第三話 黙示録の獣
う、うそだ...。
村で過ごした何年間が、たった一夜の夢だったと??
ありえない!そんなバカな話があってたまるか!
...そういえば、昨日ゲームしながら意識を失ったっけ。
ゲームはどうなってる?
『Beast of the Apocalypse』のオープニングが延々と垂れ流されていた。
オープニングムービーとともに...。
「そ、そんな...。」
---------大阪某所 K病院
「大丈夫です。あなたは何も問題ありません。いたって健康です。少し疲れているだけですよ...。」
「今は、ゆっくり静養なさってください。お大事に。」
医師からそう伝えられ、肩を落として病院から去る男。
「一夜の悲しい夢...ですか?」
「えぇ、一夜の、それも、とびっきり悲しくて、濃い夢。」
「...これも異世界症候群(AWS)でしょうか?」
「えぇ、AWSの中の1類型ですね。」
「大丈夫ですかね、本宮さん」
「ふぅ...、今回は難しいですね。」
「難しい...ですか?」
「えぇ。体はいたって健康。ですが、精神が少しもっていかれている... ...異世界に。」
「しかも、たった一夜...、何年も経過していたなら、また違った結末が待っているでしょうが、一夜では...。」
「...一夜では、どうなりますか?」
「恐らく、現実を無理にでも受け入れなければならない気持ちが強すぎて、妄想世界に心を置くことはできないでしょう。だからといって、現実は現実で認めたくない。妄想世界に飛び込みたい願望だけが強く残ってしまうでしょうね。」
---------数十年後
あの世界から戻って、俺は会社を辞めた。
とてもじゃないが、耐えられなかった。
大阪の、あの部屋にいたらまた思い出してしまう。
両親に頭を下げ、福岡の地元に帰った。
...そして、俺は、70歳を過ぎた。
両親は二人とも、もうこの世にいない。
俺は両親との思い出が詰まった家で、一人で暮らしている。
「ふぅ、腹減ったな...。何か食うもんあったっけか?」
俺は台所に行き、冷蔵庫を開けた。
何もない...。
「はぁ、近くのスーパーに行くか...。」
誰もいない、誰も俺の声なんて聞いていない空間で、俺の独り言だけが響く。
玄関に向かおうとしたその時。
「うっ!」
突然、胸に強烈な痛みを感じ、俺はその場に倒れた。
「い、いたっ...い。だ、だめだ、いしきが...。こ、こんな。と、とうさ...かぁ..さ..ん......。」




