第二話 俺、公爵令嬢になる
意識が戻ったら、ベッドの上だった。
視線を感じたため、そちらに目を向けた。
心配そうにこちらの様子を伺っている男女。
後ろにはメイドたちが控えている。
「こ、ここは...??」
「キャシー」
目の前の男性がこちらに顔を近づけてきた。
だ...だれだ?...いや、俺の...父親だ。
少しずつだったが、この体の記憶が見えてきた。
隣で目を潤ませながら心配しているのは...、母親。
俺...、わ...わたし...、おれは。
「申し訳ございません、お父様、お母さま。」
おれの口が、反射的に動いた。
「何も心配しなくていいのですよ、キャシー。今日はゆっくりおやすみなさい。」
お母さまがそう言った...お母さま?
くっ、なんだ?また、勝手に口が...。
「はい、ありがとうございます...。」
俺の口から出た言葉を聞き、安心したのか両親は互いに頷き合い、こちらに優しい言葉を投げかける。
「何かあれば、メイドに伝えなさいね。」
そう言い、両親は部屋を出て行った。
部屋にはメイドが二人。
ベッドの下手に立っているメイドが、アイリーン。
黒の布地で仕立てられたドレスに白いエプロンを纏った若い女性。
髪色はアイスブルー。
長い髪を後ろに一本でまとめており、凛とした佇まいは、メイドとして一人前の様相を呈していた。
アイリーンの少し後ろに控えているメイドが、メイ。
小柄で、少し大きめのドレスに白いエプロン。
エプロンの紐が長く、後ろで大きなリボンを描いている。
髪は、チェリーピンクのボブカット。
少し落ち着きがない様子で、オドオドしているメイド見習いだ。
...時間がそこそこ経ってきて。
ようやく今の状況が分かり始めていた。
どうやら、俺はこの幼女の体に乗り移っているようだ。
鉄骨。
そう、鉄骨だ。
空から鉄骨が降ってきて、俺は。
死んでしまったのか...。
そのまま幽霊かなんかになってこの体に取り憑いたってことなんだろな。
ちっ、俺はまだ30代だぞ、死ぬなんてそんなのアリかよ!
ま、まぁ、いい。
いつまでこの状態が続くのかは知らんが、最後まで足掻いてやる。
---------------------------数か月経過
状況が変わってきた。
どうもこの体...、キャサリン・リンバーグの体に異変が生じていた。
俺は死んでしまっていて、ただこいつに取り憑いて、後は何かのタイミングで成仏するだけだと思っていた。
ところがだ。
成仏するのは俺じゃなく、キャサリンの可能性が出てきた。
大人の俺の今まで得た経験や強い欲望が大きすぎて、未成熟の幼児の精神が壊されていくようだった。
このままだとキャサリンの心が死んでしまう...。
...これはチャンスだ!
こいつの心が死ねば、俺は。
『キャサリン・リンバーグ』として生きていける!
そう、おれが、おれこそが!
---------------------------さらに数か月経過
キャサリンは死んだ。
いや、正確には、ほぼ死にかけている。
弱々しい力で必死に抵抗している、足掻いている、藻掻いている。
ば、ばかが。もう諦めろって。
心配すんな、お前の人生は俺がこれから歩いていく。
前の世界では出来なかった、幸せを掴んでやる。
だから。
お前は、さっさと消え失せろ!
---------------------------1年後
アイツの声は完全に消えた。
今日から、俺が『キャサリン・リンバーグ』だ!
クククッ、周りは俺に尽くすメイドと執事。
俺は何もしなくても生きていける。
なんて素晴らしいんだ。
やはり、俺は持ってる。
俺は選ばれた人間。
どの世界においても、輝き続ける主人公なんだ!
それからは毎日が楽しかった。
この世界は、日本ではない。
この国は、エーデルバッハ王国というらしいが、そんな国聞いたことがなかった。
どうやら、俺のいた地球とは全く異なる世界らしい。
全く違う世界だというのに、なぜか、同じ人間社会。
男と女がいる。犬や猫もいる。
雰囲気は中世のヨーロッパというところか。
科学があまり発達しておらず、家電みたいなものはない。
教育水準も非常に低く、一桁の掛け算を暗算で即答しただけで、「お嬢様は天才だ!」と言われる始末。
九九なんて、小学生なら誰でも分かるだろうが...、なんだこの世界は!?
一応、大学卒業してるからなぁ...、楽勝過ぎる。
毎日、蝶よ花よと育てられ、ちょっと才能を見せるだけでメイドたちからの賛美。
俺は乗りに乗っていた。
そして...、13歳になった。
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非常にまずいことになってきた。
リンバーグ家は、エーデルバッハ王国で公爵の立場であった。
そのため、一人娘である俺に婿を取らせる必要があったのだ。
婿だと?
けっ、男じゃねーか!
冗談じゃねー
俺は、男に興味はねーよ。
...とはいえ、このままだと男と関係を持たないといけなくなる。
子作りだと?
やってられるか、そんなもん!
必死になった。
何とか、回避する方法はないかと必死になって考えた。
何も思いつかないまま一日が過ぎていく。
そんなある日、両親が婿候補を探すため、リンバーグ家で俺のためにお茶会をすることになった。
「わたくしには、早うございます。いつまでもお父様とお母様と一緒に暮らしとうございます...。」
みたいなことを、しおらしく言ってみたんだが、ダメだった...。
そして、お茶会当日。
来たのは男どもだけではなかった。
同年代の女子も来たのだ。
そう、婿探しがメインだが、同性の友達探しも併せて行われていたのだった。
グッジョブとしか言いようがない。
俺は、慎ましやかな奥ゆかしい女を演じながら、男どもから離れ、可愛く着飾った女子と交流を深めていった。
婿養子をとって家庭を作るだ?
俺は、女の子を囲んで一生遊びつくしてやるわ。
ハハッ... ... ... ...




