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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第130話】「護衛線を突破する影」

【第130話】「護衛線を突破する影」



ヴェルドラコン出航後・10日目 場所:ナマリス・エクスチェンジ・ステーション → ナマリス交易航路 → 船団引渡地点 POV:星崎紬


「紬、私、あの中型艦を使いたい!」


今朝、アストレオン・ヴェロリアの指揮デッキに入った俺が最初に聞いたのは、レアからのそんな要求だった。


俺は艦長席の前で足を止めた。


「……レア、とりあえずおはよう」


「おはよう! それで、いい?」


「せめて座るくらいはさせてくれ」


レアは尻尾を元気いっぱいに揺らしている。


その後ろには、技術点検用の端末を持ったカリスタが立っていた。どうやら数分前からこの話を止めようとしていたものの、結局失敗したらしい。そんな表情だった。


「紬、今日の護衛構成はまだ決まってないって、ちゃんと説明したんだよ。なのに、あの中型艦が使用可能な支援ユニットの一覧に入ってると知った途端、あんたを捜しに来たんだ」


「だって、使ってみたいんだもん!」


「あんたにはモビルフレームがあるだろ? そっちが専門じゃないのかい?」


「私、戦闘艦だって操縦できるよ!」


カリスタが眉を上げた。


「モビルフレームの操縦経験と、戦闘艦の運用経験はまったく同じじゃないんだけどね」


「わかってる! 同じだなんて言ってないでしょ!」


俺は椅子に腰を下ろし、メイン端末の近くに立っていたセラフィエルへ視線を向けた。


「どうやら船団の話をする前に、確認しなきゃいけないことがあるみたいだな」


セラフィエルが微笑んだ。


「該当ユニットの情報は、すでに準備してありますよ、紬」


目の前に投影映像が現れた。


6日目にカリスタが話題にしていた、あの中型艦だ。


船体は細身で、牽引作業や重量物を扱う運用に備え、構造の一部が補強されている。外部システムのいくつかは用途に応じた再構成が可能で、推進能力と防御能力には、アストレオン・ヴェロリアと同系統の技術基準が採用されていた。


母艦と比べれば、その大きさははるかに小さい。


だが、見た目だけで実際の能力を判断してはいけないことくらい、俺にもわかっている。


「まだ名前はついてないのか?」と俺は尋ねた。


「はい、まだです」


「じゃあ、とりあえず内部ユニットコードを使ってくれ」


セラフィエルが表示を更新した。


MEDIUM MULTIROLE SUPPORT WARSHIP — MCV-01 正式名称:未設定 主な用途:牽引、技術支援、限定的な戦闘運用


カリスタが推進システムの部分を指さした。


「昨夜、このユニットは一通り調べておいたよ。技術的には使用可能な状態だ。ただ、それでもレアが突然、戦闘艦の艦長になりたがった理由は聞いておきたいね」


「だって、今回は3隻の商船を護衛するんでしょ? 略奪船が近づいてきたとき、中型艦ならアストレオン・ヴェロリアより柔軟に動けるじゃない」


レアは真剣な目で俺を見つめた。


「敵が来るたびに、モビルフレームを出す必要はないと思うんだ。距離を保ちながら敵の進路を塞いだり、編隊の外側から船団を支援したりできる戦闘ユニットを、私が指揮してみたいの」


俺はすぐには答えなかった。


なるほど。単に新しい玩具を試したいだけかと思っていたが、予想以上にまともな理由だった。


「セラフィエル、どう評価する?」


「レアには、航法システムと自動制御の支援を受けながら、現場指揮官として任務を遂行できるだけの戦闘経験と戦術的理解があります。ただし、MCV-01の使用には専用のブリーフィング、兵装使用権限の制限、そして指揮デッキからの監督が必要です」


「つまり、好き勝手に単独行動させるわけじゃないってことだな」


「もちろんです」


レアがすぐに頷いた。


「私だって、そんなこと頼んでないよ!」


カリスタが腕を組んだ。


「それなら、初めての作戦には私も同乗したいね」


「えっ?」


「技術点検の責任者は私だからね。あんたが妙なことをしたら、その場で把握しておきたいんだよ」


「妙なことなんてしないってば!」


「よし。それなら意見は一致したね」


俺は2人を見た。


「わかった。MCV-01の現場指揮官はレア。カリスタは技術面の監督を担当して、セラフィエルが制御支援を行う。ただし、モビルフレームも予備装備として準備しておこう」


レアの顔がぱっと明るくなった。


「本当!?」


「ただし、条件が1つある」


「何?」


「護衛任務の命令には必ず従うこと。俺たちが報酬をもらうのは、3隻の商船を目的地まで届けるためだ。海賊狩りの競争を開催するためじゃない」


「了解、紬!」


俺は彼女を指さした。


「それと、もし略奪船を無力化できたら、合法的に回収できる貨物がないか、忘れずに確認してくれ。セラフィエルにも、損傷した船からデータを取得してもらう。海賊集団に関する情報は、傭兵協会の条件を満たしていれば、情報提供の報酬が得られるかもしれないからな」


