【第107話】「ここから出たい」
英語のテキストが含まれている場合はご容赦ください。本日(10月6日)はXで発表した通りジャカルタへ旅行するため、急いで更新しています。 (-̩̩̩-̩̩̩-̩̩̩-̩̩̩-̩̩̩___-̩̩̩-̩̩̩-̩̩̩-̩̩̩-̩̩̩)
そして、読者の皆さんが引き続き私の作品を楽しんで読んでいただけるように、この小説を更新しています。(๑•﹏•)
【第107話】「ここから出たい」
ヴェルドラコン帝都――公爵行政区 → 帝都軌道複合施設 → アストレオン・ヴェロリア
聴聞は、ようやく終了した。
政治的な決定はない。
告発もない。
紬にどちらかの側を選べという要求もない。
残されたのは、公式記録に表示された単純なステータスだけだった。
証人聴聞――終了
証人:星崎 紬
区分:独立した外部証人
政治的所属:なし
公爵家所属:なし
帝国所属:なし
証言:完了
刑事上の身分:問題なし
契約上の拘束:なし
出発許可:保留
紬は最後の一行をしばらく見つめた。
そして、椅子から立ち上がる。
「証言が終わったなら、船に戻りたい」
公爵評議会代表は彼を止めなかった。
「キャプテン・ホシザキ。あなたの立場は理解しています。証言は独立した証言として記録され、あなたの政治的所属を決定するために利用されることはありません」
「それならいい。そもそも、そんなものはない」
紬は個人用通信機を取り出した。
「俺がここへ来たのは、オーレリアを救ったからだ。その後は、本人が頼んだから一緒に旅をした。今はもう家族のもとへ戻った。俺にとっては、それで終わりだ」
代表はすぐには答えなかった。
紬は数秒待つ。
すると、扉の近くにいたセラフィエルへ通知が届いた。
「出発許可の処理が進行中です」
紬が振り向く。
「どれくらいかかる?」
「まだ確定していません。全長8,600メートルの豪華私有恒星船であるアストレオン・ヴェロリアは、帝都を離れる際に軌道管制との追加調整が必要です」
「それなら仕方ない。ただ、さっきと同じような審査じゃなければいい」
セラフィエルが微笑む。
「十分に区別されるよう努めます」
紬は息を吐いた。
「帰りたい」
大きな不満を訴えているようには聞こえなかった。
ただ、自分が訪れる予定など最初からなかった場所に、あまりにも長く留まってしまった人間の言葉だった。
帝都は大きい。
技術水準も高い。
軌道交通も混雑している。
8,600メートルもの巨大船を、いくつかのデータ変更だけで足止めできるほど、行政構造も複雑だった。
それでも、紬にとって変わらない事実が一つある。
自分はヴェルドラコンへ住むために来たわけではない。
誰かを家へ送り届けるために来ただけだ。
そして今、その相手は自分の家へ帰った。
だから、自分もここを離れたかった。
アストレオン・ヴェロリアへの帰路には、特に問題は起きなかった。
公爵行政区が徐々に遠ざかっていく。
輸送路は再び帝都軌道複合施設へ向かう。
そこには、アストレオン・ヴェロリアがまだ「大型船一時保留」の状態で停泊している。
道中でも、帝都の活動はいつも通り続いていた。
外交船が専用回廊から入っていく。
貴族家の輸送船が、ある軌道構造物から別の軌道構造物へ移動する。
貨物船が検査枠を待つ。
民間船が、より低速の航路を進む。
その中で、全長8,600メートルの一隻だけが、規模では明らかに異質だった。
それでも法的には、依然として民間の私有船に過ぎない。
セラフィエルが紬の通信機へ航行概要を表示する。
アストレオン・ヴェロリア
法的身分:豪華私有恒星船
全長:8,600m
キャプテン:星崎 紬
職業上の身分:独立系宇宙傭兵
登録:有効
保険:有効
兵装申告:登録済み
FTL認証:民間航行基準適合
現在位置:帝都軌道複合施設
出発状態:許可待ち
紬は一瞥する。
「まだ同じか?」
