第61話:大木の呪縛
超高速で空中を舞うカミソリの桜を、エリカは鉄扇で、アリスは野生の跳躍で紙一重で回避し続けていた。しかし、その死線の中で、エリカの明晰な頭脳が違和感を捉える。
(おかしいですわ……。さっきのロケットランチャーの攻撃、あいつは避ける素振りすら見せず、わざわざ『桜の壁』を作って受け止めた……)
スパーク財閥製のロケットランチャーには爆発力を上げるためギリギリまで爆薬を詰めているため、追従機能など付いていない。ただの直線的な弾道だ。
(あんなに動ける体術があるのなら、横に一歩避ければ済む話。なぜ、わざわざ膨大な魔力を使って防御に回ったのかしら……?)
確かめるために、エリカはさらに畳み掛ける。
「これでも喰らいなさいな! スパーク特製・ハイパーサテライトビーム!!」
エリカがドレスの袖から取り出したレーザー兵器から、極太の光線が艶へと放たれた。だが、それもまた、瞬時に引き寄せられたカミソリの桜の壁に阻まれ、光を拡散されて霧散する。
そしてエリカは、艶の足元を凝視し――ついに、この魔法の本質を思い出した。
「……そうですわ。これは『桜』の魔法。桜の木というものは、大地に深く根を張り、一度生えたらそこから決して動かないものですわね?」
「……っ!?」
艶の顔が、美しく焦燥に歪む。
「ふふっ……アリス、いいことを考えましたわ!」
「何だいエリカ! あいつの弱点が見えたの!?」
アリスが飛び退きながら尋ねる。
「ええ! あの女、魔力覚醒で強力な結界を手に入れた代わりに、『発動中は一歩もその場から動けない』という、植物としての絶対的な制約に縛られていますわ! 動かない大木など、ただの的に過ぎませんことよ!」
エリカの不敵な笑みが、動けない艶を精神的に追い詰め始める――!