レアはますます嬉しそうになった。


「おおっ! じゃあ、契約報酬とは別に、追加のお金がもらえるかもしれないんだね?」


ちょうど指揮デッキへ入ってきたランが、すかさず答えた。


「可能性はあります。ただし、攻撃船が所有している物品すべてが、自動的に私たちの所有物になるわけではありません。所有権、犯罪の証拠、サルベージ権、引渡手続きなどを先に確認する必要があります」


俺は振り向いた。


「おはよう、ラン。ちょうどいいところに来たな」


「通路から『戦利品』という言葉が聞こえましたので。当然、来ないわけにはまいりません」


セラフィエルが小さく笑った。


俺は頷く。


「わかった。発見した物品はすべて記録する。被害者の所有物を勝手に持ち去らない。証拠品は損なわず、正式に請求できるものだけを正規の手続きで処理する。それでいいな?」


ランは満足そうだった。


「でしたら、異論はありません」


レアが拳を握った。


「よーし! 今日は勝って、もしかしたら追加のお金も手に入れるぞー!」


カリスタがため息をつく。


「まだ敵にも会ってないんだよ、レア」


「気合いを入れてるだけだってば!」


ナマリス現地時間、08時20分。


3隻の商船から、コンテナターミナルを通じて出航準備完了の報告が届き始めた。


昨日交渉を行ったナマリス・コンソリデーテッド・トレーダーズの担当者からは、各船の船長と船団マネージャーの正式な識別情報も送られてきている。


俺はその一覧を開いた。


船団 C-128-ES――主要担当者


| 船名 | 船長 | 備考 |

| ------------- | --------- | -------------- |

| Meridian Vale | ダリウス・ケルム | 第1商船・編隊先導船 |

| Sorelia Wind | ミレル・ソヴァン | 第2商船 |

| Hadrien Sol | エドリック・ヴォス | 第3商船・巡航性能が最も低い |


船団マネージャー: アルヴェン・リスト――ナマリス・コンソリデーテッド・トレーダーズ


通信画面に、ダークブラウンの髪をした男性の顔が映し出された。


『おはようございます、星崎艦長。船団運航マネージャーのアルヴェン・リストです。アストレオン・ヴェロリアが契約C-128-ESを遂行する準備を完了したとの確認を受けています』


「おはようございます、リストさん。そのとおりです。出航前に、3隻の船長全員が最新の編隊案を受け取っているか確認しておきたいのですが」


『受領済みです。ただし、ヴォス船長から航行速度について質問がございます』


追加の通信回線が開かれた。


短髪で大柄な男性が話し始める。


『エドリック・ヴォス、ハドリエン・ソルの船長です。交易回廊へ入った後、先頭の船を追いかけるような速度を強いられないか、確認したいのです。推進システムに問題はありませんが、うちの船の巡航性能は、ほかの2隻より低いもので』


ヴェスペラが近づいてきた。


「航行計画は、ハドリエン・ソルの運用限界を基準に調整済みです。メリディアン・ヴェイルの最高速度を編隊の基準にはしません」


『それなら結構です。誰かが数分早く着きたいというだけで、うちの機関に無理をさせるのは御免ですからな』


別の回線から、女性の声が聞こえた。


『ミレル・ソヴァン、ソレリア・ウィンドです。私も賛成です。こちらの積荷も安定した航行を必要としていますので』


続いてダリウス・ケルムが加わった。


『メリディアン・ヴェイルは、護衛艦の航法士の指示に従って先導する準備ができています。ただ、更新された計画に記載されている支援艦の配置について、確認させてください』


俺はセラフィエルを見た。


彼女は承認済みの編隊図を送信した。


「アストレオン・ヴェロリアは主護衛位置から船団を監視します。加えて、中型支援艦を1隻、編隊の外側へ配置します。このユニットが商船の機動経路を妨げることはありません」


『支援艦ですか?』とアルヴェンが尋ねた。


「ええ。MCV-01です。船団へ接近を試みる不明な接触対象への監視と対応を支援します」


『費用に変更はございますか?』


ランが即座に答えた。


「いいえ。このユニットは、契約を履行するために当方が選択した運用構成の一部です。C-128-ESの契約金額に変更はありません」


『承知しました。それでしたら、異論はありません』


俺は頷いた。


「もう1点。昨日受け取った通信障害の報告については、まだ原因が特定されていません。ですから、主通信回線が途切れても、一時的に連絡を失ったという理由だけで勝手な機動を行わないでください。送付済みの予備手順に従ってください」


