表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/30

第8話:重力解放と不屈の捕食者

「さすがですわ……いくら私の魔法でサポートしているとはいえ、もう三段目。とっくに意識を失っていてもおかしくない重圧(プレッシャー)ですのに!」



エリカは驚愕していた。アリシアの背中にかかる重力は、すでに床にクレーターを作るほどの出力に達している。しかし、対峙するセレナは、ティーカップを指一本震わせることなく保持していた。



「いくら悪役令嬢と言っても、フェアであることに変わりなくてよ……」



セレナが静かに告げると、彼女の周囲の空気が「軽く」なった。



「まさか……」


「お察しの通り。私は貴女たちと対面した時、すでに自らに『100倍重力』を課しておりました。しかし、この戦い(ティータイム)が始まった瞬間、それを解除したのですわ」



エリカは息を呑んだ。そう、セレナは日常のすべてを100倍の重力下で過ごすことで、基礎身体能力を極限まで練り上げていたのだ。この戦いの最大出力である50倍重力など、彼女にとっては羽毛のような軽さに過ぎない。



「私の魔法には弱点がありましてね。それは、自分以外は精神か肉体が弱っている相手にしか十全に効かないこと。……お姉様のような天賦の才はありませんから、こうして毒で『隙』を作る必要がありましたの」



「……なるほどね。それで、最初に毒を食べさせて弱らせたわけだ。だとしても!」



アリシアが、重力でひび割れた床を一歩踏み出した。

バキィッ! と凄まじい音が響く。彼女の全身の毛細血管が浮き出した!



「毒だろうが重力だろうが、胃袋に入れてしまえばこっちのものよ!」



アリシアは四段目の「レモンケーキ」を鷲掴みにすると、噛まずに飲み込んだ。

その瞬間、強烈な酸味が体内の毒素と衝突し、化学反応による熱量がアリシアの体温を一気に上昇させる。



「ぬあああああッ!!」



アリシアの咆哮。

毒が中和される一瞬のエネルギーを、彼女はすべて『外側の肉体強化』へと転換した。

内側からの爆発的な圧力と、外側からの超重力。二つの力がアリシアの肉体で衝突し、限界を超えた『剛体』が完成する。



「なっ……重力を、力ずくで弾き返した……!?」



セレナの余裕が初めて崩れた。アリシアは50倍重力の檻を物理的にこじ開け、最短距離で五段目のタルト最初に食べた毒の『正解』である最後のピースへと手を伸ばす。



「ごちそうさま、セレナ!」



最後の一口を飲み込んだ瞬間、重力場が霧散した。

完璧な順序(タクティクス)による全毒素の中和。そして、その過程で発生したエネルギーをすべて拳に込めたアリシアが、テーブル越しにセレナの目の前で拳を止める。

凄まじい風圧がセレナの髪を乱し、後ろの壁にヒビを入れた。



「……私の負け、ですわね。完璧なマナー(攻略)でしたわ」



セレナは静かにスプーンを置いた。その顔には、敗北への屈辱よりも、自分と同じ『鍛錬の狂気』を持つ者への敬意が浮かんでいた。



「はぁ……はぁ……。次は、もっと甘いケーキにしてよね」



アリシアはそう言うと、満足げに鼻を鳴らした。その姿は、どんな淑女よりも、猛々しく、そして「悪」らしく輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