↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/15

ep:6

「先生。」

「ん?おう。」

「進捗はどうですか?」

「ハハ、まずまずだな。」

「それと、御身体の具合は?」

「そちらも、まずまずだ。」

「頼んだ身で大変恐縮ではありますが…くれぐれも無理だけは…。」

「ハハ、大ぇ丈夫だよ。それに、ほれ!応為もいるしな。あいつも立派な絵師だよまったく…親が良かったんだな?ハハハ。」

こちらを見て会釈を返す応為。

「しかし、立派な…流石は北斎先生!」

「おおよ!祭りの山車に使うんだろ?それに知ってっか?鳳凰っちゅうのはな…。」

はっと目が覚める。

「…。」

実に曖昧な夢だった、見ていた事は確かだが誰と何の話をしていたか思い出せない。

起き上がり頭を抱えていると、ガチャリとドアが開く。

と同時にバリンと割れる音が。

なんだ?と寝起きには少々大きすぎる声の主がその問いすらも吹き飛ばす。

「師匠〜!」

泣きつくエレン。

「……。おぉ、えれん、ハハ、お前ぇさん声で頭も割る気かい?」

「ぐすっ、だっで、師匠〜ぐすっ」

「3日間眠ったままだったんですよ、御老体。」

「おぉ!おーれい!久しいな!」

「ようやく、お目覚めになられたのですね。」

「お前ぇさんは確か…?」

「マーリンです、お目にかかるのは3度目ですね。」

「いやはや歳はとりたくないもんだな。」

「北斎様。」

カシャンと北斎の前で膝をつくオーレイ達。

「貴方はこの国を、民を救ってくれた英雄です。騎士団を代表して御礼申し上げます。」

「いやいや、そんな対したもんじゃねぇよ。俺ぁ絵師として絵を描いただけさ。」

(そう、その絵がまさか動くとは?この3日間魔術の痕跡を調べたが何も反応はでない。密偵からの報告も同じだ。絵を描くその時、周りの音が静まり返り、色が無くなる現象をなんと説明する?)

マーリンの目だけが注意深く北斎を見つめる。

すると、マーリンと目が合いニヤリと口角をあげる北斎。

スッと瞼を閉じる。

(悪意を感じないが、やはり…。)

「師匠!今夜晩餐会が開かれるみたいですよ!」

「国を救ってくれた英雄2人を国王自ら饗したいと。エレン貴女のドレスも新調しなくちゃね。」

「やったーッ!」

「弱ったなぁ…。」

「…。」

「どうしましたか?」

オーレイが問う。

「豪華な馳走は口に合わんのだ。」

「ぶッ…アハハハ!」

オーレイが笑ったのに吊られ他の3人も大きく笑った。

そして、夜が更ける。

玉座中央、円卓の上には豪華絢爛の食事の数々。

そして北斎の対面、右に逸れた椅子にエリザベス・パトル王妃。

王妃の左隣にオーレイ、母娘水入らずの会話をしているのであろう。そしてエレンに目をやると豪華な馳走に舌鼓をうっている。

(孫にも衣装だな。)

北斎が微笑む。

王妃の右隣は空席、国王はまだ来ておらず、空席を挟んでマーリンは静かに食事をその右隣は確か行商旅団の頭取フレイマンも同席していた一口、一口、味を確かめる様に食を進める。

「北斎様、お食事はお口に合いますでしょうか?」

一同がピクリと身動きを止める。

「えぇ、とても。」

「あら、それは良かったわ!」

一同がホッと一安心し、再び動き出す。

(此奴らめ、俺を侮るな?食べる振りなんざお手のもんよ!)