3人の船長全員から確認が返ってきた。


俺は最後に、一言だけ伝えた。


「俺たちの目標は単純です。全船、一緒に到着すること。それだけです」


09時05分。


船団に、ナマリス・エクスチェンジ・ステーションからの出航許可が下りた。


メリディアン・ヴェイルが先に動き、その後ろにソレリア・ウィンド、ハドリエン・ソルが続く。


アストレオン・ヴェロリアは、3隻が出航回廊へ進入したのを確認してから位置を調整した。


一方、艦内の格納施設の1つでは、MCV-01が発進手順を開始していた。


中型艦の指揮席に座ったレアは、真剣な表情をしている。


カリスタはエンジニアリング端末の前についた。


『紬、こちらレア。MCV-01、発進準備完了!』


「システム報告を」


『主推進機関、正常。機動制御、応答良好。センサーと通信はアストレオン・ヴェロリアとの同期を完了してるよ』


カリスタも付け加えた。


『技術系統も準備完了。兵装構成は、あんたが承認した制限に従ってロックしてある。戦略兵装は使用しないよ』


「よし。セラフィエル?」


「発進権限の照合は完了しています。格納庫の退出経路も安全です」


俺はスクリーンを見た。


「MCV-01、発進を許可する。安全距離を確保した後、編隊に合流してくれ」


『了解!』


中型艦がアストレオン・ヴェロリアの内部施設から動き始めた。


外部カメラには、船体がゆっくりと姿を現し、推進システムを起動して船団の外側へ向かう様子が映っていた。


心配していたような無茶な機動を、レアがいきなり行うことはなかった。


彼女はヴェスペラが指定した航路に従い、3隻の商船との距離を保ったまま、速度を調整した。


『どう、紬?』


「何が?」


『私、ちゃんと戦闘艦の艦長らしく見えるでしょ?』


俺は彼女の位置を示す投影図を見た。


「今のところはな」


『えへへ!』


カリスタがすかさず口を挟んだ。


『調子に乗るんじゃないよ。まだステーションを出たばかりだろ』


俺は小さく笑った。


やっぱり、カリスタを同乗させた判断は正しかったようだ。


昼前。


船団は、以前から通信障害の増加が報告されていたナマリス交易航路の区間へ進入した。


指揮デッキでは、ヴェスペラが航路図を拡大している。


「紬、これから障害報告が最も多い区域を通過します。第2船と第3船の進行方向の間隔を、少しだけ縮めたいと思います。ただし、機動上の安全限界は維持します」


「ハドリエン・ソルは、その調整についてこられるか?」


「はい。同船の能力を基準に計算済みです」


「なら、全船長に伝えてくれ」


セラフィエルが指示を送信した。


ほどなくして、アルヴェンの声が聞こえてきた。


『船団、編隊更新を受領しました。メリディアン・ヴェイルとソレリア・ウィンドは位置調整を完了。ハドリエン・ソルは現在、航路修正を終えるところです』


俺は頷いた。


「よし。MCV-01、外側の状況は?」


『今のところ危険な接触はないよ』とレアが答えた。『でも、回廊の境界付近で、センサーが不規則な反射をいくつか拾ってる』


セラフィエルは、すぐにその情報をアストレオン・ヴェロリアの主センサーと照合した。


「こちらでも同じデータを確認しています。複数の信号帯域で電子的な障害が発生しています。現在、民間船の識別情報と、交通記録に一致しない反射を分離しています」


ヴェスペラがスクリーンを見つめた。


「確認が必要な航跡が3つあります。2つは編隊から十分離れていますが、残る1つがハドリエン・ソルの進行予定経路へ接近しています」


俺は姿勢を正した。


「登録情報は?」


「信頼できる一致情報は、まだ得られていません」とセラフィエル。


「識別要求を送ってくれ。最初から全部敵だと決めつけるなよ」


「了解しました」


識別信号が送信された。


だが、十分な応答はない。


その直後、接触対象の1つが進路を変更した。


ヴェスペラが即座に航跡を拡大する。


「紬、3番目の接触対象は、通常の交易交通の流れに従っていません。現在の速度を維持した場合、ハドリエン・ソルの機動空間へ進入します」


「偶然の可能性は?」


「低くなっています。残る2つの接触対象も、船団が選択できる進路を制限するように動き始めました」


俺は図を見つめた。


こちらの商船3隻は、1つの編隊を組んで航行している。


そして、どうやら誰かさんは、一番遅い船をそこから引き離したいらしい。


『アストレオン・ヴェロリア、こちらハドリエン・ソル。外側に不明な接触を確認しました。こちらも進路を変更すべきでしょうか?』


エドリックの声には緊張が混じっていた。


俺は共通回線を開いた。


「ヴォス船長、今は編隊を維持してください。独断で機動しないように。こちらの航法士が修正経路を準備しています」


『了解しました』


ヴェスペラがすぐに代替経路を表示した。


「紬、内側に、契約上認められた航行区域から外れない安全な回廊があります。今のうちに船団全体をそちらへ誘導すれば、第3船は接触対象を避けるために急機動する必要がありません」


