第74話:盾の選択肢
「……ユウさんのお姉さんのお話は、生前の当人から伺っていましたわ」
レインは静かに呟くと、それまで彼女の身を完璧に守っていた、絶対的な真空の結界――『空白の盾』を、自らの意志で完全に解除した。そして、無防備にその両腕を広げる。
「なっ……何のつもりだ、レイン! 降伏でもして命乞いをするつもりか!?」
ミカムラが激昂し、核融合の熱波を周囲に撒き散らす。真空の防壁が消えた最上階の床は、レインの足元すらも瞬時に赤黒く融解し始めた。
「いいえ。……ユウさんは、あの地獄の7日間の密室の中、当時の生徒会序列2位のランカーに殺されました……。いいえ、違いますわね。私を、身代わりにして庇い、亡くなったのです」
「なっ……何だと……!?」
ミカムラの動きがピタリと止まる。
「ユウさんは私の目の前で、私の身代わりに……。ですから! 私は、彼女の血を引く貴女になら……ここで復讐の刃を受け、殺されても悔いはありませんわ」
レインの瞳には、一切の嘘も、生への執着もなかった。1年間、背負い続けてきたあまりにも重すぎる罪悪感と十字架。彼女は最初から、この結界の向こう側にいるミカムラの憎しみを受け止める覚悟で、ここに立っていたのだ。
「……ッ、ハハハ! 庇った!? 殺されてもいいだと!?」
ミカムラは天を仰ぎ、狂ったように笑い声を上げた。だが、その目からは大粒の涙が溢れ、頬を伝って熱に蒸発していく。
「そんな綺麗な言葉で、ボクの恨みが消えると思うなよ……! 分かった……いいよ、お望み通りにしてあげる!! 妹の元へ行きなよ、レイン!!」
ミカムラの全身から、これまでの比ではない、周囲の空間ごとすべてを分子レベルで消滅させるほどの最大出力の光が爆発した。
「――【メルトダウン】!!!!!」
真空の盾を捨てたレインの身体を、白熱する核融合の光が完全に飲み込んでいく――!




