第九章 —— 近すぎる三隻の船
第九章 —— 近すぎる三隻の船
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紬は目を細めて画面を見つめた。
三つの小さなシグナルが一定の速度でコンボイに接近している。彼らはもはや隠れようとはしていない——自分たちが検知されたことを既に知っているかのようだ。画面では、ASTRAEONのセンサーデータがそれらの船に関する情報を更新し続けている。
「紬、三隻の船を特定しました。」
「何だ?」
「軽偵察艇級です。重武装はありませんが、高度なセンサーと長距離通信装置を備えています。斥候です。」
「つまり、攻撃はしてこないのか?」
「直接は。彼らはコンボイの情報を収集しています——船の数、隊形、戦闘能力。十分なデータを得た後、標準センサーの範囲外のどこかにいる海賊の母艦にその情報を送信します。」
紬はゆっくりと頷いた。
「つまり、逃がすわけにはいかない。」
「その通りです。もし彼らが我々の位置と構成を報告すれば、次の攻撃はより組織的になります。」
通信からマーカスの声が聞こえる。
「こちらマーカス。右側に三隻の偵察艇を確認した。レナ、グロム、処理できるか?」
レナの声:「ここから撃ち落とせるわ。でも時間がかかる。」
グロムの声:「追いかけられる。でもその間、持ち場を離れることになる。」
紬が通信ボタンを押した。
「こちらASTRAEON。私が対処できます。」
沈黙。
そしてマーカス:「……本当か、新人?」
「本当です。私の船には、追いかけずに偵察艇を無力化できるシステムがあります。」
マーカスはしばらく沈黙した。
「わかった。お前の実力を見せてみろ。」
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紬はセラフィエルを見た。
「セラフィエル、破壊せずに捕獲できるか?」
「もちろんです、紬。トラクタービームで拘束するか、ファントム・クラウンを使って通信システムと航法システムを妨害できます。」
「ファントム・クラウン?」
「船のサイバー戦システムです。彼らのシステムに侵入し、エンジンを停止させ、無力化することができます。」
紬は微笑んだ。
「それで行こう。撃たなくても勝てることを見せてやれ。」
セラフィエルは頷いた。
「了解しました。ファントム・クラウンを起動します。」
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画面で、紬は変化を目にした。
三隻の偵察艇のシグナルが減速し始めた。そして、一機ずつ、完全に動きを止めた。各シグナルの横に表示が現れる:
「エンジン停止 — 航法システム無効化 — 通信妨害済み」
紬は画面を見つめた。
「……成功したのか?」
「成功しました。三隻の偵察艇は現在、完全に無力化されています。移動も、信号送信も、逃走もできません。」
通信からマーカスの声——驚きの声が聞こえる。
「……何をやったんだ?」
「エンジンを止めました。」
「どうやって?」
「私の船にはサイバー戦システムがあります。彼らのシステムに侵入したんです。」
長い沈黙。
そしてグロムの声——深く、驚いて。
「……民間船にサイバー戦システムが搭載されているのか?」
「私の船は危険地域での長距離航行に対応した装備を備えています。自衛システムにはサイバー能力も含まれています。」
マーカスは小さく笑った——感嘆と信じられなさが混ざったような声だ。
「わかった、新人。よくやった。あの偵察艇の乗組員を捕まえるための船を送る。彼らから海賊の母艦の位置について情報が得られるかもしれない。」
「よし。私は持ち場を維持する。」
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コンボイから二隻の小型船——軽量護衛艦——が隊列を離れ、無力化された偵察艇へと向かった。画面で紬は、それらが一機ずつに接近し、確保していく様子を見ることができた。
「紬、偵察艇の乗組員を拘束しました。抵抗はありませんでした。」
「よし。何か言ったか?」
「まだです。医療船で尋問されます。」
紬は頷いた。
「セラフィエル、もう安全か?」
「現時点では、そうです。しかし、気になることを検知しました。」
紬は身を固くした。
「何だ?」
「彼らのシステムを停止する前に、偵察艇の一隻が短い信号を送信することに成功しました。その信号は標準センサーの範囲外の地点に向けられています。」
「つまり、彼らはもう警告を送ったのか。」
「はい。海賊の母艦は既に我々の位置を知っている可能性があります。」
紬はため息をついた。
「彼らが来るまでどのくらいかかる?」
「距離によります。数時間かもしれないし、明日かもしれません。しかし警戒を続けることをお勧めします。」
紬は通信ボタンを押した。
「マーカス、こちらASTRAEON。一つ報告があります。偵察艇を停止する前に、そのうちの一隻が信号を送信することに成功しました。海賊の母艦が既に我々の位置を知っている可能性があります。」
沈黙。
そしてマーカス:「……確かか?」
「確かです。私のセンサーがシステム停止前に短い送信を検知しました。」
「わかった。警戒レベルを上げる。全船、警戒を怠るな。海賊が予想より早く来るかもしれない。」