「速度の変更はどのくらいだ?」


「全船の能力範囲内です。編隊を分離する必要もありません」


「実行してくれ」


アルヴェンと3人の船長へ指示が送られた。


メリディアン・ヴェイルが指示に従って航路を変更し始める。


ソレリア・ウィンドが続いた。


ハドリエン・ソルも、十分な機動空間を確保してから動き出した。


その瞬間だった。


通信障害が強くなった。


エドリックの声が途切れ途切れに聞こえる。


『……ハドリエン・ソル……指示は……受信……だが……』


通信画面が点滅した。


セラフィエルが即座に対応を始める。


「正規の通信信号と干渉成分を分離しています。重要な指示の送信には予備回線を使用します」


「障害に対処する過程で、民間船の通信まで乱したりしないようにな」


「もちろんです、紬」


数秒後、エドリックの声が、先ほどよりも明瞭に戻ってきた。


『ハドリエン・ソル、代替航路を受領。こちらはまだ船団と行動を共にしています』


俺は頷いた。


「よし。そのまま編隊から離れないでください」


続いて、接触警報が鳴った。


不明船の1隻が加速を始めたのだ。


セラフィエルがその船影を表示する。


改造された船体を持つ、軽武装船。


交通通信回線を通じて照合可能な、正規の運航者識別情報はない。


その後方では、ほかの2隻が、異なる方向から船団へ圧力をかけられる位置を取り始めていた。


レアがすぐに連絡してきた。


『紬、こいつら、ただ通りかかっただけじゃないよ。先頭の1隻は、ハドリエン・ソルの外側を狙ってる』


俺はメインスクリーンを見た。


「セラフィエル、共通通信回線を開いてくれ」


「回線を開きました」


俺は息を吸った。


「ナマリス・コンソリデーテッド・トレーダーズの船団へ接近中の不明船3隻へ。こちらはアストレオン・ヴェロリア、護衛事業者の星崎紬です。あなた方は、契約に基づく保護下にある民間船の機動空間へ侵入しています。直ちに接近を中止し、身元を明らかにしたうえで、編隊から離れてください」


