第60話:フラグ構築と鉄壁の桜
「カミソリだろうが何だろうが、元を正せば植物の端くれ! 草木なら燃やせますわ!!」
迫り来るカミソリの暴風を前に、エリカは凛として言い放った。
そして、お嬢様の気品溢れる動作のまま、どこからともなく取り出したのは……軍隊仕様の無骨な巨大兵器、『ロケットランチャー』である。スパーク財閥の技術が詰まった、対戦車用の超高熱炸裂弾が装填されていた。
「これでも喰らいなさいな!!」
凄まじい反動と共に放たれたロケット弾が、カミソリの桜吹雪を巻き込みながら、廊下の奥の艶めがけて一直線に大爆発を起こした。猛烈な爆炎と黒煙が回廊を包み込み、周囲の空気を一瞬で焼き尽くす。
「……やったか!?」
アリスが煙を見つめながら、思わずその言葉を口にした。
「おバカ!! アリス、それを言ったら――!」
エリカが顔を青くしてツッコミを入れた瞬間、爆炎が生き物のように真っ二つに割れた。
「ふふっ……こうなると、ただの火遊びは効きまへんなぁ……」
黒煙が晴れたそこには、傷一つ負っていない艶の姿があった。
彼女の前には、何万枚ものカミソリの花びらが超高速で旋回し、爆風と熱線を完全に遮断する『桜の絶対防壁』が築き上げられていたのだ。
「なるほど……。攻撃だけでなく、防御の盾としても、その桜吹雪を自在に操れるということね」
エリカがロケランを捨て、再び鉄扇を構えてチッと舌を鳴らす。
「性質も含めて、文字通り『千本桜』を完全に支配してるってわけか……。攻撃も防御も隙がないなんて、覚醒した変態は本当にタチが悪いね!」
アリスが冷や汗を流しながら身を構える。
攻防一体、死角なしのカミソリの要塞。
魔力覚醒によって文字通りの化け物となった艶を前に、二人は再び、完全なる包囲網の中へと引きずり戻されていく――!




