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第二話 決戦勇者

魔王城は、世界の果ての果てに存在していた。

大地は赤黒く染まり、空はどす黒い雲に覆われ、陽の光が全く入ってこない世界。

生命の気配はなく、何もない荒れ果てた地。

かつては美しい森や草原が広がっていたそうだ。

しかし、魔王が現れ全てが魔に染められていった。

魔物が増え、人々を襲う頻度が増えていった。

抗う人は国ごと滅ぼされ、人は外に出ることにも恐怖を感じるようになっていった。

この世を混乱に陥れている、全ての元凶。


「ついに...、ついにここまで来たんだな」

俺はそう呟いた。

「長かった、三年かかった。おかげでずっと研究できてない...。」

魔法使いのマイアがぶつくさ文句を言う。

「お前、ほんと、そればっかだな...。」


三年か...。

最初は剣も魔法もまともに使えなかった。

何度も死にかけたし、何度も諦めかけた。

仲間とも喧嘩したし、もうダメだと思ったこともあった。

それでも!

ここまで来た、来たんだよ。

「終わったら、何したい?」

ゲーナがいつもとは違う真面目な顔で言う。

「そうだな...、俺は騎士団に演習に出ることになるな...」

と、イワン。

「はぁ...、かてぇーな、イワンは。そんなんじゃ、いつまで待っても結婚できねぇぞ!」

「ぅん?婚約者はいるが?」

「へっ?マジ??誰、どこの子?可愛い??いつ知り合ったん?」

「わたしにもいるよ、婚約者」とマイア。

「はぁ~!嘘だろぉ~研究馬鹿のマイアに男だとぉ~!」

「ふん、婚約者なんていて当然だろ、あんたはいないのか、ゲーナ?」

「いねーよ!ふっざけるなぁ~」

「三人とも、うるさいです!」

神官のネトが間に入る。

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!魔王ですよ魔王。何おちゃらけてるんですか!」

「ふふっ...あはははは。」

「何か、一人だけ緊張してたのが馬鹿らしくなってきたな」

「よし、ちゃっちゃと終わらせて、帰ろうぜ。待ってる人がいるみんなの街へ!」


---------------


魔王との戦いは想像を絶するものだった。

強大な魔力、圧倒的戦力。

その一撃で空気は震え、大地は砕け散る。

絶対的恐怖の権化。


「勇者よ。」

「お前はなぜ戦う?」

「お前はなぜ『この世界』の人間のために戦う?」


「...何?」


「お前は『この世界』の人間ではない。」

「所詮は、赤の他人だ。」

「他人がどうなろうとお前には関係のない話ではないか!?」


「違う!」


「何を言うか。お前は所詮『この世界』の外から来た人間だ。」

「お前が命を懸ける意味がどこにある!」


「俺は、この世界で生きてきた。」

「仲間がいる。守りたい人がいる。」

「それだけで...、十分だ!」


スヴァローグに光が集まる。

共に戦ってきた仲間たち、祈りを捧げてくれる人々。

全ての力が一つに...。

「スヴァローグ!お前の全てを魔王に叩きつけろ!」

「行くぞ!魔王!!」


光が世界を包んだ...。


---------------


気が付いた時、俺は地面に倒れていた。

何も聞こえない、何も見えない。

...そうか、終わった...のか。ここまでか...。


「...マサ...カ」

「マサカズ!」

遠くから俺を呼ぶ声がする。

「しっかりしろ!マサカズ!死ぬんじゃねぇぞ!」

あぁ、うるさいなぁ...。誰だよ全く...。

「ドスッ」「グハァッ」

ネトが突然腹を殴ってきた。

「いってぇーな、なんだよ...」

「起きましたね、良かったです、ご無事で」

笑顔でこちらに笑いかけるネト。

「いやいや、今ので一瞬死にそうになったぞ。」

「くっそー、腹がい...痛くない、あれ?」

「治しておきました。」


「はぁ、まったく...。」

見上げると、空に陽の光が差していた。

「そっか、終わったのか。」

「俺たち、魔王を...。」


長かった、本当に。

でも、終わった。

魔王は倒した。

世界は救われた。


---------------


王都へ戻ると、国中のみんなが俺たちを迎えた。

救世主、勇者、英雄...。

みんなが笑顔で褒めたたえてくれる。


でも....。

何よりも、他の誰よりも。

俺にとって一番大切なこと。


「おかえりなさい。」

クリスティーナ姫。

彼女は涙を浮かべながら俺を見る。

「ただいま」

「ご無事で...、本当に...。」

「約束したろ、必ず戻るって」


彼女が笑った。

その笑顔を見た瞬間。

三年間の全てが報われた気がした。


---------------


それからしばらくして。


王宮にて式典が執り行われた。

国をあげての盛大なパレードを行うことになった。


魔王を倒し、世界に平和の光を届けた勇者。

共に戦った仲間と、祈り続けたこの国の王女。


国中が祝福する。


俺自身、信じられなかった。

ただの普通の高校生だった自分が、こんな未来を迎えることになるなんて。


控室で、正装に着替えていると優しい声がかかった。

「緊張しているのですか?」

クリスティーナだった。

「少しだけ...。」

「魔王と勇敢に戦ったあなたが?」

「魔王とは違うよ」

俺は笑う。

「人生で一番大事な瞬間だから」

「ふふっ、わたしもです。」


扉が開く。

光が差し込んだ先に...。

大勢の人たち、仲間たち、国王。

そして...。

愛する人。

全てがそこにあった。


---------------


「それでは、誓いの言葉を」


神官が告げる。

俺は、クリスティーナを見る。

彼女も俺を見る。

三年前、何も持っていなかった俺が。

この世界で手に入れたもの...。

仲間...、居場所...、愛する人...。


「俺...いや、私は...」

口を開こうとした、その瞬間!


---------------


白い光...そして、音が消えた。

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