「登録状態に変更はありません。船舶区分にも変更はありません」
「兵装も?」
「申告どおりです」
「よかった。頼んでもいない新しい身分で帰るのは嫌だからな」
セラフィエルが小さく笑う。
「私も、船主が本人の同意なく突然軍職に就いたなどと当局へ説明するのは避けたいところです」
紬が振り向く。
「それは冗談にしないでくれ」
「私は本気です」
「それなら、なおさら怖い」
セラフィエルは微笑んだ。
二人はドッキング用輸送路へ入る。
その先に、アストレオン・ヴェロリアの船体が見え始めた。
全長8,600メートルの巨艦。
それでも軍艦には見えない。
周囲に戦闘隊形はない。
船体へ張り付く護衛艦隊もない。
入口で待機する兵士もいない。
ただ、巨大な豪華船が軌道停泊区画で静かに佇み、再び動き出す許可を待っている。
紬はしばらくそれを見つめた。
「やっとだ」
セラフィエルも同じ方向を見る。
「家ですね」
「ああ」
アストレオン・ヴェロリアへ戻った瞬間、空気が変わった。
出迎えの式典などない。
待ち構えている職員もいない。
見知らぬ人間で埋め尽くされた廊下もない。
船は再び、彼らが知っている空間へ戻った。
レアはモビルフレームの準備区画にいた。
ランはグランド・サロンで経済関連のパネルを開いている。
カリスタはエンジニアリング・インターフェースの前にいる。
ヴェスペラは航法マップを確認していた。
紬が数歩進んだところで、レアがすぐに出迎える。
「やっと戻ってきた。もう、生まれてから今までの人生全部を説明させられるんじゃないかと思ったわ」
紬が通信機を置く。
「ほとんどそこまで行った」
レアが笑う。
「本当に?」
「いや。でも、途中から質問が意味不明になった」
ランがパネルから顔を上げる。
「では、本当に出発するんですか?」
紬が中央テーブルへ向かう。
「そのつもりだ。セラフィエルが出発許可を処理してる。許可が出たら行く。これ以上ここにいる理由はない」
ランはすぐに財務・運用画面を開いた。
「帝都に関係する費用と、次の航行に関係する費用は分け始めています。今日出発できるなら、許可が下りたあとにドッキング費用と行政費用を精算できます。ただ、また遅延するなら軌道施設の利用費が発生し続けます」
紬が表示された数字を見る。
アストレオン・ヴェロリア――現在運用会計
ドッキング:稼働中
軌道停泊:稼働中
行政処理:継続中
燃料予約:最終航路待ち
出発準備:進行中
貨物/個人保管物:正常
運用準備:100%
ランが費用部分を拡大する。
「ドッキングは継続中。行政処理もまだ終了していません。出発航路の枠が確定していないので、燃料もまだ最終確定していません。出発許可が今出れば簡単です。必要なものだけ支払って、そのまま出ます」
紬が頷く。
「追加で何も買わないでくれ。俺たちはただ出ればいい」
ランが一瞬だけ紬を見る。
「そう言うと思っていました。でも、帝都の通過費用はフロンティアとは違うので確認は必要です。軌道ハンドリング、行政処理、ドッキング延長、それから航路調整費用の可能性があります」
「必須なら払う。任意ならいらない」
「その方針で進めています」
そこへカリスタが別方向から現れた。
「金の話が終わったなら、もっと重要な話がある」
レアがすぐに振り向く。
「何?」
カリスタがエンジニアリング画面を表示した。
アストレオン・ヴェロリア――出発準備状態
主反応炉:100%
FTLコア:100%
航法コア:100%
船体完全性:100%
ドッキング・インターフェース:100%
推進システム:100%
熱制御:100%
外部損傷:0
工学的制限:なし
カリスタが腕を組む。
「技術的には、いつでも出られる。ここに留まる必要がある損傷はない。ドッキングシステムにも問題なし。当局が出発枠を出せば、アストレオン・ヴェロリアは手順どおりに動ける」
