13話 彼女は知る。
「お~い。赤松。」
やまちゃん先輩は温室に入りながら声を上げた。
「何?」
赤松先輩は私を見ながらとても低い声で言った。
「おい!赤松。」
「やまちゃん。僕は命を無駄にする奴が嫌いだ。」
赤松先輩は静かに言った。
「それは、そうかもだが、経緯を知ってるだろうが!」
「そうだとしても、嫌いだ。
命は1つしかないのだから、有意義に使うべきだ。それを何の価値も持たせずに捨てようとした奴は嫌いだ。」
赤松先輩は私をとても冷たい目で見つめながらそれだけ言うと、再び作業に戻ってしまった。
「えっと、その。とりあえず移動しようか。」
やまちゃん先輩はそう言うと私を連れて温室から離れた。
――
「ごめんな。」
「いえ、その。大丈夫です。」
私とやまちゃん先輩は食堂の椅子に腰掛けていた。
「あいつはその、悪い奴ではないんだがな。
基本的に人には無関心なんだよ。そのくせ命は価値のあるもので、その価値は自分で作るものだとか考えてるタイプだから、ああなるんだよな。」
やまちゃん先輩は笑いながら言った。
「えっと、その、さっき経緯を知ってるって言ってましたけど、どこまで知ってるんですか?」
私が聞くとやまちゃん先輩は真顔になった。
「多分、あなたが知らないところまで。」
「え、それって…」
私が聞こうとするとやまちゃん先輩は首を横に振った。
「今はまだ知らないほうがいいよ。
それこそ、知ったら多分もう一度飛び降りちゃうかもだしね。」
やまちゃん先輩は笑いながら立ち上がると近くの自販機に歩いていった。
「何飲む?」
突然、話題を変えられて私は戸惑ってしまった。
「色々と気になるみたいだけど、気になるなら赤松に直接聞いて。
あいつは今回のこと相当頭に来ていたみたいで、使える人脈と技術をすべて使って今回のことを丸裸にしたうえで生徒指導の先生の机にたたきつけてきたからさ。
そんでもって、先生が動かないなら警察にすべて流しますって叫んだよ。」
私はその言葉を聞いて驚きのあまり固まってしまった。
「はい。これ。」
そんな私の頬にやまちゃん先輩は冷たいペットボトルを押し当ててきた。
「赤松が調べてた。
山本さんの好きなものらしいよ。」
私はその言葉を聞いてふとペットボトルを見た。そこにはいつも嬉しかったときとかご褒美に飲んでいたカフェオレがあった。




