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第82話:滑り落ちる衝撃

「これ以上、我が生徒会室を破壊することは絶対に許しませんわよ!!!」



レインの怒号と、全身から発せられた凄まじい圧迫感『プレッシャー』によって、アリシアとメイは着の身着のままグラウンドへと追い出されていた。

先ほど綺麗に掃除したばかりの部屋で暴れようとしたのだから無理もない。



「ふーっ、あぶないあぶない……。会長を本気で怒らせたら、空気すら吸えなくなりますものね」



メイは冷や汗を拭いながら、グラウンドの青々とした芝生の上へと着地した。



「よし! ここなら思いっきり暴れられるね! くらえぇぇぇーーーッ!!」



アリシアは一瞬の迷いもなく大地を力強く蹴り飛ばすと、メイの顔面を目がけて一直線に爆速のストレートを叩き込んだ!



「……えっ!?」



アリシアの瞳が驚愕に見開かれる。

完璧な手応え。直撃したはずだった。しかし、拳がメイの頬に触れた瞬間――まるで超強力なローションでも塗られているかのように、アリシアの拳がぬるりと明後日の方向へ滑り落ちていったのだ。

衝撃が一切伝わらない。まるで、滑らかな氷の表面を撫でただけのような感覚。



「ふふっ……言ったでしょう? 魔法で摩擦は消えているのよ」



メイは髪を優雅になびかせ、余裕の笑みを浮かべる。



「攻撃とはね、接触した際のスレ(摩擦)を利用してエネルギーを相手の体内に伝達するもの……。地面に置いたヌルヌルの魚を想像しなさいな。どれだけ鋭い包丁でも、滑って刃が通りにくいでしょ? それとまったく同じ原理ですわ!」


「ぬるぬるの魚……包丁……?」



アリシアは頭の上に大きなハテナを浮かべながら、ぬるりと滑った自分の右手を見つめた。



「どれだけ重いパンチだろうと、滑ってしまえばただのタッチと同じ! さぁ、私の完全なる滑走(ゼロ・フリクション)の前にひれ伏しなさいな、アリシアさん!」



物理法則を無視した「絶対防御」を前に、直情型の打撃しか持たないアリシアは最大の窮地に立たされることとなった!

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