紬が頷く。
「よかった」
カリスタが息を吐く。
「ただ、一つだけ気になる」
「何?」
「この船を軍事施設扱いしないでほしい。襲撃に巻き込まれたからって、また防衛システムがあることと登録身分が変わることは別だって説明する羽目になるのは、もう十分」
そこへ、入ってきたばかりのセラフィエルが答える。
「アストレオン・ヴェロリアの法的身分は、現在も豪華私有恒星船です。区分変更の要請はありません」
カリスタが顎を上げる。
「それなら、機関マニュアルより分厚い軍事書類を読まずに帰れるわね」
レアが笑う。
「そんなに機関マニュアルを読んでるの?」
「機関マニュアルのほうが政治文書より分かりやすい。機械が壊れれば理由がある。でも政治家は、そうとは限らない」
それまで黙って航法パネルを見ていたヴェスペラが、ようやく口を開いた。
「帝都から出る航路をいくつか確認しました。技術的には、アストレオン・ヴェロリアが使用できる回廊は3つあります。ただし、それぞれ混雑状況が違います」
紬が近づく。
「出してくれ」
ヴェスペラがマップを拡大する。
3本の線が表示された。
帝都――出発回廊候補
回廊A
交通密度:61%
民間優先度:高
平均通過遅延:8分
大型船制限:低
回廊B
交通密度:78%
外交優先度:高
平均通過遅延:19分
大型船制限:中
回廊C
交通密度:43%
軍事輸送優先度:高
平均通過遅延:27分
大型船制限:高
紬は3つの航路を見比べる。
「A」
ヴェスペラも予想していた。
「私もAを選びます。最も単純です」
「Cじゃない理由は?」
「密度は低いですが、軍事優先度が高いので、民間船の通過枠が随時変わる可能性があります。混雑率が低いという理由だけで、より複雑な航路を選ぶ利点はありません」
紬が頷く。
「その通りだ。何かを追っているわけじゃない。ただ帰るだけだからな」
レアが手を上げる。
「本当に帰るなら、先に何か食べたい」
ランが即座に答えた。
「検査へ行く前にも同じことを言っていましたよ」
「だってお腹が空いてるんだもの」
カリスタが鼻を鳴らす。
「帝都の貴族問題に巻き込まれかけても、この船で一つだけ変わらないものがあるわね」
レアが振り向く。
「何?」
「あなたがいつも腹を空かせてること」
レアが笑った。
しばらくの間、船内の空気が元へ戻った。
ヴェルドラコンの問題が解決したからではない。
むしろ、あの問題が自分たちのものではないと、全員が分かっていたからだ。
少なくとも、紬はそう考えていた。
やがてセラフィエルがグランド・サロンの椅子の一つに座り、出発権限パネルを開いた。
その実体は、いつもと変わらず穏やかだった。
処理のために、コマンドデッキの中央へ立つ必要もない。
アストレオン・ヴェロリアのシステムが、船内ネットワークを通して彼の指示に応答する。
出発許可申請
艦船:アストレオン・ヴェロリア
登録:有効
法的身分:豪華私有恒星船
キャプテン:星崎 紬
現在停泊地:帝都外縁軌道複合施設
申請回廊:回廊A
目的地:ヴェルドラコン出発回廊
航行目的:民間航行/出発
傭兵契約:なし
軍事契約:なし
外交任務:なし
旅客移送:完了
公爵家証人要件:完了
保安保留:審査中
紬が最後の一行を見る。
「まだ保安保留があるのか?」
セラフィエルが小さく頷く。
「はい。ただし、以前とは意味が違います。あなたの証言は終了しています。証人として拘束を継続する要請もありません。現在は、船の状態と公爵家の審査状態を分離するよう、軌道当局へ申請しています」
「できるのか?」
「行政上は、できるはずです」
紬が彼を見る。
「『はず』って言葉は安心できないな」
「理解しています。だから、システムから最終許可が出るまでは、確定とは申し上げません」
紬が身体を預ける。
「それでいい。データがないうちは、約束しないでくれ」
