重ねて
それから時間があっという間に過ぎていった。
彼と毎日のように連絡をとって、
バイト前に一緒にご飯を食べたり、
彼が好きなカフェに連れていってもらったり、
彼が好きな古雑貨や古着を見に行ったり、
はじめてレイトショーを観たり、
一緒にカレーを作ったり、
彼はいつも優しくて、
暑い夏の日、日陰のないバス停で
私に持っていた紙で日陰を作ってくれたり、
私が歩き疲れた事を言わなくても、
座って休んでくれたり。
おいしそうなメニューを眺めて迷うときは
それを頼んで2人でシェアしたり。
それでも私たちは付き合っている訳では無かった。
夏休みになって彼は私を旅行に誘った。
私は親に内緒で1泊2日で近くの温泉に行くことに
なった。
牧場でアイスを食べたり、羊に餌をあげたり、
古びた遊園地で汗だくになって観覧車に乗ったり、私は彼と付き合いと真剣に思うようになった。
その日、私たちは今までよりももっと打ち解けた。
旅館で寝る前、真っ暗な部屋の中で
彼は自分のことを話してくれた。
小学生の頃、自分が虐められていたこと。
それが今でも許せないこと。
それから自分が人をあまり信じられないこと。
そんな自分を変えたくてバイトを始めたこと。
虐めてきた相手を殺してやりたいこと。
それを聞いた時、
私は自分と彼を重ねて涙が溢れた。
そして私も自分の過去を彼に話すことにした。
私は小学生の頃から沢山の人を無神経に傷つけたこと。
それが理由で中学生になって部活で無視をされたこと。
それから無神経にならないように気をつけて
生きていること。
私は話し終えて、彼は口を開いた。
「なんで、虐められるんだろうね」
私は、少し考えて昔の自分の気持ちを話した。
「虐めた方は何も思ってないんだよ。
傷つけたことなんて、きちんと覚えてない。
誰を傷つけて話のネタにするくらいとしか
思ってないんだよ。
私も、そうだった。
それくらいしか話す事がないんだよ。
本当の友達を知らないんだ。
…私はそう思う。」
彼は、そんなの酷いと言うだけだった。
全員が全員、虐める側がそうだとは限らないと思う。
誰かに逆らえなくて一緒に虐めをする人や、
自分に自信がなくて他人を傷つけて不安を搔き消す人や、
私のように虐められる側に問題がある場合だって
あると思う。
彼は理不尽に虐められた人だ。
彼と私を重ねてしまって泣いたけど、
彼と私は違うんだ。




