12 静かに進む絆
お皿を抱えたままようやくキッチンにたどり着いたあみは、小さく息を吐いた
目の前には薄暗いが広々とした調理場が広がり
壁には鍋やフライパンが整然と並んでいる
香ばしい匂いと、少し湿った空気が漂っている
キッチンの片隅では、犬の獣人であるマイクが忙しそうに動き回っていた
黒い耳がピンと立ち、尻尾が微かに揺れる
その逞しい背中は、どこか信頼感を感じさせるものだった
あみは恐る恐る近づき、手に持っていたお皿を少し持ち上げて話しかけた
「あの……朝食、とても美味しかったです。ありがとうございます」
マイクは作業の手を止め、彼女をちらりと見た
その視線には警戒心が滲んでいたが
どこか穏やかなものも含まれている
「……まあ、どういたしまして」
「それで、ここで何か手伝えることはありませんか?」
その言葉に、マイクは少し眉を上げた
彼は首を傾げながら、あみをじっと見つめる
「手伝い?いや、別に必要ない。ここは俺たちの場所だ」
あみはその返答に少し肩を落としたが
すぐに笑顔を浮かべて「分かりました。すみません」と引き下がった
しかし、食事のたびにキッチンへ足を運び
少しずつマイクに話しかけるようになった
「皿洗いくらいならできますよ」
「あ、これ片付けておきますね」
何度も同じように声をかけているうちに
マイクの警戒心は次第に薄れていった
ある日、彼はあみをちらりと見た後
軽く息を吐いて言った
「……まあ、皿洗いくらいなら頼んでもいいか」
その瞬間、あみの顔に小さな笑みが広がった
彼女はすぐに袖をまくり
「任せてください!」と元気よく答えた
その姿を見て、マイクは一瞬目を細めながら
「変な奴だな」とつぶやいた
マイクは根っからの人懐っこい性格もあり
彼女に対する警戒心を完全に解いた
その裏には、彼がジアを主人として尊敬している部分があり
「番」という言葉で彼女を受け入れる理由を見つけたのかもしれない
一方、ジアは相変わらず部屋に戻ってくるものの
ほとんど話をしなかった
夜が深くなると、彼は黙ってベッドに入り
あみに背を向けることもあれば、時折キスをしてきた
だが、それ以上の会話はない
ジアの朝は早く、夜は遅い
彼は常に忙しそうにしており
あみが彼の顔をはっきりと見ることはほとんどなかった
そんな生活の中でも、あみは少しずつこの世界に馴染んでいった
仲間たちとの交流を通じて、小さな絆を築き始めていた




