社会
今日から私は社会人だ。
私は正社員として事務の仕事に就いた。
会社はアットホームで、
私はすぐにうちとけた。
というのも、この部署に同期は誰もいなくて
全員年上の女性だったのだ。
私は同級生よりも大人の落ち着いた女性の方が
接しやすく、話していて安心感があった。
お昼ご飯を誘ってくれて、
家でご飯はちゃんと食べてるの?とか
時間ない時は、
これを作り置きしておくと便利だよとか
主婦さんが多かったのでアドバイスを
してくれたり、
部署の人たちで毎月ご飯に出かけたりと、
とても仲良くしてもらった。
最初は研修という事もあり、
そこまで難しい仕事を与えられる事もなかった。
だが、だんだんと覚える事が増えていき
私は仕事でミスをするようになった。
簡単な計算ミスや印刷ミス。
怒鳴られるようなミスでも無かった為、
ミスをしたら謝るようにはしていたが、
先輩たちに責められる事はなかった。
でも聞いてしまったんだ。
「なんであの子にしたんだろうね」
「だから私は簿記の資格持ってる真面目そうな子にすれば良かったって前から推してたのに」
「見る目ないんだよ社長…」
「そういえば聞いてよ!
あの子、掛け算も出来なかったの!」
「算数も出来ないなんて…本当に馬鹿なのね」
仲良くできてるつもりだった。
大人の人なら優しいと思ってた。
もうクラスのカーストみたいなの無いって
思ってた。
なのに、会社に入ってもあったんだ。
もう…何を信じていいか分からない。
ミスはどんどん増えていった。
しかも全部おんなじミスばかり。
また同じミス…
注意をしても、プレッシャーのせいか
繰り返してしまう。
その度に先輩は励ましてくれるけど、
それが信じられずにいた。
家に帰ってもミスした事が忘れられなくて、
先輩達のことが怖かった。
他人からの自分への評価が気になってしまって。
夜も寝つけない日々が続いた。
先輩達も私がミスをする度に
呆れるようになった。
「もう半年経つんだからね?
小学生じゃないんだから…
こんなミスやめてよ。
こっちだって忙しいんだから。」
「印刷はこっちでやっとくから、
あなたは入金してきて。
若いんだから走れるでしょ?
3時までにお願い。」
人の目を気にして、
無神経になってないか気にして、
ミスをしないか気を張って、
でも直らない自分が嫌で、
先輩達から言われる言葉が日に日にキツくて
夜も眠れなくなって
トイレで泣く日々が続いた。
学校にいた頃と何にも変われてない。
学校にいた頃は、関わらないようにできた。
関わらなきゃいけないような行事は逃げてた。
でも会社に入ったら逃げる場所無くなっちゃった…。
苦手な人でも、
こわい人でも、
関わらなきゃなんだ。
それが会社なんだ。
人間関係をうまく築ける人って何なんだ。
どこで教えてもらった?
わたしは何で世渡りうまくできないんだ?
私はいつ間違えたんだろう。
そうだよ…
私、あの時みんなと喧嘩すれば良かったんだよ。
喧嘩して、何が悪いのか私に直接言ってくれれば
よかったんだ。
何で無視なんてしたんだ…
別に虐めなくても私は変われたかもしれないのに
反省できたかもしれないのに…
みんなが無視をしなければ、
私はこんなにも人の目を気にして生きて
いかずにすんだ。
こんなに毎晩1日のことを振り返って
自分の欠点を探して後悔する日々も、
息苦しく生きることも無かったのに。
昔はもっと誰とでも話せたのに…
もう人を気にして生きるの疲れたよ…。
「ねえ…もしも私たちに結婚する時が来るとしたらさ…。
私が正社員辞めたら、
結婚なんて許してもらえないよね…。」
私は寝る前、彼にそっと聞いてみた…。
彼は私の仕事がうまく行ってないのを
前から察していた。
「うちの親の事を気にしてるなら、
それは考えなくていいから。
俺は、2人で幸せに暮らせたらそれでいい。
もしも仕事が辛くなった時は無理しすぎないでいいから。
心配することないよ」
私は食欲も失せて夜もあまり眠れなかったけど
それから数日は通勤した。
でも結局逃げてしまった。
もう耐えきれなくて。
彼の優しさに甘えたんだ。
私は仕事を1年も満たずに辞めたんだ。
私は自立なんて出来てない。