返答はなかった。


少し待ってから、俺は警告を繰り返した。


「こちらに交戦の意思はありません。単に通過するだけなら、利用可能な航路を使い、船団の進行を妨げないでください」


ようやく、1隻から通信が入った。


スピーカーから男の声が響く。


『護衛艦、俺たちの仕事から手を引け。あの商船には、こっちが調べたいものが積まれている』


俺は眉をひそめた。


「あなた方に積荷を検査する権限はありません。後退してください」


『面倒なことにするな。一番後ろの船を渡せば、お前たちはそのまま行かせてやる』


俺はランを見た。


彼女は無表情で視線を返してきた。


「紬、先方の意図は十分明確になったと思いますが」


「そうだな」


俺は通信を再び有効にした。


「要求は拒否します。3隻とも、こちらの保護対象です。これが最後の警告です」


最初の攻撃船が発砲した。


狙いはアストレオン・ヴェロリアではなかった。


連中はハドリエン・ソルの近くにある空間へ攻撃を向け、まるで船長を編隊から引き離そうとしているかのようだった。


エドリックが通信越しに叫ぶ。


『撃ってきたぞ!』


「航路から外れないでください!」と俺は答えた。「こちらで対処します!」


俺はセラフィエルへ顔を向けた。


「防御システムを起動。商船の安全を最優先に。戦略兵装は使うな」


「了解しました」


該当する区画に限定的な防護層が展開され、アストレオン・ヴェロリアの照準システムが攻撃船の追跡を開始する。


俺はレアへ連絡した。


「MCV-01、ハドリエン・ソルへ接近しようとしている船を迎撃してくれ。護衛区域の外まで追うなよ」


『了解、紬!』


戦術スクリーンの中で、MCV-01が外側の監視位置から動き出し、敵の接近経路を横切る軌道へ入った。


中型艦が加速する。


ただし、派手に推力を噴き上げるような動きではない。


敵と護衛対象の間に先回りするために必要な、計算された機動だった。


レアが通信回線を開く。


『不明船へ。こちらはアストレオン・ヴェロリア所属、MCV-01。ハドリエン・ソルへの接近を中止して!』


返ってきたのは、砲撃だった。


『紬、こっちを攻撃してきた!』


「限定的な反撃を許可する。船団へ接近する能力を無力化してくれ」


『了解!』


MCV-01が船体の角度を変えた。


防御システムが飛来した攻撃を受け止め、直後に、攻撃船の外部機動装置へ向けて精密射撃が放たれる。


相手の船体側面に閃光が走った。


敵船は航路上の安定性を失い、ハドリエン・ソルの進行経路から離脱せざるを得なくなった。


レアの声は、実に満足そうだった。


『命中!』


だが、カリスタが即座に口を挟んだ。


『喜ぶのはまだ早いよ! 残りが2隻いるんだからね!』


『わかってるってば!』


俺は小さく笑った。


少なくとも、あの2人にはまだ口喧嘩をする余裕があるらしい。


つまり、MCV-01の内部はそこまで深刻な状況ではないということだ。


残る2隻の略奪船も動き始めた。


そのうち1隻は、メリディアン・ヴェイルの前方へ回り込み、先導船を減速させようとしている。


もう1隻は、ソレリア・ウィンドの外側から接近していた。


ヴェスペラは即座に航法表示を切り替えた。


「紬、メリディアン・ヴェイルが急減速すれば、編隊全体が乱れるおそれがあります。安全な速度を維持したまま通過できるよう、修正経路を指示します」


「頼む」


セラフィエルは、密度を増していく電子障害の中から、3隻の商船の信号を分離していた。


「認証済み回線を通じて、船団の識別情報を固定しました。一般通信の一部が妨害されても、各船の追跡は維持できます」


「前方の攻撃船は?」


「メリディアン・ヴェイルに対する照準角度を確保しようとしています」


俺は両者の相対位置を確認した。


「照準能力を無力化してくれ。船そのものは破壊するな」


「了解しました」


アストレオン・ヴェロリアは、限定的な防御システムをその船へ向けた。


セラフィエルが選んだのは、周囲の民間通信へ干渉を広げずに、相手の目標捕捉能力を妨害できる装置だった。


しばらくすると、攻撃船の照準状態を示す表示が変化した。


「敵船の目標捕捉システムを一時的に無力化しました。メリディアン・ヴェイルに対する安定した射撃解を得られない状態です」


攻撃船は位置を変えようとしたものの、先導船を航路から追い出す機会を失っていた。


ダリウスがすぐに報告してきた。


『メリディアン・ヴェイル、航路を維持しています。ご支援、感謝します!』


「ヴェスペラの指示に従い続けてください。相手が離れたからといって、勝手に速度を変えないように」


『了解!』


俺はレアの位置を確認し直した。


MCV-01はすでに、最初の攻撃船をハドリエン・ソルの機動空間から追い出すことに成功していた。


だが、その船から突然、小さな接触対象が分離した。


セラフィエルが映像を拡大する。


「紬、攻撃船が小型の接近艇を発進させました。進路はハドリエン・ソルの後方へ向かっています」


俺は眉をひそめた。


なるほど。まだ諦めていないらしい。


「レア、商船へ取りつこうとしている艇がいるぞ」


『見えてるよ』


「ハドリエン・ソルの進路を妨げずに、MCV-01で迎撃できるか?」


『できるけど、接近角度が狭いんだ。最後の進入経路を塞ぐために、予備のモビルフレームを使いたい』


俺はセラフィエルをちらりと見た。


「安全に発進できるか?」


「はい。レアがモビルフレームによる近接阻止行動を行っている間も、MCV-01は支援制御によって護衛位置を維持できます」


俺は頷いた。


「許可する。ただし、MCV-01を無人のまま放置するな。カリスタが自動システムと連携して、引き続き技術制御を担当してくれ」


『了解!』


カリスタがすぐに答えた。


『レア、発進区画を開放するよ。予備機を積ませたことを後悔させるんじゃないよ!』


『わかってる!』