セラフィエルが微笑む。
「あなたから学びました」
ソファからレアが割り込む。
「二人とも、ただの出発許可なのに真面目すぎない?」
紬は振り向かずに答える。
「俺たちに必要なのは、出発許可だけだからな」
レアが肩をすくめる。
「分かった。じゃあ待つ。でも許可が出たら、すぐに出たい」
カリスタがレアを見る。
「それ、紬の決定じゃない?」
「私は精神的な支援をしてるだけよ」
ランが財務パネルを閉じる。
「あなたの精神的支援は、たいてい出発予定への圧力に聞こえます」
「だって予定は大事でしょう」
ヴェスペラが笑いをこらえる。
「少なくとも、一つだけ全員の意見は一致していますね。帝都から出たい」
紬は室内全体を見渡した。
検査から戻って以来、初めて、すべてが元の場所へ戻ったように感じた。
レア。
ラン。
カリスタ。
ヴェスペラ。
セラフィエル。
アストレオン・ヴェロリア。
船。
家。
誰かを救った理由について説明を求められない場所。
自分の家族でもない貴族家の間で、どちらを選ぶか迫られない場所。
座って、食べて、読んで、仕事をして、眠って、そして次の場所へ向かえる場所。
紬が息を吐く。
「俺はもう、ヴェルドラコンの用事を終えた」
誰も笑わなかった。
あまりにも単純な言葉だったからだ。
セラフィエルが一つのパネルを閉じ、別の画面を開く。
「出発許可が下りれば、帝都を回廊Aから離れます。ヴェルドラコン出発回廊へ入った後は、軍用航路へ入ることなく、次の民間領域へ進めます」
紬が頷く。
「それで行こう」
レアが立ち上がる。
「それなら、もう一度ヴァルキリーを確認してくる。壊れてるからじゃない。何かあった時に本当に準備できてるか、確認したいだけ」
紬が振り向く。
「確認はしていい。でも、問題を探すなよ」
レアが満面の笑みを浮かべる。
「私、問題を探してるんじゃないわ。問題のほうが私を探してくるのよ」
カリスタが鼻を鳴らす。
「今日聞いた中で、一番信用できない台詞ね」
レアは笑いながら歩いていった。
ランは再び費用パネルへ戻る。
ヴェスペラは航路確認を続ける。
カリスタはエンジニアリング・インターフェースへ向かう。
セラフィエルは行政処理のため、グランド・サロンに残った。
紬はようやく腰を下ろした。
数分後、自動調理システムから軽食が出てきた。
誰も、それを誰が作ったのかなど聞かない。
この船に、そんな必要はなかった。
紬は簡単な合成食品を一皿取った。
一口食べた、その瞬間。
セラフィエルのパネルが鳴った。
「紬」
「何だ?」
「出発権限から応答がありました」
紬はすぐに食べ物を置く。
「許可?」
セラフィエルが画面を拡大する。
帝都出発管制局
艦船:アストレオン・ヴェロリア
登録:確認済み
キャプテン身元:確認済み
保険:確認済み
民間航行基準適合:確認済み
兵装申告:確認済み
ドッキング状態:確認済み
申請回廊:回廊A
出発許可状態:処理中
行政処理完了予定:未定
紬は最後の文字を見る。
「また処理中か」
「その通りです」
「どれくらい?」
「まだ見積もりはありません」
紬は食べ物を再び手に取る。
「じゃあ待つ」
セラフィエルが頷いた。
しかし、それから数分も経たないうちに、航法パネル全体が変化した。
出発パネルだけではない。
軌道マップ。
交通管制。
ドッキング管制。
保安ネットワーク。
交通局。
すべてが同じ変化を示していた。
航法区画からヴェスペラが姿を見せる。
「待って」
カリスタがエンジニアリング・インターフェースから出てくる。
「何が起きた?」
ランが立ち上がる。
レアも格納庫から戻ったばかりで、入口に立ち止まった。
セラフィエルはすぐには答えなかった。
複数の異なるネットワークから入ってくるデータを読み取っていた。
やがて、グランド・サロン中央に一枚の大きなパネルが表示される。
帝都保安状況
保安レベル:強化
