23 疑惑と戦略
廃工場の一室にて、ジアは古びた机の前に立っていた
地図や書類が広げられた机の上を指先で軽く叩きながら、思考を巡らせている
その眉間には深い皺が刻まれていた
「ジア、ここにいたか」
シノが部屋に入ってくると、ジアは僅かに顔を上げた
その眼差しは険しく鋭い
「どうだった?」
ジアの低い声に、シノは頷きながら机の端に腰を下ろした
「少し掘り下げてみたが……状況は複雑だな」
ジアは腕を組み、シノを見据える
「具体的に…」
シノは懐から一枚の紙を取り出して広げた
それはアジト周辺の地図と、レジスタンスの活動に関する情報が記されていた
「政府側が俺たちのアジトを正確に突き止められた理由だが、やはり内部からの情報漏洩があったと見て間違いない」
「……裏切り者か」
ジアは小さく息を吐き、視線を机に戻した
その言葉には怒りよりも深い失望が込められているようだった
「今のところ確定的な証拠は掴めていないが、怪しい動きをしている者が何人かいる。あの襲撃のタイミングを考えると……どうも偶然とは思えない」
「……」
ジアは沈黙したまま、鋭い目で地図を見つめている
その瞳には焦りが見え隠れしているものの
その感情を外に出すことはなかった
シノは続けた
「この中に、誰かが家族や身内のために情報を売った可能性もある。政府はその手を使うのが得意だからな」
「家族か……」
ジアはその言葉に反応したように、軽く唇を噛んだ
彼自身もかつて身内を失った経験があり、その痛みを知っている
「ただし、慎重に進める必要がある。下手に疑いをかければ、今のギスギスした空気がさらに悪化する」
シノはジアの表情を見ながらそう付け加えた
ジアは短く頷いた
「分かっている。だが、裏切り者を見逃せば、次は全滅だ」
その時、部屋の扉が軽くノックされた
ジアが「入れ」と短く指示すると、若い仲間が書類を抱えて入ってきた
「次の作戦のための情報が届きました」
ジアはその書類を受け取り、中身に目を通した
内容は政府施設の警備状況や、物資の輸送スケジュールに関するものだ
それを見たジアの表情が少しだけ引き締まる
「これは使えるな」
彼は低い声で呟き、シノにその書類を手渡した
「次の作戦の準備に入る。今回は、奴らにこちらの力を見せつける必要がある」
シノは書類を受け取り、にやりと笑った
「了解だ。で、どう動く?」
ジアは地図を指しながら計画の概要を説明し始めた
その声には迷いがなく、彼の中で次の戦いへの覚悟が固まりつつあるのが感じられた
「俺たちは、一歩も引かない」
ジアのその言葉が、廃工場の薄暗い空間に響き渡った――




