俺は振り向いた。


「今度は何だ?」


『同じ跡がある』


ヴァルキリーのセンサーが床面を拡大した。


今度は、機械式の脚部が残した圧痕が、よりはっきりと確認できた。


しかも、1つだけではない。


いくつもの接地位置が、セクターの奥へ向かう移動パターンを形成していた。


カリスタがすぐに分析を始めた。


『これは、1機がその場に立っていただけの跡じゃないね。位置を変えながら移動してる』


レアが頷いた。


『それに、ここの端を見て。重いものを引きずったか、運んだみたいな擦り傷もあるよ』


俺は画像を確認した。


「目標のコンテナによるものか、判別できるか?」


『まだ無理。大きさだけなら、いろんな産業用の荷物が当てはまるから』


「なら、直接的な証拠としては扱わないように」


『了解』


セラフィエルが地図にマーカーを追加した。


「痕跡の位置、寸法、表面の状態を記録しました。協同組合の正式な移動記録と比較する際に役立つはずです」


俺は頷いた。


「よし」


だが、これらの痕跡を見ているうちに、調査機材の行方不明は、単なる配送ミスではないのかもしれないと思い始めていた。


説明しなければならないことが多すぎる。


受入地点へ到着しなかったコンテナ。


すでに使用されていない輸送路。


そして、通常の交通がないはずの区域に残されたモビルフレームの移動痕。


もちろん、どれにも正当な説明がつく可能性はある。


だからこそ、調べる必要があった。


『紬、協同組合側から情報の更新が届きました』


保管室を調べている最中、通信回線からランの声が聞こえた。


「何かわかったのか?」


『現在確認している直近の期間について、K-17の輸送路では、モビルフレームによる定期作業の予定が記録されていないとのことです。ただし、古い整備記録の照合は、まだすべて完了していません』


俺は頷いた。


「つまり、レアが見つけた痕跡は、今ある記録だけではまだ説明できないわけだな」


「そのとおりです。ただし、協同組合側からは、特定の操縦者に対する告発は行わず、証拠の記録を継続してほしいとの要請がありました」


「元からそのつもりだよ」


ランは少し間を置いた。


それから、声が少し柔らかくなった。


「皆さんの状態はいかがですか?」


「問題ないよ。副保管室まで入ったところだ。避けなきゃいけない構造物はいくつかあったけど、今のところ直接的な問題は起きてない」


「それから、紬の専用モビルフレームは?」


俺は微笑んだ。


「ちゃんと動いてるよ」


「それは何よりです。ただし、今回の任務を、機体の全性能を試す機会にはしないでくださいね」


俺は機体の表示をちらりと見た。


「どうしてみんな、同じことを言うんだ?」


別の回線から、カリスタが即座に答えた。


『私たちが紬のことをよく知ってるからだよ』


レアも笑い出す。


『そうそう!』


俺はため息をついた。


「……お前たち、食べ物の取り分を決めるとき以外は本当に息がぴったりだな」


保管室の検査を終えた後、俺たちは内部輸送路へ続くアクセス路を発見した。


セラフィエルが先にドローンを送り込む。


続いてヴェスペラが、観測結果に基づいて地図を更新した。


投影画面には、大きな移送室が現れた。


片側には、産業用レールにつながるコンテナ保管区域がある。


俺はその座標を確認した。


「そこが、目標物の最後の記録に最も近い地点か?」


ヴェスペラが頷いた。


『はい。ただし、直接スキャンするには障害となる構造物がいくつかあります。検査済みの経路を通って、さらに接近する必要があります』


セラフィエルが初期スキャンの結果を表示した。


「室内には、大型の物体を複数検出しています。そのうちの1つは、目標コンテナに近い寸法です」


レアがすぐに姿勢を正した。


『見つけたの!?』


「まだだ」と俺は答えた。「候補が見つかっただけだよ」


『了解!』


カリスタが付け加えた。


『あまり急いで進むんじゃないよ。床に落ちてるかもしれない調査機材を、あんたたちに踏み潰されちゃ困るからね』


『了解』とレアが答えた。


俺は前方の経路を確認した。


「ヴェスペラ、あの部屋が危険だった場合に、接近してきた経路を使わずに済む退路も確認してくれ」


『準備済みです。主な帰還経路は副保管室を通ります。代替の整備用アクセス路も地図に反映しましたが、幅の制限により、2機のモビルフレームが同時に移動することは難しいでしょう』


