第73話:密室の7日間
「……かつて、例示学園の生徒会は、誰もが憧れる完璧なお嬢様集団でしたわ。『6人の絶対的な実力者』……すなわち、学園の権力を序列化した7位から2位までのトップランナーたちによる合議制。それが、当時の生徒会の正体ですの」
エリカの声は冷たく、通路の壁に虚しく反響した。
「ですが、ある日を境に、その合議制は呆気なく崩壊しましたわ。……誰が仕掛けたか、あるいは、誰の欲望が引き金となったのかは今も分かりません。突如として、あの生徒会室という名の密室で、6人による『ルール無用のコロシアイ』が勃発したのです」
「コロシアイ……!? 生徒会の中でかい!?」
アリスが驚愕に目を見開く。
「ええ。互いのプライドと、魔法と、命を賭して殺し合った、血塗られた地獄の7日間。……最終的に生き残ったのは、わずかに3人。私と、レイン、そしてサクラだけでしたわ。あのシズモト・ユウという少女も……その6人のうちの一人。私たちの手によって、あの密室で絶命したのです」
エリカが語る凄惨な過去。しかし、それを聞いたアリスは、納得がいかないように激しく首を振った。
「待っておくれよエリカ! そんな大事件、ボクは一度だって聞いたことがない! 転校してきたアリシアならともかく、ボクは去年だってこの学園にいたんだ! 生徒会が半分死んだなんて大騒動、隠し通せるわけがないじゃないか!」
アリスの当然の疑問。学園のトップたちが殺し合ったなどというニュース、生徒の間で噂にならないはずがない。
しかし、エリカは自嘲気味に、冷たい笑みを浮かべただけだった。
「隠し通せるわけがない? いいえ、アリス。この学園の闇を甘く見ないことですわ。――校長や副校長、そしてスパーク財閥を含めた上層部の多数が、総力を挙げてその事実を完璧にもみ消しましたのよ」
「もみ消した……?」
アリシアが息を呑む。
「表向きは『凄惨な事故』、あるいは『一身上の都合による転校や退学』。それが、この学園を牛耳る大人たちのやり方ですわ。死体すら残さず、初めからそんな生徒は存在しなかったかのように記録を書き換える……。だから、貴女たち一般の生徒には、何も知らされなかったのですわ」
エリカの告白によって明かされた、例示学園の血塗られた過去。
その犠牲者の姉であるミカムラが、今、最上階でレインへの復讐の炎を燃やしている。すべての線が、一つに繋がりつつあった。




