第97話:絶技と見出されし者
「そうだ……一応言っておきますが、これは『みねうち』……ということになっていますわ」
メビウスは至って真面目な顔で、事もなげに言い放った。
アリシアは思わず自分のすぐ後ろを振り返る。そこには、巨大倉庫のぶ厚い鉄骨と外壁が、まるで豆腐でも裁断したかのようにスパッと綺麗に切断された惨状が広がっていた。
「せっとくりょく……ゼロなんだけど……っ!」
呆れ果てて冷や汗を流すアリシアに対し、メビウスは静かな眼差しで問いかける。
「……しかし、不思議ですね。レイン会長は一体、貴方のような粗削りな転校生に何を見いだしたのでしょうか?」
「そんなの知らないよ! 勝手に期待されたって困るし!」
「そう……ですか。ならば、ここで退学にするまでです!」
メビウスの眼光が鋭く光り、怒涛の居合閃が繰り出された。
空気を切り裂く幾重もの『斬撃』が波涛となってアリシアを襲う。
しかし――
「くっ……! とっとっとっ……!」
アリシアはまるで野生のカンだけで動く獣のように、縦横無尽に空間を跳び回っていた。
バサバサと服の裾が細かく引き裂かれ、布切れが舞い散る。だが、不思議なことに、彼女の『皮膚』には傷ひとつついていないのだ。
(間一髪で……すべて避けている!? 斬撃見切る動体視力と、この土壇場での異常な直感……なるほど、これが会長の見込んだ力……!)
だが、メビウスの戦術は単なる遠距離攻撃だけではない。
(しかし――甘い!)
「っ!? いつの間に――!?」
アリシアが着地した瞬間、視界から消えたはずのメビウスが、すでに目と鼻の先の背後に肉薄していた。残像を残すほどの超高速移動。
逃げ場のない超近接距離。メビウスは瞬時に手首を返し、刀の刃を半回転させる。
「これなら……文句なしの『峰打ち』です!」
背中を襲った凄まじい衝撃。アリシアの身体は砲弾のような勢いで弾き飛ばされ、一直線にグラウンドの地面へと叩きつけられた!




