6話 彼は娘をよろしくされる。
「どうぞ、座ってください。」
僕達は男の人が手で指す椅子に座った。
すると、男の人はコップを3つとコーヒーのボトルを持ってきて入れてくれた。
「「ありがとうございます。」」
僕達は前に置かれたコーヒーを見てお礼を言った。それからしばらくの間誰もしゃべらない時間が続いた。
「えっと、まずは娘を、陽菜の命を救ってくれて、ありがとう。」
男の人はそういいながら深々と頭を下げた。
「えっと、それはその、」
僕が言い淀んでいるとうえさんが僕の袖を引っ張った。
僕がうえさんのほうを見ると、うえさんは任しとけと言わんばかりの顔で頷いてから、男の人のほうをみた。
「気にしないでください。
あれは、本当に偶々なので。僕達はあの日のあの時間に偶然にあの場所でブルーシートを広げていただけです。そして、そこにたまたま、山本さんが落ちてきただけです。」
うえさんがそういい切ると男の人は、一瞬きょとんとした顔をしたがすぐに頷いた。
「そうだな。そういうことにしておきましょう。」
そして、なぜか意味深げな言い回しをしながら何かを納得した。
「さて、では。陽菜のことをよろしくお願いします。」
男の人はそう言うとそっと中身がしっかりと書かれた入部届を僕たちに渡してきた。
「はい。」
うえさんは返事をすると入部届を受け取り、クリアファイルにしまった。
僕はその様子を見ながら、なんか娘をどこかに預ける時の親と預かる施設の人の会話みたいだなと思っていた。
その後、しばらくの間は山本さんの父親が僕たちに科学部の活動内容について質問をしてきて、それに対して僕達が答えるというのをしていた。
山本さんのお父さんはとても真剣な眼差しで話を聞いてくれた。なので、僕たちも嬉しくなり、たくさん話した。まあ、一部口外できないようなことを除いてはであるが…。




