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第三話 とびだす勇者(笑)

魔王討伐の旅が始まる。

長い戦いになる。

色んな村の女の子と楽しむ。

もちろん、パーティメンバー優先だ。

どんなヤバい敵が現れても、勇者の力で瞬殺や。


魔王城は、世界の果ての果てに存在していた。

大地は赤黒く染まり、空はどす黒い雲に覆われ、陽の光が全く入ってこない世界。

生命の気配はなく、何もない荒れ果てた地。

かつては美しい森や草原が広がっていたそうだ。

しかし、魔王が現れ全てが魔に染められていった。

魔物が増え、人々を襲う頻度が増えていった。

抗う人は国ごと滅ぼされ、人は外に出ることにも恐怖を感じるようになっていった。

この世を混乱に陥れている、全ての元凶。


「ついに...、ついにここまで来たんだな」

俺はそう呟いた。

何だかんだで三年かかっちまった。

これで旅も終わりか...、ま、色々楽しかったからいいけど。



「魔王との戦いが終わったら、みんなはどうする?」

俺は一旦、城に帰ってアレクサンドラと...。


「そりゃあもちろん、カズキを国に連れて行く!」

ミリリリリウムが言う。

「わりーが、俺は行かねーぞ!」

(そろそろこいつにも飽きてきたし、そもそもアレクサンドラいるしな。アマゾネスはもったいねーが)

「えー!そりゃねーぜ!!」

ぶぅぶぅ文句言うミリリリリウム。


「ミリリリリウム、あんたねー!そんなことできるわけないじゃん!カズキはオーモンド王国の勇者なんだよ。王国から出るわけないじゃん。」

そう言うのは、マリアン。

「ま、いつか旅に出るから、ずーっと王国にいるわけじゃないけどな。」

「えっ!?なんで??」

「俺は光の勇者や!魔王を倒してもそれだけで世界が平和になるわけやないやろ?だから、色んな国に行って復興の手伝いをせんとな!」

(アホかっちゅうねん!せっかく色んな国の女の子とイチャイチャできるっていうのに、なんで王国にいなあかんねん。世界の女の子全てが俺のもんや~)


「さすが、カズキ様...。」

神官のミナミが俺を眩しいものを見るかのように呟く。

「わたくしも復興のお手伝いをいたします。今後ともよろしくお願いいたします。」

「そうやなぁ、そのときは頼むで!」

(まぁ、こいつはまだまだ食い足りんし、もうちょい一緒でもええか。)


---------------


俺が聖剣を一振りしただけで、魔物たちは消滅した。

楽勝楽勝~

そんなこんなで、魔王城に着いた。


魔王が吠える。


「勇者よ。」

「お前はなぜ戦う?」

「お前はなぜ『この世界』の人間のために戦う?」


「...何?」


「お前は『この世界』の人間ではない。」

「所詮は、赤の他人だ。」

「他人がどうなろうとお前には関係のない話ではないか!?」


「.........」


「お前は所詮『この世界』の外から来た人間だ。」

「お前が命を懸ける意味がどこにある!」


「...で、言いたいことはそれだけか??」


聖剣が強く輝きだす。


「終わりだ、魔王!」


光が世界を包んだ...。


---------------


光が収まり、魔の気配は消えた。


「終わった終わった、お疲れさん。さっ、国へと戻るか。」


俺たちは、身支度をし国へと帰ろうとした、そのとき!


「こ、これは!な、なんなのじゃぁぁぁっ!!」


幼女の声が辺りに響く。


声がした方を見ると一人の幼女が叫んでいた。

「あぁん?幼女?」

俺が反射的に答えた。


「ど、どういうことじゃ...。わらわの力は?体はどうなっているのじゃ??」

幼女が必死に自分の身体をまさぐる。

そして、こちらに目をやり、慌てて逃げようとする。


「待て待て待て。お前...、魔王だな?」


「ギクゥッ!」

変な声を出す幼女。

「そ、そんなわけなかろう。わ、わらわはただの通りすがりの...。」

「...そんなわけあるか!」

俺は、幼女の首根っこを掴んでそう言った。

(こいつよく見たら、なかなかの美形じゃねーか。将来...いや、イケる...か?)