「それにしても、遅いわね。」

「父上も忙しいのですよ、母上。」

「まぁ!オーレイ、これでも私も王妃。あの人の忙しさくらいわかっているわ!でもね、あの人が開いたものなのよ?北斎様に失礼ではなくて?」

「あぁ、お、王妃様、お構いなく。」

「まぁまぁ、王妃様北斎殿もあぁ言われている訳ですし。ラルフの旦…ゴホン!失礼、国王様も各国への書状、今回の被害にあった者の葬儀やら復興への手続き…一日が24時間じゃ足らないくらい働いていますから。」

「まぁ、フレイマンまで!…まぁいいでしょう。」

(ふれいまんとやらは国王と古い顔なじみなのだな。)

と重厚感ある扉が開かれる。

「すまない!遅れた!」

カツカツと踵を鳴らし歩く姿に全員が立ち上がり周りにいる護衛の兵もお辞儀をする、北斎は遅れて立ち上がりお辞儀をしかし目だけは、彼を追う。

(なるほど、強いな。この場にいる誰よりも。)

間もなくラルフが着席し、一同に座る様促す。

「さて…はじめましてだな!北斎殿。私はここ、東の国首都青龍王国国王、ラルフ・パトルだ。この度の戦での活躍誠に感謝する。」

ガタっとラルフが立ち上がりカツカツと北斎に歩み寄る。

「本当にありがとう。」

皆、立ち上がる間もなく両の手でがっしりと北斎の手を掴む。

「あ、いやぁ…俺は対した事はしてねぇんで…。」

あまりにも突飛な行動だった為王妃以外の者は少し慌てた。

「ふむ。しかし、救ってくれたことに変わりは無い。ありがとう。」

そのまま膝をおろうとするので、慌てて

「辞めてくだせぇ、王様。」

「いや、これが私の正義だ。民を救ってくれた事は私の命を救ってくれた事と同義であり。その者に礼儀を欠いては私は末代まで馬鹿にされる。どうか私のわがままを。」

一同国王の後ろに配列し、北斎へ膝をつき礼を尽くした。

(喰えねぇ方だ。だからこそ皆命を賭して戦うのだろう。民を観ててもそうだこの国は幸福である。ならば!)

「礼を言わにゃならんのはこちらもだ、おーれいに五体満足で命を救ってくれた。世話をしてくれた。筆を。絵を描かしてもらった。」

北斎もまた座を正し

「誠に、ありがとう御座います。」

深々と頭を下げた。

「見事!面を上げてくれ北斎殿。」

顔を上げると同時にガシッと右腕をつかまれ立たされる。

「よし!今宵は祝い酒だ、フレイマン!」

「はっ」

「ありったけの酒を用意しろ!」

「お安い御用で!」

「あ、お、俺は酒が飲めん。」

「よし、酒が入っていない果汁も持ってこい!」

「はっ!」

「これで決まりだな!よし!今宵は飲み明かすぞ!貴殿の武勇も聞かねばならぬしな!ワハハハハ!」

「やれやれ、喰えねぇお方だ…。」

「すまないな北斎殿。」

「おーれい。」

「あれが我が父上、国王ラルフ・パトルなのだ。」

「それと、北斎殿。」

ラルフが立ち止まり振り返る。

「はい?」

「厠へは早めにな衣服の中の物を出して参れ。」

(えぇ?)

一同が北斎を見るとバツが悪そうにしてる。

(バレてたか〜ッ!)


そして、晩餐会は終盤へと差し掛かり。

王妃は自室へと戻られる。

「エレン、大丈夫ですか?」

「はい!じぶんはらいじょうぶれあります!」

と呂律も回らなくなってきたため自室へ。

(あいつ酒呑めたんだな。厄介だな。)