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コンボイは航行を続けた。
紬はコックピットに留まり、目を画面から離さなかった。緊張していた——銀河で実際に危険な状況に直面したのはこれが初めてだった。
「セラフィエル、海賊の母艦を探知できるか?」
「標準センサーでは無理です。しかしもし一定の距離まで接近してくれば、探知できます。」
「その距離は?」
「約50万キロメートルです。FTL速度なら、わずか数分です。」
紬は頷いた。
「監視を続けてくれ。」
「もちろんです、紬。」
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一時間が経過した。
何も起こらない。コンボイはフロンティアルートを進み、静かな星々と星雲を通り過ぎる。紬はようやく少し落ち着きを取り戻し始めていた——おそらく海賊は攻撃を諦めたのだろう。
しかしセラフィエルが突然、より真剣な口調で話し始めた。
「紬、何かを検知しました。」
紬は背筋を伸ばした。
「何だ?」
「遠方に大きなFTLシグナルです。サイズは……大きい。非常に大きい。」
「母艦か?」
「その可能性が高いです。シグナルは前方約80万キロメートルの地点に出現しました。今、FTLから出てきたところです。」
画面に、新しい点が地図上に現れた——大きく、明るく、コンボイに向かって接近している。
そしてその後ろから、さらに小さな点が次々と現れ始める。
「紬、新たに12隻の船を検知しました。合計:大型1隻、中型12隻。海賊艦隊です。」
紬は通信ボタンを押し、緊張した声で言った。
「マーカス、こちらASTRAEON。海賊の母艦を探知しました。大型1隻、中型12隻。前方から接近しています。」
マーカスのパニックした声が聞こえる。
「……何隻だと?」
「合計13隻です。」
「こちらは護衛艦3隻に貨物船7隻だ。対抗できない。」
紬は考えた。
「全てと戦う必要はない。コンボイを守ればいい。」
「どうやって?」
「計画がある。」
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紬はセラフィエルを見た。
「セラフィエル、コンバット・モードを使うぞ?」
セラフィエルは静かなサファイアの瞳で彼を見つめた。
「船長、これは大きな決断です。コンバット・モードはASTRAEONの真の能力を世界に明らかにすることになります。」
「わかってる。でもやらなければ、このコンボイは壊滅する。」
「最小限の力で済ませることができます——彼らを威嚇するには十分だが、全力を見せるには及ばない程度に。」
紬は頷いた。
「それで行こう。」
セラフィエルは微笑んだ——静かで、自信に満ちた微笑みだ。
「了解しました、紬。コンバット・モードを起動します——最小出力で。」
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画面で、紬は変化を見た。
ASTRAEONの船体パネルが動き始める。船体側面では、隠し扉が開き、それまでは見えなかった小型砲の列が露出する。下部では防御システムが起動し始める。
そして船体側面の「ASTRAEON VELORIA」の表記が青い光を放ち始める——まるで船そのものが戦闘の準備をしているかのように。
「コンバット・モード起動。最小武装システム:プラズマ・ランス12門、クォンタム・ビーム・アレイ4基、ミサイルセル8基。シールド起動:第1層。」
紬は画面を見つめた。
「よし。では海賊艦隊に通信を。」
「了解しました。」
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通信回線が開かれた。
画面に、黒い髭と赤い目を持つドワーフの男の顔が映る——海賊の船長だ。その男は冷笑しながら紬を見つめた。
「おや、高級ヨットだな。よくも俺に連絡してきたものだ。」
紬は冷静に見返した。
「警告を一つだけする。このコンボイから手を引け。さもなければ、お前の船を破壊する。」
男は笑った——大きく、見下すような笑い声だ。
「その程度のヨットが? おもちゃのような砲で? 俺を脅せると思っているのか?」
「脅しているのではない。伝えているのだ。」
「俺には13隻の船がある。お前はたった一つのヨットだ。」
「司令艦を破壊するのに、一隻で十分だ。」
男は眉をひそめた。
「……何を言っている?」
「お前の船のセンサーを見てみろ。俺の前に何があるか見えるか?」
男は脇の画面を見た。その表情が変わった——冷笑から警戒へ。
「……あれは何だ?」
「それが俺の船だ。そしてそれが俺の武器だ。決断するまでに10秒やる。」
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十秒が経過した。
紬は画面を見つめていた。海賊艦隊はまだ動かない——接近もせず、撤退もせず。
「セラフィエル、彼らは撤退するのか?」
「まだです。しかし前進もしていません。考慮中です。」
「少し圧力をかけろ。警告射撃を一発。」
「了解しました。」
画面で、紬はASTRAEONから細い青い光線が発射されるのを見た——最小出力で発射されたプラズマ・ランスだ。光線は海賊船の間をかすめ、何も当てなかったが、ASTRAEONが高精度で射撃できることを彼らに認識させるには十分な距離だった。