「よし」


俺はヴァルキリーの位置表示へ目を向けた。


「レア、交互に進入しよう。互いの通路を塞がないようにな」


『了解、紬』


内部の移送室は、最初の地図から想像していたよりも、はるかに広かった。


壁に沿って、いくつもの輸送プラットフォームが並んでいる。


産業用レールは、現在は機能していない大きな扉へ向かって伸びていた。


その構造物の間には、古いコンテナがいくつも置かれている。


まだ保管棚に収まっているものもあれば、本来の位置から移動させられたように見えるものもあった。


レアが、そのうちの1つへゆっくりと近づいた。


『紬、これを見て』


俺はセンサーを向けた。


移送プラットフォームの近くに、大型コンテナが置かれていた。


表面は埃に覆われているものの、識別標識の一部はまだ読み取れる。


セラフィエルがすぐに、契約書類のコードと照合した。


数秒後、彼女が口を開いた。


「紬。確認できる識別番号の一部が、目標のデータコンテナ一覧と一致しています」


俺は姿勢を正した。


「完全に一致したのか?」


「読み取れた部分は一致しています。ただし、番号全体と対象物の状態を確認するには、追加の検査が必要です」


「わかった」


レアが少し近づいた。


『こっちを向いてる面には、大きな損傷は見えないよ。でも、裏側は構造物に隠れてる』


俺は頷いた。


「まだ動かすな。まず周囲を調べよう」


セラフィエルが、コンテナ同士の隙間へ小型ドローンを送り込んだ。


新しい映像が表示される。


その物体の背後には、産業用機材と、一時保管場所として使われていたらしい構造物の一部があった。


だが、俺はあるものに気づいて眉をひそめた。


床の片側が、ほかの場所と比べて比較的綺麗だったのだ。


まるで、つい最近までそこにあった重い物体が、移動させられたかのように。


「セラフィエル、そこを拡大してくれ」


「はい」


画像が拡大される。


部屋の側面へ向かって、いくつもの擦過痕が伸びていた。


レアもそれに気づいた。


『……紬』


「ん?」


『また、モビルフレームの足跡がある』


俺はゆっくりと頷いた。


「見えてるよ」


今度の痕跡は、目標コンテナの候補のすぐ近くに残されていた。


セラフィエルが、すぐに詳細を記録していく。


「これらの接触痕は、調査が必要な機械的活動の存在を示しています。ただし、追加データがなければ、機体の識別情報も、正確な移動時刻も特定できません」


俺は画面を見つめた。


「少なくとも、機材が配送ミスで迷子になっただけという可能性は、だんだん低くなってきた気がするな」


レアは少し黙った。


それから、先ほどより真剣な声で答えた。


『私も、そう思う』


俺たちがまだコンテナに触れていないうちに、センサー画面に通知が現れた。


ピン。


俺は顔を向けた。


「セラフィエル?」


彼女はすぐには答えなかった。


いくつものデータウィンドウが開かれる。


「移送室の外側で、新たな移動反応を検出しました」


俺は眉をひそめた。


「産業用の機材か?」


「現在確認中です」


ヴェスペラがすぐに、航法表示を共有画面へ切り替えた。


保管区域へ続く進入路の1つに、移動する3つの点が現れた。


ヴァルキリーの中で、レアが姿勢を正す。


『3つ?』


セラフィエルがスキャン結果を拡大した。


機械的なシルエットが、少しずつ形を成していく。


小型ドローンではない。


通常の輸送車両でもない。


機械式の脚部を持つ3機のユニットが、移送室につながる通路に沿って移動していた。


その機体のいくつかの部位には、武装装備と一致する形状の部品が確認できる。


カリスタがすぐに声を上げた。


『……標準的なコンテナ輸送用の構成じゃないね』


セラフィエルが初期識別を完了した。


K-17――センサー接触警報


| 接触対象 | 初期分類 | 移動状況 |

| ------ | -------------- | --------------- |

| 接触対象01 | 武装モビルフレーム | 移送室へ接近中 |

| 接触対象02 | 武装モビルフレーム | 接触対象01に追従 |

| 接触対象03 | 武装モビルフレーム | コンテナ候補へ続く経路に接近中 |

| 操縦者の身元 | 不明 | 確認が必要 |

| 脅威状況 | 直接接触はまだ発生していない | 優先監視対象 |


俺は、ゆっくりと接近してくる3つの赤いマーカーを見つめた。


「協同組合の作戦に登録されている機体か?」


セラフィエルが答える。


「今回の作戦用に提供された正式な機体一覧には、一致する情報がありません。現在、追加の確認を要請しています」


ヴェスペラが地図を更新した。


『3機とも、私たちがいる移送室へ向かう経路を使用しています。このまま進路を変えなければ、コンテナ候補のある区域へ到達します』


レアは、避難経路を塞がない位置へヴァルキリーを移動させた。


『紬』


「わかってる」


俺は専用モビルフレームのシステムチェックを起動した。


ニューラル・インターフェースが、即座に反応する。


だが、俺はまだ運用制限を解除していなかった。


その必要は、まだない。


「セラフィエル、3機の監視を続けてくれ。ヴェスペラ、あいつらの進路と重ならない退路を確認。カリスタ、MCV-01はいつでも対応できる状態を維持してくれ」


『了解』


それから俺は、ヴァルキリーの位置表示を見た。


「レア、こちらから先に接触するなよ。まだ相手が何者かわからない」


『了解』


その声は、格納庫を出たときよりもずっと落ち着いていた。


俺は薄く微笑んだ。


どうやら彼女も、現場指揮官としての責任を本当に理解し始めているらしい。


そのとき、センサー上の3つの点が再び動いた。


すべて、俺たちが調べているコンテナへ向かっている。


俺はコックピットのシートに身体を預け、短く息を吐いた。


「……どうやら今回の貨物回収は、書類に書いてあったほど単純な仕事じゃなさそうだな」


目の前では、長らく使っていなかった俺の専用モビルフレームのニューラル表示が、新たな3つの接触反応を映し出していた。


久しぶりに、俺とレアはそれぞれのモビルフレームに乗り、同じ現場へ出ている。


そして、今夜のK-17にいるパイロットは、どうやら俺たちだけでは済まなさそうだった。


【次回・第138話】


「モビルフレーム交戦」


モビルフレーム同士の戦闘――武装した3機のモビルフレームが、K-17の目標コンテナへ接近する。正体不明の集団が貨物を持ち去ろうとし、回収作業を妨害する中、レアは現場での機体行動を指揮しなければならない。一方、紬はチームの安全、避難経路、そして承認済みの作戦制限を守りながら、自身の専用モビルフレームを操縦する。


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