7話 彼女は久しぶりに高校に登校した。
私はおよそ2週間ぶりに高校の門をくぐった。
「おはようございます。」
「あい、おはよう。」
校門ではいつもと変わらずに先生たちが立っていてくる生徒にあいさつをしていた。
私もあいさつをすると先生たちは笑顔で返してくれた。
私は教室へと歩みを進めていた。しかし、いざ教室が見えたところで、私の歩みは止まってしまった。
身体の震えが止まらない。呼吸が浅くなり、どんどんと視界が暗くなってきた。心臓がすごい早さでドクンドクンとなっているのが分かる。
周囲から音が消えた。
周囲から喧騒が遠のいていく。
それでも、私は行かなきゃと思い、一歩を踏み出した。
その瞬間、全身から汗がものすごい勢いででたのが分かった。なのに身体はまるで極寒の世界にいるかのように冷たい。
私はそれでも行かなきゃと思いもう一歩踏み出そうとした。だけど、足はまるで自分のものではないかのように重く、固まってしまって動かない。
どんどんと息だけが上がる。
めまいがしてきて身体がおかしくなってきた。もう立っていることすらできない。
私が倒れないように座り込もうとした次の瞬間、明るい声であいさつをされた。
「あ、山本さん。おはよう。」
私があいさつをされた方向を見るとそこには同じクラスの松村くんがいた。
「……」
私は咄嗟に返事をしようとしたが、口の中が乾燥してうまく言葉がでない。
「すごい汗だけど、大丈夫?」
松村くんは心の底から心配しているのが、分かる声で聞いてきた。
私は頷くしかできなかった。
松村くんは私が頷いたのを見ると、私の横に立って、私ではなくどこか遠くを見た。
私は松村くんが何を見ているのかが気になり、松村くんの視線の先をみたが、そこにはただの扉があるだけで、それ以外は何もなかった。
私は松村くんに何を見ているのか聞こうとしたが、思っている以上に自分の身体が思うように動かなくて、結局松村くんの横でただ、かろうじて立っているだけだった。
だけど、ちょっとずつ立っていることすら辛くなり、ついに座り込んでしまった。
松村くんはそんな私を見て、そっと横に座るとそこでポケットから出してきた本を読み始めた。私は横目でその本をみたが、頭がまったく回らずに内容を読むことはできなかった。
しばらくすると、私の身体の熱が抜け、体温が通常に戻り始めたのが分かった。だけど、まだ、足に力が入らずに立てない。
そんな私達の前を多くの生徒が通過していった。皆、私達のことを見るが誰一人として、なぜそこにいるのか?どうしたのか?と言った内容のことを言わなかった。ただ、私の横に座っている松村くんを見て、足早に教室へと去っていった。
しばらくすると朝のホームルームが近くなり、教員たちが上がってきた。
「山本さん。大丈夫?」
田尾先生が声をかけていた。
私は大丈夫です。と言いたかったけれども声が出ずただ、頷くしかなかった。
田尾先生はそんな私を見て心配そうな顔をしていた。だけど、私には今の田尾先生に何か言うことはできない。だって、やっと身体の感覚が戻ってきて、寒気が引いたばかりなのだから。
「田尾先生、どうかしましたか?」
田尾先生が私を見て、どうしていいのか分からずに困っていると私と松村くんの担任の東田先生がやって来て、田尾先生に声をかけた。
田尾先生は、立ち上がると私たちには聞こえないぐらいの小さな声で東田先生に何かを言った。
東田先生は1度頷いた後に、私達の前にしゃがみ込んできた。
「松村、悪いがそのまま山本と一緒保健室に向かってくれるか?」
東田先生がそう言うと松村くんは本から顔を上げて頷いた。
「山本、立てるか?」
私はそう聞かれて、立ち上がろうとした。だけど、うまく立てない。そうしていると、先に松村くんが立ち上がった。すると不思議なことに私の左手も一緒に上へと上がっていった。
私はなんでだろう?と思い、そっと左手を見ると私の左手は松村くんのワイシャツをギュッとシワになるぐらいに力強く握っていたのだ。私は慌てて、手を離した。