通信から、海賊船長の声が聞こえる——先ほどよりも警戒した口調で。
「……本当に撃つつもりか?」
「必要ならば。」
沈黙。
そして——
「……わかった。我々は去る。しかし、これで終わりではない。」
海賊艦隊が反転し始める。
一機ずつ、船が遠ざかり、FTLに入り、画面から消えていった。
紬はほっと息をついた。
「セラフィエル、本当に去ったのか?」
「はい。センサーに反応はありません。」
「よかった。」
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通信からマーカスの声——感嘆と信じられなさが入り混じった声が聞こえる。
「……一発も撃たずに追い払ったのか。」
「怖がっていないことを示しただけだ。」
「お前は新人以上の存在だ、星崎。認めるよ。」
紬は小さく微笑んだ。
「ありがとう、マーカス。でもまだ終わってない。ヴィレリアまで行かなきゃ。」
「その通りだ。航行を続ける。」
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コンボイは航行を続けた。
紬はパイロットシートに座り、ヴィレリアへの航路を示す画面を見つめていた。全船が良好な状態だ。危険の兆候はない。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「俺たちはやったぞ。」
「はい、船長。海賊艦隊を無傷で追い払うことに成功しました。」
「こんなに簡単にいくとは思わなかった。」
「海賊は愚かではありません、紬。彼らはリスクを計算します。我々に戦う能力があると見れば、司令艦を失うリスクを冒すより撤退を選びます。」
紬は頷いた。
「つまり、彼らは戻ってこないのか?」
「このコンボイに関しては、おそらく。しかし彼らはASTRAEONを記憶するでしょう。」
紬は微笑んだ。
「覚えさせておけ。もしまた来たら、準備はできている。」
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紬は食事のためにコックピットを離れた。
ギャレーで、彼はセラフィエルが用意した弁当を持ってテーブルに座った。食べ物はまだ温かい——ご飯、魚、野菜。
「セラフィエル、一緒に食べないのか?」
「私は先に食べました、紬。」
紬は頷き、食べ始めた。
「セラフィエル、この航路でさらに攻撃に遭うと思うか?」
「可能性はあります。フロンティアルートは危険な領域です。しかしASTRAEONがあれば、ほとんどの船が持っていない優位性があります。」
「わかってる。でも船の力に頼りすぎたくない。良い船長になることを学びたい。」
セラフィエルは温かいサファイアの瞳で彼を見つめた。
「船長は既に良い船長です、紬。」
紬は微笑んだ。
「君がそう言うのは、俺のAIだからだろ。」
「そう言っているのではありません、紬。それが真実だからです。」
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コンボイがヴィレリア農業星系に近づいた。
画面で、紬は遠くに緑の惑星を見ることができた——ヴィレリア・プライム、彼らの目的地である農業惑星だ。
「船長、2時間後に到着します。」
「よし。何か問題はあるか?」
「いいえ。全船が良好な状態です。海賊は再び現れていません。」
紬は頷いた。
「セラフィエル、この後も次の契約を探そう。」
「船長はもう働きたいのですか?」
「これが好きだ。宇宙にいるのが好きだ。人を守るのが好きだ。そして金を稼ぐのが好きだ。」
セラフィエルは微笑んだ。
「ならば、もっと多くの契約を探しましょう。」
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コンボイがヴィレリア・プライムに到着した。
紬は窓の外に広がる美しい緑の惑星を見つめた——広大な農地、森林、そしてきらめく青い海。これはリラディスに次いで訪れた二番目の惑星だ。
「船長、30分後にヴィレリア・プライム宇宙港にドッキングします。」
「よし。この惑星を見てみたい。」
「ドッキング後、船長は下船できます。私も同行します。」
紬は微笑んだ。
「待っている。」
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コンボイは無事ドッキングした。
紬はエアロックに立ち、ヴィレリア・プライムへと続く扉を見つめた。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「これが俺たちの最初の契約だ。成功した。」
「はい、紬。成功しました。」
紬はボタンを押した。
扉が開く。
その先には、新しい世界が彼を待っていた。
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【次回予告 第十章 —— 「アストレオン、初陣」】
紬は大規模な戦闘なしに海賊艦隊を追い払うことに成功したが、彼の評判は広まり始めている。傭兵協会では、「警告射撃一発で海賊を追い払った豪華ヨット」についての噂が広がっている。次の契約は、これほど簡単ではないかもしれない。
【第十章へ続く…】