「さて、口煩い女…おっと娘の前で言うもんじゃないな。これでだいたいの人払いは済んだか。」

ピリっと空気が張り詰める。

「ここからは少々込み入った話だ北斎殿。主に貴殿の事だ。」

「俺?」

「貴殿は…いや、絵師とはなんだ?」

「…。」

「…。」

「……。」

一同の緊張が北斎へと向かう。

「絵師か…よし!言うより行うが易しだ!ちょいと待っとくれ!」

紙と筆を持ち出し徐に何かを描き始めるが咄嗟に左手に筆を持ち直し描く。

「出来た。」

数分も経たずラルフ・パトルの肖像画を描く。

「おぉ〜!」

歓声が湧く。

そして、右手に筆を持ち直し親指と筆の柄で今のラルフ・パトルに焦点を合わす。

この所作がラルフの記憶の中の強敵と相対してるいるかの様な錯覚を起こし、握り拳に力が入る。

が、すぐ我に返り目の前の老人から漂う殺気とかつて己が屠った強敵を重ねていた。

「思うに、70までの描いてきた絵は絵じゃねぇ。」

「?」

ガタガタと机と椅子が、食器類が鳴り始める。

「80になってやっとマシになった。」

シャンデリヤまでも揺らぎ。

「90で絵の極意をつかんだ。」

窓に風が叩きつける。

「100歳にしてそれが神妙へ。そして、一点一画が生きるが

如く。」

光が北斎へと集中していく。

「なるほど。」

「つまり、俺が魂込めて描けばこいつらもそれに反応するんじゃねぇかな…出来た!」

「さぁ、とくと御覧じろ!」

描きたるは、ラルフ・パトルだが、今より数十歳は若い姿が駆ける白馬に乗り紙面上から勢い良く飛び出る。

「こ、この御姿は!北方の…氷竜ブリザードを討伐なされた時の御姿!」

フレイマンが声を荒げる。

ガカッと蹄を鳴らし荒く息を整える白馬。

馬上から見下ろす視線は冷徹だが、瞳の奥は闘志が宿る目付き。

まさに、歴戦の雄。

在りし日のラルフ・パトルの姿にザッと皆一同に膝をつき忠義を示す。

「こらこら、過去の私にしかも絵に膝をついてどうする。」

「あ、申し訳ありません、旦那……つい。」

「まぁ良い、なるほどな。」

(絵とは思えぬ漂う殺気、もう25年前の姿だがフレイマンが興奮して、あのマーリンが警戒を全く怠らないのがよくわかった。)

「それで、貴殿は今後どうするつもりかな?」

「旅にでたい!」

「ほう…。」

「この世界を観て描きたい!」

(ふっ…さっきまでの鬼気迫る表情とは裏腹で童の様に笑ってそれを言うか。)

「なりません!」

「どうして私ではなくマーリン、貴様が止めるのだ。」

「申し訳ございません。陛下!しかし、この者の力は強大過ぎます!」

「…続けろ。」

「あのグリフィンは魔法ではありませんでした。この数日も調べていましたが、魔力の痕跡は全くでていません。」

「……。」

「魔力の流れもなく、詠唱も魔法陣もなく…それなのに、描いたものが現実に…。」

「極めつけはあの波です!」

「絶景だったろ?」

「そうではなく、北斎殿貴方は3日間眠っておられたからわからないだろうが眠ってた3日間、雨が振り続き歴史上観測しない降水量になったのだ!天変地異までも描くと言うのですか!?」

「まぁ、あれを描いた日が豪雨じゃったからなぁ。」

「それが!魔法じゃないなら脅威でしかないんだよ!」

場の空気が張り詰める。

「マーリン!……そなたが思う北斎殿の脅威は私は充分に理解している。さて、北斎殿。今のを聞いて改めて聞く…この国に残ってはくれまいか?」

「嫌だね。」

「ふっ、即答か。」

「絵師ってのは自由だ!人も自由、誰かに縛られて描くなんざ真っ平御免だね。」

「人も自由か…わかったじゃあ、こうしよう。」

「旅に出ても良い。だが、見張りをつける。フレイマン!」

「はっ。」

「行商旅団に1つ席を用意させてもらえないだろうか?」

「お安い御用で、旦那。あっしもあの方の絵を観てから商人の血が騒いでらぁ!」

「ふっ…だろうな、北斎殿。旅の道中はこのフレイマンがこの世界の案内人だ。決して無茶はしないでくれよ。」

「あぁ!恩に…着…る……よ…」

程なくして北斎の意識が切れた。

「師匠…また眠っちゃったっすか?…眠ってばっかっすね…あれ?師匠…黒髪なんてあったっけ?」

こうして、晩餐会は幕を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。