第一話 モブ転生
---------大阪 某所
俺は、本宮 光宙。福岡出身の35歳男、独身。彼女...いない。
昔、『光宙』と書いて某アニメキャラクターの電気ネズミと同じ名前を付けて、ネタにされてた親がいたけど、うちの親はそこまで酷くなく。
光り輝く宇宙のように、大きく輝く人生を送って欲しいという意味から名付けたらしい。
地元の大学を卒業して就職もせずにニートやってたんだが、中学のときの同級生たちが結婚していくのを見ていくうちに、地元にいるのが怖くなり、大阪に出てきた。
まともに職歴のなかった俺でも大阪なら何とかなるかなぁ?とかいう甘い夢は一瞬で壊れた。
会社が終わるのは18時頃...なんだけど、俺の要領が悪いのか、いつも帰宅するのは22時過ぎ。
会社が近くにあるから朝はギリギリまで寝てる。
毎日、残業に追われて...、家と会社を往復するだけの日々。
景気が悪いからとかなんとか言われて、就職してからボーナスなんてもらったこともない。
休みの日は疲れて昼まで寝てることも多い。
そんな俺にとって、唯一の癒し...それが。
『Beast of the Apocalypse』
直訳すると、『黙示録の獣』。
ヨハネ黙示録ベースの壮大なゲーム...じゃなくて、宗教観とか特にない、バグ満載の狂ったRPGだ。
よくある剣と魔法が出てくるRPGで、ストーリーもしっかりしてるし、キャラメイクも充実。
魅力的なキャラクター満載の良ゲームだ。
ただ、バグがあまりに多すぎて、初見じゃクリアどころかチュートリアルすら、まともにこなせないっていう致命的な問題を抱えているゲーム。
発売当時からしばらくの間は、開発チームも修正パッチ出したりして対応してたが、修正パッチ自体にバグが見つかったりして、パッチ出して収束するどころかさらに拡大するというとんでもない状態が続いた。
結果、あまりにもバグが多く、開発チームのプログラマーが3か月持たずに逃げ出したって話もある。
そんな問題の多いゲームだったのだが、俺は、どっぷり浸かっていた。
社畜根性が影響しているのか、問題多ければ多いほど燃えてきてしまって、色んなバグ技を見つけては攻略サイトに投稿してた。
今晩も、ヒロインの一人に出会った瞬間、プレイヤーが即死する謎バグ攻略をクリアしようと色んなことをしていた。
「...前のヒロインだったら、出会う前の村で36人の村人と話をして、村にある井戸の中に入り、24分放置すればバグが16分間消えた。だったら、今回は...。」
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「....はっ!?」
いつの間にか眠っていた...の..か?
気が付いて目を開くと、非常に牧歌的でのどかな田園風景が目の前に広がっていた。
「な...なんやこれ??俺はさっきまで、自分の部屋にいたはず...。」
「ま、まさか...異世界転生!?」
いやいや...そんなバカなこと...アニメの見過ぎかってんだ...。
それに...。
異世界転生にしては、ちょっと、のどか過ぎないか、ここ??
もうちょい、神様のいる何もない空間とか、複数の人がいる召喚儀式場とかじゃないか?
さすがにこれは違うだろ...いや、待てよ。
この風景、見覚えがあるぞ!
「Beast of the Apocalypse...!?」
そうだ、『Beast of the Apocalypse』で最初に魔物に滅ぼされた村の近くじゃね?
ゲーム開始時に、ムービーで流れてたあの村!
慌てて、後ろを振り返った。
「あぁ...、村だ...。ま、まじか...。」
おいおい...、ゲームの中に転生とか...、しかも最初に滅ぼされるって...。
「死に確じゃねーか!」
ま、待て待て待て。
まだ、決まったわけじゃねー。
キャラクターだ。
キャラクターによっては、問題なく生きていける。
俺は、一体どんなキャラクターになったんだ?
「か、鏡ないか... ...。」
くっ、そんなもんない。でも近くに水たまりがあった。
水たまりに自分の顔を映す。
ありきたりな目、口、鼻。
「... ...キャラクターエディットする前の基本モブじゃねーか!!」
...一通り叫んでから、ふと我に返る。
やばい、こんなことしてる場合じゃない。
今は、一体、王国暦何年だ?
『Beast of the Apocalypse』では、リーリース王国が舞台になるため、王国暦が使われていた。
ムービーで魔物が村を襲っていたのが、王国暦1308年。
上手くいけば、逃げることだってできるはずだ!
