表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/79

第77話:殴り合いのショーダウン

「ふ、ふぅーっ……、ふぅーっ……!」


「はぁ、はぁ……ッ!」



超常の力をすべて捨て去った最上階のリング。

美しく、そして猛々しい二人の少女は、ただ己の拳だけを頼りに、泥臭く激突し合っていた。

レインの右ストレートがミカムラの頬を歪め、ミカムラの鋭いボディブローがレインの腹部を深く抉る。

華麗な制服は破れ、額からは真っ赤な血が滴り、互いの顔は青あざだらけになっていた。普段の彼女たちからは想像もつかない、ただ衝動と魂だけをぶつけ合う、凄絶にして最も純粋なショーダウン。



「どうしたレイン……ッ! 完璧なお嬢様の拳は、随分と軽いんじゃないかい!?」


「くっ……! 貴女こそ、その程度の執念で、ユウさんの名を背負っていると言えますの!?」



ミカムラの左フックがレインのガードを弾き飛ばし、レインの掌底がミカムラの顎を跳ね上げる。

もう、そこには憎しみも、復讐も、学園の覇権争いすらも存在しなかった。ただ、一年前のあの日から時を止められたままの少女たちが、泣きじゃくる代わりに拳を突き合わせているのだ。



「あはははは! 痛い……痛いよ、レイン! でも、最高に気持ちが良いなぁっ!!」



ミカムラは血混じりの唾を吐き捨て、満面の笑みを浮かべた。その瞳は、ボカロ魔法や怨恨に支配されていた時よりも、ずっと瑞々しく輝いている。



「ええ……! 私も、ようやく……貴女と本気で向き合えた気がいたしますわ!」



レインもまた、傷だらけの顔で、しかし極上の気高さを湛えて微笑んだ。



「――次で、最後だ!!」


「望むところですわ!!」



二人の少女の叫びが、ボロボロになった最上階の空間に共鳴する。

極限まで削り落とされた意識の中、二人は同時に、全ての力を右拳へと宿らせた。

溜めは一切ない。ただ、真っ直ぐに、最短距離で相手を撃ち抜くためだけの軌道。



「おおおおおおおおおーーーーーーッッッ!!!」



二人の絶叫が重なり、互いの右拳が交差する。

――完全なる、クロスカウンター

強烈な肉撃の音が響き渡り、両者の顔面が、互いの拳によって同時に、激しく捉えられた。



「あ……」


「ユ、ウ……」



一瞬、世界がスローモーションになる。

そして、糸が切れた人形のように、レインとミカムラの身体は同時に、ゆっくりと、その場へ崩れ落ちていった。

最上階の冷たい床の上に、両者共に大の字に倒れ伏す。

完全に限界を迎えた両者ノックダウン。しかし、静まり返った広間に横たわる二人の顔には、何一つ濁りのない、晴れやかな笑みが浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