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可愛さとは所謂正義である

 思わずとっさに反応することが出来ず、ぽかんとナナを見つめる。ナナは私に見つめられてたじろぎ、そわそわとドレスの裾を握りしめた。


「えっとー」


 なんて言っていいか分からずにポリポリと頬をかいた。学園に行きたいという貴族の令息令嬢は稀で、魔法の授業も受けたいというのはなおさら、まさかナナがそういうとは思っていなかった。それに話が急なこともあって、驚きで言葉が出ない。


「っあ、いえ、リジーを困らせるつもりはなかったんです! そうですよね、私みたいなのと一緒にいるのを見られたらリジーが困りますよね、ごめんない」


 ついにナナが俯いてしまう。さっきよりも強くドレスを握りしめ、ぽたりと一滴の涙が落ちる。

 ああやっぱり美少女の涙は美しい……ってそうじゃなくて!


「え、待ってナナ!」


 それに血相を変え、私は思わず向かい合ったナナの手をぐっと掴む。

 忘れてた、この子、自分にとって悪い方の想像力が凄まじいんだった!


「なに言ってるの。リジーとナナはもう友達でしょ? なのになんで学園では仲良くしないの。へんだわ」


 ナナの頭にありそうなことはしっかりと否定した。


「まずね、はじめからリジーは学園でナナとずっといるつもりだったんだよ。今は、まさかナナが魔法の授業を受けたいって言うとは思ってなくて少し驚いちゃっただけ」


 顔を上げたナナの紫色の目が潤んでいる。私の手をぐっと握り返し、ナナが震える声で言った。


「私は、ちょっとでもリジーと一緒にいたいの。だからたくさん練習するわ。リジーの隣に並んでも見劣りしないくらいに。

……でもね、私のおうちは伯爵家だもの。そんな私と一緒にいるところを見られたら、公爵家のリジーに迷惑がかかっちゃうわ」


 正直、私は今のナナの前半の言葉でノックアウトした。なにそれめっちゃ嬉しい。超健気なナナが可愛い。なにこのかわいいいきもの。

 だから、ナナの後半のお話はどうだっていい。


「なーにいってるの。リジーにはナナがいないと寂しくて生きていけないわ。だからそれでいいの」

「え、でもほかの公爵家の方はどう思われるかーー」


「兄様。リジーがナナと一緒にいたら迷惑になっちゃうの?」

「ううん。リジーの命より大切なものなんて何も無いからね。なんにも心配いらないよ」

「それに学園では家の格ではなく個人の能力がものを言う。心配することなんて何も無い」


 お向かいに座る兄様とルークス様が優しくそう言ってくれる。ほらね、と私がナナに笑いかければ、ナナがほろりと涙をこぼす。


「そうだね。ありがとうリジー」


 まったく、わたしの親友は本当に気が弱い。だからこんなにも優しくて色々なところに気を回すことができるんだけど、それで自分を追い込んじゃったら意味がない。

 そういうのはある程度人に任せておけばなるようになるのに、ナナは優しいから自分で沢山考えて不安を煽ってしまう。


 やっぱりこれからも私がそばで見ていてあげないと。ナナが【愛の王冠をその手に】に登場することはないけど、悪役令嬢の私と関わってしまった以上何が起こるかわからない。……この世界の性格の悪い女たちやヒロインに手懐けられた攻略対象たちに、わたしのナナを傷つけさせたりは絶対しない。


 そんな未来を防ぐために今も頑張ってる最中なんですけど。


「それに学園への入学は十四になってからの四年間。お前たちは今年で六だからあと八年近くあるんだ。二人で頑張れ」


 ルークス様がお茶請けに手を伸ばしながらそう言った。それに二人で頷いて、一緒にマカロンに手を伸ばす。


「まずは甘いものがだいじだよね!」

「うん!」



お久しぶりです。

のろまどころのスピード更新でとても申し訳なく思っておりますがお付き合いのほどをよろしくお願いします。

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