15 交差する感情
ジア視点
執務室には静寂が漂う
ジアは机に肘をつき、拳で額を押さえたまま
心のざわつきをどうすればいいのか分からずにいた
「なあ、ジア」
シノがその沈黙を破る
どこか楽しむような声色ではあるが
その瞳には真剣さが覗いていた
「あの子に何かあったのか?」
ジアは目を閉じたまま低い声で答えた
「……なんでもない。」
「なんでもない割には、さっきの様子はおかしかったぞ」
シノは椅子にもたれかかりながら、軽く腕を組んだ
「で、どうなんだ?あみのこと、気になって仕方がないんだろ」
ジアの眉がわずかに動く
「……どうしてだか分からないが、あいつの笑顔が頭から離れない。男たちと話しているあの様子も……」
その言葉にシノは少し笑い、「ほら見ろ」と言わんばかりに口角を上げた
「そりゃ、嫉妬ってやつだな」
「嫉妬……?」
ジアはその言葉を噛み締めるように繰り返す
「そうだ、お前の番が他の奴と楽しそうにしてるのが嫌なんだろ。それが嫉妬だ」
シノはにやりと笑いながら続けた
「さっさと話してこいよ。あみちゃんと真っ直ぐ向き合ってみな」
ジアは眉間にしわを寄せながらも小さく息を吐いて「……分かった」 と答えた
あみ視点
あみは部屋で静かに座り、何も言わずに目の前の机を見つめていた
ジアの突然の態度が意味不明で、彼女の胸には小さな不安が漂っていた
その時、ノックの音が響き、ジアが部屋に入ってきた
「ジア……?」あみは恐る恐る名前を呼んだ
ジアは少し間を置いてから口を開いた
「ここの居心地はどうだ」
その質問に、あみは少し驚きながらも
「……居心地は悪くないよ。リアンやマイクがいて、すごく楽しいし……」
彼女の言葉は真っ直ぐで、その声色には笑顔が含まれていた
それなのに、ジアの眉がわずかに動いた
彼女の答えに無意識のうちに嫉妬が芽生えたが
ジアはその感情をどう言葉にすればいいのか分からない
ただ彼の表情が険しくなることで
あみは不安をかき立ててしまう
「ジア……?」彼女はその表情に戸惑いを隠せず
そっと名前を呼んだ
それ以上の言葉は、彼女の胸の中でまとまりきらなかった
しばらく沈黙が続いた後
あみは勇気を出して別の質問を口にした
「ねえ、ジア。“番”って、何……?」
ジアはその問いに少し間を置き
深く息を吐いた後、静かに答えた
「……“番”は、俺たち獣人にとって特別な存在だ。人生でただ一人、自分の全てを捧げる相手」
その言葉の重みを感じ取り、あみはそっと呟いた
「特別な……存在……」
ジアは続けて言葉を紡ぐ
「お前が人間だということも、俺のこれまでの状況も……関係ない。ただ、お前は俺の番だ」
その言葉に、あみの心臓が鼓動を強く打つ
彼女は胸の中で何か新しい感情を抱きつつも
それが何なのか、まだ言葉にはできなかった




