第69話:最上階の交渉人
「……ようやく、来ましたね」
蘭王学園生徒会長、レイン。そしてその背後に従う副会長、カシウス。
二人が足を踏み入れた最上階の広間。その中央で、一人の少女が優雅に腕を組んで待ち構えていた。
蘭王学園生徒会長――ミカムラ。
この全ての陰謀の首謀者であり、ボカロ魔法の概念をネオ浜松に引き込んだ張本人。この作品に生きるすべての者がそうであるように、彼女もまた、美しくも苛烈な意思を秘めた『女の子』の一人だった。
「貴方が蘭王学園の生徒会長、ミカムラ……ですわね」
レインが冷徹な視線を向ける。
「お前が……例示学園のレインか。わざわざ泥臭い前哨戦を勝ち抜いてここまで来るとは、大した執念だ」
ミカムラが不敵に笑った瞬間、レインの背後からカシウスが音もなく前に出た。その手には、抜けば即座に首を落とすと言わんばかりの、冷たく光る鋭い刀が握られている。
「……ふふ、おっと。せっかくの最高峰の対決だ、ここは1対1で戦いたいんだがねぇ?」
ミカムラは刀の刃先を見ても眉一つ動かさない。
「問答無用です。我が会長の御前を汚す不届き者、ここで即座に排除します」
カシウスが刀を構え、一歩を踏み出そうとした。
「はぁ……。物分かりの悪い側近だね。だったら――これを見ても同じことが言えるかな?」
ミカムラがパチンと指を鳴らすと、床の一部が機械音を立てて開き、一脚の豪華な椅子がとせり上がってきた。
「「――タンポポ!?」」
レインとカシウスが同時に息を呑む。
そこに拘束され、ぐったりと頭を垂れて気絶していたのは、例示学園の仲間であるタンポポだった。
「この子の無事を祈るなら、大人しくタイマンさせてよ。ボクもさ、無粋な乱入者に邪魔されたくないんだよね」
ミカムラがタンポポの首元に爪を立てる素振りを見せながら、妖しく微笑む。
「……卑劣な真似を……っ!」
カシウスが歯噛みするが、レインは静かに手を上げてそれを制した。
「カシウス、ここは下がっていいですよ」
「しかし、レイン様! コイツの言うことなど――」
「下でサクラたちが戦っていましたわ。萌という生徒の執念を見る限り、バレット組だけでは少々面倒なことになっているかもしれません。貴女はそちらの援護に行ってあげなさい」
主君の絶対的な命令。カシウスは悔しげに刀を引くと、深く一礼した。
「……御意。レイン様、どうか御武運を」
カシウスが素早く最上階の扉へと下がり、気配を消していく。それを見届けたミカムラは、満足そうに再び指を鳴らした。タンポポの縛られた椅子が、再び床下へとゆっくりとせり下がっていく。
「交渉成立、だね。さぁ……これで邪魔者は誰もいない」
静まり返った最上階。
例示学園生徒会長レインと、蘭王学園生徒会長ミカムラ。
世界の命運とそれぞれの正義を懸けた、少女たちの最後の『聖戦』の火蓋が、静かに切って落とされた――!