「とりあえず、お前もこい!心配するな、悪いようにはしねーからさ...ww」


---------------


王都へ戻ると、国中のみんなが俺たちを迎えた。

救世主、勇者、英雄...。

みんなが笑顔で褒めたたえてくれる。


でも....。

何よりも、他の誰よりも。

俺にとって一番大切なこと。


「おかえりなさい。」

アレクサンドラ姫。

彼女は涙を浮かべながら俺を見る。

「ただいま」

「ご無事で...、本当に...。」

「約束したろ、必ず戻るって」(当たり前やん。ご馳走食う前に死ねるかって)


彼女が笑った。

(今晩は一晩中、寝かせへんで~)


その日の夜、カズキの部屋を静かにノックする音。

アレクサンドラだった。

「カズキさま...。」

「うん?どうした、何かあったのかい?」

(キタキタキタッッッッー!」

「わ...わたくし...。」


...アレクサンドラの、か細い声が聞こえる。


... ... ...カ... ...ズ...キ


どこからか俺を呼ぶ声が聞こえてくる。

アレクサンドラの声がだんだん小さくなっていく。


(はぁ?ちょっと待てや!嘘やろ、こんなとこで??)


「ふ、ふざけ...」

叫ぼうとした、その瞬間!


白い光...そして、音が消えた。


---------------


身体が重い。

何かが遠ざかっていく...。

アレクサンドラの顔が...。

仲間たちの姿が...、旅で出会った人々の姿が...。

俺の世界から消えていく。


「ま、待ってくれ...!」

「俺は...、俺はまだっ!」

「まだ、終わってないんだぁっ!!」


必死に手を伸ばすが、届かない。

「あ、あああああああっっっ」


---------------


「... ...さん。」


どこか遠いところから声が聞こえる。


「さん。」


知らない声がする。

ゆっくりと目を開ける。

眩しい光で目が痛む。

見知らぬ天井。

見たことのない部屋。

俺を囲むように数人の男たちが立っていた。


白い服を着た男が話しかけてくる。


「木野山さん、私の声が聞こえますか?」

「こ、ここは...??」


声が出にくい。

喉が渇いている。


「大丈夫です。ゆっくりでいいですよ。」

男が俺に話しかけてくる。

「木野山さん、あなたは今、病院にいます。」

「... ... ...病院...?」

意味が分からない。

俺は...、魔王を倒して...、これからアレクサンドラと...。

「ア、アレクサンドラは!?」

「アレクサンドラ?誰ですか??」

男が困惑した顔で答える。

「アレクサンドラ姫に決まってるやろ!何で分からへんねん!」

(ズキリッ!)

その瞬間、頭の奥に激しい痛みが走った。

「うっ、頭が...。」

「あぁ、無理はなさらないでください。まだ目覚めたばかりですので。」

「... ... ...」

「あなたは、眠っていたのですよ、一か月間。」

「...??」

「事故です。覚えてらっしゃいますか?」

「じ...こ...。あぁ...。」

男が静かに伝えてくる。

「あなたは一か月前、ジャングルジムから落下し頭を強く打ち意識を失い、救急搬送されました。」

「そして、そのまま今日までずっと眠っていたのです。」


---------------


う、嘘や!そんなアホな!?

一か月眠ってたやて?

俺は、勇者や!

世界を平和に導く光の勇者や!

世界の全てが俺を褒めたたえる。

俺は...俺は...。


-----------------------------------------------


「木野山さん」

白衣の男が言う。

「事故の影響で、一部記憶が混濁している可能性が高いと思われます。」

「しばらく様子を見ましょう。大丈夫ですよ。今はゆっくりお休みください。」


俺は返事を返すことができなかった。


窓の外を見る。

見知ったはずの景色が、全く知らない景色に見える。

あの世界の景色が、鮮明に映し出される。


アレクサンドラ...。


---------------


翌日、ママが涙を流しながら病室にきた。


「あぁ、カズキちゃん。目を、目を覚ましてくれたのね。本当に良かった。」

涙を流しながらそう俺に声をかけてくる母親。

「先生、ありがとうございます。みなさまが真摯にカズキを支えてくれていたからです。本当にありがとうございます。」

ママは、周囲の男どもに頭を下げて言った。


「カズキちゃん。ごめんね、お母さん、あなたのことちゃんと分かってあげられていなくて...、でも大丈夫。これからはあなたがちゃんと生活できるように、しっかり応援していくからね。」

