表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪直前の悪役令嬢、領地の税帳を読み上げただけで王子派閥が崩壊しました  作者: 花守りつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/50

リオネルの机印は、本人が帰る前に夜門積載を済みにできません

夜門の積載台には、まだ温乳の湯気が残っていた。


 候補者馬車の脇に置かれた毛布は二枚。ミリアとシェリアが帰るためのものではない。北方返書便を待つ馬丁が、夜明けまでここで眠らずに立つための仮寝毛布だった。


「積載確認済み、九刻三分」


 セリムが読み上げた札には、リオネル・アシュベリーの机印が押されている。


 だが、馬丁が首を振った。


「その時刻、リオネル様の馬車は戻っておりません。夜門の帰着札にも、まだ名がございません」


 エレノアは積載札を破らなかった。青い紐で札の角だけを留め、隣に空欄の帰着札を置いた。


「机が戻っても、人は戻ったことになりません。机印は、本人の帰着と夜門の生活到着を同時に読んだ責任を示すものです」


 ミリアの指が、兄の印影の上で止まった。


「兄が押したのではなく、兄の机が押したことになっている……?」


「まだ断じません。けれど、未帰着の人の机印で、毛布も温乳も馬丁の待機賃金も閉じられません」


 エレノアは税帳を開き、積載済みの行を三つに割った。


 一、北方返書便の灯油。


 二、夜門待機者の仮寝毛布と温乳。


 三、リオネル本人の帰着確認。


「この三つがそろうまで、積載確認済みは生活到着未完了です」


 イーダが温乳の壺を抱え直し、ノラが毛布の端に小さな札を縫いつける。馬丁は震える指で、自分の名と半刻分の待機賃金を帰着待ち欄へ書いた。


「馬は出せますか」


 シェリアが問う。


「候補者を帰す馬車は出せます。北方の返書を積む馬車は、返書を受け取る名が来るまで出しません」


 エレノアが答えると、ミリアは兄の印の横に自分の名を書いた。


「リオネルの机印を、私の兄の罪名で埋めないでください。まず、兄が帰っていないことを、帰っていないまま守ってください」


 その一行で、夜門の空気が少しだけ変わった。


 犯人を呼ぶためではない。帰っていない人の席を、帰ったことにしないための署名だった。


 財務卿が、積載台の奥に立てかけられていた小箱を見つけた。箱には王子府式典倉庫の赤い封緘があり、表札だけが新しい。


 ――リオネル私室机、九刻前返却済み。


 エレノアはその表札を読んで、青い紐をもう一本取った。


「では次は、戻ったはずの机が、どの扉から夜門へ来たのかを読みます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