ep:10
ギンとグェンそれにゲルドはテント周りの人払いを済ませ、ゲルドはテント前にギンはテント裏で待機姿勢をとる。
グェンは1人テント内に入りフレイマンに耳打ちする。
「お頭、人払いは済ませたよ。」
「わかった。よし、ダミエルさん改めて話を聞かせてくれないか?」
「はい。」
ダミエルが静かに語り始める。
「先ずは、先月の事から…我らの村周辺の森ちょうどこちらのテント裏に広がる森ですね。そこから草食獣や肉食獣が村目掛けて走り去っていったのです…最初村の襲撃を予想しましたがどうも様子が可怪しい…まるで何かから逃げる様な…そこで先遣隊を組み森の調査を行ったのですが…皆一同に黙秘を…ある者はその日から塞ぎ込んでしまい。またある者は錯乱を…。」
静まり返る場の空気の中ガイが口を開く。
「近くの村や街に救援は出さなかったのか?」
静かに首を横に振るダミエル。
「あまりにも情報が少な過ぎて…。」
「…人族の皆様はどうか私にはわかりませんが…我々の種族の多くは本能なのか神獣に近づく事もままならないのです…。」
と続けるもまた、静寂がテント内を覆う。
フレイマンがチラリとグェンに視線を送る。
グェンは小さく頷き、皆を背にして口のピアスを指でなぞり念話を送る。
「皆んな、聞こえるかしら。」
「あぁ。」
「うん。」
「あい!」
「あ、ガイ兄は思った事直ぐ口にしちゃうから黙って聞いててね。」
チラリとガイの方へ視線を送り、解ったと合図を送るガイ。
「ありがと、ゴウは引き続き荷台の修理をお願い。」
「おで…むずかしいはなしわかんないから!お仕事ガンバル!」
「良い子ね。夕飯はハンバーグよ。」
「やったー!」
「それで二人とも首尾はどうかしら?ギンちゃんから」
「視野を広げているが、ダメだな。後ろの森の地上が生存権の動物は軒並みいねぇ。鹿も猪も熊までもだ。鳥なんて一羽も飛んでねぇ。」
「狩り尽くしちゃったとか?」
「いや、まるで住処を変えたみたいな感じだ。居るのは蛙か、トカゲ…それも皆んな地中に潜っちまってらぁ。」
「変ね。」
「中でもヒョッコリ地中から出てくる間抜けな奴の目を借りちゃいるが数分で地中に潜っちまう。何かにビビってるのか?」
「そう。引き続き目で捜査をお願いギンちゃん。」
「あいよ。」
「ゲルドはどうかしら?」
「村の裏側付近の木々に耳置いてきた。」
「上出来よ。何か聞こえる?」
「鹿、猪、熊いる…でも昨日より減っている。」
「他には?」
「ん〜…雑音が混じってて…わからない。」
「お。」
「どうしたの?ギンちゃん。」
「こいつぁ、旦那が喜びそうな物だ。羽根だ。それもデカい。乾いちゃいるが血がついてる。」
「とりあえず収穫は有り…ね。お頭に報告するわ。」
「そりゃあ十中八九アイツだ…グリフィン!」
「え?」
「はい?」
「師匠?なんで?」
一同の視線が北斎に集まる。
「北斎の旦那!俺達の念話が聞こえるのか?…あっ!」
「はぁ〜…。」
深いため息をつくグェンと呆れた顔をするフレイマン。
「カカッ!面白い術を使うのだなお前ぇ等!」
「お頭…。」
「すみませんダミエルさん。先ず、騙し討ちをしようって魂胆ではない事を念頭に置いて。ダミエルさんの話はどうも…正直五分五分でしか信じられん。」
「ぐっ…。」
フレイマンの言葉に思わず口籠ってしまうダミエル。
「こればっかりは勘頼りでの言葉だが。あんた、誰かに脅されてんじゃないのかい?」
北斎の言葉に思わずハッとするダミエル。
「例えば朱雀……なんとか!…に若い連中を連れ去られたとか!それでグリフィンを出汁にしてヤッつけて欲しいとお願いして来い!…みたいな。」
北斎の言葉で動揺してダミエルの瞬膜が動く。
「……決まりだな。」
「なぜ?そこまでわかるのですか?」
「俺ぁ、昔から眼が良いんだ。」
「え?」
「絵描きってのぁ…物を良く観る事から始まんのさ。あんたの顔は嘘と本音が出過ぎだ。分かり易過ぎる。」
「……。」
図星を突かれ言葉も出ない。
「だが、その口車に乗ってやる。」
「え?」
「ちょっ、旦那…。」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず。って奴よ。ふれいまん。」
