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第三話 幸せのカタチ

-----大阪市内某所 K病院


「........ん....。」


誰かの声が聞こえる...。


「........さん....。」


どこか遠いところから私を呼んでる声がする。


「大南さん.........。」


....誰?誰が呼んでるの?


「大南さん、聞こえますか?」


「......................。」


お、おおみなみ...だれだっけ。

...あぁ、わ、わたしだ。私の名前。

起きなくちゃ、早く。

身体が震えだし、何かを訴えている。


「大南さんの体に強い反応が...。」


「意識が戻り始めているのかもしれません!すぐに先生を!」


---------------------------


何度か呼び掛けられ、私は目を覚ました。


眩しい光。

知らない天井。

知らない部屋。

そして、自分を覗き込んでいる知らない男の人。


「こ、ここは...?」


「大丈夫ですよ、ここは病院です。」


「病院...??」


「な、なんで病院なんかに...。」


バタンッ!

そのとき、病室のドアを大きく開ける音がして女性が入ってきた。


「あぁ、聖愛」

「良かった、本当に良かった。」

女性は号泣しながら少女の側に駆け寄る。

「マ...ママ。」

そうだ、ママだ。

たった一人で私を育ててくれた、私のママ。

「私は...一体何を...。」

頭がぼーっとしながらも返事を返す少女。

「一年、一年眠っていたのよ、聖愛」

「い、いちねん?」


一年前、私は道路の陥没事故に巻き込まれたらしい。

頭を強く打って昏睡状態になり、そのまま今まで眠っていたそうな。


「一年か...。」

私はすっかりやせ細ってしまった自分の腕を見ながらそう呟いた。

「B5D殿下。5Gに5C...正式な名前なんだっけ。ほんと、長すぎんだよ、あいつら。」

病室の窓から外の景色を見る。

「断罪の途中だったっけ...。あいつら元気かなぁ...。」


---------------------------


それから毎日リハビリに燃えた。

でもって、毎日夕方、ママが見舞いに来る。

「いいの?仕事あるならあまり無理しなくていいよ。」

「大丈夫、夜の仕事はもう辞めたの。今は昼の仕事してるの。」

「えー、なんで?あ...私が倒れたから?」

「夜の仕事は稼げるけど、聖愛との時間が全然とれてなかったでしょ。」

「だから、もう辞めたの。聖愛との時間が大切だから。」

「ママ...。」


-----退院前日


「もうすっかりよくなりましたね。明日で退院です。良かったですね。」

と声をかけてくる医師。

「はい。お世話になりました。」

元気よく返す少女。

「ふふっ、明日はお母さんも迎えに来るみたいだから、今日はゆっくり寝て明日に備えてくださいね。」

隣に立っている看護師がこう伝えてくる。

「はい。明日のために今日はゆっくり寝ます。」


医師と看護師が病室から出ていく。


「今日でこの病室ともお別れか...。一年分取り返さないとね。」

「ママのためにも、頑張らないと!」


...マリア...。


どこかで誰かの声がする。


...マリア...。


美しい音色。


...マリア...。


青い瞳の美少年が頭によぎる。


で、殿下?

そ、そんなウソ。

あれは、夢。

私が自分勝手に妄想した夢。

現実の話じゃない。

なのに...どうして?


...マリア...。


「い、いや、来ないで。わ、私は。ママと一緒に...。」


-----退院日


病院内でバタバタと走る音がする。

「先生、大変です!大南さんが!」

看護師が担当医にこう告げる。

「大南さんがいなくなりました!」

「!?」

慌てて病室へと走る医師と看護師。


病室内には、空っぽになったベッド。

誰もいなかった。


「ば、ばかな。誰か見ていないのか!?」

「誰も、見てないって。」

「カメラは、カメラは見たのか?」

「今、確認してもらってます!」

「な、なぜ、どこに行ったのだ、彼女は...。」

「窓から飛び降り...。」

「ありえん!ここは6階だぞ!そんなことをしたら。」

と言い窓に駆け寄る医師。

下を覗き込むが何も見えない。

「念のために、外を見に行こう。」


---------------------------


どこかの誰かが呟く。

「フラッシュバックか、それとも...。」


「現実世界で生きることと、妄想世界で生きること。」

 

本当に。


「人間にとって幸せなのは、どちらなんだろうな...。」

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