それから間もなく、レアのモビルフレームがMCV-01から飛び出した。


略奪船の接近艇は、すでにハドリエン・ソルのすぐ近くまで迫っている。


その軌道を見れば、連中の狙いは明らかだった。


商船を破壊する必要はない。


船体へ取りつき、貨物区画へのアクセスを強制的に開かせ、乗組員を脅迫して船団を停止させれば、それでいいのだ。


だが、接近艇が目的の位置へ到達するよりも先に、レアがその進路へ入り込んでいた。


『ここから先は通さないよ!』


彼女のモビルフレームが位置を変え、小型艇が利用しようとしていた空間を塞ぐ。


レアは開放回線で警告した。


『接近艇、機動を中止してハドリエン・ソルから離れて!』


接近艇は旋回を試みた。


レアはその動きに追従し、商船の船体へ危険なほど接近することなく、進路を遮り続けた。


MCV-01から、カリスタが状況を報告してきた。


『紬、中型艦は引き続き安全な位置を維持してるよ。最初の攻撃船についても監視を続けてる。さっきの攻撃で、推進システムが損傷したみたいだね』


「まだ攻撃できそうか?」


『機動能力は低下してる。主兵装は完全に沈黙したわけじゃないけど、今の位置は相手にとって有利とは言えないね』


俺はセラフィエルを見た。


「状態を記録しておいてくれ。船団への脅威が収まるまでは、あの損傷船に接近しないように」


「了解しました」


数秒後、敵の接近艇は、ついに作戦を断念した。


レアは追撃しなかった。


接近艇が十分に離れるまで、その艇とハドリエン・ソルの間で防壁の役目を続けていた。


『紬、あいつら撤退したよ!』


「よし。再接近を試みないことを確認したら、MCV-01へ戻ってくれ」


『了解!』


俺は小さく息を吐いた。


今回の戦闘でも、確かにモビルフレームの出番はあった。


けれど、作戦の中心はあくまで戦闘艦同士の連携、航路の制御、そして民間船3隻を1つの船団として動かし続けることだった。


まさに、俺が望んでいた形だ。


最初の攻撃船が有効な機動能力を失い、2隻目が安定した照準を得られなくなると、3隻目の接触対象も距離を取り始めた。


セラフィエルが進路の変化を表示する。


「現在も航行可能な2隻が、護衛区域から離脱する航路を取り始めています」


「またハドリエン・ソルへ向かっているのか?」


「いいえ。現時点では船団から離れています」


俺は共通回線を開いた。


「攻撃船各船へ。今なら、まだ撤退できます。二度と船団へ接近しないでください。民間船に対する脅威がなくなった以上、こちらから追撃するつもりはありません」


返答はない。


それでも、2隻は離脱方向を維持した。


俺はヴェスペラを見た。


「船団の位置は?」


「3隻とも編隊を維持しています。ハドリエン・ソルは先ほどの航路修正で少し遅れていますが、推進システムに無理をさせずに間隔を回復できる範囲です」


「よし。そっちを優先してくれ」


ランが端末へ近づいた。


「紬、損傷した攻撃船についてはどうしますか?」


俺は、今も主航路の外側で不安定な動きを続けている接触対象を見た。


「今すぐあの船を調べるために、船団を放置するつもりはない。でも、合法的に得られる情報やサルベージの機会も逃したくないな」


セラフィエルが頷いた。


「遠隔監視を維持し、識別情報と行動記録を保存したうえで、傭兵協会へ提出する証拠パッケージを準備できます。船が引き続き安全にアクセス可能な位置へ留まっている場合、護衛の主要義務が完了した後に、追加調査を調整することも可能です」


「内部データはどうだ?」


「損傷船のシステムから合法的に取得可能なデータを確認します。識別情報、攻撃に関連する通信記録、証拠として関係する情報などです。証拠能力を損なわないよう、アクセスと引渡しの履歴も記録します」


俺は微笑んだ。


「よし。情報に諜報上の価値があるなら、傭兵協会へ提出できるな」


ランがすかさず付け加えた。


「ただし、先方がその情報を買い取るかどうかを確認してからです。承認されていない報酬を収入報告へ含めないでくださいね」


「わかってるって」


そこへレアから通信が入った。


『紬! 貨物の戦利品はどうするの?』


俺は笑った。


「本当にそこは覚えてるんだな」


『もちろん! 紬が自分で言ったんでしょ!』


「じゃあ、よく聞いてくれ。何でも勝手に持っていっていいわけじゃない。被害者の所有物だと判明した貨物は返還する。証拠品も記録が必要だ。俺たちが請求できるのは、正式に認められたサルベージや報酬だけだからな」


『了解! つまり、ちゃんと手続きすれば何かもらえる可能性はあるんだよね?』


「あるかもな。でも、今は中型艦へ戻ってくれ。俺たちの本来の仕事は、まだ終わってないんだから」


『了解、紬!』


同じ回線から、カリスタのため息が聞こえてきた。


『あんたたち2人、船の点検より戦利品のほうに興味があるんじゃないかい?』


「そんなことないぞ」と俺。


『紬』


「……ちょっとだけ」


セラフィエルが小さく笑った。


直接的な脅威が収まった後も、俺たちは編隊を監視なしで航行させたりはしなかった。


ヴェスペラは3隻の商船の進路を調整し、承認済みの航路へ戻していく。


MCV-01も船団の外側の位置へ戻った。


レアはすでに指揮席へ復帰しており、カリスタは中型艦の推進システムと兵装の使用データを確認していた。


『紬、MCV-01は護衛構成へ復帰したよ。モビルフレームも収容して固定済み!』


「艦の状態は?」


カリスタが先に答えた。


『深刻な損傷はないよ。ただし、到着後には必ず完全点検をするつもりだ。防御システム、機動用推進機関、それから発進区画は確認しておかないとね』


「よし。レア、戦闘艦を指揮してみてどうだった?」


『楽しかった!』


「即答だな」


『でも、カリスタが何度も注意してくる理由もわかったよ。これくらいの大きさの艦を動かすのって、モビルフレームとは違うんだね。航路も、射界も、商船の位置も、支援システムの能力も、全部同時に考えなきゃいけないから』