「と、とりあえず、現状確認からだ。村へ入ろう」
「ヒカル!」
甲高い子供の声がした。
「ヒカル、お前どこいってたんだよー」
1人の悪ガキ風の少年が、こちらを見ながらそう言う。
「え...っと。誰だっけ?」
つい反射的に言葉を返した。
「おいおい、何寝ぼけてるんだぁ?だいじょうぶか、頭?」
「うっ...。さっき転んで頭をうったみたいで...。」
俺は咄嗟に嘘をついた。
「まじかよー、だいじょうぶか?」
心配そうにこちらを覗き込む子。
「...。」
「はぁ...、しょうがねーなぁ。お前の母ちゃんとこ連れて行ってやるよ。」
そう言うと、俺の手を引っ張って俺の家らしいとこに向かった。
...................................
「はぁ...、覚えてない?何、バカなこと言ってんの!?全くあんたって子は...。」
俺の母親らしき女性は俺を見てこう言った。
「ご、ごめんなさい。あ、あの、今って王国暦何年ですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「なに、その口調?あんた、本気で言ってんの!?大丈夫??」
俺が黙っていると。
「とりあえず、今日はもう外に出ないで、家でゆっくり休みなさい!」
「あ、あの...、何年?」
「1302年!分かった?分かったんなら、さっさと寝なさい!」
1302年!!
...6年前か... ...。
あと、6年しかない...いや!あと、6年もある!
そんだけあったら、何とかなるかもしれん。
一応、廃人レベルでゲームやってたんだ、5周はしたからな。
知識なら問題ねー
隠し武器やアイテムの場所は覚えてる。
エディット前のモブって言っても全く戦えないってわけじゃない。
初期ステでもそこそこいけたはず...、なら!
鍛えたらそれなりにはなるはずや!
明日起きたら、まずはこの体がどこまで動くのか確認しないと...な。
---------2年後
転生した翌日、体が普通の小学生くらいしか動かないことが分かって落ち込んだ。
一応、チート的なものも期待したけど、無駄だった。
だからって諦めるわけにはいかない。
だから、毎日走った、跳んだ、石を投げた。
おかげで体力と走力と跳躍力が上がった。
でもって、『投石』スキルを手に入れた。
スキルが生えたときは、滅茶苦茶感動した。
まじで、『Beast of the Apocalypse』の世界やん!って。
『Beast of the Apocalypse』って、熟練度みたいな設定があって、何度か繰り返すと突然スキルが生えてくる。
だから、これなら他のスキルだって何とか手に入るって希望が見えた気がした。
...ところが、一つ問題があって。
この村、のどか過ぎて、剣とか魔法使える人いねーんだよ...。
薬草術持ってる、ばあさんはいるけどさー
木の棒振ってたら『棒術』スキルが生えたんだけど、それじゃねー
俺が欲しいのは『剣術』
誰か、剣と魔法教えてくれー
---------さらに1年後
あれから、やれることはやった。
『弓術』『短剣術』『体術』『気配感知』『罠察知』『隠密』『薬草術』『計算』...。
ただ、これ以上増やすのは無理があった。
なら、今まで習得してきたものをさらにレベルアップするしかない!
そう思って反復練習をしていたある日。
一人の旅人がこの村を訪れたんだ...。
「すまない、一晩でいい、泊めてもらえないか... ...。」
その旅人は、大きく太い剣を背中に括り付けた剣士だった。
顔には無数の傷があり、片目は潰れていた。
疲れ切って今にも倒れそうだったため、村人たちは心配してすぐに泊められる家に連れて行った。
結構、遠くまで行くなぁと思ってたら、村の外れにある...俺んちだった。
ま、まぁ、俺んち、親父いねーし、その分、部屋余ってるけどさぁ。
とりあえず、体が癒えるまでいたらいいんじゃね?って母ちゃんが言ったら、恐縮してた。
名前は、サントスって言ってた。
旅の話を毎晩ねだってたら、隣国エグゼリア帝国で剣士やってたって分かった。
エグゼリア帝国か...、そんな国あったっけ?
ま、まぁいいや、大事なのはそんなことじゃない!
剣士だぜ、剣士!
剣を習うチャンスやん!
「俺に、剣を教えてください!」
断られた...速攻で。
こんな平和な村で、剣を学んでどうする?と。
それに、剣なぞ使えるようになったら、戦場に出ないといけなくなるぞ!と。
親を大事にしろ!とも言われた。
「大事だから。大事だから剣を学びたいんだ!」
断られた...速攻で.........。
---------1か月後
結局、毎朝、毎晩、お願いして。
どこに行くにもついて行ったら。
「分かった、分かった。負けたわ。教えてやるよ。その代わり、一度始めたら途中で泣き言は聞かんぞ!」
「もちろん!」
そう俺が答えると、木でできた剣を俺に渡した。
「木?」
「いきなり本物の武器なんぞで稽古できるか!それを使って稽古する。まずは素振りからだ!」