民間航行:制限
大型船出発:停止
軌道移動:管制下
地区間移動:制限
保安検問:稼働
出発回廊:一時凍結
状態:封鎖
室内が静まり返る。
紬は、そのパネルをしばらく見つめた。
そして、息を吐く。
「……ここから出たい」
セラフィエルが隣に立つ。
「そのことは承知しています、紬」
紬は封鎖表示を見つめた。
「なんで、いつもこうなるんだ?」
セラフィエルはすぐには答えなかった。
数秒間、膨大な行政ネットワークへアクセスできるセラフィエルですら、この状況を納得させられる答えを持っていなかった。
やがて、静かに答える。
「満足のいく回答は、ありません」
紬はしばらく目を閉じた。
観察窓の外では、それまで止まることなく流れていた帝都の交通が変わり始めている。
いくつかの船が待機地点で停止する。
民間回廊が一つずつ閉じられていく。
航法灯の色が変わる。
数分前まで開いていた航路に、通過禁止表示が出る。
帝都はもう、普通の軌道都市のようには動いていなかった。
保安システムが、地域全体の流れを支配し始めている。
レアがパネルを見る。
「これ、普通の遅延じゃないわよね?」
ヴェスペラがデータを確認してから答える。
「違う。軌道状態を見て。一本の航路を閉じただけじゃない。複数の民間回廊まで制限されている」
カリスタが近づく。
「それに、大型船の出発枠が全部凍結されてる。アストレオン・ヴェロリアは最終枠すらまだ取得していない。だから技術的には『中止』じゃない。単に動くことを許されていないだけ」
ランが行政データを拡大する。
「それでも費用は発生します」
紬が振り向く。
「ラン」
「分かってる。ただ事実を伝えただけ」
「よし。そのまま監視してくれ。正式な請求が出るまで追加の支払いはしない」
「了解しました」
セラフィエルが保安回線を開く。
保安封鎖――リアルタイムデータ
帝都区域:制限
民間出発:停止
大型船移動:停止
軍事移動:管制下
外交移動:管制下
貴族輸送:管制下
民間地上交通:部分制限
緊急サービス:稼働中
原因区分:制限対象
期間:不明
紬が最後の行を見る。
「原因区分――制限対象」
「その通りです」
「つまり、公式の理由すら俺たちにはまだ知らされていない」
「まだ、ありません」
紬が椅子から立ち上がる。
表情に恐怖はない。
ただ、明確な苛立ちだけが浮かんでいる。
証言は終わったばかりだった。
出発許可も、もう少しで終わるところだった。
船のシステムはすべて準備できていた。
そして、まさに出発しようとした瞬間――
帝都全体が封鎖された。
紬がポケットへ手を入れる。
「俺は、ただ帰りたいだけなんだけどな」
セラフィエルが隣に立つ。
「分かっています」
大きな画面では、一つの言葉がまだ点灯していた。
封鎖
そして、紬が公爵家の問題はもう自分の責任ではないと決めた、その直後。
帝都そのものが、別の答えを示した。
誰も、この場所から出ることはできない。
フック
アストレオン・ヴェロリアの出発許可がほぼ完了しかけたその時、帝都は突然、保安封鎖へ移行した。
すべての出発回廊が凍結された。
大型船の区域外離脱も禁止された。
軌道交通は管制下に置かれた。
そして、公式な原因はまだ紬へ開示されていない。
最初から、少女を家へ送り届けて、そのまま立ち去るつもりだった独立系宇宙傭兵にとって、一つだけ確かなことがある。
ヴェルドラコンは、まだ紬を手放すつもりがない。
【次回 第108話――「出られない船」】
「出られない船」
封鎖によって、アストレオン・ヴェロリアは帝都から離れられなくなる。
紬が苛立っているのは、恐怖からではない。
またしても、自分が立てた単純な予定を邪魔されたからだ。
そんな中、カイラが、公爵家の保安網が再び脅威に直面しているという情報を持ってくる。
【第108話「出られない船」へ続く】