カリスタが少し黙った。


『……まあ、少なくとも何かは学んだみたいだね』


『もちろん!』


俺は微笑んだ。


「2人とも、よくやった」


続いて、セラフィエルが戦闘の初期報告書を表示した。


護衛作戦概要――C-128-ES


| 項目 | 状態 |

| ------------- | ------------------ |

| Meridian Vale | 安全・編隊維持 |

| Sorelia Wind | 安全・編隊維持 |

| Hadrien Sol | 安全・略奪船の接近艇による接舷を阻止 |

| MCV-01 | 運用可能 |

| レアのモビルフレーム | 帰投・収容済み |

| 第1攻撃船 | 機動能力に障害・監視継続中 |

| 第2攻撃船 | 照準能力を一時的に無力化 |

| 第3攻撃船 | 護衛区域から撤退 |

| 航行可能な攻撃船2隻 | 離脱中 |

| 契約状況 | 継続中 |


俺は報告書を読んだ。


「損傷した最初の船はどうなってる?」


「最後に確認された位置と状態は記録済みです。また、管轄する交易航路当局へ事故・交戦報告も送信しました」


「よし。あいつらを捕まえるために船団を放置して、新しい問題を起こす必要はないからな」


ランが頷いた。


「そして、サルベージの請求や情報提供報酬については、すべて契約C-128-ESの支払いとは別に処理します」


「もちろん」


俺は再びメインスクリーンへ視線を向けた。


前方では、3隻の商船が今も一緒に進んでいる。


それこそが、今回最も重要な成果だった。


しばらくすると、航法スクリーンに引渡地点が姿を現し始めた。


イリリオン~ナマリス交易航路上にある商業用の貨物移送施設が、船団の到着通知を受信していた。


ヴェスペラは施設の識別情報を確認してから、船団マネージャーへ連絡した。


「リストさん、引渡地点の接近区域へ進入しました。全船が合意済みの到着手順に従うよう、ご確認をお願いします」


『了解しました。メリディアン・ヴェイル、ソレリア・ウィンド、ハドリエン・ソルは、いずれも最終航行報告を準備中です』


俺は3人の船長との共通回線を開いた。


「各船の状態はどうですか? 引渡し前に報告しておくべき損傷はありますか?」


最初に答えたのはダリウスだった。


『メリディアン・ヴェイル、安全を確認しています。到着を妨げるような問題はありません』


続いてミレル。


『ソレリア・ウィンドも問題ありません。途中で通信障害は受けましたが、主要システムは正常に動作しています』


最後に、エドリックが画面へ現れた。


『ハドリエン・ソルも良好です。正直なところ、あの船が接近してきたときは、こちらも編隊から引き離されるのではないかと思いましたよ』


「幸い、そうならずに済みましたね」


『中型艦が連中の進路を塞ぐところを見ていました。ぜひ、その指揮官に礼を伝えてください』


俺は微笑んだ。


「直接伝えてもらって構いませんよ。レア、共通回線に入ってくれ」


レアの顔が映し出された。


『はい?』


エドリックが彼女に頷いた。


『ありがとうございました。あなたが間に合ってくれなければ、私は船の機関に無理をさせるか、略奪船を船体へ近づけるかの二択を迫られていたかもしれません』


レアは少し驚いたようだった。


『あ……そんなにかしこまらなくてもいいよ。私は自分の仕事をしただけだから』


『それでも、感謝しています』


彼女の狐耳がぴくりと動いた。


『えへへ……それなら、どういたしまして!』


背後にいたカリスタが付け加えた。


『それと、この子には帰ってから艦の使用報告書を書いてもらうことも忘れないでくださいよ』


『カリスタ!』


俺は笑った。


どうやら戦闘が終わっても、MCV-01の雰囲気は相変わらずらしい。


やがて3隻の商船は、1隻も編隊から離れることなく、引渡地点へ到達した。


施設の管制官から、メリディアン・ヴェイル、ソレリア・ウィンド、ハドリエン・ソルの全船が安全な受入区域へ進入したとの確認が届くまで、俺たちは護衛位置を維持した。


アルヴェンから正式な通知が届く。


『星崎艦長、全船の到着を確認しました。ナマリス・コンソリデーテッド・トレーダーズを代表し、本日の護衛任務に感謝申し上げます』


「こちらこそ。契約条件に従って、航行報告書と交戦記録を送付します」


『お願いいたします。事務上の終了処理に先立ち、貨物検査と到着確認を実施します』


ランがすぐに付け加えた。


「報告書には、3隻すべてが1つの船団として引渡地点へ到達したことも、必ずご記載ください。ボーナスについては、予定時刻に関する条件の確認が済み次第、こちらから申請いたします」


