第一話 まおうてんせい
僕は、大阪のとある商社で働く会社員。
28歳、男。
社畜というほどバリバリ働いているわけじゃなくて、たまに30分くらいの残業をして、休日は彼女とUSJに行ったりして遊んでる。
今の彼女とは趣味も合うし、何より一緒にいて楽しい。
今日も会社終わりに彼女にLINEして、今度の週末、京橋にできた新感覚カフェに一緒に行こうと約束をした。
多分、このまま結婚するんだろうなぁ...なんて未来を描いてた。
--------------数刻経過
...あれ?
目が開かない...。
開けようとしても何か強い力がかけられてるみたい...。
な、なんで...!?
がんばって...がんばって...何度も何度も繰り返して....。
やっと開けることができた...んだけど。
真っ暗だった。
何も見えない。
あ、あれ?
いつの間に...眠ってた?
とにかく、明かりを探さないと...。
手を...あれ?
手の感覚がない??
手だけじゃない、指の感覚もない。
あるはずのものがない。
な、なんで??
足も何もかもの感覚がない。
僕はパニックに...ならなかった。
パニックになるという感情が起きなかったんだ。
というより感情が極めて希薄だ。
このような状態になっていることへの恐怖どころか、感情そのものが希薄。
どういうこと...??
--------------さらに数刻経過
理解した、理解できた。
僕はいわゆるモンスターだった。
思考を繰り返していて気付いた。
そもそも、人間じゃなかった。
人間の記憶は、前世の記憶だったみたい。
初めは、モンスターに転生したのかな?と思ってたんだけど、そうじゃない。
元からモンスターだったんだ。
前世の記憶が夢になって出ていただけみたい。
すっごく納得した。
手や足なんてあるわけないやん。
当然、目や耳もない。
起きたとき、目を必死に開けようとしてたけど、よく考えたらアレ、ただの口だった。
僕は、スライムみたいな生き物。
洞窟なんかで這いずりながら、昆虫や小さな生き物を消化して生きている。
ただの無害なモンスター。
人間を襲うことなんかしない。
それでも。
人間は僕を見ると襲ってくる。
レアだとか、経験値が入るとか何とか言って...。
どうも、僕は特異個体という奴らしく、あまり存在しないモンスターらしい。
まぁ、確かにまだ、仲間みたいなモンスターと遭遇したことないもんな。
...せっかく、この世に生を受けたんだもん。
...どんな形でも生きていたいよね...。
だから。
僕は人間を喰らう。
少しでも生を長引かせるために...。
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今日は、三人の人間を喰らった。
剣と魔法を使う冒険者風の人間だった。
スライムなら、消化して取り込むんだろうけど、僕には消化器官がない。
僕が喰らうのは、人間の生命エネルギーそのもの。
生命エネルギーが奪われた人間はそのまま眠るように死ぬ。
結果、死体の山が築かれていく。
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もうどれくらい時が経ったんだろう。
ふと周りを見渡せば、動く生き物がいなくなった。
洞窟の中だけじゃない。
外に出てもいない。
この辺りの生き物は僕が全て喰らってしまったんだろう...。
実際、僕自身も、とても大きくなっていた。
以前のように小動物を喰らうだけでは足りなくなっていた。
こんな口しかない奇妙な生き物であっても、飢えはある。
...喰らいたい...人間...、いやこの際、何でもいい。
すべてを喰らいつくしたい...。
...そして、魔王と呼ばれる生き物になった。
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生きとし生ける全ての生き物を喰らいつくした。
目の前には、荒廃し荒れ果てた大地が、ただただ無限に広がっていた。
...あぁ、どうしてこんなことになっちゃったんだろ...。
僕は、ただ。
普通に生きていたいだけなのに...。
... ... ...そして、闇が僕の全てを包み込んだ...。




