第62話:相反する二つの終末
「アリス! 手伝いなさい!」
エリカの凛烈な声が回廊に響き渡る。
「いいよ! 何をするんだい?」
アリスは迫り来るカミソリの桜を鋭くステップで躱しながら、エリカの隣へと着地した。
「貴女の『ドレイン』と、私の『エネルギー付与』を掛け合わせますわ!」
エリカはバチバチと赤く発光する超振動扇子を構え、その回路から放出される莫大なプラスのエネルギーを、アリスの細腕へと一点集中させる。本来ならば、他者の肉体にこれほどの高出力エネルギーを無理やり流し込めば、内側から爆発しかねない。
しかし、アリスにはあらゆるエネルギーを我が物として喰らう『吸血鬼のドレイン』がある。
「なるほどね……! ボクがすべてを吸い尽くす『マイナス』なら、エリカの魔法は限界を超えて与え続ける『プラス』……。これ、同時に混ぜ合わせたらどうなるか、試してみようじゃないか!」
アリスの腕が、黒い引力と赤い熱量の二色に激しく明滅し始める。
「まさか……。相反する二つの術式を、一つの体に無理やり同期させとるんか……!? そんなことしたら、空間ごと消滅してまうどすえ!!」
艶が初めて本気の恐怖に顔を歪ませ、動けない足元を震わせた。全方位から何万枚ものカミソリの桜を呼び戻し、見たこともないほど分厚い球体の「桜の盾」を築き上げる。
だが、大木のごとくその場に根を張り、回避を捨てた艶の選択は、二人の最大出力を前にしてはただの自殺行為に等しかった。
「「――相反する2つ!!!」」
二人の声が重なった瞬間、公会堂の地下階まで届くほどの、完全なる『無』の衝撃波が放たれた。
アリスのドレインが艶の桜の壁から魔力を強制的に吸い出し、構造をスカスカに弱体化させた刹那、エリカの付与した超物理エネルギーがその結合を木端微塵に爆砕する。
「「――消し飛びなさい大木の根っこごと!!」」
ドォォォォォォォォォンッッッッ!!!!!
吸い尽くされ、そして与えられすぎた空間が耐え切れずに大爆発を起こす。
艶の「千本桜」の絶対防壁が、内側と外側から同時に生じた矛盾の力によって、跡形もなく完全に消滅していく――!