「... ... ... ...。」


---------------


それから...。

ママは変わった。


今まで欲しいものは何でもくれた。

なのに...、あれはダメ、それはダメだと言って叱られるようになった。

親としてちゃんと向き合っていなかった、甘やかすだけではダメだと気付いたとか何とか言って...。

リハビリにしたってそうだ。

一か月動かなかったせいで、立つこともできなかった。

出来ないって癇癪起こしても誰も助けにこない。

俺が自分で頑張らなきゃできるようにならないとか言って何もしてくれない。

なんで?俺はママの『王子』じゃなかったの?


何もできない俺...、なんで...、俺は『王子』で『勇者』やん!


---------------


病室の外。


病室内の様子を見る医師と看護師。


「... ... ...。」

看護師は何も言えなかった。

「難しいな...。」

医師が呟く。

「期間が短かったからですか?」

「まぁ、それもある。だが、このケースの場合はそれだけじゃない。」

「どういうことです?」

「親に過度に甘やかされて育った人間は、非常に歪んだ性格になりやすい。一旦歪んだ性格はなかなか治らない。時間をかけてゆっくり、徐々に治療に取り組まなければ治せない。」

「だが、この子の親は、急激に対応を反転させている。彼のためを思っての親心ではあるのだが、この場合は逆効果だ。」

「逆効果...ですか?」

「あぁ、妄想世界が強く残っている状態で、現実世界が厳しくなると、妄想と現実との境界がなくなっていく。妄想世界こそが、現実世界だと思っていく...。」

「... ... ...。」

「そうすると、非常に危険だ。最悪の結末が起きるかもしれん。絶対に目を離さないように。非常に危険な状態になっているかもしれん...。」


---------------1か月後


俺は退院した。

もうこんなところにいたくない。

親に言って無理やり退院手続きをしてもらった。

自分で立てないため、車いすだ。


「行ってしまったか...。」

医師が呟く。

「結局、立つこともできませんでしたね。通常であれば、1か月くらいで立てるくらいには回復するのですけど、本人に全くやる気がないのでは...。」

「あぁ、後のことは親御さんが支えるということだが...、我々ではこれ以上は無理だ。」


---------------自宅マンション内


クソッ!クソッ!クソッ!

何でだ!何で立てない?俺の足なのに、全く俺の言うことを聞かねー

マ...、クソッ!あんなの母親でもなんでもない!

俺の言うことを何でも聞くママはどこに行ったんだ!?

俺は『王子』、俺は『勇者』...。


...あぁ、そうか。そういうことか!


俺は魔王を倒した。

これは、魔王が俺にかけた呪いだ!

あの野郎!最後の最後にくだらん呪いしかけやがって!

呪い解除したら、一晩中いじめてやるわ!

そうと決まれば、さっさと呪い解除して、元の世界に戻るぞ!

...呪いってどうやって解除するんだ?

アイテムとか魔法で解呪?

そんなもん持ってねーし、『呪い』のせいで魔法使えねーし。

チッ...!?

そうや、その手があった。

昔読んだ漫画で、夢の世界で死ねば元の世界に戻れるっちゅうのがあった。

そうや、それや!

呪いも似たもんやろ!


ハハッ、死んだらいいやん!


バルコニーに...、バルコニーに行けば...。


『呪い』であまり動かない足を引きずりながら...。

俺は、何とかバルコニーまでたどり着いた。


窓を開けた。


ヒュゥゥゥゥゥゥー


風の音がする。

かすかに、誰かの声がした気がした。


そうか、みんな、俺が呪いにかかってることを知ったんだな。

くくっ、よしすぐに行く。

すぐにそちらに行く。


待ってろ、みんな... ... ...ドスン...グチャ... ...。


---------------


「現実世界で生きることと、妄想世界で生きること。」

 

本当に。


「人間にとって幸せなのは、どちらなんだろうな...。」

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