第88話:シリアス台無し
カチャリ、と重い南京錠が落ちる音が響く。
ギギ……と錆びついた蝶番が悲鳴を上げ、1年間固く閉ざされていた旧生徒会室の扉がゆっくりと開かれた。
重苦しく湿った空気が、廊下へと押し寄せてくる。
部屋の奥に一歩足を踏み入れれば、そこはまるで時が止まったかのようだった。壁や床にへばりついた、どす黒く変色した血痕。擦れたような生々しい爪痕。あの日から掃除すらまともにされていない、禍々しく重苦しい雰囲気が部屋全体を支配していた。
レインは思わず息を呑み、胸元を強く握りしめる。
「……一番怪しいのは、やはりあの『魔の7日間』にも姿を現さなかった、欠番の序列1位。ですが――」
重苦しい空気の中、真実へと手を伸ばそうとしたその時だった。
「いないからといって、勝手に人を犯人扱いして疑うのはよろしくありませんわ!!」
豪快な音を立てて扉がさらに押し開かれ、扇子をバッと広げたエリカが、なぜかドヤ顔で突入してきた。
「エ、エリカ!?」
レインは思わず素の声を上げて目を丸くする。緊張感で張り詰めていた空気が、一瞬でガタガタと崩れ去っていく。
サクラはやれやれと頭を抱え、深いため息と共に紫煙を吹き出した。
「あーあ……。せっかくのシリアスな雰囲気がぶち壊しさね……」
「失礼な! 私はいつだって真剣ですわ!」
悲惨な過去が眠る開かずの部屋に、いつもの騒がしい風が吹き込んでいく――。




