↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
87/106

第87話:旧生徒会室の亡霊

グラウンドに激しい衝撃音と土煙が巻き上がった。

アリシアの渾身の一撃をまともに喰らったメイは、白目を剥いてそのままピクリとも動かなくなった。



「う……あぐっ……」



それもそのはずである。メイの固有魔法『フリクション・ゼロ』は完璧な防御を誇っていたがゆえに、彼女自身は『攻撃を物理的に耐える肉体』を鍛え上げる必要がなかったのだ。

無敵のバリアに頼り切っていたツケが、この一撃で一気に回ってきたと言えた。



――それはそれとして。

大騒ぎになるグラウンドを遠くに見下ろす校舎の最奥。

レインとサクラの二人は、重々しい鉄の扉の前に立っていた。

【立入禁止】のテープが不気味に交差し、南京錠で固く閉ざされたその場所は――かつて『魔の7日間』の舞台となり、今は空き部屋として打ち捨てられた旧生徒会室である。



「……あれから1年。ずっと、目を背け続けてきた場所ですわ」



レインは鍵口にそっと触れながら、絞り出すような声で呟いた。胸の奥がキュッと締め付けられるような錯覚に襲われる。

サクラは胸ポケットから電子タバコを取り出し、紫煙をゆらりと吐き出した。



「あんたは現生徒会長だ。過去に何があったのか……目を見開いて、知る権利があるさね」


「……」



レインは一瞬だけ躊躇したように指を止め、それからゆっくりと首を傾げてサクラの横顔を見つめた。



「……では、なぜ貴女はその権利を放棄したのですか? 『元・生徒会書記』サクラさん」



旧生徒会室の崩壊後、生き残った3人のうちレインは生徒会長の座を引き継ぎ、エリカは牙を研ぎ続けた。だが、かつて優秀な書記として生徒会を支えていたサクラだけは、すべての役職を辞任し、一線を引いたのだ。

サクラは煙の向こうで、自嘲気味に細い目を細めた。



「さぁね……。あの凄惨な地獄を見て、真実を追うのが怖くなったのか。それとも、単に何もかも面倒くさくなったのか……。そんなこと、当時のあたしにしか分からんさね」



静まり返った廊下に、カチャリと鍵の外れる冷たい金属音が響き渡った。

少女たちが触れてはならなかった『1年前の真相』の扉が、今、静かに開かれようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。