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第89話:血だまりの中の残り香

「私に任せなさいな! この手の捜索は、華麗なるスパーク財閥の十八番ですわ!」



意気揚々と腕を捲り上げ、荒れ果てた旧生徒会室をガサゴソと探し回り始めたエリカ。しかし、数分が経過しても聞こえてくるのは埃っぽい咳払いばかりだった。

荒らされた書類、割れたガラス、そして床や壁に不気味にへばりつく乾いた血だまり――。どれだけ目を凝らしても、事件の黒幕へと繋がる直接的な証拠など、何ひとつとして残されていなかった。



「……ダメですわ。あの悪夢から丸一年。目に見えるような証拠は、何ひとつとして残っていませんわね」



エリカは扇子で鼻先を覆いながら、悔しそうに眉をひそめた。



「目に見えるものがダメなら、目に見えないものを辿るしかないさね」



サクラの言葉に、レインが小さく頷く。

いくら物理的な証拠を消し去ろうとも、かつてこの場所で強力な魔法が交錯した以上、空間には微小な『魔力の残滓』が残っているはずだった。



「――というわけで、呼んできましたわ!」



扉の陰から、エリカが胸を張って連れてきたのは、――アリスだった。



「僕の出番だね!」



アリスはにかっと八重歯を見せ、自身の固有魔法――あらゆる魔力を吸い上げ、知覚する『ドレイン』の力を発動させるべく、小さな両手を広げた。



「任せてよ! どんなに小さく残った魔力のカケラでも、僕のドレインなら全部吸い出して、どんな属性か暴いてみせるから!」



不気味な血だまりが広がる密室の中、アリスの手のひらが淡い青光を放ち始める。1年前の『魔の7日間』を裏で操った者の痕跡が、ついに暴かれようとしていた。

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