『承知しました、ヴァレスさん』


俺はランをちらりと見た。


彼女は落ち着いた表情で視線を返してくる。


財務記録に関する機会を、彼女が1つでも見逃すことはなさそうだ。


続いて、セラフィエルが状況の更新を表示した。


C-128-ES — OPERATIONAL OBJECTIVE COMPLETED


* 商船3隻が引渡地点へ到着。


* 船団からの喪失船・脱落船なし。


* 護衛範囲外への追撃を行うことなく、略奪の脅威を阻止。


* 交戦報告および攻撃船との接触に関する証拠を保全済み。


* 貨物検証、事務上の完了処理、報酬支払いは正式な確認待ち。


俺は満足して頷いた。


「よし。あとは離脱手続きをすべて終えたら、ナマリスへ戻れるな」


すぐにレアから通信が入った。


『紬、MCV-01は私が自分で格納庫まで戻してもいい?』


「いいぞ。ヴェスペラが指定する航路に従ってくれ」


『了解!』


カリスタも付け加えた。


『ドッキングが完了するまで、私が監督しておくよ。その後は、全運用ログを確認したいね』


『わかってる、わかってるってば!』


俺は微笑んだ。


そろそろ、あの中型艦に正式な名前をつけることも考えたほうがいいかもしれない。


少なくとも今日を境に、あのユニットはもう、一度も使用されたことのない支援艦の1隻ではなくなったのだから。


企業側との通信が終了する直前、エドリックの顔がもう一度スクリーンへ現れた。


『星崎艦長、もう1つよろしいですかな』


「はい?」


『私とハドリエン・ソルの乗組員数名から、アストレオン・ヴェロリアの皆さんを、ナマリスでの夕食にご招待したいのです。感謝の気持ちとして、ぜひ。引渡し関係の用事が終わり次第、我々もステーションへ戻りますので』


俺は少し驚いた。


「そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ。護衛の費用は、すでに契約を通じてお支払いいただくことになっていますから」


エドリックが笑った。


『契約の報酬を払うのは会社です。今回のお誘いは、私たち個人からのものですよ。それに、ぜひ中型艦の操縦士にもご馳走したくてね。彼女のおかげで、先ほどの略奪船と非常に不愉快な会話をせずに済みましたからな』


MCV-01の通信回線から、レアが即座に叫んだ。


『夕ご飯!?』


俺は少しの間、目を閉じた。


……当然、聞こえてるよな。


エドリックはさらに大きな声で笑った。


『どうやら、乗組員のお1人からは、すでにお返事をいただけたようですな』


俺は小さくため息をつき、それから微笑んだ。


「わかりました。ナマリスへの帰還予定が確定した後で、検討させていただきます」


『結構! では、招待の詳細をお送りします』


通信が終了した。


ランが俺へ顔を向けた。


「紬、レアはそのお食事会を、たいそう楽しみにしそうですね」


「俺も別に嫌じゃないよ。仕事が終わった後で、助けた人たちと一緒に夕食を取るのも楽しそうだしな」


セラフィエルが微笑んだ。


「招待状は保存しておきます。出席を決められましたら、予定も調整しますね」


俺は頷いてから、もう一度戦闘報告へ目を向けた。


3隻の商船は無事。


護衛契約の任務は遂行できた。


MCV-01は、初めての実戦運用を経験した。


そして、略奪集団に関する情報も、傭兵協会へ提出できるかもしれない。


総報酬額360,000 GCの仕事としては、悪くない成果だろう。


もっとも、ランならすぐに、その金額はまだ純利益ではないと念を押してくるに違いない。


けれど、今回くらいは、まず成果を喜ばせてもらいたいものだ。


「セラフィエル」


「はい、紬?」


「ナマリスへ戻ったら、攻撃船のデータと、請求できる可能性のあるサルベージ記録をまとめておいてくれ。手続きに違反せずに追加報酬を得られるか、確認したいんだ」


「了解しました。犯罪行為の証拠、技術データ、所有権の確定が必要な物品一覧は、それぞれ分けて整理しておきます」


「よし」


俺は小さく笑った。


「あと、レアには戦闘艦を、ご馳走になった料理の保管場所にしないよう注意しておいてくれ」


セラフィエルがくすくすと笑った。


「その点でしたら、カリスタがすでに先回りして注意していると思いますよ」


完全には閉じられていなかった通信回線から、レアの声が響いた。


『私、MCV-01に食べ物を保管したいなんて、一度も言ってないよ!』


カリスタが即座に返した。


『さっき、予備の収納区画にお土産を積めるか聞いてきたじゃないか』


『それは別でしょ!』


俺は笑った。


こうして10日目の航行は、満足のいく成果とともに幕を閉じた。


そしてどうやら、ナマリスへ戻った後も、まだいくつか面白い用事が待っているらしい。


【次回・第131話】


「商談のあとで」


商談のあとで――貨物検査と到着確認が完了し、契約C-128-ESが正式に終了する。ランが報酬と運用経費の精算を進める一方、紬は略奪船から得られた情報と、商船の乗組員たちから届いた夕食への招待を確認する。


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