「旦那に言われちゃあ敵わねぇよ。」
「でも、師匠。」
「ん?」
「もし、グリフィンが襲って来たら…。」
「心配すんな!今は来ねーよ!お前ぇさんが持ってる槍を見てアイツぁ縮こまってやがる!相当痛かったんだろうさ!」
「なんでそこまで?」
「あぁ~…アイツ昨夜から視線を…俺と眼を合わせて来たんだ。」
「昨夜から気づいていたのですか?」
「あぁ!アイツぁきっとこうも思っているだろうさ。…俺を喰いてえと。俺もアイツにもう一発喰らわしてやりてぇ!」
「はぁ〜…。」
フレイマンは深いため息をついて北斎に食ってかかる。
「旦那…ラルフの旦那にも釘を差されたでしょ!?無茶はしないでくれよって。」
そんなフレイマンに北斎は負けじと返す。
「あぁ?それはどうかな?と返したぞ?」
ガイが透かさず二人の間に割って入る。
「まぁまぁ、お頭!それに旦那も!いい歳したおっさん二人の喧嘩で解決したら誰も苦労しないって!」
うんうんと両腕を組んで相槌を打つグェンと、挙動不審に北斎とフレイマンを交互に見るエレン。
「先ずは、村で現場を見た奴から話を聞いてみる。んで、旦那が二三質問した反応で今みたいに何か解るかも知れねえ!ていうのが今日の落ち着きどころじゃないかな?お頭!」
屈託のない笑顔をフレイマンに向け返答を促すガイに、フレイマンは再びため息をつく。
「はぁ〜…。まぁ、それが妥当だろうな。だが、キャラバンの連中を巻き込むのは御免だ。」
暫し、物想いにふけるフレイマン。
「ガイと…ゴウはキャラバンの連中と村向こうの港街まで行ってくれそこで暫し待機だ大丈夫!金に困ったら旦那の絵を売り捌いちまえ!…ギン、グェン、それにゲルドとエレン嬢は村に駐留して儂と旦那を守る!」
「了解!」
「えぇ、わかったわ。外の三人にはあたいから話しておく。」
「あ、あの…。私が残っても大丈夫でしょうか?」
そう、問いかけるエレンの声は僅かに震えていた。
「大丈夫さ!エレン嬢!お前さんは充分強い!世界を股に掛けるこのフレイマンが保証する!儂の目に狂いは無い!」
ニッと笑いバシバシとエレンの肩を叩くフレイマン。
「そうさ!エレン嬢!それにさっき旦那が言ってたろ?その槍のお陰で俺達は守られているってさ!」
「そうよ!エレン嬢!槍が無くても貴女は強いわ!」
ガイとグェンから太鼓判をもらいエレンは心底ホッとした。
「なんだ?ビビってるのか?えれん?」
と茶化す北斎に苛つき思わず槍を構えるエレン。
「私は、彼の国を代表して貴方を護るとこの託された槍に、国王様に、そして私を一人の騎士として育ててくれたオーレイ・パトル団長にこの誓いを建てた騎士!舐めるなよ爺ぃ!」
「其の意気や良し。期待しているぞえれん!」
エレンの気迫に両手を挙げ後退りながらも尚もニッと笑い返す北斎にふっと微笑み返すエレン。
フレイマンが動き出す。
「それで…だ。ダミエルさん。儂等と交渉しようじゃないか。」
ダミエルの前に深く、ゆっくりと腰を下ろす。
即座にグェンはエレンを連れ、テントをでる。
「む、村に戻ればお金は…。」
その言葉にフレイマンが口を挟む。
「チッチッチ。儂等が欲しいのは金なんかじゃ無い。」
「…で、では…何を?他に差し出す物など…。」
「そうやって、連中にも付け込まれ若い連中を持って行かれたんだろう?」
嫌らしい笑みから一変。フレイマンの表情が強張りダミエルの瞬膜が動く。
「いいか、ダミエルさんこの事を教訓にした方が良い。交渉とは決して互いに五分五分とは限らないんだ。こればかりは知識と経験が物を言う奴でね。あんたはまだまだ浅い。」
「……肝に銘じておくわ。」
(成程、これはえれんの様に純粋な者には見せられん。)
と感心する北斎。
「こうしよう…若い連中の事は儂等、もといこの旦那が引き受ける。報酬はその次。若い連中を連れ戻したらまた提示するとしましょう。」
その言葉に感極まり涙を流すダミエル、言葉に詰まりながらも感謝を伝えている。
(此奴もまた喰えぬ男よ)
北斎の頭の中でも読んだのかフレイマンは北斎に向けてニッと笑いかける。
「タヌキめ。」
北斎もニッと笑い、その場は丸く収まった。




