5.闇に踊る火の間に
騎士の登場シーンからこれまでのお話
騎士からみたリアちゃんはどのように写っていたのでしょう
リアが眠りについた闇の中、欠けた月と揺らめく火の元に我は物思いにふける。
我は主を守る赤き騎士である。
その時は唐突に訪れた。予定より早く『赤き輪廻の塔』より主の覚醒を感じた我は驚きに襲われながら主の元へ音を置き去りにして全力で走った。
「ありえぬっ、覚醒は後数千年はかかるはずだ!」
見えてきた塔の周辺では雷が雨のように穿つ。雷によって地面を抉り、その一つが我の前へ落ち歩みを妨げるのと同時に光の中から雷を纏いし雷獣が襲いかかる。
「ええい、邪魔だ!」
我はすぐさま紅の剣を創成し刀身に紅蓮の炎を纏わせ迎撃にかかる。雷鳴の中轟音が響き進路上に現れた数十もの雷獣を一合のもとに屠りながら『赤き輪廻の塔』へ走る。
最後の雷獣を倒し塔の中心に居る彼女へ歩み寄る。膨大な力が彼女を覆い数十とある塔から主に放たれるエネルギーは通常の数百倍に膨れ上がり一本一本が大蛇のようであり、明らかに異常であることが読み取れる。
我は動揺した心を静めるように、自分に言い聞かせるようにしゆっくりと落ち着いた口調で言葉を紡ぐ。
「ほう、揺らぎを感じたと思えば覚醒したか。予定よりも早いが一つに纏めるとしよう」
すぐにでも塔の機能を止め安定させなければ彼女に多大な不可がかかってしまう。我は胸に収まる核のエネルギーを塔へ繋ぎ干渉を始める。我の感覚が塔へ繋がった瞬間、塔の莫大なエネルギーが我の身体に入り軋み上がる。身体が熱を帯び陽炎が生まれる。あまりにもの反動に片膝をつきそうになるが彼女は我以上の痛みと苦しみを受けているだろう。
そう思うと力が入る。入り込んでくる力を己の規格に合わせ我が物とし、さらに干渉力を上げて制御する。
やがて塔からの放射は止まるとふわりと彼女が落ちてきた。我はその小さな体を受け止める。まだ辛いのか彼女の表情は苦痛を表していた。
「ふむ、やはり少し早すぎたか。まだ不安定だがそれも時がたてば時期におさまるだろう。今はゆっくりと休むがよい」
彼女は意識を失い眠りにつくように力が抜けるとゆっくりと呼吸を始める。
塔は通常起動を開始し、頂上に炎を揺らめかせることを確認した我は近隣の町へ足を進める。
「何故今目覚めたのか、イレギュラーの発生、それを意味するものは。輪廻システムの異常か?それとも・・・いや、今考えてもどうしようもあるまい。彼女が目覚めたからにはやることは一つ、この壊れた世界に真の平穏を」
それから再び彼女が目覚めたのはそれから日が昇り始めた早朝であった。彼女は辺りを見渡すと我の姿を見るやいなや宝石のような赤い瞳をわずかに見開きこちらを伺っている。二三言会話をすると彼女は起き上がり問いかけてくるが肝心な部分は答えない。これから何をするのかは彼女が決めることだ。だがしばらくは我の傍に置き経験を積ませるとしよう。自分だけの解へとたどり着けるまで我は傍にいよう。
それと・・・その、なんだ、前は隠したほうがいいぞ。
朝食を作るためにフライパンを手に腕を振るう。今日は朝市で仕入れた野菜を使った炒めものだ。
主がこちらにやってきた。ふむ、白の髪に合うように無難な黒のドレス甲冑を選んだがよく似合っておる。
彼女はあまり言葉は発さないが表情がよく変わる。必死に隠そうとしているがバレバレである。笑ってるときは肩が震えるし、驚いているときはまん丸と目が開く。とてもわかりやすい子だった。
うむ、美味かったようだな。結構結構。
それから彼女にリアという名を付けた。主の名前を決めるというのは中々に妙ではあったが喜んでいたのでよしとしよう。
彼女の髪は感情によってゆらゆらと揺れる。今は体の動きに合わせるように髪も動いているようだ。
それから外に出ると彼女のはしゃぎようはすごいものであった。あっちへこっちへと動くものだから目を離せない。だが本屋であの本を手に取った時は思わず感嘆の息が漏れた。あの本がこの後どう彼女を導いていくか興味深い。
これまでのことを振り返っているといつの間にか空は白み始め太陽が顔を見せる。我はまだ眠っている主を起こさぬよう消えていた火を起こし、朝食の準備を始めるのであった。




